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September 07, 2009

素晴らしき哉、兼業 田中圭一 『マンガ家田中K一がゆく!』

090906_184610以前こんな記事で「漫画家マンガにハズレなし」という言葉を紹介しましたが、また新たに漫画家マンガの傑作が世に出ました。『マンガ家田中K一がゆく!』ご紹介いたします。

時は1980年代半ば。玩具メーカーに勤めるサラリーマン一年生、田中K一くんは、たまたまみかけた雑誌で自分がかつて描いた漫画を発見する。以前投稿した作品が、忘れた頃に採用されたのだ。
そのマンガが好評を博し、田中くんは本格的にデビューを飾ることになるのだが、それには一つ問題があった。彼の勤めるヨイコトーイ(タ○ラって書けよ)の社則には、「副業禁止」という事項があったのだ。
マンガ家になることは昔からの夢。さりとて玩具メーカーでの仕事も面白い。かくして田中くんは会社にひたかくしにしながら、コミック大爆発にお下劣ギャグマンガ『ドクターパニック(秩父山って書けよ)』を連載することになるのだが・・・・・

田中氏の名前を知ったのは高校生の頃。『らんま1/2』が看板だった少年サンデーに、『昆虫物語ピースケの冒険』というそれはけったいなマンガが月一で掲載されていたのでした。
「史上最強の昆虫」を目指すオケラのピースケが、ライバルたちと熾烈なバトルを繰り広げていく・・・という内容なのですが、問題なのはこのマンガに出てくる昆虫というのが、普通に着ぐるみを着たにーちゃんねーちゃんにしか見えない、ということ。そして休む間もなく連打される下ネタの数々(少年誌なのに・・・・)
そのあまりに強烈な個性にノックアウトされたわたしは、「こんなに面白いのに、なぜ普通に毎週載らないのだろう?」と考えていましたが、後になってわかりました。田中さんはサラリーマンと二足のわらじをはいていたので、とても週間連載などやる余裕はなかったのです。

サラリーマンで漫画家をやる・・・ たとえ月一連載だとしても、これは想像以上に過酷なことであります。まず本来の休日である土日はすべて作画でつぶれる。またマンガというのはただ絵を描けばいい、というものではありません。特にギャグマンガは、余裕を持ってネタを練る時間も必要です。さらに単行本を出す時には普段の作業に加えて、書き直しもしなければならない。とどめにヨイコトーイというかタ○ラは「死ぬほど忙しく」「休日出勤も珍しくない」バリバリ体育会系の会社だったという・・・・

普通死にますよね(笑)

実際田中さんも途中輪郭が乱れに乱れまくった状態で「まったくアイデアが浮かばなくなっちゃんですよー!!」「もう単行本なんて出なくたっていいよー!!」と叫ぶ有様。なのにこのマンガからは暗さや深刻さがまったく伝わってきません(笑)

それは兼業のきつさと同時に、田中さんがその二つの仕事をいかに愛し、楽しんでいるかがよく伝わってくるから。世の中には望まぬ仕事をしている人も多い中で、本当に自分のやりたい仕事を二つ同時にできている。これは確かに多大な苦労もふっとぶほどのパワーを与えてくれることかもしれません。田中氏お得意の下ネタも大いに深刻さをやわらげております(笑)

あとこれまでの作品と違うのは、なんと田中圭一のマンガなのに、普通に心が温まり、普通に感動するというところ。これに関しては田中氏自身も「新境地」と述べておられます。

以下は結末をばらしてありますので、「オレ、たぶん読まないよ」という方だけご覧ください・・・・

いろいろあって、とうとう上司に田中君の副業がばれてしまう日がやってきます。田中君をかばおうと、自分の例を話すやはり兼業マンガ家のすえひろがり福(しりあがり寿って書けよ)に対し、上司はこう言い放ちます。

「関係ない・・・ あなたの上司が何を言ったかなんて関係ない」「ウチの会社は体育会系でルールにも厳しい」「残業も多いし休日出勤も頻繁にあります」「そんな中にあってこの田中は」「人より多く仕事し休日出勤にも不満ひとつ言わない」「そのうえこんなことまでしていたなんて」「がんばってたんだな おまえ

その言葉に耐え切れず、叫ぶ田中君

「所長、お願いです!」「会社に迷惑は絶対かけません」「だから・・・・」「だからこれからもマンガ家を続けさせてください!

すると上司は穏やかに微笑み
「わかったよ」「なにかあればオレが守ってやるから」「その代わり、そのうち会社が儲かるようなマンガも描いてくれ!」

そして泣き崩れる田中君・・・・

だのにその後、彼は『ヤング田中K一』というマンガでタ○ラのやばい内情を次から次へとぶちまけてしまいます。この恩知らず!! 素敵だ!!

090906_184632ま、そんな風にハートウォーミングな作品なんですが、このマンガ、かなりの度合いでフィクションが混じっているようです。作者自身がオマケのページで述べていることなので、まちがいありません。
こういうのは普通フィクション部分は脚色程度にとどめておくものだと思うのですが、そこはサービス精神豊かな田中さんのこと、「こうだったらもっと面白いのに」と思うと、ドンドンそっちの方へ進んで行っちゃうんでしょうね(笑)

というわけで、より正確な真実が知りたい方はやっぱり買ってください。角川書店よりちょい大判で発売中。1100円は高くないか!(←衝動買いしてしまった)

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Comments

らんま1/2が連載されていた頃に月いちで・・・
うーん、ぜんぜん知らないです
作者さんは今も二足のわらじで頑張ってるんでしょうか?
確かに大変かもしれないけど、やりたい仕事をふたつ同時にできているって羨ましくもあります。
わたし最近なにかと引きこもりでくすぶりがちだから特にそう思いまーす

SGAさんも作者を見習って・・・どうでしょう?

Posted by: kenko | September 11, 2009 07:15 PM

>kenkoさま

こちらにもども
連載かぶってたのは『らんま』でも割と初めの方のころだったでしょうか。単行本でいうと、、、10巻より前のあたり?
月一という抜き打ち的な連載だったので、「なにこの変な漫画」とスルーされた読者も多いかと思います・・・・

田中さんは現在でも営業職と漫画家をかけもちしてるみたいですよ。よくやるよね・・・
SGA屋もトライしてみようかしら? 副業(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | September 11, 2009 11:31 PM

『らんま2/1』→1/2
フィクションが混じって→ノンフィクション

Posted by: | January 06, 2010 05:16 AM

>名なし様

ご指摘ありがとうございます
『らんま』の方は修正しときました
あとこの漫画、一応ベースはノンフィクションだと思ってます

Posted by: SGA屋伍一 | January 06, 2010 07:14 AM

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