時には、ハチを愛するように ジーナ・プリンス・バイスウッド 『リリィ、はちみつ色の秘密』
1960年代半ばのアメリカ南部。14歳の少女リリィは、幼いころ死に別れた母を未だに恋しく思っていた。妻に裏切られたと思っている父のT・レイは、そのことが不快で、リリィとよく衝突する。
そんな時ある事件がきっかけで、彼女たちの家で働く黒人のメイドが当局に捕まってしまう。リリィは父への反抗心も手伝って、彼女を警察から連れ出して、二人で見知らぬ土地へと向かう。
さっそく宿にも困ったリリィたちだったが、たまたま知った養蜂業者の家で働かせてもらうことになる。その養蜂業者は驚くべきことに黒人の女性だった。
原作は2005年に発表され、世界35カ国で翻訳されたベストセラー。一昔前のアメリカの話で、作家を志す子供が主人公というところは昨年の『テラビシアにかける橋』なんかを思い出したりしました。
この映画に興味をひかれた理由の一つは「養蜂」がモチーフとなっているところ。はちみつは甘味と滋養に富み、薬用としても効果があります。リリィにとってその仕事に携わるということは、まさしく母の愛情に触れるようなものだったのかもしれません。
「虫を愛する人は心清き人」という言葉があります。ウソです。ありません。たったいまわたしが考えました。
アメリカの人たちって虫のこと嫌いか興味ないかのどっちかだと思ってましたが、この映画に登場する女性たちはハチはもちろん、ゴキブリにすら愛情を注ぎます。・・・なんて優しいんだ・・・
わし、「虫のこと好き」とか言いながら、ゴキブリや蚊のことは差別してたよ・・・・ 反省しなくちゃな・・・ 潰すけど。ぷちゅ
しかし作品は「あま~い」だけではなく、彼女たちを取り巻く苦い現実をも描きます。特に当時のアメリカ南部は、未だ人種差別が色濃く根を下ろしている土地でありました。
女子供を容赦なく殴る男たち。見下げ果てた野郎どもです。こうした狂気の背景にはなにがあるのでしょうか。
ヒントになるのは2000年の映画『タイタンズを忘れない』。黒人のチームメイトを蔑んできた理由について、ある少年は「君たちが怖かったんだ」と告白します。
60年代はキング牧師の活動が脚光を浴び、黒人の権利拡大が叫ばれている時代でした。今まで慣れ親しんでいた社会が変わってしまうことが、自分たちの特権が失われてしまうことが白人たちには恐ろしかったのでしょう。そしてその恐怖を悟られまい、なめれまいと、常軌を逸した行動に出るわけです。
それに対し、リリィを見守るオーガスタのなんと力強いこと。ぶんぶん唸るハチの群れを前にしても少しも動じず、「大切なのはハチに愛を注ぐこと」と諭します。そう、ハチだって無闇やたらと人を刺すわけではありません。人が恐怖や敵意を示すからこそ刺すわけです。逆に愛情を示すならば、ハチも甘い蜜を提供してくれます。
今の日本はこの映画と違って、異なる人種がそれほど入り混じってるわけではありませんが、お隣の国々とは何かと衝突が絶えません。マスコミはマイナスな報道しかしないのでイヤになりますが、むこうさんにも「仲良くしたい」「歩み寄りたい」と思っている人々はきっといるはず。たとえ数が多くないとしても、そのわずかな人々のために、わたしは彼らと仲良くしていきたいと思っています。
もひとつ思ったのは、当時はまだ「親の愛は絶対」と信じられていた時代だったんだな・・・ということ。そりゃかの時代にもそれなりに虐待や育児放棄はあったと思いますが、少なくとも表面化はしてはなかったわけで。
痛ましいニュースが増えていることと、ミツバチが減少していることに、なんだか奇妙な符号が感じられたのでした。
代わりといってはなんですが、最後にちょっといい話をひとつ。この映画、驚くべきことにメインキャストのほとんどがノーギャラで出演しているそうです。金と欲にまみれたこの世の中で、なんとも小気味いい話じゃございませんか。
世の中金じゃありません。愛です。そういうわけで、誰かわたしにも愛をください!あとやっぱりお金もほしいです! プリーズ・ラブ!&マネー!・・・って、またそんなシメかい!
Comments
伍一さん★
観たのねー!
これ伍一さんも良かったでしょ?(わたしが作ったんじゃないけど)
)
黒人さんたち姉妹もいいし、なんか泣けちゃう。
ダコタちゃんもいいけど今日はアナソフィアロブの新作
観て来ちゃった(ちょっと失敗
みつばちまーや、超懐かしいー!
歳バレるね(笑)
あ、『タイタンズを忘れない』あの映画も良かったなー。
わたし黒人さんメインの映画って好きなんですよね★
Posted by: | July 04, 2009 09:29 PM
>昨夜の今頃にコメントをくださった方
あなたはいったい誰なの? まるで前からわたしを知ってるような口ぶり。なんだか胸がドキドキ
・・・・たぶん前後に送られたTBからしてmigさまではないかと思いますがどうでしょう。このボクに解けない謎はない!
・・・・ようこそおいでくださいました
いやー女の子中心のお話ではあったけど、終始ストーリーに引き込まれました。オーガスタ姉さんの男気には惚れますね
みつばちまーや・・・ これは何年制作だったかな? ・・・考えないようにしよう
原作者はドイツ人だそうです
『タイタンズ』は大好きな映画です。あのジェリー・ブラッカイマー制作とは思えないほど(笑)静かな感動に満ち溢れた作品でした。アメフトのルールとか、いまだによくわからないんですけどね
Posted by: SGA屋伍一 | July 05, 2009 09:10 PM
あれ??ごめんなさい!
migでした
あ、そうかぁジェリーブラッカイマー製作でしたのね、あれは。
当時マスコミ試写いっぱい来てた頃で手当たり次第観に行っててmig的アタリ作品でした〜☆
Posted by: mig | July 06, 2009 12:47 PM
>migさま
やはりあなたでしたか! 見事言い当てたご褒美になにかくださいなー!
・・・いや、冗談です。最近こればっかしだな
ブラッカイマーさん、最近名前聞かないなー、なんて思ってたら、『お買い物中毒なわたし!』なんての作ってたんですね・・・・
なんか路線が違うような(笑)
『ノウィング』のほうがよっぽどジェリーさんらしい映画のように思えます。うんうん
Posted by: SGA屋伍一 | July 06, 2009 07:51 PM
こんにちわ!
レスが遅くなり、ごめんなさいねー。
マイケルショックが大きすぎて、映画の記憶がなくなってます。笑
>人が恐怖や敵意を示すからこそ刺すわけです。逆に愛情を示すならば、ハチも甘い蜜を提供してくれます。
ほんとそうですよね。
人種差別問題はかなり深いと思いますよ。
人間って偏見の生き物なんだとつくづく感じます。
『タイタンズ』はまだみてないのですよ。
チェックしなくては!
Posted by: アイマック | July 23, 2009 12:36 PM
>アイマックさま
おひさしぶり! 少しは元気になられたかな?
わたしも人は基本的に差別をする生き物だと思ってます。こんな記事書いてるわたしだって、時々差別的な見方をすることがりますし
でも「そういうのってイヤだなあ」と思う気持ちも確かにあります。そいつを忘れないようにしたいものです
『タイタンズ』はおすすめです。有名どころではデンゼル・ワシントンが出てました
Posted by: SGA屋伍一 | July 23, 2009 10:25 PM
みつばちマーヤってこんな顔してたんでしたっけ・・・
(殴)
結構寝不足気味??みたいな←
そう言えば、『ヤッターマン』で渋谷のハチ公前が「ハッチ公前」になってて、そのときに見かけたんですが、あれもありですよね♪出来ないかな-、渋谷にハッチ公像。
ところで『約束の犬 HACHI』はどうなんでしょうね・・・。なんでもリチャード・ギアがアメリカ人のくせに、「ハチ!ハチィィィィ!」と呼び続ける映画らしいですね。うーんどうなんでしょう・・・いや別に、前振りじゃありませんよ。私はスルー予定ですし・・。
ところでこの映画ですが、優しくてかわいい映画でしたね。牧歌的で絵的に綺麗にまとまってる感じがしました。
Posted by: とらねこ | July 24, 2009 08:53 AM
>とらねこさま
おはようございますです。一応上がマーヤ、下がハッチです
マーヤってドイツ人が書いた話だって、これを書くとき初めて知りましたよ・・・ マーヤが牧歌的な作品だったのに比べると、ハッチはド根性ものというか、大映ドラマみたいな話だったような
これマーヤOP
http://www.youtube.com/watch?v=DwwWWeyd_oU
朝露で顔を洗うマーヤちゃんがなかなかいい感じです。ちなみに歌ってるのは水前寺清子・・・・
>「ハチ!ハチィィィィ!」と呼び続ける映画らしいですね
それではいつも「てえへんだ親分!」 と叫んでいる銭形平次のあの人を思い出してしまいます・・・・・ ねえハチ、覚えてる? おーとこだった~ら~ひとつにかける~
ラッセ監督は『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』や『サイダーハウス・ルール』は好きなんですが、これはわたしもたぶん見ません。同じ犬モノなら『ボルト』を見ます
あ、ほんで『リリィ』いい映画でしたね
わたしゃ単純だから「養蜂ってのもいいな~」なんて思ったりして。蜂蜜食べ放題だしね!(血糖値は?)
あとオーガスタさんの名前の由来が「八月」なのは「ハチ」つながりなのかなーと(爆)
Posted by: SGA屋伍一 | July 25, 2009 06:56 AM