レクイエム・フォー・リアル ダーレン・アロノフスキー 『レスラー』
以前二枚目俳優として人気を博したミッキー・ローク、起死回生の一発(まーその前にも『シン・シティ』がありましたけど)
本年度アカデミー賞主演男優賞・助演女優賞にノミネートされた『レスラー』。当地区では首都圏より三ヶ月ばかり遅れての上映です。
かつて全米を熱狂させた人気プロレスラー、ランディ。その必殺技「ラム・ジャム」で血祭りに上げられた者は、数知れず。だが年齢を重ねるにつれ、ランディは人気と体力の衰えを次第に実感せざるをえなくなっていく。そして、ある日の試合の直後、とうとう昏倒してしまうランディ。医者はこれ以上プロレスを続けていくのは自殺行為だと諭す。傷心のランディは、行きつけのバーで働いているストリッパー、キャシディに救いを求めようとするが・・・
「一度覚えたらやめられない。ボクシングには、そういう麻薬のような魅力があるという」(森川ジョージ 『はじめの一歩』より ちょいうろ覚え)
以下はどんどんネタバレしていきますので、未見の方はご注意ください
この映画を見てわたしがまず思い浮かべたのは、ボクシング漫画の金字塔『あしたのジョー』。リングへ向かえば死が待つとわかっていながら、愛する女に微笑んで別れを告げる主人公。
ただジョーとランディにはいろいろと違うところもあります。それはジョーがプロボクサーで、ランディがプロレスラーだから。
ボクサーにとって何よりも大事なのは、目の前の相手に勝つこと。そのために地味な試合展開をせざるをえない時もあります。また、目の前の相手を100%憎みきらなければ勝つことはむずかしい、とも言われてます。
それに対しプロレスで優先されるべきことは、まず観客を沸かせること。そのためにすすんで負け役を引き受けることさえ珍しくありません。そしてリングを降りた彼らは、試合での様子とはうって変わってとても仲良しだったりします。まあプロレスラーは普通のプロスポーツと違って年間150とか200もの試合をこなさねばならないので、それくらい現場環境がよくないとやっていけないのかもしれません。
そしてこれは深刻な中毒・依存症を描いた映画だとも思いました。体によくないと知りつつ、長年続けてきたある習慣。そしてとうとう医者に「これ以上やると死んじゃうよ」と言われてしまう。そこで一念発起して、中毒を克服しようとがんばるものの、現実の辛さに耐え切れず、結局元の状態に戻ってしまう・・・・
「プロレス」を「アルコール・ドラッグ」に置き換えてみてもまったく違和感ありません。実際痛みに耐えるために、怪しげなドラッグもバンバン打っちゃってるし
リングの上での苦痛はハンパなものではありません。首から落ちたり、パイプ椅子で殴られたり、自分でカミソリで額を切ったり。極めつけは画鋲みたいなものをブスブス打ち付けられてしまったりする。なんでそこまで痛い目にあわなければならないのか。そうすればお客さんが沸くから。そしてその歓声が、何にも増して心地よいから。
そしてここが、ランディがただのジャンキーとは違っているところです。彼の中毒は、人を感動させることができる。彼が全身全霊を打ってプレイしてるのがわかるゆえに、そして何よりもプロレスを愛していることが伝わるゆえに、ファンは我を忘れてランディの名を呼びます。
言ってみればある意味後ろ向きなテーマを扱っているにもかかわらず、この映画がこんなにも感動的でさわやかなのは、その辺に理由があるような気がします。
考えてみれば、このブログも似たようなものかもしれません。一円たりとも儲けられるわけではないのに、どうして約五年もの間、知力と時間と労力を費やして(時には睡眠時間を削って・・・)、シコシコくだらない記事を書き続けていられるのか・・・
それは少数ではあっても、定期的にこのブログを読んでくれる人たちがいるから。非常にわずかではあるけれど、記事に反応してくれる人たちがいるから。
人は言う・・・ そろそろやめ時ではないかと・・・ だがこのブログをやめていいと言えるのは、このオレのファンたちだけダーーーーッ!!
(し~~~~~~~ん)
あら?
・・・というわけで見事復活を果たしたローク氏。次の出演作はなんと『アイアンマン2』だそうで。せっかくヒューマンドラマで評価されたのに、すぐ次がアメコミものってどうなのよ? という気もしますが、主演のロバート・ダウ二ーJR.との「どん底経験コンビ」にはなにやら期待できそうな気がします。こちらの公開は全米で来年の春。楽しみですね!
Comments
こんばんは~
SGAさん,ブログ歴5年なんですね~(尊敬!)
そうですよね~,単なる日記じゃなくて
これだけ熱く詳しい記事を毎回アップするのは
パワーとエネルギー源がないとやっていけませんね。
たしかに1円の儲けになるわけじゃなし・・・
ブログを書くのが好きなこと,読んでくださる方の存在
それがエネルギーの元ですね。
私もそんなSGAさんのエネルギーの元の末席にいるのかと思うと
じーーーーーーーん・・・。(お互いさまでもありますよ)
で,復帰したミッキーさんの次回作はアイアンマン2?
>主演のロバート・ダウ二ーJR.との「どん底経験コンビ」にはなにやら期待できそうな気がします。
しかし・・・なんて濃いキャラが揃うんだ!アイアンマン2!
Posted by: なな | September 28, 2009 09:12 PM
またしても肉(笑)牛丼一筋300年〜♪
いやん、カワイイ
そしてラムちゃん
格闘技にはぜんぜん興味ないんだけど、ミッキー・ロークの熱演には
激しく感動してしまいました。
たぶん今年のベストに入れると思います。
SGAさん、やめ時だなんて言わないで!絶対やめないでぇ〜〜
SGA、ジャム!SGA、ジャム!!1、2、3、ダーーー!!
ミッキー・ロークのアイアンマン、超楽しみです♪
確かにどん底経験コンビですね(笑)でも旬なオヤジコンビでもありますよ〜
Posted by: kenko | September 28, 2009 10:03 PM
>ななさん
こんばんは。お返しありがとうございます
そうですね・・・ 実はもう五年も経つのです・・・(正確にはあと三ヶ月で)
まあ正直ななさんとこに勝っているのは「長さ」くらいのもので、アクセスやコメントの数はそちらの足元にも及びません。にも関わらず相も変わらずダラダラと続けている自分が、ほんとアホじゃないかと思えることがよくあります
でもまあ、こうやった続けてきたおかげで、遠く離れたななさんとお知りあいになれたわけで。そう思うとブログってのもありがたいもんだなあと じ~~~~ん
(マネ)
『アイアンマン2』は背油トンコツラーメンなみに濃いい面子になりそうですね。このほかに「スカ代はん」ことスカーレット・ヨハンソンも出演予定だそうです
そういえばその後DVDで「1」のラストシーンは見ましたか?
Posted by: SGA屋伍一 | September 29, 2009 08:52 PM
>kenkoさま
こんばんは。お返しありがとうございます
そういえばこのネタ『ウォッチメン』でもやりましたね・・・
まあ2009年は「29(肉)の年」ということで
この娘は「角が生えてるからラム(山羊)ちゃんだったんだ・・・・」ということにいまごろ気づいたり
kenkoさん、そんなにこの作品気に入られてたんですね~ ランディ・ロビンソンも草葉の影で(オイ)喜んでいることでしょう
>絶対やめないでぇ〜〜
サンキュー、ベイベー・・・・
愛する友のまなざしが 傷つく度に倒れる度に 俺を強くする
(「俺は炎のキン肉マン」より)
アイアン2は来年最も楽しみな作品であります。日本公開があまり遅れないように、そもそも制作がまた遅れないように、心より願う次第であります・・・・
ダウニーさんは『シャ-ロック・ホームズ』もありますけど、こちらは監督がガイ・リッチーだけに地雷の予感(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | September 29, 2009 09:00 PM
み~ん。。。スガッチのブログのファンだよ!! そしてそろそろやめていいよ(そろそろやめどきだ)!!
↑ウソだよ。そしてやっぱりラムちゃん描いたか(おみとおし~)。。。
>知力と時間と労力を費やして(時には睡眠時間を削って・・・)、シコシコくだらない記事を書き続けていられるのか・・・
みんな同じなんだなぁって、安心したよ。ボクはしばらくネット環境が使用不能に陥るので休眠しますが、ボクの分までがんばってください。。。
リンク先の『ジョー&飛雄馬』のことなんだけど、全部買ったんだ(笑)、これどう調節したの? 二作品おんなじ長さじゃないと思うのだが?
Posted by: 裏山他 | September 29, 2009 11:00 PM
>裏山他さま
おいでませ~
>そしてそろそろやめていいよ(そろそろやめどきだ)!!
ちっくしょおおお・・・
やめてやる! やめてやる! やめてやる!
・・・・・そのうちね・・・・
そしてだんだんネタに意外性がなくなってきた(笑) ここはプラレス三四郎でも書くべきだったろうか・・・・(マイナー)
ええと、『ジョー』の方が『巨人の星』よりちょっと長かったんだっけ? まあその分『ジョー』の方が毎号多く掲載されてたんじゃないでしょうか いま調べたら『巨人』がKC版で全19巻、『ジョー』が全20巻。あんまし変わらないのではないのでは。あたみ~ん
それでは裏山先生がお帰りになるまでは、がんばってブログ続けることにするよ! 一ヶ月くらいだったらたぶん大丈夫・・・・
Posted by: SGA屋伍一 | September 30, 2009 07:45 AM
SGA屋伍一さん、こんばんは。
>言ってみればある意味後ろ向きなテーマを扱っているにもかかわらず、この映画がこんなにも感動的でさわやかなのは、その辺に理由があるような気がします。
一言で言えば“負の美学”の物語ではあるけど、
不思議と清々しさを感じる作品でしたね。
P.S.
確かに、ブログってお金になる訳でもないし、時間はとられるし、
物理的に得する事は何もないんだけど、
映画を観たいから観続けているのと同じように
ブログに言葉を綴りたいから書き続けているような気もします。
そして、ブログを読んでくれたり、
ブログを通じて話し相手になってくれる人との語らいが楽しいから♪
私達もランディと同類なのかもしれないですね。^^
Posted by: BC | October 04, 2009 06:19 PM
>BCさま
こんばんは! ようこそおいでませ
この映画を「後ろ向き」と言ったら熱心なファンに怒られるかもしれませんけどね
アロノフスキー監督のダメ人間への愛情がひしひしと感じられたせいで、観ていて心地よい映画でした。もっとも彼のほかの作品は、もっときっついのが多いようですが・・・
わたしなんか地方に住んでいて映画好きの友人がいるわけでもないので、ブログ始める前は映画鑑賞って孤独というか自己完結した趣味でありました
それが今ではこうやって日本全国の人たちと感想が言い合えるのですから、ブログって本当ありがたいな、と
もちろん弊害もあるし、いつまでできるかもわかりませんけど、できる限りは続けて行きたいと思ってます
と、いうわけでBCさん、これからもよろしく
Posted by: SGA屋伍一 | October 04, 2009 09:34 PM
伍一さん!
いつの間にかブログ5周年なのね!
おめでとぉー
映画ブロガーの中でも最初のチームですのね★
ほんとお金も入ってこないけどやめられないのよね、、、
やめちゃう人も多いけど、
この調子で続けてね(笑)
ところでミッキーだからこそこの作品よかったですね。
ダメ親父だけど、なんだか可哀想になっちゃうところはミッキーだからかも、、、。
マリサトメイもいつも身体はってて
素敵な裸体見せてくれて女のわたしでも目が釘付け♪
可愛い女優さんで好きだな
Posted by: mig | October 24, 2009 10:44 AM
>migさま
こんばんは。お返しありがとさんです
正確にはあと二ヶ月くらいでまる五年になりますか。本当に時の経つのは早いものです・・・・
いつも書いてるけど、migさんとこはあんなにたくさんコメント来てるのに、レスしてこうやってお返しにまで来てくれて、本当すごいと思いますよー わたしだったらとうに音をあげてる(笑)
とりあえずまだ続けていくつもりです。migさん、引き続きよろしくね
そう、この映画ミッキーだから良かったですね ・・・・と言いつつ、どうしても「ミッキー」と言われると浦安にいる甲高い声のネズミを思い出してしまいます
マリサ・トメイさんは純情青年(笑)には目の毒でした。彼女に失礼なことを言う若者たちには、ランディ同様カチンと来ましたねー
Posted by: SGA屋伍一 | October 24, 2009 09:38 PM
SGA屋伍一さん はじめまして 友達とDVD
で見ました
>深刻な中毒・依存症を描いた映画だとも思いました。体によくないと知りつつ、長年続けてきたある習慣。そしてとうとう医者に「これ以上やると死んじゃうよ」と言われてしまう
ステロイドの影響で心臓は弱っているありさまの中年レスラー ランディー。せっかく 親子関係を修復するチャンスだったのに娘さんとの約束すっぽかすのは さすがにマズイよ~(´Ц`)
自分には「この場所しかない」不器用な生き方しかできないランディーは やはり 悲しい男です
ランディを演じたロークは「ランブルフィッシュ」「ナインハーフ」「イヤーオブザドラゴン」など80年代は全盛期でした。 でも90年代に入ってからロークはボクシングやりたいとプロボクサーをやってたみたのですが、結果は泣かず飛ばず・・・猫パンチとこきおろされる始末です。そのボクシングの影響で 顔がゆがみ、俳優としてのオファーが激減したようです。
セクシー俳優として80年代は全盛期だったのに ボクシングのために自分から全盛期を捨てちゃって・・・半ばバカだと思いましたよあっ、そうそう・・・ミッキー・ロークの主演の「ホーム・ボーイ」という'88年の映画 しってますか?こちらは、ロークが アメリカ各地を渡り歩く流れ者ボクサーのジョニー役です。元妻のデボラ・フューアーと共演しています。
ボクシングはスクリーンの中だけにしておけばよかったんだと思いますがいかがでしょうか?
レスラーのランディーとはまた違った男の不器用さを「ホーム・ボーイ」のジョニーは持っています。
「レスラー」と「ホーム・ボーイ」 ともにミッキー・ロークの主演で、ふたりの不器用な男が主人公 ランディーとジョニー
ふたつの作品を比べながら見るのも 悪くないですよ
Posted by: zebra | October 01, 2011 08:02 AM
>zebraさん
はじめまして。おいでくださりありがとうございます
本当に娘さんとの約束をすっぽかしちゃうあたりは目も当てられませんでしたね(笑) あとから思えば脚本が上手にランディを追い込んでいくようにできてるな、と思いました。その辺は同監督の新作『ブラック・スワン』でも一緒ですね
ミッキー・ロークはわたしが中学~高校のころに特に人気がありましたねえ。印象に残ってる作品は『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』や『エンゼル・ハート』など。ボクシングのリングにあがってたのも覚えてますよ(笑) ユーリ海老原の前座だったかな・・・?
そういえば少し前『エクスペンダブルズ』のインタビューで、自嘲的に「オレは成功しても自分から台無しにしてしまうんだ」と言ってました。せっかくカムバックしたのだから、今後は末永く活躍してほしいものですね~ 『ホーム・ボーイ』については知りませんでした。記憶にとどめておきます
Posted by: SGA屋伍一 | October 02, 2011 09:16 PM