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June 27, 2009

バネもスプリング 伊坂幸太郎 『重力ピエロ』

090627_172143映画関係で飛んできた方、すいません。これ小説のレビューです。そんなわけで今話題になっている、伊坂幸太郎の『重力ピエロ』、ご紹介いたします。
新潮文庫カバーのあらすじが秀逸だったので、恐縮ながら丸コピさせていただきます。

「兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するかのような謎のグラフィティアートの出現。そしてグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とはー」

伊坂作品は推理小説のような謎解きと、繊細な人々の群像劇がからみあって成り立っているものがほとんどです。この『重力ピエロ』もそうした作品ですが、こちらにおいては他の作品よりも「謎解き」の比重が軽いように感じられました。
もちろん読んでいくうちに明らかになる、幾つかの意外な真実には驚かされます。が、メインの謎に関してはそれほど意外性はなかったような。

伊坂さんもきっとそれは承知の上で書いていたのではなかろうかと。なぜかといえばこの本のオビには作者のこんな言葉が書いてあるからです。

「この本は、僕にとってすごく大事な作品で、たぶんずっとそうです。」

恐らくそれまでの作品とはまた違った意気込みでもって、執筆していたのではないでしょうか。
伊坂氏はやや自嘲気味に自分の作品のことを「寓話的であるけど、寓意はない」と語っておられました。この言葉から、あまり重く熱いテーマやメッセージを掲げるのは好きではないことが察せられます。

しかしこの『重力ピエロ』の内容はやや重たい。彼の軽妙な文体やユーモアはそのまま残されているけれど、「遺伝子の支配力・影響力」「罪と罰(というか法律)」「辛い事実とどうやって接して生きていくか」 否応なく読者にそうした問題をつきつけます。

さすがに五冊目ともなると気がついたことがありました。伊坂作品には現代の大衆文学にしては珍しく、エロシ-ンがほとんどありません。エロい人間は時々出てきますが、そうしたキャラが実際に行為に及んでいる場面は記憶にありません。単にシャイなのかな、と思っていたのですが、『重力ピエロ』を読むと、伊坂さんが春と同様にそうした「性的なもの」を忌避しているような気がしてなりませんでした。

こうしたテーマについて真っ向から語ることは、自分の内面をさらけ出すことでもあります。当然ながら、作家も相当消耗するはず。それでも勇気をもって書いてみた、ということで、とりわけ思い入れの深い作品になっているのでしょう。


この本を読んでいてもう一つ思ったのは、「えらい人ってどんな人だろう?」ということ。
わたしは「偉そうな人」というのが嫌いなので、世でいう「偉い人」の大半は偉いとは思えないのですが、この本に出てくる兄弟の父親の描写を読んでいて、「偉い人っていうのはこういう人のことを言うのではなかろうか・・・」と感じずにはいられませんでした。

ほとんど欲を持たず、家族のために生涯を捧げ、過去やしがらみや世間のやっかみにとらわれず、それでいて自分の中に大事な基準はしっかりと持ち。癌が刻々と進行しているにも関わらず、いつも極めて自然体であったりする。そしてその人柄でもってモデル級の美女をも虜にしてしまう。
彼我の差はあまりにも大きいですが、できればこんなオヤジになりたいものです。わたしは緒形拳さんか山崎努さんのイメージで読んでいたのですが、映画でのキャストが小日向文世さんというのを聞いて、「なるほど」と思いました。ちなみにイラストは一応映画キャストのイメージで書いてますcoldsweats01

春と泉水の独特な絆にも興味をひかれます。どちらかといえばここまで仲のいい兄弟は少数派だと思いますが、複雑な事情を持つ二人ゆえに、「兄弟たらん」と強く思うのかもしれません。

090627_172208遺伝子というのはかなりやっかいな支配力を持っていますが、その力は絶対ではなく、考え方ひとつで軽々と飛び越えることができる。それがわたしがこの小説から受け取ったメッセージです。願わくばそのメッセージが春のように悩んでいる、全ての若者に届きますように。

わたしには一卵性双生児の姉を持つ友人がいます。友人に言わせると、彼女らは双子でありながらかなり性格が違うのだとか。遺伝子はまったく同じで環境もほぼ同じはずなのに、いったいどうしてそんな差が出来てしまうのか? 人間って、つくづく不可解な生き物であります。

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Comments

こんにちは~♪
雨ですね~rainでも今日は過ごしやすい気温かな・・・

さて、重力ピエロを読まれたんですね~
伊坂作品5冊目ですか?
私はこれを最初に読んだので、スッゴク新鮮でした。独特の雰囲気に惹かれたの~

この物語は兄弟もいいですが、お父さんが魅力的ですよね~
映画の小日向さんも良かったですよ♪

ちなみに私も“偉そうな人”は超~苦手です。
勘違いだったり、虎の威をかったりなんだもの・・・coldsweats01

Posted by: 由香 | June 28, 2009 at 03:13 PM

このイラストの泉水、私のお気に入りのしゃまらんを彷彿とさせる
テイストでイイ感じcatface

伊坂作品5冊目なんですね。
伊坂さんの小説って何冊か読んでると、共通のキャラクターが
出てきたりするのに気が付きますよね。黒澤とか。
そういう「読んでる人にだけ分かる」的な仕掛けも
すごく独特で面白いなと思います。

映画はキャストがみんなイメージにピッタリで良かったです!
「ラッシュライフ」も楽しみ♪

Posted by: kenko | June 28, 2009 at 11:53 PM

>kenkoさま

こんばんは。今日はマタうってかわって暑い日でしたね・・・
もう夏っすよ、夏

というわけで『重力ピエロ』。由香さんはこちらが伊坂作品とのファースト・コンタクトでしたか。代表作にあげる人多いですもんね。わたしも前からタイトルだけは知ってました

上に書き忘れたんですけど、伊坂作品って実は「家族の絆」を描いたものってほとんどないですよね。春・泉水・父・・・ それぞれ親しみの持てる、いい家族、いい野郎どもでした

由香さんもご近所やらお子さんの学校の関係やらで、「偉そうな人」とよく会うのでしょうか。本当に尊敬できるのは、そういうのと真反対の人たちですよね

Posted by: SGA屋伍一 | June 29, 2009 at 07:00 PM

>kenkoさま

こんばんは。毎度どうもっす

泉水くん気に入っていただけましたか(笑) わたし流に加瀬亮を描くとこうなります

作品間リンクは面白いですよねー こういう「遊び心」があるところに魅かれます

そうそう、この本読んで「黒澤って面白いヤツだなー」と思っていたら、次に読んだ『ラッシュライフ』でけっこう重要な役どころで登場してきてびっくりしました

本当に次々映画化されてますよね・・・ 次は『ゴールデンスランバー』だそうです

Posted by: SGA屋伍一 | June 29, 2009 at 07:08 PM

伍一さん
何度か朝〜トライしてたんだけどメンテ中だったようで
アクセス出来なかったよ〜!

伊坂作品5冊目?!
すごい。わたし自慢じゃないけど1冊も読んでない(笑)
本の方はどんなかな?
重力ピエロ、映画はかなり面白かったです。
ゆれる監督のディアドクターより良かったな☆
伍一さん、映画の方はまだですよね?
感想待ってますー

あは最後の絵、そっくりgood

Posted by: mig | June 30, 2009 at 11:06 PM

>migさま

ごごごごめんなさい!
メンテあるときはいつも告知いれるんですけど、今回は久しぶりだったんでうっかりしてました! ホントお手数かけました~

伊坂作品も最初はとっつきにくかったんですが、1冊、2冊と読んでいくうちにだんだんなれてきちゃいまして。とりあえずこの『重力ピエロ』と『アヒルと鴨のコインロッカー』あたりがおすすめです

映画・原作両方読んでるひとに言わせると、「原作の方がムード的にさっぱりしていて、もっと細かいエピソ-ドがいろいろある」とのこと
です

んでまたまた申し訳ないんですけど、映画の方は見に行く余裕がなさそうなんですよね~

代わりといってはなんですが、『リリィ、はちみつ色の秘密』見てきたんで、感想書いたら速攻でお邪魔します!

あと来週出張してようやっと『チェイサー』見てくる予定。初めていくとこなんでたどりつけるか不安(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | July 01, 2009 at 08:01 AM

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Tracked on June 28, 2009 at 03:07 PM

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