サルだっていいじゃない ジョナサン・モストウ 『ターミネーター3』
現在好評?公開中の『ターミネーター4』。それに関する記事を読んでわたしがあらためて知ったのは「『ターミネーター3』ってそんなに評判が悪かったのか?」ということでした。いや、わたしはこの映画普通に面白いと思ってたんですけどねえ。そういやこの映画が公開されたころって、ブログもほとんどなかったような気がするし、誰かと一緒に見に行くというのも十回に一回くらい。当然誰かと意見を交わすこともなく、映画鑑賞ってつくづく孤独な趣味でありました。しみじみ
っと、話が横にそれました。みなさんの『Tさん』に対する意見をざっとまとめてみますと「最悪」「超駄作」「なかったことにしてほしい」「ジョン・コナーがサル顔すぎる」「うんこ」
・・・・・
そこまで・・・ そこまで言わなくてもいいじゃないですか!! サルだって、サルだってぼくらと同じ人間です!(←ちがいます)
そこで今回はわたしがなぜ『Tさん』を面白いと思うのか、その理由についてネチネチと解説していきます。こんな記事書くとお得意様の皆様からそろってひんしゅくをかいそうな気がするけど、まあいいや。書いちゃえ。
あの、どうか「本当にこいつバカよね~」って感じでうすら笑いでも浮かべながら、見逃していただければ幸いです
それではさっそくまいりましょう。
「冒頭でうらぶれてるジョン・コナー」
いや、世が世なら「救世主さま」とあがめたてまつられてるジョンくんがですよ、この世界ではうっかり世界を救ってしまったためにほとんどプータロー状態ですよ。その辺がなんとも「運命の皮肉」ってヤツを感じさせるじゃないですか。
少し時間の流れが変わっただけで、超セレブもフリーターになっていたかもしれない。逆にその辺のあんちゃんが総理大臣になっていたかもしれない。そう考えるとなんだか面白くありませんか?
それにしてもこの状態のジョンくんを見ると、彼にとって本当に幸せなのはどっちの世界なんだろうな・・・とつい考えてしまいます。そりゃあやっぱりプータローでも安全に暮らせる世界のほうが幸せだと思いますけど。
「スカイネットの設定」
それまでは単に「すげえコンピューター」くらいの設定だったスカイネット。ですがこの作品ではその設定にやや補足というか変更が加えられています。スカイネットとは一個のコンピューターではなく、多数あるコンピューターが一つのプログラムにより相互かつ緊密に結び合わされたもの、すなわちネットワークであると。
実は人間の「意思」「自我」、これはどのようにして生じるのかということに関し、次のような説があります。人間の脳には1000億あるといわれる神経細胞があります。これがそれぞれ約千個ほどのシナプスにつながれることにより、膨大な数の情報交換が行われるわけです。それによって「意思」というものが形成されるのではないか・・・・というもの。
だから超緊密なネットワークが完成した途端に機械に自我が生じてしまうというのは、ある意味非常に説得力があるわけです。そうするとこの我々が使用しているインターネットにももしかして意思が生じてるんじゃないの? という疑惑も生じてきますが、まあ世界中のPCより一個の人間の脳細胞の数の方がずっと多いし、情報交換も脳の方がずっと頻繁なので、たぶん大丈夫・・・・だと思うんですが。
「あれ? 審判の日、来ちゃったよ?みたいな」
『T2』でスカ誕生の原因となったT-800の回路が消滅したことにより、回避されたかと思った「審判の日」。ですがこの『Tさん』では何の説明もなくスカイネットが開発され、「審判の日」が到来してしまいます。
この辺が特に「ここが変だよ」と言われてしまう部分でありますが、ちょっと待ってください。変といえば『T2』のラストもどこかおかしい。だってスカちんが誕生しなければカイル・リースが過去に送られることもなく、当然サラ・コナーと結ばれることもなく、ジョン・コナーが生まれることもない。だから本当ならT-800がずぶずぶと溶けていった瞬間に、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の1シーンのごとく、ジョン君もスーッと消えていってしまうはずなのです。
『Tさん』冒頭でジョン君がビクビクしてるのはそのせいかもしれません。「時の異物」である自分が存在していることが、歴史が変わっていない証明ではないかと。
たださらに遡って考えますと、そもそもジョン・コナーが存在したからこそターミネーターが過去に送り込まれた。そしてそれを追いかける形でカイルが送り込まれた・・・ ということは、カイルが過去に送られなくてもジョンは存在しえたということか? ううううん~ なんだか「タマゴが先かニワトリが先か」みたいな話になってきましたが
学者さんやSF作家はタイムスリップによって過去が帰られたなら、歴史はどうなるか、ということに関し次のような説を述べています。
1:その瞬間に歴史が変わる
2:その瞬間に歴史が分岐する
3:歴史の細かいところは変わるが、おおまかな流れは変わらない
実際のところは本当にタイムスリップをしないとわからないと思いますが、たぶん『ターミネーター』シリーズは「3」の考えで作られてるのではないでしょうか。
恐らくカイルが過去に送られずとも、別の男性によってジョン・コナーは誕生するのでしょう。同様にスカイネットが開発されること、「審判の日」が下ることも避けられない事実なんでしょう。
「T-1萌え」
この作品には正式なターミネーター第一号「T-1」が登場します。これがシュワちゃんとはまったく似ても似つかない、手はガトリング、足はキャタピラでボディはドラム缶みたいなシルエット。
「そういや電話も昔は真っ黒でダイヤル式だったよなー」みたいなノスタルジックな気分に浸らせてくれます。
「サプライズ・エンディング」
ちょっとと重なるところもありますが、わたし『T3』っててっきりまた審判の日が回避されて、「めでたしめでたし」で終ると思ってたんですよねー それが見事にこちらの予想を裏切ってくれました。やっぱし映画ってのは観客の度肝を抜いてナンボですよ。
・・・・ただみなさんが怒ってらっしゃるのはこのエンドに関してなのかもしれませんね・・・ せっかくきれいにまとまってたモンを、散らかすだけ散らかして逃げた、みたいな終り方ですから
「漠然とした不安感」
わたしは『ターミネーター』シリーズが他のアクションSFと違うのは、ラストシーンに漂う漠然とした不安感にあると思ってます。『1』は近い将来災厄が下ることを暗示して終わり、『2』も一応ハッピーエンドではありますが、「未来はどうなるかわからない」みたいなナレーションで幕を閉じます。
で、『3』では結局審判の日が来てジョンも死ぬかもしれないと、不安をあおるだけあおって終ってしまいます。卑怯な手かもしれませんが、予定調和な終わり方よりもこういうエンドの方が記憶に残るものなのですよ。
考えてみたら『4』はその点物足りなかったかも。
どうでしょう。『ターミネーター3』がいかに傑作であるかわかっていただけたでしょうか。
ここまで読んで「いや、それはおかしいだろ」と思われた皆さん、その思いはそっと胸にしまっておいてください。わたしはいつ何時、誰の挑戦でもうけません(笑)
3、2、1、ダァーッ!!
Comments
み~ん。大阪のホテルでたまたまやってたから見たんだよ。1、2にまったく思い入れないから、フツーに面白かったんだけど。。。
>①「冒頭でうらぶれてるジョン・コナー」
そうそう。世界が平和のままだと、救世主として奉られない、パラレルワールドものすれすれの、ほとんどニート状態であるジレンマからはじまるあたり。。。
それに呼応するかのようなシュワさんの登場シーンのバカバカしさ。こっちもセルフパロディーの域に到達していたんじゃないか。
ボクはタイムリープものはどうしても矛盾をはらむんじゃないかと思うので、深く考えるのを放棄してしまうのだが、⑤のサプライズエンディングって何だっけ? 5日しかたってないのにさっそく思い出せん。
>⑥「漠然とした不安感」
芥川だ。。。歯車だ。。。
Posted by: 裏山&さん | July 05, 2009 11:47 PM
伍一さん、おはようございます。挑戦ではありませんよ、お話サセテ。
『3』の粉さんが評判悪いのは『2』の粉くんが美しすぎたからですよ。日本でもカップラーメンのCMに出てて女性達にも“メンが割れてた”事もあって尚更だったんでしょう。いや、シャレでなく。
私も話的には『3』好きです。ただ、意外性がなさ過ぎたのでしょう。次に来るのは女性Tやろなーってのは日本のコミックを読み慣れた人にはやっぱりなーでしょうし、スカイネットの定義もSFでは使い古された発想なので。
ターミネーターシリーズの醍醐味は仰るように不安感なんでしょうね。
“どっかおかしい”とT4でもずっと言い続けてましたし。
あとづけTP-SFの傑作、猿の惑星を越えられるか?(私はどうもターミネーターにはテーマ性が薄い気がするんですが…)
タイムパラドックスネタは数知れずですが、基本的に輪廻の輪は閉じてると結論する作品が多い中、今季やってたハチャメチャなアニメ『夏のあらし!』は軌道修正型並行世界…みたいな解釈が新鮮でした。映画では例の『スタートレック』がそうだったんですけど。
TPものの最新流行なんでしょうか?
Posted by: よろづ屋TOM | July 06, 2009 09:59 AM
>裏山&さんさま
おばんです。蛸足やら事故遭遇やら楽しい大阪旅行だったようですね! きっと『T3』の感動とともにあなたのメモリーに刻みこまれることでしょう!
>うらぶれてるジョン・コナー
この辺『マトリックス』とも通ずるものがあるのよね・・・ 救世主っつても元はダメ社員、みたいなところが
冒頭だけ見てるとこいつが世界を救うようには全然見えませんなー
4ではいきなり筋肉ムキムキになっててビックリしましたが。顔も変わってたような
シュワさんはこの映画で私信表明してたのかもしれませんよ
「わたしはゲイも女性も差別しません! 平等にボコります!」ってな感じで。見事知事に当選したんだから、戦略は大成功ですな
>⑤のサプライズエンディングって何だっけ?
あう。だから審判の日が回避されてめでたしめでたしで終ると思いきや、(ほぼ)人類滅亡して終っちゃったというところですよ
裏山先生はこれくらいではサプライズされないでしょうか
>芥川だ。。。歯車だ。。。
そうそう。トロッコが片道通行なのよね・・・ とインテリぶろうとしたけど、ゴメン! 『歯車』読んでないっす!
Posted by: SGA屋伍一 | July 06, 2009 07:34 PM
『Tさん』って、たぶん1回しか観てないからもう細かい部分は忘れちゃってるんですけど・・・

T−1なんてのが出てたことすら忘れてます
1と2の異様な面白さがなかったら、普通に面白い映画として処理されていたんでしょうが、1や2がなかったら3も作られなかったんだろうし・・・
3でいちばん楽しかったのは、シュワちゃん登場シーンのサングラスのギャグかなぁ
Posted by: kenko | July 06, 2009 07:36 PM
>よろづ屋TOMさま
こんばんはっす。ようやくゆっくり眠れたようでなによりでございます
おっしゃるとおりファンの間ではエドワード・ファーロングくんの若かりしころの姿が焼きついてるようですなー 「3」を嫌いな人って特に女子に多いですし(笑)
カップラーメンのCMも覚えてますよ。確か大黒摩季の曲がかかってたような・・・
>次に来るのは女性Tやろなーってのは日本のコミックを読み慣れた人
実は『T3』 の数年前に、『南国アイスホッケー部』という久米田康司氏のくだらない漫画で、女性型ターミネーターが出てくるという話があったんですよね・・・ 誰でも思いつきそうなネタだったということでしょうか。そしてそんな話覚えてるのわたしくらいだと思います
ターミネーターがテーマ性薄いというのは同感です。そもそも「1」って一発アイデアでそのまま乗り切ったようなお話だと思ってますから
ただあまりにも皮肉が利いてて見てると暗い気持ちになる『猿の惑星』よりは、こういうバカ映画のほうが好きです
あと「意外性抜群の三作目」というところでは『新・猿の惑星』を越
えるものはないかもしれませんね~
>『夏のあらし!』
ノーチェックでした
『サマータイムマシンブルース』のような話なのでしょうか
タイムパラドックスものではやはり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の右に出る映画はないような。これに関しては、わたしも本当に続編はいらないと思って・・・ いや、ちょっと見たいかな? あれ?
Posted by: SGA屋伍一 | July 06, 2009 07:46 PM
>kenkoさま
速攻返しだ!
T-1は例えて言うなら「ガンタンク」です(わかるかな・・・)
別に人の形してなくてもいいだろ、みたいな
登場シーン3分~5分くらいだったので、覚えて無くても無理はないっす
>シュワちゃん登場シーンのサングラスのギャグかなぁ
みんなここは強烈に覚えてるみたいっすね
宣伝チラシに「1でサングラスをかけてた理由は→むき出しになったメカ部分を隠すため」なんてクイズがのってたんだけど、そんなのすっかり忘れてたっす・・・
明日あたり「エヴァ」の記事書くんで、またお邪魔するっす。よろしくっす
Posted by: SGA屋伍一 | July 06, 2009 08:00 PM
『夏のあらし!』は私もまったくノーチェックだったんで途中からなんですが、『スクールらんぶる』の作者:小林尽と知って観始めました。
TPものなんですが、主人公の不細工な少年がロンゲの美人(これって999のシチュエーションなのかなあ)と太平洋戦争時代と現代を行き来しつつ、当時と今のさまざまな人との関わり合いの中で…
みたいな話なんですが、この美女“あらし”さんが幽霊だってのが変わった設定。
しかも『スクール』同様、ベースはドタコメなんです。
でも『サマータイム〜』とは根本的に違いますし、『バック・トゥ〜』のような正統派SFでもありません。日本ならではの構造といえるでしょうね。
おまけにアニメ化にあたって、スタッフは『さよなら絶望先生』や『まりあほりっく』の監督なのでスンゲー変わってて凝った(あるいはふざけた)演出になってます。
この秋からまた続編となるらしいッスよ。
Posted by: よろづ屋TOM | July 07, 2009 09:56 AM
こにゃにゃちはー
の一言に尽きちゃいますねぇ~(笑)
SGA屋伍一さんの力説、拝読させて頂きました。
だけど、私としてはやっぱりジョンがサル顔じゃーダメなのよ~~~
だってT2であそこまでイケメンパワーを発揮したジョンが何故にサル???どんなうらぶれた生活したって、あれはないわ~ん
>スカちんが誕生しなければカイル・リースが過去に送られることもなく、当然サラ・コナーと結ばれることもなく、
まぁ~それでもシリーズが好きですが(3は除く・笑)
そうなんですよね・・・だけどT2は綺麗に纏まっていたので、あまり考えずにただ感動しておりました。
だけど、最近観たサラ・コナーのドラマだと、そればっかり考えちゃう。
「ジョンが消えるかもしれないのに何故に審判の日回避に必死?」みたいな
Posted by: 由香 | July 07, 2009 10:28 AM
>よろづ屋TOMさま
再びありがとうございまする
『スクールランブル』の方の作品でしたか。あのアニメはちょくちょく見てましたよ。普通の萌え系漫画と違って男性キャラも個性豊かだったんで
TPもの・・・というのは「タイムパラドックス」ものの略ですよね? どうも藤子F先生の『TPぼん』を思い出してしまって
この手のお話もいろいろありますが、『夏のあらし!』はまた独自のアレンジが入った作品のようですね。「太平洋戦争時代と現代を
行き来しつつ、当時と今のさまざまな人との関わり合いの中で…」
このあたりと「ベースがドタコメ」というあたりがどう結びつくのか全然想像できません(笑) とりあえずブックオフででも見かけたらチェックしてみようかしら
Posted by: SGA屋伍一 | July 07, 2009 09:45 PM
>由香さま
こんばんは。あはは。見つかっちゃいましたか
広いお心で読んでいただいたようでまことにありがとうございます
何かの本にマイケル・ビーンにはエドワード・ファーロングよりも、サル顔の・・・ほら、なんてったっけ? 彼の方がよく似てる、と書いてありましたよ
まあ2のコナー君はお母さん似だったのかもしれませんが
そしてマイケル・ビーンの顔がすでに思い出せない・・・・
>だけどT2は綺麗に纏まっていたので、あまり考えずにただ感動しておりました。
ま、そうなんですよね。最後がきれいにまとまってれば、多少矛盾があっても大抵は「そこがタイムパラドックスの面白いところじゃん!」で済まされてしまうんですよね(笑)
『サラ・コナー・クロニクル』は「2と4」をつなぐ話、と聞いて見る気マンマンいだったのですが、あんまし関係ない上に打ち切りと聞いてがくっと鑑賞意欲が落ちました(笑)
ま、地上波でやってくれれば見るかもしれません
Posted by: SGA屋伍一 | July 07, 2009 09:52 PM
わたしTさんは,2回ほどレンタルして観た覚えがあるのですが
細かいところは全く覚えてないのですよ・・・・
↑でよろづ屋さんがおっしゃってたように
2のファーロング少年が美しすぎたせいで
3の・・・誰だっけ?わたしゃ長いことコリン・ファレルだと勘違いしてたサル顔の・・・
俳優さんがあまりにもオーラがなかったのです・・・と思います。
女性ターミネーターは斬新で個人的には好きですね。
ぷぷぷ・・・にしても,T3を擁護してる SGAさんってかわいいです。・・・なんちゃって。
Posted by: なな | July 09, 2009 01:49 AM
>ななさま
こんばんは。これまた広い心で読んでいただいたようでありがとうございます
最近あんまし見てる映画かぶりませんね・・・ 来週あたりようやっと『チェエサー』を見てくる予定です
サル顔の彼、名前調べてきました。ニック・スタール君
フィルモグラフィー見ると2005年の『シン・シティ』以来映画出演が途切れているようで・・・
しかもそれでやってた役がメチャクチャひどい役でした
哀れニック
>T3を擁護してる SGAさんってかわいいです
照れます
まー要するにひねくれモノなんですよ
Posted by: SGA屋伍一 | July 09, 2009 10:16 PM