20世紀の『X-MEN』をふりかえる④ ウルヴァリン傑作選
ただいま『ウルヴァリン:X-MEN ゼロ』が好評公開中であります。ので、今回はいままでに邦訳されたアメコミの中で、ウルヴァリンに関する印象深いシーンをいくつかご紹介しましょう。ただ・・・ すいません・・・ 2009年9月現在、全部絶版です。
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それでは参りましょう。まずはこちらから
「X-MEN #7」(1992年4月刊行 小学館プロダクション刊『X-MEN』第二巻に収録)
ウルヴァリンが過去に関わった事件がもとで、ドイツに拉致られてしまうX-MEN。なんとか脱出に成功するが、なおも決着をつけるためにウルヴァリンは一人戦いに赴こうとする。その際のサイクロップスとのやりとり
「ちっとばかし遣り残したことがある。許可を求めてるんじゃねえぞ」
「そんな必要はないさ。ただ、気をつけろよ。なにかあったらわたしたちを呼んでくれ」
「・・・・おかしなもんだな。チームに入る前はおれ一人で何でも切り抜けてきた。おれが変わったとは思わねえ ・・・・なのに、助けてくれる家族のような友達がいるってのを、こんなにいいもんだと感じるとはな」
先の映画でのローガンのことを思うとほろりとくるシーンです。最近『侍戦隊シンケンジャー』でクリソツなセリフがあったけど、偶然かぶってしまったのか、靖子さんがオマージュされたのかは不明
「WOLVERINE #75」(1993年11月刊行 小学館プロダクション刊『X-MEN』第17巻に収録)
マグニートーとの一大決戦のあと、体中のアダマンチウムをすべてはぎとられたウルヴァリンは生死の境をさまよう。しかも彼をのせたX-MEN専用機ブラックバードも墜落の危機に瀕していた
混濁した意識の中、ローガンは先だって失った仲間イリアナの姿を見る
「さあ、いこうぜダーリン・・・ うわ? どうして突き飛ばすんだ・・・・」
そのころキリモミ状態のブラックバードでは、ジーン・グレイが今にも機外へ放り出されそうになるところだった
(光が・・・・受け入れてくれねえ! 戻れってことかよ! だが、どうやって?)
(ああ、ジーン・・・ あんたを呼んでる声がするぜジーン・・・ あれは俺の声か? あんたを呼んでるのは俺なのか? あんたの助けが必要なんだ)
(手を伸ばしてくれよ、ジーン・・・ つかまえて・・・・)「くれ!」
次の瞬間、はっしとジーンの手を握りしめるローガン
「ローガン!」「い、生き返ったの? わたしを助けるために?」
「そいつあ、逆だぜジーン・・・ 手を差し伸べてくれたのはあんたの方じゃないか・・・」
無事生還を遂げたローガンだったが、心身ともに傷ついた彼はこのあとしばらくチームを離れることになる
『WEAON X』(1993年2月刊行 小学館プロダクション刊)
カナダ政府による「超人兵士製造計画」のために、ローガンが「ウェポンX」に改造されるまでを約120ページかけてじっくりねっちょり描いた作品。
以下は彼を改造した博士と助手の会話
「ただ・・・ いずれにしてもあの哀れな男はろくな人生は送れないと思うがね」「ミュータントだからな」「人間でもないし、人間性もない。・・・そう教授は言っていたよ」
「彼は人間なんです。博士、彼の目を・・・彼の目をご覧になりませんでしたか? 彼の瞳の奥には・・・ 気づきませんでしたか? 彼は・・・ 彼は人間だったんです ・・・ただ、怪物に変えられてしまっただけなんです」
会話中に出てくる「教授」とはエグゼビア教授のことではありません。念のため
「THE UNCANNY X-MEN #205」(1986年2月刊行 小学館プロダクション刊「マーヴルX」第8号に収録)
『X-MEN』本誌に掲載されたものの、ほぼ番外編的な内容のエピソード。またしても(笑)激闘のあと意識が混乱したローガンは、パンツ一丁で雪の町をさまよう。彼がたまたま出会ったのは、子供たちで結成されたヒーローチーム「パワーパック」のエナジャイザーだった。
「ボクハダレ? キミヲシッテイルノニ ジブンガダレカ・・・ ワカラナイ・・・・」
もろ日本語で呟くウルヴァリン
「あたしのパパがそんな目をしてたわ・・・ ママが死にかけた時、世の中のだいじなものがぜんぶなくなったみたいな悲しい目だった」
いろいろあって記憶を取り戻し、追っ手も片付けたウルヴァリンにエナジャイザーは言う
「あなたのこと怖かった」
「悪かった・・・ 今は?」
「すこしね・・・」
最後はこちら
「THE UNCANNY X-MEN #337」(1996年10月刊行 小学館プロダクション刊『X-MEN ゼロ・トレランス』第一巻収録)
ダークサイドが暴走してヒーローたちのほとんどを死なせてしまった(実際は異次元に飛ばされてた)エグゼビア教授。なんとか正気に返ったものの、自分のしでかした罪の大きさに、教授は深く悩み苦しむ。雨にうたれて悄然とする教授に、ローガンはそっと話しかける。
「なあ、教授。自分の中の獣と戦う苦しさは俺が一番わかってる」
「君が戦っているのは自分自身の中の獣だ」「広い目で見れば、誰もが毎日行っていることだ」「私の経験を君自身のような小さなものと一緒にしないでくれ」
「HA! よく言うぜ。だがその手にゃ乗らないぜ。そう言えば俺が怒って帰るかと思ったかい?」
「俺は知っての通り一匹狼だった。仲間なんざいらねえと思ってたさ」「最初にあんたにXメンに入ってくれって頼まれた時はよ、デパートメントH(カナダの諜報機関)と縁を切れると思ったから応じたのさ」「だがXメンに残ったのは・・・別の理由だ」「あんたさ」「俺だけじゃないぜ、チャック。あんたが壁を作るとは悲しいぜ・・・・」
ローガンが去った後、教授は天を見上げる。その顔に伝うのは雨粒と果たして・・・
このほか新潮から刊行された別ヴァージョン『アルティメット X-MEN』にも当然ウルヴァリンは登場しますが、こちらの彼はあまりにも性格がねじくれまがっていて、あまり好きではありません(まあもともとそういう人だったんだけど)
その後も無理矢理3チームかけもちさせられたりとか、別のヒーローチーム「アヴェンジャーズ」に加入させられたりとか、いろいろあったようですが、近年の事情は英語にはうといわたくしにはさっぱりわかりません。
毎度同じ事を書いていてホント恐縮ですが、出版社のみなさん、どうぞ翻訳の方、よろしくお願いいたします。
Comments
伍一さんただいま〜
おお、これって伍一さんにしか書けないような内容じゃない?
さすがマニア!
ウルヴァリンはやっぱりヒュー様☆
今後も続くなら楽しみだな〜♪
英語の宿題もあるのにやってない、、、
時間ないのでレスラーのとこはまた後日、、、
Posted by: mig | October 03, 2009 12:34 AM
>migさま
おかえりなさーい! 長旅でお疲れ&お忙しいところさっそく来て頂いて伍一感激っす
たしかにこんな記事、わたしくらいしか書かないかも・・・ 英語の読める人はいまさら昔の翻訳本振り返ったりしないだろうからw
ヒューさんはいま幾つだったかな? とにかく年齢が許す限り、いつまでもウルヴァリンを演じてほしいですね!
アメリカの劇場でスタンディング・オベイションしながら観たらきっと燃えるんだろうな~
Posted by: SGA屋伍一 | October 03, 2009 07:47 AM
ヒューさんのウルヴァリンしか知らないので
原作ウルさんのこの姿は何度観ても慣れません
私が持ってる唯一のウルヴァリン本である弐瓶版のも
映画の雰囲気に近いです。プラスBLAME!って感じタイトルSNIKT!だし。
>パンツ一丁で雪の町をさまよう
原作にもやっぱりそんなシーンがあるんですね(笑)
Posted by: kenko | October 05, 2009 06:26 PM
>kenkoさま
こちらにもどうも~
「原作ウルさんのこの姿」というのは上のマスクマン状態でしょうか? それとも下の剛毛バリバリの状態でしょうか?
いずれにせよ、数を読んでいけばだんだん見慣れていくはず! レッツ・チャレンジ!
いいなあ。弐瓶さんのウルヴァリン読んでみたいなあ。麻宮騎亜の書いたやつなら見たことが・・・ あれ? あれにはウルバリン出てこなかったかな?
>パンツ一丁で雪の町をさまよう
映画の方はパンツもはかずに走ってましたから、より過激と言えますね! あ、でも『WEAPON X』でもほぼ全編すっぱだか状態でありました・・・・
Posted by: SGA屋伍一 | October 05, 2009 09:19 PM