カラー交じりの兄弟 ミッシェル・オスロ 『アズールとアスマール』
青い瞳を持つ貴族の少年アズール。彼はアラビア人の乳母に、彼女の息子アスマールと兄弟のようにして育てられる。だがやがてアズールは寄宿学校へ行かされることになり、アスマールは主人の不興を買った母ともども故国へと追いやられ、二人は離れ離れになってしまう。
成長したアズールは乳母から聞いた「ジンの女王」の話が忘れられず、海を越えた冒険の旅に出る。しかし彼がたどりついたその土地では、青い目は災いを呼ぶものとして忌み嫌われていた・・・・
最近のジブリさんは海外の名作アニメの配給などもやっておりまして、これもその内の一本。その風変わりな絵にひきつけられ、前々から興味を持っていたところ、先日某所で特集上映があり、ようやく拝見することができました。まーDVDも普通に出てるんですけど。
他のラインナップが、後の作品に多大な影響を与えた記念碑的なものがほとんどなのに対し、こちらはフランスで2006年公開とわりと最近のもの。時の洗礼は受けていなくても、十分過去の名作に比肩しうると考えたのでしょうね。ジブリさんは。
さてその画風ですが、ハリウッドのCGアニメとも、日本のセルアニメとも全く異なった印象を受けます。陳腐な表現ですが、絵本の絵(モザイク風)がそのまま動いているような。百聞は一見に如かず。とりあえず予告編をご覧ください。NHKは『みんなのうた』にも、こんな感じのがあったかなー 幾何学模様と溢れんばかりの豊かな色彩。時折チカチカと明滅するちいさな光。昨年の『落下の王国』のヴィジュアルにも少し似ています。
序盤は割りと地味で暗ーい展開が続くのですが、主人公二人が再会してからは、物語はおとぎ話の世界へとどんどん突き進んでいきます。
以下はさらにネタバレしていきますので、これから見ようかな、という方は避難してください。
この手のお話に欠かせないのが、難関を突破するための貴重なアイテム。わたしにはアズールがそれを手に入れるくだりが大変興味深かったです。青い目が忌み嫌われていると知ったアズールは、目を閉じて盲人のフリをします。しかしそれがきっかけとなって、彼は重要なアイテムを二つもゲットすることになります。これはつまり目に見えることだけに頼るんじゃない、という監督のメッセージなんではないかと。
あともう一つ重要なアイテムがあるのですが、それに関しても力で奪い取るのではなく、兄弟を思いやる気持ちから得られたものであります。難関を乗り越えるには、競争しあうのではなく、協力しあうことが大事・・・ そんな声も聞こえてくるかのようです。
しかしこのお話で最も重要な教訓は、やはり人種に優劣などない、ということ。赤や青、黄色や緑・・・様々な色にどれが優れている、ということなどないように。そして、色は文字通り色々あったほうが楽しいものです。
そういやこの映画が公開される少し前には9.11の影響で世界的に中東系への敵意が高まったり、極右政党である国民戦線が台頭してきたり、さらには黒人の若者の死がきっかけになってパリ暴動なんてのが起きたり・・・・おフランスもそれなりに波乱の時期だったようです。そんな中にあってこういう映画を作るオスロ監督の勇気にはほとほと感服いたします。その甲斐あってか?極右政党も最近はだいぶ勢いが弱まってきたみたいですが。
まあこんなめんどくせ~~~こと考えずとも、ファンタジーの世界に身をゆだねているだけで、十分楽しめる作品であります。オスロ監督の想像した新世紀のアラビアン・ナイト、とも言えるでしょう。
次回のジブリ配給作品は『ウォレスとグルミット』の最新作。待ってました! たとえ新作映像が全体の三分の一ほどであっても、オレは見る!
Comments
初めまして。
「伊坂幸太郎 イラスト」で検索していて行き当たりました。
私も伊坂さん、特に『重力ピエロ』が大好きです。
ブログにちょこちょこっと貼り付けてあるカット、管理人様が描いていらっしゃるのですか? イイデスネ。
また遊びに来ますね。
Posted by: 風斗碧 | July 24, 2009 09:58 PM
>風斗緑さま
ようこそはじめまして!
伊坂作品は友人にすすめられて昨年くらいから読み始めたのですが、ハズレがないですね。いまのところは
1・死神の精度 2・アヒルと鴨のコインロッカー 3・重力ピエロ&オーデュボンの祈り の順番で好きです
そちらのHPも見させていただきましたが、風斗さまのていねいな絵に比べると、こちらは子供の落書きで実に恥ずかしいですね
でもお褒めの言葉ありがとうございます!
Posted by: SGA屋伍一 | July 25, 2009 07:15 AM