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September 15, 2009

21世紀中年 堤幸彦 『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』

090915_120131♪ぐ~たらんら~ す~だらんら~

世界中で殺人ウィルスがばらまかれ、膨大な数の人命が失われてから数年後。「ともだち」の支配はさらに力を増し、彼は実質世界の支配者となっていた。
災厄を生き残ったカンナは「ともだち」と雌雄を決すべく、武装集団を率いて決死の覚悟を固める。そんな彼女の前に、再び姿を現したオッチョは言った。「ケンジは生きているかもしれない・・・・」
そしていびつに作り変えられた東京に、グータラ節が高らかに鳴り響く・・・・

昨年の晩夏から始まった『20世紀少年』映画版もいつのまにやら最終章。時の経つのは早いものです・・・
今回は結末からなにから完バレしてますので、未見の方はどうぞ避難を。ついでに書いておくと第一章のレビューはコチラ。第二章のレビューはコチラ。原作の解説はコチラでありんす。

うろ覚えですけど、『スクリーム』のオタク君が言うには第3作のセオリーは、「シリーズの原点に立ち返り、全ての謎が明らかにされる」というものじゃなかったかな。その点で言えばこの最終章、まんずまんずの出来ではなかったでしょうか。
「原点に立ち返る」という点では第一作の主人公であるケンジがカムバックしますし、「血のおおみそか」をもたらした巨大ロボット(笑)も再び姿を現します。そんで「全ての謎が明らかにされる」という点では、最大の謎である「ともだちの正体」を含めて、ほとんど全ての真相が明かされたような気がします。というか、細かい謎はよる年波のせいか、もう忘れました(笑)
今回解説場面において、「ドクター山根」なる人名が出てきましたが、とっさに誰だか思い出せませんでしたし・・・ 年はとりたくないものですね・・・

不満もそれなりにあります。一番の不満は「最後の希望」と言われてたカンナが、クライマックスにおいてどんな活躍をするかと期待してたら、ただ会場でケンジを待ってるだけだったこと。できたらケンジと一緒に「ともだち」を倒すのに一役買ってほしかったなあ。まあ彼女の役割は戦うことではなく、「できるだけ多くの人をウィルスから守ること」だったのかもしれませんが。

しかしまあ先にも述べたように、巨大ロボットの再登場にはかなり楽しんでしまいましたし。やっぱわたしにとって『20世紀少年』は東宝の怪獣・怪人映画の系譜につらなるものなので。正直言うと背景が暗闇だった一作目の時の方が迫力があったような気もしますけど、オマケにUFOも飛んでるので足して合格というとこでしょうか。

そんな風に「ま。いいんじゃないの」的な評価だった最終章ですが、見終わってから数日後も、やけに強く記憶に残る場面がありました。それはエンドロール後のケンジの回想?場面。それも特に最後の最後あたりのところです。

中学校の窓の外から、一人身を投げようとする仮面の少年。その彼の耳に、突然T-REXの『20世紀少年』が響きます。彼が屋上に行くと、そこには寝そべっているかつてのケンジがいました。「ねえ、ともだちになってくれる?」 そう一方的に問いかけ、少年はそこをあとにします。しかし彼の前にもう一人のケンジが現れ、こう言いました。「お前、それでいいのか? もう一度行って、そのお面を外せ・・・」

十代の少年少女が一番気になることと言ったら、それは同年代の友達からどう見られているか、ということ。馬鹿にされたくない、嫌われたくない・・・ その一心で自分を殺し、いつも仮面をつけているように感じられる子もいることでしょう。でもそうして出来た「ともだち」というのは、本当の友達と言えるのでしょうか。
たとえ数は少なくても、仮面をつけなくてもいい・・・遠慮なく話せて、いつも素のままでいられる・・・ そんな友達こそが、真の友達だと、わたしは思います。また、そういう友達と出会えることは何にも勝る宝であります。

この場面はタイムスリップではなく、ヴァーチャル体験でしかありません。だからケンジがなにをやったところで悲劇を防げるわけではなく、彼が過去の過ちを再認識するだけのことなのですが。
それでもこのラストに、とても心安らぐものを感じました。

090915_120202世間の評価は決して高くないようですが(笑)、興行的には大成功のようですし、制作陣もほっと一息というとこでしょうか。
いろいろネタを探すのも大変でしょうけど、邦画界に次なる花火を期待いたします。

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Comments

こんばんは!
そう言えば、最後の希望と言っていたわりには、
カンナは活躍しませんでしたねぇ〜(笑)
まあ、最終章ってことで詰め込みすぎたので
しかたないかもしれませんが・・・・。
私も友達はなってくれ!って言われてなるものではないと
いう気がします。

Posted by: ルナ | September 16, 2009 12:38 AM

>ルナさま

ご来訪ありがとうございます

カンナは第二部で元気のいい暴れっぷりを見せてくれたので、今回はどんな活躍を見せてくれるのかな~と思っていたんですが、全体的におとなしかったですね・・・

わたしゃ読んでないんですけど、最近人気の少女漫画『君に届け』(瀬戸内寂聴先生も愛読されてるそうな・・・)ではこんなセリフがあるそうです

「ねえ知ってる? 友達って気づいたらもうなってんのー」

こうなれれば一番いいんですけどね

Posted by: SGA屋伍一 | September 16, 2009 07:48 PM

おはようございます
昨晩コメントさせていただこうと思ってここにお邪魔したんですけど
なんか力尽きてしまいました。すみません

そういえばカンナってあんまり活躍しませんでしたね
カンナ役の女優さんもオーディションで選ばれて鳴り物入りだったのに。
ケンヂおじちゃんに再会して子供のように泣くところでは
ちょっとうるっとしちゃいましたが。

>自分を殺し、いつも仮面をつけているように感じられる子

そっか、あのお面ってそういう意味だったのかもですね。
ATフィールドみたいなもの?ちがうか(笑)
ヴァーチャル体験でしかないだけに切なかったです。

Posted by: kenko | September 17, 2009 09:16 AM

>kenkoさま

おはようございます
お返しなんていつでもいいのですよー。こうして来て下さるだけでありがたい限り。つか、わたしのレスも一日遅れだし・・・

カンナちゃん役の子、なかなか目がキリリとしてていい感じだったんですけどねー
これがデビュー作かと思ったらこの前に『笑う大天使』という映画にも出てたみたいで。実はその原作、けっこう好きなんですよね。・・・少女漫画なんだけど
まあ『20世紀少年』はケンジとカンナが別れてから再会するまでのお話、と考えられなくもないかも

あとで思いついたんですが、ヴァーチャル体験のシーンは監督の十代の少年少女にむけてのメッセージなのかも。この映画、そのくらいの皆さんもけっこう見ているようだし

Posted by: SGA屋伍一 | September 18, 2009 07:15 AM

こんばんは。

私も今日見てきました。
賛否両論有った原作とは違った終わり方をするのは、賛否両論ありそうですね。^^;
しかし、思い切った改変をしたもんだなー、と感心しました。

そして、最後の登場人物の彼。
彼の目力、半端ないですね。
主演の唐沢さんに負けてないですよ、あれは。

ヴァーチャル体験は『ともだち』の免罪符であると同時に、ケンジが一生背負っていく十字架なのかもしれませんね。

Posted by: 大吉 | September 19, 2009 02:25 AM

こんにちは~♪
今日から連休ですね~SGA屋さんは如何お過ごしですか?
ところで、オフ会は開きました?

で、、、SGA屋さんは温かなお気持ちで第3章を鑑賞されたようですね~
私はチョイととげとげした気持ちで観ちゃいました(汗)
第1章は面白かったんだけどなぁ~どんどんどんどん違和感を感じてきちゃって、、、う~ん

私もカンナにはもっと活躍して欲しかったな。彼女って超能力みたいなものもあるように思えたんだけど、、、思わせぶりなだけであまり関係なかったような(汗)

Posted by: 由香 | September 19, 2009 07:18 AM

>大吉さま

こんばんは ご来訪ありがとうございます
わたしのまわりでは、割と「原作より納得がいった」という人が多いです。まー、狭い範囲ですけど

最後の彼、愛くるしかったお子様時代に比べると、最近は「普通の少年になっちゃったなあ」という気がしてたんですが、今回はなかなか大した存在感でした。『サマーウォーズ』でもがんばってたし、これからの活躍に期待できそうですね

堤監督は原作の、ケンジが横から出てきてもおいしいところをさらっていくような展開がイヤだったそうです。彼にも何らかの責任を感じてほしかったようで

Posted by: SGA屋伍一 | September 19, 2009 08:53 PM

>由香さま

こんばんは お返しありがとうございます

オフ会は流れました(笑) 今月はmigさんもいろいろお忙しいみたいで

代わりというわけでもないですが、明々後日は上野の『トリノ・エジプト展』を見に行ってきます。そっちは流れないといいなー

まー、わたしは自慢じゃないですけど、たいがいの映画は面白く見られる自信があるので(笑) たまに「失敗した?」と思ったときは、全力で自分をごまかします
でもこの作品はそこまで努力せずとも、まあまあ楽しみました。そうですね。この映画は漫画・アニメに慣れてる人のほうが楽しめるかも

カンナはきっと『新・20世紀少年』にて大活躍するんじゃないかなあ。そんなものがあれば、の話ですが

Posted by: SGA屋伍一 | September 19, 2009 08:59 PM

SGAさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪

登場人物も多ければ伏線や謎も多い20世紀少年なので、セオリー通り謎解きをしていっても、どこか急ぎ足な感じが否めなかったのが正直なところなんですよねぇ~・・キリコとケロヨンのアメリカでの出会いも随分端折っちゃってましたから『んんっ?』と思っちゃった部分もあるものの、そういう違和感あるところはまたテレビの『もうひとつ~』で新規カット盛り込んで放映とかしてくれるんでしょうね~?予想としましては来年の元旦映画辺りに出てきそうな予感・・w

でも世界征服とか巨大ロボットなど、絵空事のような内容も多かったですが、ともだちがああなってしまった理由などは現実的に有り得そうなことでもあるので映画の中だけと軽んじてはいけない気もしますね。自分が観てた時友達連れの子供が結構たくさんいましたので、あの結末を観た後みんなとどういう語り合いをしたのか気になるところです。

Posted by: メビウス | September 19, 2009 11:34 PM

>メビウスさま

こんばんは。お返しありがとうございますです

あー、そうですね。たまたまアメリカに渡ったケロヨンが、たまたまキリコさんの出会うってのは、考えてみりゃすごい偶然ですよね(笑)
まあこういう「すごい偶然」というのは、エンターテイメント系の映画には極めてよくあることではございますが

そういえばわたしはTVでやってた「もうひとつの」バージョンは全然見てませんでした~ そっちまで熱心にチェックされた皆さんには、謹んで敬意を表します

ある方なんかは「どうしてあそこまで子供のころのトラウマをひきずるのかわからない」とおっしゃってましたが、確かにいささか誇張されてるとはいえ、やっぱり幼い日のトラウマってのはえんえんと心の中に残り続けるもんですよね

あのラストシーンには『寄生獣』に出てきた「その胸の穴を埋められるのは、その穴を開けたひとだけ」なんて言葉を思い出しました。そうやって友情というものは鍛えられていくのかもしれません

Posted by: SGA屋伍一 | September 20, 2009 09:37 PM

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