俺たちミュータント・ブラザーズ ギャビン・フッド 『ウルヴァリン:X-MEN ゼロ』
『X-MEN ファイナル・ディシジョン』から約三年。さんざんやるやる言ってたスピンオフの第一弾が、ようやっとベールを脱ぎました。メンバーの中でも最も注目を浴びる男、野獣戦士ウルヴァリンのプリクゥエルです。
19世紀カナダ。環境と肉体の変化におそれおののく一人の少年がいた。彼の名はローガン。しかし彼は一人ではなかった。同じ境遇の兄、ビクターとかばいあいながら、ローガンは戦争の20世紀を強かに生き延びる。
だがいつしかローガンは、兄の残酷性に嫌悪感を抱くようになっていく。そしてついにあるミッションで、彼は属していた秘密部隊をぬけることを決めた。故郷カナダに戻り、平穏な暮らしに安らぎを覚えるローガン。しかし幸福は長くはつづかなかった・・・・
少し前にスピンオフの候補でタイトルにあがってたものというと、この『ウルヴァリン』のほかに『ヤング・マグニートー』『X-MEN:ファーストクラス(第一期生)』がありました。タイトルから察せられるように、どれもこれも前日談ばかりです。
もしかしたらマーヴルはもう前三作のことは忘れて、一からX-MENサーガを語りたいのかな、とも思ったんですが、今作を見たら驚くほど『X-MEN2』と整合性が取れていて感心しました。特に宿敵ストライカー大佐を殺さずにどう決着をつけるのかと思ったら・・・ ふんふん。なるほど。こう来ましたか~みたいな。
ですがその代わり?『1』とは微妙に矛盾が生じています(笑) この第一作にもビクター=セイバートゥースが出ているのですが、ローガンもビクターもまるで初対面みたいな反応。二人とも相手のことを忘れてしまったのではという線も考えられますが、今回ビクターは一度も「セイバートゥース」とは呼ばれてないので、もしかしたら「1」のビクターとは普通に別人なのかもしれません。能力も名前も共通してるので、非常にややこしいですけどね。
今回主なテーマになっているのは、X-MEN本来の「差別との戦い」ではなく、ローガン=ウルヴァリンの孤独と、兄弟という複雑な絆について。
幼くして両親と別れた彼は、以後長い歳月を通じて、孤独の道を歩み続けることになります。彼と関わるものには、大抵の場合「死」が待ち受けているので。また、彼のように永久不老の体を持つものは、普通の人々と交わって暮らしていくのは、とてもむずかしいものでしょう。唯一彼の孤独を理解できそうなのは、よりによって血と暴力に狂ったあの兄のみ。二人は少年時代からずっと一緒だったようですが、ビクターがローガンの心けを理解できたとはとても思えません。そういう意味ではたとえずっと兄が傍らにいたとしても、ローガンは孤独だったのでは。イカはラストシーンまで完バレしてますので、未見の方はお控えください。
そんなローガンもとうとう自分の全てを与えてもいい、と思えるような女性に出会います。しかしこれまた厳しい現実が、彼の前に立ちふさがります。それをも乗り越え、百年以上の孤独が癒される時がついに来るのかと思いきや・・・・
わたしとしてはこの結末に深く感じ入るものがありました。普通なら女の亡骸をかき抱いて、涙涙のエンドとなるはずなのに、脳を撃たれたローガンはひっかかるものを感じながらも、「知らない」と呟きます。
彼女がローガンに示した無償の愛情を知るものは、もはや誰もおりません。強いていうなら、我々観客だけがそれを知っている。この辺になんとも言えない物悲しさ、荒涼感、そしてなぜだか心安らぐものを感じたのでした。
もしかしたら後にローガンがジーン・グレイに魅かれたのは、彼女の中にかつて愛した女の面影を、無意識に感じ取ったからかもしれません。あのヒロイン、ファムケ・ヤンセン演じるジーンと、微妙に似ていたと思いませんか? え? 思わない?
・・・・・
ともかく、誰とも深く関わることのできないローガン。彼が安住の地をいつか見つけることはできるのか? その答えは劇場版『X-MEN』三部作へ・・・となるわけです。
ほかに目立っていたキャラとしては、今までで一番役に立っていたと思われる(涙)サイクロップス。実は彼は死んではおらず、湖畔でねっころがっているだけでは・・・とわたしは信じています。
あとチョイ役ながら強い印象を残すガンビット。最近はともかく(・・・)90年代では大人気だったキャラクターです。そのころからX-MENに入ったわたしとしては、ローガン・サイク・ガンビットのそろい踏みは実に心震えるものがありました。
そしてシリアスな世界観を一人ぶちこわしてくれるデッドプール、ことウェイド。映画でも大活躍でしたが、原作ではもっとぶちきれたキャラでして。
体は全てガン細胞。そのためいささか精神に以上を来たしていて、のべつまくなしにアメリカンジョークを吐き続けていたりします。そして極め付けに、彼にはなんと「第4の壁をぶち壊す」というとんでもない技があったりします。これについては説明すると長くなるので、「デッドプール 第4の壁」で検索してみてください。
噂によれば彼を主人公にしたスピンオフも、すでに企画にあがっているとか。・・・・いったいどんな代物ができるのだろう・・・・ すっげえ見てみたいです!
前三作には及ばなかったものの、この作品をのヒットを受けて、『ウルヴァリン2』も企画されているとか。冒頭にあげた企画も含めて、なにやら「スピンオフの花盛り」状態であります。・・・・普通に4を作ろうという気はないのか?
とはいえ、いろいろ企画が上がっているのは嬉しい限り。頼むから日本ではDVDスルーとかになりませんように・・・・
Comments
こんにちは~♪
シルバーウイークは如何お過ごしでしたか?
SGA屋伍一さんはX-MENにもお詳しいんですね~
私はデッドプールのスピンオフなんて面白いんだろうか、、、って思っていましたが、
>体は全てガン細胞。そのためいささか精神に以上を来たしていて、のべつまくなしにアメリカンジョークを吐き続けていたりします
ってな話を聞くと、そのぶっ飛んだキャラに興味がわきました。
体がガン細胞におかされているからこそ、あんな肉体改造も受けたのかな?
>第一作にもビクター=セイバートゥースが出ているのですが
これは全く別人かな。。。と思って見ていました。それともビクターも記憶を失うことになるのかな?う~~~ん、分からん。もしかしたら続編で事情が分かるかもですね。
実はコレ、2回劇場で観たんですよ。2回目に観た時はTAJOMARUとカムイの後だったので、涙が出る程面白く感じました。今から評価をもっと上げたいほどです(笑)
ヒューのスッポンポンも観られたんだし(照)
Posted by: 由香 | September 24, 2009 11:04 AM
こんばんは
アメコミ好きのSGAさんにとって、この秋一番の目玉だったんじゃないですか?
面白かったですね♪
実は私、1作目にもセイバートゥースが出てたってのを
全然思い出せず。。。
重要な役なんでしたっけ??
デッドプールって全身ガン細胞?ひえー!ぶっ飛んでますね。
SGAさんのイラスト見る限り、コミックの絵と映画はかなり印象違うような・・・
個人的にはあのグロテスクな風貌、好みです。
なのでエンドロール後のシーンには喜びました。
『ヤング:マグニートー』より『ヤング:エグゼビア』の方が嬉しいかも?
Posted by: kenko | September 24, 2009 06:44 PM
こんばんは!
コミックは未読なので、私的には、ローガンがあんな昔から
生きていた事が驚きでしたが、原作もかなり長そうですねー。
続編は日本も舞台になるとかで、気になって
ネットでチラッと見たら、ローガンが日本人のヤクザの娘と結婚する
くだりがあるようでビックリでした!
続編どんな話になるんでしょうねぇ〜!!!!
Posted by: ルナ | September 24, 2009 11:18 PM
>由香さま
おはようございます~
連休は上野にトリノ・エジプト展を見に行きました。そのうち報告記事書きます
この世界にも上には上が限りなくおられるんですが、まあX-MENに関してはそれなりに詳しいと自負しております
デッドプールは確かごく普通の少年だったんだけど、改造手術で全身ガン細胞になってしまったという設定だったような・・・ いきなり怪しくなってきた(笑) おおよそ「ヒーロー」には程遠い彼ですが、原作では成り行き次第で正義の味方をやることもあります
あと原作では、ローガン&ビクターは政府に改造されたときに記憶をいろいろいじられていて、それで昔のことをいろいろ忘れてしまった、という話になっています
>ヒューのスッポンポンも観られたんだし(照)
もう! 由香さんのエッチ!
あのシーン、長いこと水槽に漬かりっきりでホント大変だったそうです
『カムイ』と『TAJOUMARU』はいい評判を聞きませんね・・・ でも見に行ってしまいそうな自分がいます
Posted by: SGA屋伍一 | September 25, 2009 08:05 AM
>kenkoさま
おはようございます
いやー、この映画を見てしまったら、もう2009年は自分的には終了って感じですね・・・
いや! まだ『カールじいさんの空飛ぶ家』があった!
一作目のセイバーさんはマグニートーの手下の一人で、全然重要なキャラじゃなかったです(笑) セリフも「うがー」くらいだったような。それなりに強そうでしたけど
デッドプールはそういう設定なため、原作では素顔はあばただらけになってます。そんで常時こんなマスクをつけてるんですね。「スパイダーマンに似ていて紛らわしい」という声がよく聞かれます
>ヤング・エグゼビア
さすがスタトレTNG好きのkenkoさん(笑) そういえば今回の映画も、「ヤングからオールドまでのウルヴァリン」な内容でしたね~
Posted by: SGA屋伍一 | September 25, 2009 08:13 AM
>ルナさま
こちらにもありがとうございます
原作は80年代後半あたりから、本家『X-MEN』と並行してずっと続いてるそうです。ウルヴァリンの人気がX-MENの中においていかに別格か、おわかりいただけるかと
>ローガンが日本人のヤクザの娘と結婚する
くだりがあるようでビックリでした
そうなんです。ちなみに彼女の名前はマリコ・ヤシダといいます
ヤシダ・・・ 椰子田と書くんでしょうか?
このエピソードではウルヴァリンのライバルであるシルバーサムライというキャラも出てくると思います。この適当なネーミング、いかにもアメリカの人が考えた、という感じですね・・・
Posted by: SGA屋伍一 | September 25, 2009 09:40 PM
こんばんは!
観ましたよ~ヒューとリーヴのど派手な兄弟喧嘩!
お互い不死身ってわかってるから
やりたい放題でしたね~~
ミュータントって,あんなもんなのか~と,Xメン初体験の身としては
とっても新鮮な面白さがありました。
>今までで一番役に立っていたと思われる(涙)サイクロップス。
坊やのサイクロップスは結構素敵に見えましたけど
成人するとドンくさくなるのですか?
調べてみたら,彼の役は,あの,「魔法にかけられて」の
能天気王子さまだそうですね~。どんなサイクロップスを演じてくれたのか
未見の身としては興味しんしんです。
Posted by: なな | September 26, 2009 10:07 PM
>ななさま
こんばんは! すごかったですねー リーブ&ヒューの兄弟ゲンカ。切っても切ってもすぐなおる! みたいな
リーブさんはわたしの中ではもう完全に「兄弟ゲンカ俳優」として認知されましたよ・・・
前三部作でもこんな万国びっくりショーがふんだんに見られますので、ぜひご鑑賞されてみてください
サイクロップスはですねー 大きくなるとですね・・・
うっ ううっ(涙をこらえながら)
原作ではローガンと並ぶくらいの重要なキャラクターなんですが・・・
マッデン氏は『スーパーマン・リターンズ』でも涙を誘われる役でありましたっけ
Posted by: SGA屋伍一 | September 27, 2009 09:00 PM
こんばんは
SGA屋伍一さん、こんばんは!
ご無沙汰してましたー。
俺たちシリーズになっちゃいましたかー。笑
ローガンが永久不老という事実にびっくりですよ。
なぜか30代辺りで止まってるけれども、、
そうローガンは孤独だったね。誰も理解してくれる者はいない。
サイクロップス>実は彼は死んではおらず、湖畔でねっころがっているだけでは・・・
私もそのへんうやむやな感じだったし、期待しているんですよ。
しかし彼は少年時代から建物を爆破してたんだなあ。
本シリーズよりスピンオフのほうがおもしろかったりしてね!
Posted by: アイマック | September 30, 2009 08:11 PM
>アイマックさま
おはようございます! お返しありがとうございます
実は一昨日『俺たちタイムトラベラーズ』とでも言うべき『マーシャル博士の恐竜ランド』見てきました。お勧めできないけど見て欲しい!(笑)
ローガンの秘密に驚いた人は多かったようですね。ここまで来るともはやミュータントというか、一種の半神に近い存在のような気がします
もっとも記憶なくしちゃったようなので、前三部作では本人は本当に三十歳くらいのつもりでいるかもしれません。図々しい(笑)
アイマックさんもサイクロップスのことを気にかけてくれていたとは嬉しい。今後予定されているスピンオフでは(実現すれば)『ファーストクラス』あたりで活躍してくれると思います
Posted by: SGA屋伍一 | October 01, 2009 07:29 AM
SGAさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪
本作を観る前に1や2の方をなんにも予習してなかったのが仇になったのか、忘れているキーワードや単語がポツポツと見受けられ、セイバートゥースに到っては過去作にすでに出ていた事さえ忘れていました(汗)
まあそんなど忘れな所も少々あったものの、ウルヴァリンの過去をどんどん紐解いていく内容は自分も面白かったですし、ケイラの正体や微妙にヤングプロフェッサーの登場など意外な展開も多かったので、それも踏まえて良かったですね♪
・・で、早速自分も気になったので「デッドプール 第4の壁」と検索したら、SGAさんの記事がトップ検索の2番目に出て来ましたw
でも第4の壁の破壊が噂のデッドプールスピンオフで表現されれば凄く面白そうです。
Posted by: メビウス | October 06, 2009 10:02 PM
>メビウスさま
こんばんは! お返しありがとうございます。青森は台風は関係ないかな?
色々忘れてましたか(笑) 考えてみりゃ一作目なんかかれこれ十年くらい前ですからね・・・ でもセイバートゥース=ビクターに関しては忘れてても問題なかったと思いますよ。ほとんど別人でしたから(笑)
ウルヴァリンの過去も一作目の時からず~っとひっぱってましたよね。まあ大体想像ついたけど、今回ようやく真相が明らかになって、感慨深げな人もいるのでは
あ、あとわざわざ検索までしてくれてありがとうございます。正直言ってとても嬉しい
「やあ、みんな。ぼくらは実はみんな映画のキャラクターなんだけど、みんなそれに気づいていないんだ」と語るデッドプール・・・ なにやら『トイ・ストーリー』か『ボルト』のようなお話になりそうです(^^;
Posted by: SGA屋伍一 | October 07, 2009 08:47 PM