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October 30, 2009

パリの変人たち ルイ・マル 『地下鉄のザジ』

091030_191802気がつけば都心の方は今日が最終日じゃないかcoldsweats01 ぐずぐずしてるとこういうことになります。生誕50年を記念してニュー・プリント版が作られた『地下鉄のザジ』、紹介いたします。

母に連れられてパリにやってきたいたずら好きの女の子ザジ。彼女の一番の楽しみは、地下鉄に乗ること。ところが折り悪くストライキが行われていたため、地下鉄はどこも運休。
納得のいかないザジはうさを晴らすかのように、おもりのおじさんやその他の変人たちをふりまわし、パリの街を縦横無尽に駆け巡る。

この作品のタイトルを知ったのはもう何年前か。某書店の平台で原作本が目に止まったときでした。シンプルなイラストに奇妙なタイトル。「地下鉄の駅をなわばりにしているワンパク坊主の話なんかな」と勝手に決め付けて、そのまま忘れておりました。
それが最近映画版がリニューアルされると聞いて、予告編を見てみたのですが、驚きましたね。こんなにヘンテコリンなお話だとはとても思ってなかった。そのヘンテコさ・・・ 特に巨大な磁石でザジが謎のおっさんをぐい~んと引き寄せているシーン・・・に強く引かれまして、遠くまでわざわざ観にいってきたのでした。

まあそんな感じの映画なんで、あらすじもあってないようなものです。90分の間に次から次へと乱発されるヘンテコ映像のオンパレード。人やモノがぱっと消えては現れたり、なんてのはしょっちゅう。
そんな映画にふさわしく、出てくるキャラもどこかおかしい方たちばかり。わりとまともそうなおじさんの奥さん(すごい美人)も、飛行士風のコスチュームに身を包み、無表情でバイクを走らせるその姿はやっぱりなんかおかしい(笑)。
セリフも妙に観念的で、会話があんましかみ合ってないこともしばしばでした。

別のとこである方に教えていただいたのですが、この映画は「ぶっちゃけ夢である」とか。確かに始終何かに追いかけられたりとか、高いところから落ちてもまったく問題なかったりとか、モノが現れては消え・・・なんてのは、夢の中ではよくあること。
そしてその中に現れる様々なものに、なにやら隠喩が含まれているんだとか。そうするとタイトルにもある「地下鉄」にも、なんらかの意味が隠されているのでしょうか。

ただとてもぶっとんだ話であっても、一応ギリギリ「現実にあるかも」というラインは保たれています。そのせいかあまり置いてけぼりにならずに、ザジと一緒にケラケラと作品を楽しむことができましたhappy01

そんなしっちゃかめっちゃかなスタイルにあって、ささやかな格調を添えているのが、古のパリの町並み。正直現在とどれほど変わっているのかはよくわからないのですが、恐らくそれなりに失われた景色もあることでしょう。
そんな50年前のパリの様々な景色を、スクリーンで見られるということは、やっぱり貴重な経験だと思います。

あと個人的に素晴らしいと思ったのは、大戦からまだ15年ほどしか経ってないのに、もうその影が微塵も見られないほど、雰囲気がファンキーであること。観光客のドイツの娘さんたちが、ザジのおじさんに「いいおとこ~ん」とまとわり付くシーンがあります。が、誰もそのことをとがめようとしません。少し前まで殺し合いを演じていた両国なのに。そう、バカは国境を越え、憎しみを打ち壊すのです

091017_182840と、いうわけで都心ではいままさに公開が終ろうとしているところですが、全国の他の箇所でも上映が決まっております。
いつかはあなたの住む町へ、ザジが行くかもしれません。

ただいまんとこ他に決まってる上映館は、ぜんぶで八つ。すくな(笑)

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October 28, 2009

ヒトラー対いっこく堂 伊坂幸太郎 『魔王』

091028_173420十回に一回の読書コーナー。今回はまたしても伊坂幸太郎氏の作品です。

平凡な社会で、弟と二人平凡に生きるサラリーマン安藤。しかし彼はある日、自分が思ったことを他の人間にしゃべらせることのできる「腹話術」能力を有していることに気づく。
折りしも、政界では流星のごとく現れた未来党党首・犬養が注目を集めていた。はっきりした物言いと果敢な行動力で、急激に支持を集めていく犬養。だが彼の台頭と同時に、世間では外国を排斥する傾向が高まっていく。
いつしか安藤は考え始める。自分のこの能力で、世の中を変えることはできるのか・・・

この本は二部構成となっております。第一部「魔王」は安藤を中心とした物語。第二部「呼吸」はそれから五年後、安藤の弟・潤也を中心として語られたお話となっております。

たったひとつの特異な能力を武器に、圧倒的に巨大な権力に立ち向かっていく主人公。そういう話って好みなんすよね。どういう意図かはわからねど、第一部と第二部で主人公が異なるという構成にもなにやらひかれるものがありました。

が・・・・・

個人的には、今までの伊坂作品で一番微妙だと感じました(笑)。まあ伊坂先生のこったから「燃え上がる対決もの」にはならないだろうと思ったけど。
わたしが面食らったのはこの作品、政治に関するうんちくや論議がけっこうえんえんと展開されるのですね。先生は別に何かを訴えたかったわけではなく、「今までに影響を受けてきた小説や音楽には、たいがい、社会や政治の事柄がよく含まれていて、そこから滲んでくる不穏さや、切迫感や青臭さがとても好きだったので、だから、自分の書くものにもそういう部分を含ませたくなってしまうのかもしれません」とのこと。だけんどこれまで読んできた七作品には、そういう要素はほとんど感じられなかったけどなー

この安藤の持つ「腹話術能力」というのが大変独特なアイデアだけに、もっともっと話を面白くしようがあったのでは、と思ってしまったのでした。

ただひとつ考えさせられたのは、社会の右翼化ということ。
近隣諸国はよく日本が「また戦前のような軍国主義に戻るのでは」ということを、ことあるごとに警告します。実際にこのふにゃらけた国に生きてる者としては、「そんなことあるわけねーだろ」と、つい鼻で笑ってしまいますが。
この本を読んでいて、果たして「絶対にない」と言い切れるか、少し自信がなくなってしまいました。
それほど現代日本で独裁者が生まれそうなプロセスが、非常に説得力を持って書かれておりました。少なくとも、政治をよく知らない者にとってはそう感じられました。

ここんとこ少し落ち着いているようにも感じられますが、アジア諸国から攻撃的な発言があると、最近の世論というのはすぐに青筋を立ててしまうような傾向があると思います。そのほうが本が売れるからマスコミも大衆を煽るんでしょうけど、もしこのままそうした傾向がエスカレートしたなら・・・と思うと、空恐ろしいものがあります。

人っていうのはどうしても周りから影響を受ける生き物ですが、時代がもし狂っていくのであれば、安藤のようにその奔流の中にあって、じっと踏みとどまれる、そういう人間でありたいものです。


さて、先ほど「もっと面白くできるのでは」と書きましたが、同じことを考えた方が他にもおられたようで、この作品、少年サンデーGEXにて大幅にアレンジを加えられた漫画版が先日まで連載されておりました。副題は「JUVENILE REMIX」。こちらでは安藤は高校生となっており、「リミックス」の名の通り、他の伊坂作品『グラスホッパー』の登場人物も多数登場しております。
今度こそ本当に面白そうだ・・・と思い、先日書店でお試し版を読んでみたのですが、どうも絵がピンと来なくて結局買いませんでした(笑) わたしの器量も狭くなったものだ・・・・ 
ただアマゾンのレビューなんか読むとかなり評価が高くて、「やっぱし読んでみようかな」と思ったりすることもしばしばcoldsweats01 全十巻というあたりがキリよくまとまってて好感がもてますしね。

081227_182311文庫本で未読の伊坂作品も、残すところ『陽気なギャング』二部作と『終末のフール』のみとなりました(ただ『フィッシュ・ストーリー』が近日発売とのこと)。
ちょっとここらで、伊坂作品から離れてみようかな、と思います。そんなこと言いながら、またすぐ戻ってきてしまうかもしれませんけどcoldsweats01

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October 26, 2009

モンタナの山のふもとで ニック・カサヴェテス 『私の中のあなた』

091026_183751最近「わたし」とか「あなた」とか「君」とか「ぼく」とか付いた映画多いですよね。でもこの作品は、他のそういうものとはちょっと違う・・・と思います。
現在絶賛公開中の『私の中のあなた』、紹介いたします。

サラとブライアンは仲の良い夫婦。二人の子供・ケイトとジェシーに恵まれ、幸せそのものの家庭を築いていた。だがまだ幼い長女のケイトが白血病にかかっているとわかった時から、夫婦の苦悩が始まった。
「何が何でもケイトを死なせない」 そう誓ったサラは、ケイトのドナーとなるべくDNAを操作したもう一人の娘・アナを作る。
臍帯血、輸血、骨髄移植・・・・ 強い痛みに耐えながら、アナは姉のために様々なものを提供し続ける。自分の生まれた役割を懸命に果たしているように見えたアナ。ところがアナは十歳になったある日、突然「もう自分の一部を提供するのはいやだ」と宣言。両親を裁判で訴えてしまう・・・・


原題は『My Sister's Keeper』。「姉の命を保たせるもの」という意味でしょうか。そうするとこのタイトルは主人公のアナそのものを指しているのかもしれませんが、映画を見てみるとさらに幾つかの意味がこめられているような気がします。

あらすじを読むとすんごいドロドロしたお話を連想してしまうと思います。ですが予告を見ますと、姉妹はとても仲むつまじそうで、ギスギスした空気とかなんにも感じられないんですわ。それが不思議で見に行くことにしたのです。

で、とてもいい映画だし、見てみて良かったとも思うんだけど。

こんなに見ていて辛い映画もそうないですね・・・


以下は「これから見る」という方はなるべく読まないようおすすめいたします。それでは秒読み開始・・・

five

four

three

two

one

わたしゃ独り者ですけど、家庭というものは、みんながお互いのことを考えて自分のことを我慢すれば、たいがいはうまくいくもんんではないかと思っておりました。ですけどこの映画の登場人物は、
誰もが自分のことより他の誰かのことを一生懸命案じているんですね。だのにどうしてこれほど悲しい話になってしまうんでしょう~

わたしが割りと一番感情移入してたのは、真ん中に挟まれている長男のジェシー。言ってみればこの映画で一番要らないというか、なんでいんのかわからないようなキャラクターですよ。
妹は体の一部を提供することで姉を助けられるわけですけど、彼はただ指をくわえてみていることしかできない。おまけに家族のみんなは姉のことにかかりきりで、自分のことなど誰もかまってくれない。だのにジェシーは文句ひとつ言わず、ただじーっと耐えてるんですね。そしてひたすら家族のことを、姉のことを考え続けます。
その彼の思いが、どん詰まりに陥っていた家族に開放をもたらす。そのあたりがとても心地よかったです。

偉いといえば、アナも偉すぎるってくらい偉い。あらすじだけ読むと「ねーちゃんが死ぬかもしれないのに・・・」と、自分のことだけしか考えていないわがまま娘のように思えます。でも弁護士が「お姉さんは死んでしまうよね?」と聞くとホロリと涙をこぼします。この辺でわたしのようなニブチンにも、「ああ、なにかわけがあるんだな」と理解することができました。
前に別のドラマでも見たことがありますが、骨髄を抜き取るのってすっごく痛そうなんですよね・・・crying お尻にぶっとくて長い針を思いっきり突き刺きさして抜くわけです。誰かのためとわかっていても、大人でさえ身震いするんじゃないでしょうか。だのにアナは姉のために何回も何回も何回も何回もその痛みに耐え、これまた恨み言ひとつ言わない。そして姉を心から愛している。こんないいコこの世におるんやろか・・・ とさえ思います。

一家の親父がまた懐の広いエエ男です。彼とていっぱいいっぱいのはずなのに、家族に対し感情にまかせてぶち切れるということが一回もありませんでした(同僚にはいっぺん切れてましたがw)。アナが提供を拒否したシーンでサラが怒り狂っているのに、彼はこの時点で「何かわけがあるんじゃないかなー」ということに早くも勘付いております。前にもなんかの記事で書きましたけど、相手の言葉の裏を読める・・・ そういう人間でありたいと思います。

これだけ「いいひと」たちしか出てこないと、なんだか嫌味になったり浮世離れした話になりそうなものですが、個人的にはまったくそういうものは感じませんでした。うーん、なんでだろ。やっぱし役者さんたちのみずみずしい演技の賜物でありましょうか。

091026_183816家族がいるということは、いずれ大切な人の死を見なくてはいけないということです。それを正面から受け止める上で、とても考えさせられる映画だと思いました。

ちょっとネタバレくさいですけど、原作では結末がまるで異なっているそうです。興味をもたれた方はそちらもどうぞ。わたしゃそこだけ立ち読みしちゃいましたけどね・・・・(←大邪道)

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October 24, 2009

平成ライダー歓迎会 2009秋

そのいち

091024_131302「それでは僕らの新しい仲間を紹介します!

『仮面ライダーW』君です! 拍手~」

「ども。Wっす。よろしく~」

「だぶる!?」


091024_131133「まあ、なんだ。一年くらいどってことないさ」

「そうそう、これから幾らでも名誉挽回の機会はある」

「君はまだ若い。今回の経験をバネにしてだな・・・」

「あの、別に留年とかしてませんから!」


そのに

091024_131231「それでダブリ君の特技は?」

「ダブルです! えーとこのように
『サイクロン・ジョーカー』
『ヒート・メタル』
『ルナ・トリガー』
というようにですね。用途に合わせて様々な形態に変化できるんです」


091024_131334「なんかさー そういう風に人に合わせてコロコロ態度変えるのって、男らしくなくない?」

「そうそう、筋が通ってないよね」

「あなたたちに・・・・

言われたくありませんよ!annoy


そのさん

091024_131412「というわけで今回は『Wの世界』にやってきましたー」

「ちょちょちょちょっと待ってください! アンタの出番はもう終りましたから!

他の方々みたいに、こちらの世界までぶっこわされたら困りますから!」

「固いこと言うなよー 夏の映画でお披露目させてやったろ?」


091024_131851「だいたい直前に再放送しないでくださいよ。こちらの印象が薄くなってしまうじゃないですか!」

「まあ、お前らが怒る気持ちもわからなくはない

オレだって○王のヤツにはだいぶワリを食わせられたからな・・・」

「・・・そこ。バッチリ聞こえてるぞ」


おまけ

091024_131920ドカ! バキッ! ガスッ!

「これまでだ・・・・

さあ!

お前の罪を数えろ!


090918_172455「すす、すいません・・・

あんまりガマンできなかったので、ついそこで立ちションを・・・」

「・・・・・
トリガーフルバースト!

(この漫画はフィクションです)

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October 22, 2009

臼井儀人さん追悼 臼井儀人 『クレヨンしんちゃん』

すでに某大臣の訃報や新型インフルエンザなどのために忘れられてしまったような感がありますが、先日『クレヨンしんちゃん』の作者であられる臼井儀人さんが不慮の事故のために亡くなられました。ささやかながら追悼記事など書かせていただきます。

といっても、わたしも決して熱心なファンではなく。実家にあった初期の『しんちゃん』を4冊ほど読んだ程度。なぜそんなものが実家にあったかというと、たまたまテレビアニメを見た親父がいたくお気に召して、わたしに「買って来い」と命令したからです。
初期のころは大人の読者がメインだったようで、ヒロシさんとみさえさんのベッドシーンなどもあり、「これ、いいのかなあ」と思ったことを覚えております。たぶんアニメ化はされてない・・・はず。

亡くなった関係でいろいろ出た記事で、特に印象に残ったのは生前語られていた次のような言葉。

「話を作るということは果てしない荒野を歩いていることに似ている。ずっと歩いていると、そのうち空から一本の紐が垂れ下がっているのが見えてくる。その紐を見つけるまでが大変」

ギャグ漫画はもって三年、ほどほどに手を抜いて五年、と申します。面白いことを絶えず考え続けるということは、それこそ多大な消耗を本人に強いるようです。わたしなんかこのブログのつまらんネタをたまに考えるだけでも、かなり苦労しておりますから。

もしかしたら前衛的・破壊的なギャグよりは、家庭・日常をテーマにしたネタの方が負担は軽いのかもしれませんが、それでも大変なことには変わり無いでしょう。本当に新聞漫画を書いている方たち(特に植田まさし氏)などは、人間ではないのではと思うことさえあります。
話が横道にそれましたが、約二十年にも渡ってそんな作業を続けておられた臼井氏もまた、偉大なる鉄人ということができるでしょう。

漫画・アニメファンに「『しんちゃん』の話で何が一番好きか」と尋ねたら、大方は劇場版『嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』こ答えるかと思われます。わたしも大好きな作品ですが、あれは臼井氏の作品というよりか、アニメ作家原恵一氏の作品なので、ここは初期単行本の印象に残った1エピソードを紹介して、追悼とさせていただきます。なにぶん十年以上前に読んだもので細かい部分はいろいろ違っているかと思いますが、どうぞご容赦ください。


季節は春。お花見のシーズン。一人の青年が花見の場所取りをしております。どうやら会社に入ってまもないようで、先輩たちの使いっぱしりをさせられている模様。青年はもじゃもじゃ頭で、顔はニキビかそばかすだらけ。お世辞にも二枚目とは言えません。

「こんなもんでいいか」「○○さんが隣にきたらいいなあ」「『○○君、あたし酔っちゃったみたい』」「俺にしなだれかかってくる彼女・・・」「『おいよせよ。みんな見てるじゃないか』」「しかし彼女はかまわず『アタシをメチャクチャにしてぇーッ!!』」

そこへしんちゃん登場。

「おじさんなにしてんの?」「こ、子供はあっち行ってろ!」

その後は予想通り、場所取りを邪魔するしんちゃんと、青年の攻防がえんえんと展開されることになります。
青年がいい加減疲れ果てたころ、会社より一本の電話が。

「えっ ○○で中止・・・」(中止の理由は忘れましたcoldsweats01

最後のコマはいつの間にか仲良くベンチに腰掛けている青年としんちゃん。

「そのうちいいことあるよ」
「肉まん、もう一個食うか?」

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October 19, 2009

忍びが通るけもの道 白土三平・崔洋一 『カムイ外伝』

091019_121552ひとり ひとり カムイ
闇のなかを抜けていく

白土三平の名作コミックを、崔洋一、宮藤官九郎、松山ケンイチという豪華布陣で映画化。『カムイ外伝』を紹介いたします。

被差別階級に生まれたために力を欲した少年カムイは、忍者の集団へと身を投じる。だがカムイはある事情から忍びの一団を「抜け」ざるをえなくなり、以後追っ手たちとの熾烈な戦いを強いられることになる。
そんな逃亡の途中で、カムイは半兵衛という変わった男と出会う。その地にあって絶大な権力を持つ領主の馬の足を、平然と切りとって逃走する半兵衛。興味本位でこの男を助けたことから、カムイは彼と行動を共にすることになる・・・・

なじみのない方は「なぜいきなり『外伝』を?」と思われるかもしれません。わたしの知る限り、いきなり外伝が映像化されたコミックは、ほかに『修羅の刻』と『セクシーコマンドー外伝 すごいよ! マサルさん!』くらいのもんです。
実は「本伝」の方はカムイのほかにたくさんの登場人物が出てくる壮大な群像劇であり、差別や支配との戦いを描いた重厚な内容の作品なので、やや娯楽色に乏しいところがあるのです。おまけに途中からカムイが全然出てこなくなっちゃったりします(笑)
それに比べると「外伝」の(特に初期の)方は、わりかし忍者バトルに焦点が置かれたエンタメ寄りの作品なので、映画にするならこっちの方が向いてると判断されたのでしょう。

激しい差別を受け、それゆえに地獄を見ることになったカムイですが、たどりついた半兵衛の村では暖かく迎えられます。もしかして落人か何かが集まってできたがゆえに、そういう意識が乏しいところなのかもしれませんが、ここで思い出すのはいつぞやの朝日夕刊のコラム。
崔氏の父は在日朝鮮人で、それゆえに厳しい差別を受けたこともあったようですが、映画制作現場に出入りしていた彼は息子にこんなことを語っていたそうです。
「この世界は、国境をなくさせる」
つまり、撮影所では誰が何人だろうと気にせずに、みんな力を合わせて映画を作っていると。素晴らしいことですね。
この映画における漁村は、そうした差別なきものづくりの社会を表しているような気がします。ではその平和な村を襲う悪鬼のごとき者たちは誰を表しているのか? これについても「あれかなー」と思うところはあるのですが、先のこと以上に思いつきレベルなので、書くのはやめておきましょうcoldsweats01


実はわたしこのエピソードの後半、だいーぶ前に読んだことがありまして、それなりに思い入れの深い話だったりするのですよ。そんで豪華スタッフがてがけるともなれば、否が応でも期待が高まるというもの。
しかし実際に見てみますと、「え!? なんでここでそうなるの!?」「あの・・・ あなた結局何がやりたかったの!?」という展開がけっこうあり。でも原作も、そういえばそんな感じの話でした(笑)
十ウン年前はほとんど気にならなかったんだがな~
さすがは漫画好きの宮藤官九郎、オリジナルに忠実であります。今回は彼のいつもの持ち味がほとんど感じられない映画でしたが、それが良かったのかどうか? う-む。


ここからはラストまでバレてるんでお気をつけください・・・・


shadow

shadow

shadow

night

night

いい面で原作らしさが出ていたところというと、カムイの孤独性に関してはよく表れていました。カムイを狙うもの、受け入れようとするもの、彼に関わる者たちには、すべて死が訪れます。まさにカムイが通ったあとにはペンペン草も生えない。決してそれを望んでいるわけではないのに、いつも死を招き寄せてしまうカムイ。
浜辺で一人たたずみ、(早くここを去らねば・・・)と思うカムイに、つい涙を誘われたのでした。

果たして彼がいつか笑顔で、人並みの暮らしができるようになる時は来るのか? 
ちなみに『カムイ伝』は2000年に中断したまま、いまなお未完です。

091019_121609最後は原作の詩情溢れるモノローグでもって締めるといたしましょう。


夜明けが来ると 夜は泣きながら去っていく

俺も去っていこう 遠くへ 遠くへ

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October 16, 2009

愛という字のもとに ~大河ドラマ『天地人』より⑫ 「太宰を断罪」の巻 

景勝 「上杉景勝じゃ!」
兼続 「直江兼続です・・・」
景勝 「(ぐきゅるるる)うおおおおお!! はらへったぞーっ!!crying
兼続 「殿、耐えなされ・・・ 武士は食わねど高楊枝」
景勝 「てんめ~(首をしめながら)誰のせいでこんな赤貧生活を強いられてると思ってんだ~annoy
兼続 「げげぼ。し、しどいわとの。せんかいはあんなにおほめくださったではないですか」
景勝 「うるせえ! てめえの酒の不始末で、家臣一同飢え死にするところじゃねえか!」
兼続 「との、怒ってばかりいると、よけいに腹が減りますよ・・・ ここはひとつ上品な話題でもいかがでしょう。今回のテーマは『太宰治』ということで」
景勝 「へ? なんで?」
兼続 「なんか最近生誕百年ということで盛り上がってるんですよ。それにこういう寒いところと太宰ってよく似合うと思いませんか?」
景勝 「まあそれですきっ腹が紛れんだったらな・・・ お前は太宰ってなんか読んだことあんのか?」
兼続 「はあ一応。『走れメロン』と『人間失格』。あと『桜桃』ですね」
景勝 「メロンとかサクランボとか、果物が好きな人だったのか?」
兼続 「月見そばも好きだったみたいですよ」
(ぐきゅるきゅるきゅる~)
景勝 「く、くいものの話はよさねーか・・・shock
兼続 「うかつでした・・・ そう、『桜桃』は読みやすかったですね。十ページかそこらでしたから。たしか『子供より、親が大事と思いたい』とかいう書き出しじゃなかったかな」
景勝 「とんでもねーオヤジだな
兼続 「友人を借金の方においてきて忘れたあげく、責められたら逆ギレするような人ですから。まあそれはともかく『走れメロン』の方はよかったですよ。こちらの書き出しは確か・・・ そう、『メロンは激怒した』」
景勝 「メロンって怒ったり走ったりすんのか?」
兼続 「ファンタジーなんでしょ。わたしにはメロンの気持ちがよくわかるんです。メロンの親友を思う気持ちが。親友のえーとえーと」
景勝 「セロハンテープ?」
兼続 「そうそう。そんな名前。ああ、ミッチー・・・ わたしもあなたを助けに京都まで走っていきたかった・・・」
景勝 「じゃあ行けばよかったじゃねーか」
兼続 「こっちはこっちでいろいろ忙しかったんですよ! 育児とか根回しとか引越しの準備とか」
景勝 「・・・・親友へのフォローは一番後回しかよ」
兼続 「ごほんごほん。そういや今回はアレやりましたっけ? 柿のエピソード」
景勝 「柿・・・ そういやそんな話もあったような・・・ どんな話だったっけ」
兼続 「えーと、確かミッチーが刑場にひかれていく途中で、一人の女性が気の毒だからって柿をあげるんですね。そしたらミッチーは『今ゲリピーだからいい』とか言ったとか」
景勝 「柿とゲリピー。足して柿ピーだな」
兼続 「うう・・・ かっこつけ野郎のお前が最後の言葉が『ゲリピー』だなんて、さぞや無念であったろう、ミッチー!
うううcrying
景勝 「てゆうか柿の話してたら、また腹が減ってきたんだが・・・ いかんいかん! 考えちゃいかん! そうだ、お前どうだったんだ、あれは。『ヴィヨンの妻』は。今回太宰に強引に話をふってるのも宣伝のためなんだろ」
兼続 「あははcoldsweats01。さすがとの・・・ お見通しでしたか。なんか書きたいところなんですけど、これ書いてるヤツが見てないもんでなんともいえないんですよ」
景勝 「そっか。タイトルからしてビヨヨ~ンと何かが伸びる話なのかな」
兼続 「何かが伸びる・・・ やっぱ月見そば?」
景勝 「だから食い物の話はやめんか!
091016_180508

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October 14, 2009

失われた機械 ブラッド・シルバーリング 『マーシャル博士の恐竜ランド』

090606_113825いまハリウッドで下ネタとゲイネタをやらせたらナンバー1と言われているウィル・フェレル。今日はそんな彼の最新作『マーシャル博士の恐竜ランド』を紹介します。

異端の科学者リック・マーシャルはタイムワープによるエネルギー開発を提唱したため、学会から追放される。数年後、しがない教師としてうらぶれていたマーシャルを、彼にあこがれていた女性科学者が訪ねてきた。彼女に促されて、マーシャルはなんとか次元移動装置を完成させる。二人はひなびたテーマパークで実験を始めるが、案の定装置は暴走。テーマパークのオーナーも巻き込んで一同はいずことも知れぬ次元の狭間へと迷い込む・・・

古のテレビドラマ『ランド・オブ・ザ・ロスト』をリメイクした作品。いきなりなんですけど、この映画本国では大コケしています。この手の映画にはつきもののうざい子供が出てこなかったことが、原因のひとつかもしれません。
そんなわけで日本での公開もどこかひっそりしているというか。だいたい恐竜映画は夏が勝負時なのに、9月に追いやられてる時点で諦めムードが漂っております。

しかしまあ、バカ映画ファンとしては、ウィル・フェレルと恐竜が共演するというだけで見逃すわけにはいきません。で、結果としてどうだったかというと。

いや~ すんごく面白かったですよwwww。っていうか、そのwはなんだ!そのwは!w

なんなんでしょうね。このものすごいまったり加減は・・・ そう、どこかシュールで脈絡の無いところもあいまって、少し前の『銀河ヒッチハイクガイド』と通じるものがあるような。ただ、『銀河~』はギャグの裏に風刺とか教養が見え隠れしてたんですが、こちらは本当にアホをやってるだけですね。いや、わたしそーゆーのも好きですけど。
唯一格調高いと言えるのが、重要なシーンでかかる『コーラスライン』のテーマ。なぜこんなアホ映画で『コーラスライン』が!? と思われたあなた。見ればわかります。・・・いや、どうかな。この不朽の名作も、マーシャル博士たちにかかれば「ゲイの映画よね!」と一刀両断。怒られますで、ほんまに。

と、なんとなくなげやりな調子になってしまいますけど、いや、ほんとに面白かったんですってばw なんせタイムスリップものではなく異次元ものなので、次から次へといろんなものが出てきます。
タイトルにある恐竜はもちろん、チープな原人、トカゲ星人、マンガチックな古代遺跡にお化けガニ、はたまた日本人には馴染み深い奈良の○○まで・・・

こういう節操のない背景やガジェットを眺めてるだけで、十分楽しめました。わたしにとっては。
そしてウィル・フェレルの体を張った渾身の演技(笑)。あんなものを頭からかぶって「う~ん。しみる~」なんてシーンもありましたが、ありゃ、たぶん作り物ですよね・・・ きっと。

監督はブラッド・シルバーリング。どっかで聞いたような名前だと思ったら、数年前に観た『世にも不幸せな物語』の監督さんでした。調べてみたら、ほかにも割りとメジャーな映画撮ってるんですね。

キャスパー (1995)
シティ・オブ・エンジェル (1998)
ムーンライト・マイル (2002)
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 (2004)
素敵な人生のはじめ方 (2006)<未>  

なんつーか、こー、順調に転落してるな・・・・
いや、その、ウィルにもブラッド監督にもぜひがんばってほしいものですね!

091014_173835とりあえずこの映画、全国でまだかかってるようです。「でも絶対楽しめるからぜひ見てください!」と言い切れないのが辛いところです。いや、本当にわたしは本当に楽しめましたけどw

続編見たいけど、たぶんできねえだろうな~(笑)


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October 12, 2009

適当掲示板88&Wエジプト展報告&横浜探訪

毎度どうもっす。SGA屋伍一っす。ご意見そのほかありましたらこちらへどうぞ

さて、もう一ヶ月ほど前のことになりますが(笑)、横浜で開催されていた「海のエジプト展」ならびに上野で開催されていた「トリノ・エジプト展」見て参りました。その報告をば ・・・・両方、既に終了してますけどね・・・・

まずは「海のエジプト展」から

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 sun

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真ん中二つは前に買った食玩。まあこんなものがあったということで。右端は会場限定ガチャガチャ。「オシリス・カノポス壷スノードーム」だそうです。

隆盛を誇りながらも、度重なる災害で水中へ消えたエジプトの都カノープス、ヘラクレイオン、アレキサンドリア。その海底から発掘した遺物が展示してありました。
一番インパクトがあったのは、巨大なハピ像、ファラオ像、王妃像。やっぱり~ 自分は~ でかいものが好きなので~ なんせ5メートルですから! 5メートル!

こんだけのものを、海底からうんこらせとひっぱりあげたダイバーさんたちの苦労にも感服いたしました。

他には木馬大のスフィンクスとか、首の取れた彫刻とかがけっこう多かったような気がします。


ついでに近隣のあちこちを観光してまいりました。

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 mist

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中でも感動したのが、横浜開港博で来日しておられた「ラ・マシン」の巨大グモさん。間近で見るには入場料を払って柵の向こうに行かねばならないのですけど、すぐそばにほどよい高さの歩道橋があるため、会場外からも普通に見られるという(笑)

実際かなり近くまで歩いてきてくれて、そのサービスには感激いたしました。ありがとう!開港博! そしてタダ見でごめんなさい!

さらにせっかく横浜に来たのだからということで、そこから馬車道や中華街にも足を伸ばしてみました。
馬車道というのは古い洋風建築が立ち並んでいるのかと思いきや、意外と普通の商店街でしたね・・・ まあそういう建物もチラホラとはありましたが。

そこいくと中華街はいかにも中華街でした。原色派手派手キラキラで、雑貨屋さんには怪しげで微妙な賞品がいっぱい。歩いていてなかなか退屈しないところでした


続きまして「トリノ・エジプト展」参ります。

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真ん中二つは例によってよその食玩。右端は会場限定山岸涼子ポストカード。

海のエジプト展』に比べれば、ちょいと小ぢんまりしてるんではないかな、と予想していたのですが、どうしてどうして。こちらも負けず劣らず見ごたえがありました。

展示品自体が貴重でヘンテコなものが多い、ということもありますが、鏡を使って一度に二つの角度から見られるようにしたり、照明をできるだけ抑え目にしたり、視覚効果にいろいろ工夫がしてあります。

個人的には以前読んだ『エジプト人』という小説でなじんだ名前やキーワードがそこかしこに見られたのが嬉しかったです。アメンへテプ、ホレムヘブ、テル・エル・アマルナ・・・・ それにツタンカーメンも。

あと印象に残ったものは「猫のミイラ」と、「子供のミイラ」。猫のはともかく、子供の方は胸に詰まるものがありました。こんなに幼くして子供を失ってしまったら、それこそ親はあの世にでも希望を託すしかないだろうな・・・と


090922_124332090922_133035 そのあと、例によって科学博物館の常設展を見て帰りました。

これで掲示板85であげていたイベントは大体消化できたかなー 幕張メッセに来ていた36メートルのマメンチサウルスが見られなかったことだけが、心残りです。

現在開催中のものとしては、やはり上野の「古代カルタゴとローマ展」、六本木でやってる「ハプスブルグ展」などが面白そうです。ただこれから忙しくなる時期。見に行けるかな~

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October 09, 2009

おいでませ魔神温泉 永井豪・今川泰宏 『真マジンガー 衝撃!Z編』

091009_133318本日は先日好評のうちにテレビ放映を終了したアニメーション『真マジンガー 衝撃!Z編』をお送りいたします。

時は過ぎ去りし近未来(?)。古代ミケーネの恐るべき兵器「機械獣」を発掘した魔人Dr.ヘルは、世界征服の野望を実行に移そうとする。だがその計画には日本で研究されている新エネルギー「光子力」が必要不可欠であった。
かくてDr.ヘルは、その知識を有する科学者兜十蔵の屋敷を襲撃する。しかし十蔵はこのことあるを予期してか、ヘルに対抗しうる巨大ロボット・マジンガーZを建造していた。マジンガーを孫の甲児にゆだねた十蔵は言う。「お前は神にも悪魔にもなれる!」
その言葉にとまどいながらも、Dr.ヘルとの戦いに身を投じていく甲児。果たして彼が選ぶのは神の裁きか、悪魔の滅びか・・・

『マジンガーZ』といえば、アニメにうとい人でも名前くらいはご存知かと。それまでロボットは勝手に動くか、リモコンで動かすものと相場が決まっていましたが、この『マジンガー』の登場以降、日本アニメでは「乗るもの」が主流になっていきます(専門家に言わせると、そういうのは「ロボット」ではないそうですが・・・)。恐らくこの作品がなければ『ガンダム』も『エヴァ』もなかったか、少なくともだいぶ違った形になっていたはず。

この『真マジンガー』は『マジンガーZ』を「原作」に近い形で再現し、さらに独自のアレンジもふんだんに加えた作品であります。「原作」といっても『マジンガー』の場合と普通とはちょっと違ってまして。まずアニメ制作会社と原作者が共同で企画を練り、ほぼ同時進行でテレビと漫画で同タイトルの作品を発表していく、というものでした。ほかには石ノ森章太郎先生の作品なんかもよくこういうスタイルがとられております。
で、こういうやり方、「テレビと同じことをやってもしゃあない」ということで、漫画ヴァージョンが作者の情熱のままに暴走してしまうということもよくありました(笑)。その最たる例が、やはり永井豪原作の『デビルマン』でしょう。
そこへいくと『マジンガー』の方はそんなにテレビとは乖離していないものの、やはり甲児くんの性格がちょい凶暴だったりとか、博士たちがヒロインの服を脱がそうとしたりとか、当時のテレビではやれなかったような描写もいろいろあります。またいい意味でワンパターンだったテレビ版とは違い、Dr.ヘルが多用な戦術を駆使してマジンガーを苦しめたりします。今回の『真マジンガー』では「原作」のそうした部分が忠実に生かされていました。

とはいえ「原作クラッシャー」の異名を持つ今川監督。それだけでは終りません。まず永井豪の他作品『あばしり一家』や『バイオレンス・ジャック』のキャラクターが、タイトルの枠を超えて多数登場。別のアニメの主役ロボであった「グロイザーX」まででてきた日にゃ、懐かしさのあまり泣きそうになりました。
さらに『Z』の続編や派生的作品の要素もほぼすべて取り込んで、マジンガー世界の再構築を試みております。

加えて特に目立っていたのが、サブキャラクター「あしゅら男爵」へのひいきっぷり。このあしゅら男爵、半身は男性でもう半身は女性という奇怪なデザインで、Dr.ヘルの忠実な部下という設定。オリジナルではそれなりに重要な存在ではあったものの、Dr.ヘルの複数いる部下の一人、くらいのポジションでありました。それが『真マジンガー』では旧作にはなかったていねいな出自が用意され、出番も存在感も大幅にアップ。ついには戦いの勝敗のカギを握る役まで任されてしまいます。今川監督、ほんとーにこのキャラ好きなんですね・・・

そしてなによりたまげたのが、富士の裾野が舞台だった旧作に対し、こちらでは湯の町熱海がメインの舞台となっているところ。なぜ・・・ なぜ熱海なんでしょう・・・
だたっぴろい富士裾野だったら巨大ロボットが暴れてもあまり人々に迷惑にはなりませんが、観光都市でそんなものが取っ組み合いを演じたら被害は甚大です。頼む! 俺の住む町を、郷土を壊さないでくれ~!!cryingと思いつつも、いつも見慣れた風景がアニメとして出てくるのにはなんだか不思議な気分でした。
そう、スタッフの方々、非常にていねいにロケハンしてらっしゃいます。海岸から見える町並みや、数々の観光名所はほんとそのまんま。さらには(入り口だけだったけど)秘○館まで登場するという懲りよう。
こんだけ熱海をフィーチャーしてくれているというのに、市からの反応はまったくなし。そんなことだから財政危機宣言とか出ちゃうんですよ!

091009_132119というわけで、この『真マジンガー』、ノスタルジーとともに地元の景色が楽しめるという点で、非常に(わたしにとって)貴重なアニメでありました。
有名な話だからばらしちゃうと、旧『Z』はメタメタにやられたZを、後継機グレートマジンガーが助けたところで幕となります。『真マジンガー』はそういうラストではありませんでしたが、やはり思いっきり続編につなげる形で「終わり」となりました。
次が『グレート編』なのは当然読めるとして、さらに次は『グレンダイザー編』となるのか、『マジンカイザー編』となるのか。はたまた『ゴッドマジンガー編』となるのか。そして舞台は熱海のままなのか。興味はつきません。

『真マジンガー 衝撃!Z編』はDVDが順次発売予定。思う存分ぶち壊される熱海を、どうぞその目に焼き付けてください。

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October 07, 2009

キムチドン 良い子・悪い子・普通じゃない子 キム・ジウン 『グッド・バッド・ウィアード』

091007_173239最近何が飛び出すかわからない韓国映画。ここにまたひとつパワフルなヘンテコ映画が送り出されました。「キムチ・ウェスタン」と称されるその作品、『グッド・バッド・ウィアード』を紹介いたします。

大日本帝国占領下の満州。平原を行く列車が、突如として二人の強盗に襲われる。一人は徒党を組み、極悪非道の行いで知られるパク・チャンイ。もう一人は弟分とコンビを組んでせこい仕事を繰り返しているユン・テグ。
チャンイが狙っていた重要な地図をたまたま盗んでしまったため、テグはチャンイに追われることに。そしてこの二人を、凄腕の賞金稼ぎ・パク・ドウォンが追う。さらには金の匂いをかぎつけた闇市の荒くれたちや、もともとの所有者である日本軍もテグを追い、広大な満州の大地を舞台に熾烈な争奪戦が繰り広げられることに。

タイトルは「いいヤツ、悪いヤツ、変なヤツ」の意味。これはマカロニ・ウェスタンの傑作『続・夕陽のガンマン』の原題「The Good, the Bad and the Ugly」から取られています。

映画でも小説でも、一対一の対決ものというのは割りとよく見かけますが、「三すくみもの」というのはけっこう少ない。下手をすると筋立てが複雑になりすぎて、盛り上がりにくくなるため、作り手としてはあんましやりたくないジャンルなのかもしれません ・・・・って前の記事とまったくおんなじこと書いてんじゃねーよ!

えーほんでこの映画も『グラスホッパー』と同じく、そのヘンテコさ加減がいい風に作用していたと思います(^^;

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それではメイン三人の紹介を。
「いいヤツ」は『わたしの中の消しゴム』に出てた人。二枚目と聞いていましたが、思った以上に顔が丸い。きっと文字を消してカドが取れてしまったのでしょう。彼はもっぱらアクション担当で、馬上からワイヤーから多彩な銃捌きを見せてくれます。

「悪いヤツ」イ・ビョンホンはお色気担当(なぜだっ)。そしてやっぱり、原田泰造でした。

「変なヤツ」ソン・ガンホさんはお笑い担当。わりかし人のいいキャラを演じることの多いガンホさんですが、今回はなんだか「イケナイ人」って感じ・・・ ま、それはそれでアリです。

こんだけキャラ立ちしてる三人がくんずほぐれつして二時間暴れまわるのですから、これは楽しくないわけがない。

まずアクション面で目を引くのは、高低差をいかした三次元的な構図が多かったということ。時に列車の上から、時にクレーンの上から、単純に向かい合ってバカスカ撃つだけではない工夫が感じられました。クライマックスでの対決もまたこの映画にふさわしい奇天烈なものになっていたと思います。

一方で後半では三人のほかにもお宝を狙う連中が一同に会し、えんえんと平原を走る走るひたすら走る。走るって気持ちいい! いや、むしろキムチいい!と言うべきか。もちろんただ走るだけではなく、チキチキマシーン猛レースもかくや・・・というほどの潰し合いが展開されます。

あとわたしは魅力的なガジェットがたくさん出て来る映画が好きでして。例えば先にあげた列車やクレーン、あと陸地のど真ん中で売られている○○ヘルメット、テグの乗るサイドカー、はたまた日本軍の使う迫撃砲や戦闘車両・・・ こうしたものが次から次へと出て来るだけで楽しくなってしまう。時代が1930年代ということもあって、デザインがレトロチックなところがまたいい。そんな時代性や、オモチャをちらかして遊んでいるようなところはチャップリンやキートンのスラップスティックムービーにも通ずるところがあります。

091007_173317韓国アクションというとどうしても暗~くなってしまう作品が多かったですけれども、こういう風にアナーキーで(いい意味で)ガキっぽい映画も作れるようになったんですね~

ちなみにこの『グッド・バッド・ウィアード』は本国での公開初日の動員が40万人と、『D-WARS』『グエムル』に次ぐ記録を達成。この三本を全て見ているわたしは、もはや韓流マスターを名乗ってもいいということですね!?(抗議は受け付けません)

次の楽しみな韓国映画は『グエムル』監督の新作『母なる証明』であります。これからも『冬ソナ』のイメージが消し飛ぶような珍品を、たくさん作り続けていってほしいですね!

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October 05, 2009

必殺押し出し人 伊坂幸太郎 『グラスホッパー』

091005_173705最近全体的に遅れがちなこのブログですが、特に遅れてるのが読書コーナーcoldsweats01 この本なんか読んだの7月末だもんなー。と、いうわけで必死でざーっと読み返して思い出してみました。伊坂幸太郎氏にしては珍しいサスペンス・アクション『グラスホッパー』を紹介いたします。

元教師の鈴木は、「令嬢」と呼ばれる非道な組織の一員となるべく、「研修」を受けていた。それもこれも、妻を殺した「令嬢」の幹部である、寺原に接近するためだ。だが教育係である比与子から動機を疑われ、鈴木は窮地に陥る。「疑いを晴らしたければ、顧客である男女を殺せ」 そう言われて拳銃を持たされる鈴木。だがまさにその時、寺原は鈴木の目前でワゴンに轢かれてあっけなく死ぬ。どうやら道路・線路で人を押し出す専門の殺し屋「押し屋」の仕業らしい。比与子に命令されて、鈴木は「押し屋」を追う。さらに自殺を促す専門の殺し屋「鯨」や、ナイフ使いの「蝉」もそれぞれの思惑から「押し屋」を追う。鈴木、「押し屋」、鯨、蝉、そして「令嬢」の構成員たち・・・ 出し抜きあい、殺し合い、追いつ追われつする彼ら。その果てに生き残るのは、誰か。

わたくしが伊坂さんで感心していることのひとつは、「似たような話をほとんど書かない」ということです。作家というものは作品が多くなるにつれ、いつしか「こういうの、前にも読んだな」というものが多くなってくるものですが、伊坂作品については、いまのところそういうことはほとんどありません。どの作品も皆個性的で、へんてこりんな印象を残しています。そしてこの『グラスホッパー』もまた、異彩を放つ作品のひとつであります。

映画でも小説でも、一対一の対決ものというのは割りとよく見かけますが、「三すくみもの」というのはけっこう少ない。下手をすると筋立てが複雑になりすぎて、盛り上がりにくくなるため、作り手としてはあんましやりたくないジャンルなのかもしれません(先日見た映画『グッド・バッド・ウィアード』は実に見事な「三すくみもの」でしたが)。
しかしそこは伊坂幸太郎。縦横無尽にプロットを錯綜させながらも、後半に行くにしたがってどんどん話を盛り上げていきます。

面白さのひとつは各殺し屋のキャラクター。まず大男の「鯨」は「彼を見ているとなんだか死にたくなってくる」という特殊な力をもっています。また、お話の核となる「押し屋」。方法は実にせこいですが、いかにも現実にいそうなあたり怖いキャラクターといえます。また何人もの男に追われながらも、落ち着いた姿勢を崩さないところは、大した度胸というか、単に脳天気なのか。なかなか一筋縄ではいきません。

もうひとつの面白さは彼らを結ぶ「線」の構図。復讐を誓いながらも、鬼になりきることのできない鈴木は鯨よりも蝉よりも、「令嬢」の者たちよりもはるかに弱い存在です。そんな鈴木くんが成り行きで皆が追いかける「押し屋」を補足してしまう。そんな風に、最弱のものが最強のカードを手にして、猛者たちの追撃をなんとかやりすごしていくところがなんとも面白い。もっともこのカード、易々と意のままになるようなものではないので、その点でも鈴木君は苦労を強いられます。

話を少し戻して。「蝉」にせよ「鯨」にせよ、極めつけの悪人には違いありません。ただこの二人は「令嬢」の寺原や比与子と比べると、まだ同情的に書いてあるような気がしました。その違いは「良心があるかないか」というところにあると思います。「鯨」と「蝉」は何人もの人間を墓場に送ってはいますが、一応そのことに良心のとがめを感じています(「蝉」の方はそれこそ「おっとすまねえ」程度のものですが)。だからか知りませんが、「蝉」と「鯨」は凶悪な殺し屋であるとわかっていながら、なんとなく憎めないキャラクターになっています。実際に犯罪被害に遭われた方は、また違うご意見をお持ちかもしれませんが・・・

それに対し「令嬢」の面々は人を殺すことに何ら罪の意識を感じていません。むしろ嬉々としてそれを行っています。『アヒルと鴨のコインロッカー』に出てきたペット狩りの若者たちや、『オーデュボンの祈り』の悪徳警官のようなポジション。ですからこちらは嫌悪感ムチムチで書かれております。

わたしが特に印象に残ったのは「蝉」と、その雇い主岩西との奇妙な関係。「蝉」は自分をこきつかい、報酬をふんだくる岩西を疎ましく思っております。ついには自分を操る人形師なのでは・・・という妄想まで抱き始めます。
しかし実は岩西は「蝉」を好ましく思っていて、どこか敬意の念すら抱いている。この辺の気持ちのすれ違いはなにやら考えさせられるものがありました。

伊坂作品では一番スピーディーで殺伐としたお話でした。とはいえ氏独特のまったりさ加減も失われてはいません。また、終盤には「あっ」と驚く仕掛けも用意されています。じ~~~んと感動するような作品ではないかもしれませんが、これまた伊坂ブランドの名に恥じない傑作でありました。

20071112183327あ・・・ そういえばタイトルの『グラスホッパー』には何の意味があったんだろう? そんなこともわからず感想書いちゃうわたしっていったい(笑)

読書コーナー今後の予定といたしましては、次はまた伊坂氏の『魔王』、さらに次いでジャック・ロンドンの『白い牙』をお送りいたします。ご期待しないでお待ちください。

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October 03, 2009

チョコレート巨人の秘密 スパイク・リー 『セントアンナの奇跡』

091003_182038黒人問題をよく扱うスパイク・リー監督の最新作。首都圏より二ヶ月ばかり遅れて上映。

現代ニューヨーク。平凡な郵便局員が、突如として客を射殺するという事件が起きる。事件を調査していた記者は、男から謎の言葉を聞いた。「わたしは『眠る男』を知っているー」
物語は第二次大戦時のイタリアへと遡る。前線で部隊からはぐれた4名の黒人兵士。彼らはその地で一人の少年と、セントアンナに住む様々な人々と出会う・・・

チラシを見ると「希望」「希望」としつこいくらいに書いてある。凄惨なぶっ殺しから始まる物語が、どうしてそこにつながるのか不思議で見に行きました。

第二次大戦末期、ムッソリーニが失脚した後、イタリアではドイツ軍・連合軍・パルチザンの三者が入り乱れていた時期がありました。この映画ではあまり語られることのないその時期のトスカーナ地方を舞台としています。

作品では前半部分でこそ黒人差別の問題が色濃く語られるのですが、お話がすすむにつれ、その種のテーマはなりをひそめ、戦争における人間の蛮行、裏切りなどの方がメインとなっていきます。

以下は例によってバンバンネタバレしていきます。未見の方はお気をつけください・・・・


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やはりショッキングだったのは、中盤におけるむごたらしい殺戮の場面。ここで印象的だったのは、虐殺を指揮していた士官が、事が終ったあとで「こんなはずじゃなかったのに、どうしてくれる」と取り乱していたこと。ここを観るとその士官が非人間的な冷血漢ではなく、それなりに感情のある人物であったことがわかります。
無論後悔したからといって彼の罪が一片でも軽くなるわけではありませんが、この場面からわたしは戦争というものの恐ろしさを垣間見た気がしました。すなわち、戦争には普段ならとてもしないような残酷な行為を、人に行わせる力があるということです。

見てみて、宣伝文の意味するところはわかりました。が、あまりにもたくさんの死体がゴロゴロ出てくるので(女子供含む)、鑑賞直後は「希望」よりも虚無感の方を強く感じました。
しかし、鑑賞から時間が経つにつれ、むしろ兵士たちが村ですごした奇妙な日々の方が思い出されるようになってきました。

故郷では人並みの扱いをしてもらえなかったのに、遠く離れた異国の地で、普通に受け入れられていく主人公たち。もし仮に戦争が終ったあとで、彼らに選択の自由が与えられたなら。彼らは差別のないこの地で暮らすことを望んだでしょうか。それとも心無い扱いを受けたとしても、やはり住み慣れた故郷へ戻ることを選んだでしょうか。
幾ら考えても答えは出ないでしょうけど、ついつい物思いにふけってしまいます。

終盤では兵士たちはもちろん、彼らがともにすごしたトスカーナの人々もあっけなく銃弾の前に倒れていきます。それはとてもむごいことだけれども。だからといって彼らの生涯が暗く悲しいものということになるのでしょうか。その悲惨な結末でもって、人生のすべての評価が決まってしまうのでしょうか。
わたしはそうは思いたくありません。
確かに最後は悲しいものだったけれども、それでも彼らは一生懸命生きたし、その生涯はそれなりに輝きに満ちたものだったと思いたいです。

091003_181947ひとつ難点を言わせていただけるなら、メインの兵士たちが太っちょさん以外なかなか区別がつきにくかったこと。終盤くらい来て、ようやく誰が誰なのかわかるようになってきたとういか。
これは人種差別ではありません。なぜならわたしは『父親たちの星条旗』でも同じ感覚に陥ったからです。
やはり軍服というヤツは、個性を埋没させる服なんですね。軍隊にとって個性は邪魔にしかなりませんから。
その中にあってキャラを際立たせようとしたいのであれば、この作品に出てくる太っちょさん並みの天然さが求められることでしょう。

今日からはなぜか小田原で上映。近隣で興味を持たれた方はを運ばれてみては。

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October 02, 2009

熊猫ノラ猫 2009年秋 

そのいち 嵐が来る

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そのに 新政権を問う

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 2
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そのさん 秋刀魚を焼く

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 ン
 マ
 は
 メ
 グ
 ロ


そのよん 別れのシーズン

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 up

 down

 leftright

 updown


そのご 父性とは

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 chick

 penguin

 chick


そのろく 嗚呼久々のニャア少佐

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 次

 回

 未

 定

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