林芙美子とは関係ありません(森光子とも) ジャック・ロンドン 『ジャック・ロンドン放浪記』
最近なんだか伊坂幸太郎とジャック・ロンドンばかり読んでます・・・・ ひとつはまると当分の間そればっかり。わかりやすい性格ですね。
本日ご紹介するのはジャック・ロンドンが若き日に大陸をさすらった日々をつづった、『ジャック・ロンドン放浪記』。
当ブログは「物語紹介所」と一応看板を掲げてますが、この本はノンフィクション。ま、細かいことは気にしナーィ(_´Д`)ノ
まずオビに書かれた紹介文を丸々転載します。
「自分は本当は何をしたいのか、どんな男として生きるべきか? 18歳の胸には涙も絶望もない。列車の屋根の上で、刑務所のなかで、彼はただ新しい明日を信じる。でたらめを吹きまくって食い物を確保し、小遣いを稼ぐ -その時にも、誇りを失わないその姿が、いまも若者の共感を呼ぶ。」
渋いぜ・・・・ ただこの紹介文、微妙にずれてるところもあるような
まずはジャックさんという方がどんな方かを、さくっと説明いたします。
ジャック・ロンドン氏は1876年に生を受けたアメリカの作家。波乱と放浪に満ちた人生を送り、そのドライで細やかな自然描写は、いまなお多くの人々をひきつけています。代表作は『白い牙』『荒野の呼び声』『海の狼』『鉄の踵』など。
作家の中には書斎の中に座っているだけを良しとせず、自分からガンガン外に出て行って、いろんなことを経験して、そいつを小説のネタにする方々がおられます。ジャックさんはまさにそのバリバリの行動派。
ジャックさんが放浪を始めたきっかけは16歳の時、友達から数マイル離れた場所にある船を、故郷のオークランドまで運んできてほしいと頼まれたことから。その船は見つかったものの、ジャックさんは事情でなかなかオークランドに戻れなくなり、「このままぶらり旅もいいなあ」と、そのまま大陸を回ることになったのでした。
やむにやまれぬ事情があってとか、青雲の志に燃えて、というわけではなかったんですね。言ってみれば、ほんとうにただなんとなく。
自分は『鉄の踵』の記事で、「作者が若いころ、世界恐慌のあおりを食って、食うや食わずの暮らしをしていた」と書きましたが、これ違いました。すいません
あとがきで訳者さんも書いておられますが、わたしたちにとって生活とは、住居を持ち、基本的にそこを拠点として日々を送るものです。しかし世の中には一箇所にとどまることを良しとせず、ひたすら旅から旅の生活を送り続ける人種もいるということです。この時代には「ホーボー」と呼ばれるそんな人々が、アメリカ各地にうじゃうじゃいたのでした。
ではホーボーの生活とは。それは主にタカリとただ乗りです。
定職をもたぬ彼らにとって、衣食を得る手段といったら、それは家々を訪ねて恵んでもらうしかありません。そのコツはできるだけ家の人の同情を買うこと。ここで後に作家として名を馳せるジャックさんの才能が発揮されます。ありもしない可哀想な身の上話をこしらえて、純真で親切なおかみさんをだまくらかし、まんまとマンマをせしめるわけです。
ある程度それに成功すると、列車にただ乗りして、別の街でまたそれを繰り返します。
ただ、当時だって列車はタダではありません。走リ出す前にキップも持たずに乗ると、当然車掌からたたき出されます。そこでホーボーたちは列車が走り出すと同時に物陰から飛び乗り、車掌たちの目の届かぬところに隠れ、目的地までその場所でじっと身をちぢこめます。
ある時などは二十人ものホーボーが、同じ列車に乗り込もうと待ち構え、熾烈なサバイバル・バトルが繰り広げられたそうです。ひとり、またひとりと外へ放り出されるホーボーたち。その中にあってジャックさんは必死で知恵を巡らし、車掌たちの裏をかきつづけます。ただ乗りのためにここまで情熱を燃やし、あれこれと考え続けるジャックさんには脱帽するしかありません。実際車掌たちも最後は根負けしたそうです。
このくだりもさることながら、なんとなく警察に捕まって刑務所生活を送るはめになったり、かっぱらいを生業とする不良少年たちと行動を共にしたり、警察の手から必死で逃げ回ったり、どの章もべらぼうな面白さの輝きに満ちています。そこには青春の悩みなどほとんどなく、ただあっけらかんとした空気が漂うばかりでございます。飢えの苦しみや身も凍る寒さ、刑事や車掌たちからの攻撃に日々さらされながら、彼がここまで明るく青春を送れたのは、いったいなんでなんでしょうね~
実際この本が発表された当時、あまりの面白さに実際にホーボーになってしまう少年が数多くいたとか。時代は違えど『イントゥ・ザ・ワイルド』のクリス君もそんな少年の一人だったんではないかと。
そんな『ジャック・ロンドン放浪記』。日本では小学館より「地球人ライブラリー」というシリーズで、1995年に発表されました。で、現在アマゾンやセブン・アンド・ワイなどのオンライン書店にて、まだ普通に流通しているようです。
この夏(といってももう半月・・・)、かつて広大なアメリカ大陸を走っていた蒸気機関車と、それに乗って旅を続けていた若者たちに思いを馳せてみるのはいかがでしょう。
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