キムチドン 良い子・悪い子・普通じゃない子 キム・ジウン 『グッド・バッド・ウィアード』
最近何が飛び出すかわからない韓国映画。ここにまたひとつパワフルなヘンテコ映画が送り出されました。「キムチ・ウェスタン」と称されるその作品、『グッド・バッド・ウィアード』を紹介いたします。
大日本帝国占領下の満州。平原を行く列車が、突如として二人の強盗に襲われる。一人は徒党を組み、極悪非道の行いで知られるパク・チャンイ。もう一人は弟分とコンビを組んでせこい仕事を繰り返しているユン・テグ。
チャンイが狙っていた重要な地図をたまたま盗んでしまったため、テグはチャンイに追われることに。そしてこの二人を、凄腕の賞金稼ぎ・パク・ドウォンが追う。さらには金の匂いをかぎつけた闇市の荒くれたちや、もともとの所有者である日本軍もテグを追い、広大な満州の大地を舞台に熾烈な争奪戦が繰り広げられることに。
タイトルは「いいヤツ、悪いヤツ、変なヤツ」の意味。これはマカロニ・ウェスタンの傑作『続・夕陽のガンマン』の原題「The Good, the Bad and the Ugly」から取られています。
映画でも小説でも、一対一の対決ものというのは割りとよく見かけますが、「三すくみもの」というのはけっこう少ない。下手をすると筋立てが複雑になりすぎて、盛り上がりにくくなるため、作り手としてはあんましやりたくないジャンルなのかもしれません ・・・・って前の記事とまったくおんなじこと書いてんじゃねーよ!
えーほんでこの映画も『グラスホッパー』と同じく、そのヘンテコさ加減がいい風に作用していたと思います(^^;
それではメイン三人の紹介を。
「いいヤツ」は『わたしの中の消しゴム』に出てた人。二枚目と聞いていましたが、思った以上に顔が丸い。きっと文字を消してカドが取れてしまったのでしょう。彼はもっぱらアクション担当で、馬上からワイヤーから多彩な銃捌きを見せてくれます。
「悪いヤツ」イ・ビョンホンはお色気担当(なぜだっ)。そしてやっぱり、原田泰造でした。
「変なヤツ」ソン・ガンホさんはお笑い担当。わりかし人のいいキャラを演じることの多いガンホさんですが、今回はなんだか「イケナイ人」って感じ・・・ ま、それはそれでアリです。
こんだけキャラ立ちしてる三人がくんずほぐれつして二時間暴れまわるのですから、これは楽しくないわけがない。
まずアクション面で目を引くのは、高低差をいかした三次元的な構図が多かったということ。時に列車の上から、時にクレーンの上から、単純に向かい合ってバカスカ撃つだけではない工夫が感じられました。クライマックスでの対決もまたこの映画にふさわしい奇天烈なものになっていたと思います。
一方で後半では三人のほかにもお宝を狙う連中が一同に会し、えんえんと平原を走る走るひたすら走る。走るって気持ちいい! いや、むしろキムチいい!と言うべきか。もちろんただ走るだけではなく、チキチキマシーン猛レースもかくや・・・というほどの潰し合いが展開されます。
あとわたしは魅力的なガジェットがたくさん出て来る映画が好きでして。例えば先にあげた列車やクレーン、あと陸地のど真ん中で売られている○○ヘルメット、テグの乗るサイドカー、はたまた日本軍の使う迫撃砲や戦闘車両・・・ こうしたものが次から次へと出て来るだけで楽しくなってしまう。時代が1930年代ということもあって、デザインがレトロチックなところがまたいい。そんな時代性や、オモチャをちらかして遊んでいるようなところはチャップリンやキートンのスラップスティックムービーにも通ずるところがあります。
韓国アクションというとどうしても暗~くなってしまう作品が多かったですけれども、こういう風にアナーキーで(いい意味で)ガキっぽい映画も作れるようになったんですね~
ちなみにこの『グッド・バッド・ウィアード』は本国での公開初日の動員が40万人と、『D-WARS』『グエムル』に次ぐ記録を達成。この三本を全て見ているわたしは、もはや韓流マスターを名乗ってもいいということですね!?(抗議は受け付けません)
次の楽しみな韓国映画は『グエムル』監督の新作『母なる証明』であります。これからも『冬ソナ』のイメージが消し飛ぶような珍品を、たくさん作り続けていってほしいですね!
Comments
キムチ伍一さんこんにちは~
消しゴムは観てないんだけど、TVのゲストで誰?このおっさんは?
って思ったのに、映画観るとなるほど、
魅力が分かった気がしましたよ
あとはガンホがやっぱり良かったナ!
母なる証明はほんとに楽しみ♪
Posted by: mig | October 09, 2009 02:44 PM
>migさま
あにょはせよ~
わたしもゴムの人(笑)は、最初ほかの二人に比べて「地味だなー」なんて思ってましたが、見てるうちにだんだんかっこよく思えてきました。なんかツメの甘いところもありましたけどね~
『母なる証明』の監督さんは『殺人の追憶』『グエムル』の人ですよね。今回はガンホさんは出ないようで・・・ 使えばよかったのに!
Posted by: SGA屋伍一 | October 09, 2009 09:15 PM
SGA屋伍一様
ビョン様とガン様のキャラが濃ゆすぎて、ゴムの人(笑)はやや地味な印象でしたね。
正義感溢れるヒーローなのか単なる賞金稼ぎなのか・・・謎めいた人物でしたけど、終盤の派手な追いかけっこで颯爽と登場するシーンはかなりヒーローっぽくてカッコ良かった
韓国映画、もっといろいろ観てみたくて
最近『殺人の追憶』と『トンマッコル』をようやっと観ました。
『トンマッコル』は号泣でしたよぅ
そして猪をスローモーションで捕獲するシーンが超ツボ
韓国映画じゃないけど、『グエムル』に出てたペ・ドゥナ主演の『空気人形』も素晴らしかったです。
『母なる証明』も楽しみ♪
Posted by: kenko | October 13, 2009 11:00 AM
>kenkoさま
おばんです。お返しありがとやんです
ゴムの人はわたしはあんまし「いいひと」には見えませんでしたねー。割とお金に弱い感じだったし。ま、あとの二人と比べてってことなんでしょうね。オリジナルではイーストウッドがやってたそうですよ
『トンマッコル』見てくださいましたか! ありがたやありがたや~
わたしはイノシシ捕獲の直後に一同がこっそりもりもり食べてるシーンが好きです(笑) ほかにもポップコーンのシーンとか、北軍の大将がフラッシュバックを起こして泣き出すシーンとかね・・・
ペ・ドゥナって『グエムル』に出てたんだ! 『空気人形』はわたしは気が滅入りそうなんでたぶん見ないかな・・・ というか、こっちではやってない(笑)
『殺人の追憶』は、実は予習のために昨日借りてきました!
Posted by: SGA屋伍一 | October 13, 2009 08:03 PM
こんにちは~
これ,SGAさん,お好きそう!!!!
チョン・ウソンは,ほんと,顔だけ見たら
別にどってことないんですよね。
アクション得意そうに見えません・・・おっしゃるとおり丸顔っぽいから。
彼の場合は全身を観てあげなきゃ片手落ちでしょうね。
顔に似合わずスタイルが抜群です。
ビョンホンさんは,小柄でどちらかというと
ガキっぽい顔だとも思うんですが
このひともなぜかセクシーオーラ凄いんですよね。
ガンホさんはもう言うことなし!
お顔はもちろんまったく好みじゃないんですが
このひとが出ている作品は,駄作のレッテルが貼られていようが
すべて観ることにしているくらい,彼には全幅の信頼を置いています。
韓国映画は,「中途半端」ってことをしないから
シリアスでもハチャメチャでも
こんな傑作になるんでしょうね~
Posted by: | March 14, 2010 04:33 PM
>今日の夕方にコメントをくださった方
というか、ほぼ確実にななさんでしょう。お返しありがとうございます(笑) えー、そうですね~ こういうただ闇雲に走ってるだけのような映画、大好きです!
チョンさんはこの作品でやっと名前を覚えました。ななさんとこの画像にありましたが、あの馬上でライフルをかまえるポーズ、決まってますよね! ぜひまたアクションで活躍してほしいです
ビョンさまはこの直前に『G.I..ジョー』を見ていたので、なんだかわたしの中で「ナルシスト」というイメージが定着してしまいました・・・
でも彼、根強いファンが多いですよね。いま大変みたいですけど、がんばってほしいものです
あとななさん、ガンさまにもそんなに入れ込んでおられたんですね~ 彼の出演作であと見てみたいのは『反則王』ですね。『シークレット・サンシャイン』も興味あるけど、なんだか気が滅入りそう・・・
韓国の映画界って、まだ成立して日が浅いと思うんですよね。その分熱気というか、ほとばしるようなエネルギーが感じられます
Posted by: SGA屋伍一 | March 14, 2010 09:04 PM
お,名前入れ忘れましたね,すんません
きっと酔っ払っていたのでしょう。(今も酔っ払ってますが)
そうなんですよ~わたしは癌さま・・・じゃなくてガンさまも
けっこう好きなんです。
純粋に演技力に惚れてるんですけど。
ビョンさまは完全にナルちゃん入ってますね。
どの作品でも必ず上半身脱いでくれますから。
そんなに筋肉見せたいのかよ~と。
ファンの私でも,ちょっと白けるときありますわ。
あ,ビョンさまも,わたしは純粋に演技力に惚れたんですよ~
Posted by: なな | March 15, 2010 12:10 AM
>ななさん
再びお越しいただきありがとうございます
いけるクチなんですね! いつかぜひ杯を酌み交わしたいものです
ガンさまは、わたしはとりたてて思いいれないんですけど、映画ファンからの支持はすごいものがありますね。映画秘宝誌のゼロ年代ベストアクターに選ばれたのにはたまげました
これまで見た中では、『JSA』とこの作品の彼が一番好きかもしれません
ビョンさまは、きっと周りが彼にああいうキャラを期待するのでしょうね。ほんで彼もその期待に応えてしまうと(笑) 要はサービス精神旺盛な人なんだと思います
そういえば原田泰造もコントでよく縫いでいたなあ・・・
Posted by: SGA屋伍一 | March 15, 2010 08:41 PM