SEX AND THE 死体 コーエン兄弟 『バーン・アフター・リーディング』
ジョン・マルコビッチは悩んでいた。左遷された腹いせで長年勤めていたCIAをやめてしまったものの、これからどうやって生活したらいいのか。とりあえず彼は回顧録を出版することを思いつく。
ジョージ・クルーニーも悩んでいた。熱烈浮気中のティルダ・スウィントンから結婚の話をもちかけられたからだ。まいったな。キミとはあくまで浮気であって本気じゃないんだ。ぼくには出会い系で待たせている女の子たちもいるし、オーシャンズの仕事も忙しいし、なにより金づるのワイフと別れるわけにはいかないし・・・なんてことは、口が避けても言えないし。
フランシス・マクドーマンド(あまり聞かない名だ)も悩んでいた。そろそろ出会い系で一発勝負をかけたいのに、自分の容貌は衰えを隠せない。だから全身整形で生まれ変わりたいのに、肝心の金がない。ああもう! どっかに大金落ちてないかしら! きい!
ブラッド・ピットはまったく悩んでいなかった。てゆーかさあ、大抵の悩みはノリと元気でなんとかなるもんじゃない? そう、元気があればなんでもできる! ワン・ツー・スリー・フォー・サン! ニイ! イチ! ダー!
お話は複雑な経緯でマルコの回顧録を手にしたブラピ&整形願望が、それを「とんでもねえ国家機密だ!」と勘違いしたことから、予想だにしない方向へあれよあれよと転がっていきます。
監督は昨年の『ノー・カントリー』が記憶に新しいコーエン兄弟。わたくし彼らの作品は他に『ファーゴ』と『バートン・フィンク』を見たことがありましたが、今回の作品が一番バカっぽかったです。
きっと『ノー・カントリー』で疲れ果てた兄弟が
弟 「兄ちゃんさー こんどは気分転換にぐっと軽いおバカな映画でも撮ってみない?」
兄 「いいな、それ。賛成」
そんな感じで作っちゃったんだろうと。
さすがはコーエン兄弟というべきか、各キャラの立ちっぷりはなかなか見事なものです。彼らが全力で空回る序盤は、痛々しくもおかしい。
以下はだんだんネタバレしてくんでご注意ください。
なかでもわたしが気に入ったのはおバカ全開のブラピ。こないだの『ベンジャミン・バトン』での寂しげなイメージが木っ端ミジンコになるくらい、バカ丸出しです。それに「あのまま置いといたら盗まれちゃうよ!」「殴るなんてひどいよ! オヤジにもぶたれたことないのに!」といったボクちゃん口調の字幕が、似合うこと似合うこと。きっとこいつ、母親に溺愛されて育ったんだろうなー
でもねー、なんかこいつかわいいんですよ。自分、ブラピのファンでもなんでもないんだけど、ヤツの頭をクリクリなでまわしたい衝動にかられました。・・・・おかしいわ、わたし。いままで男の人にこんな気持ち抱いたこと、一回だってないのに。この不思議な気持ちはなに? もしかしてK・O・I? L・O・V・E?
だのにそのブラピがねー ここでぐっと下がるわたしのテンション。
コーエン兄弟は前からSっぽいなと思ってたけど、今回改めて確信しました。ふたりはSです。彼が二度愛してるかどうかはわかりませんが、正真正銘のドSです。
それ以後もお話は続くものの、終盤に近づくにつれ、登場人物の痛々しさはますばかり。そして煙にまくようにして唐突に幕。完全に置いてけぼりをくらった気がしました。
わたしもおバカな話は嫌いじゃないんですけどね。コーエン兄弟のバカには人間に対する愛情が感じられないのですよ。それでも『ノーカントリー』や『バートン・フィンク』には好みを気にさせないくらいの勢い・面白さがありました。が、こちらはどうかと言うと・・・・(笑)
いろいろ悪口書いてすいません 各俳優に思い入れのある方だったら、いつもとは違う彼らの姿が見られるのでそれだけで楽しめるかもしれません。先のブラピはもちろん、マルコビッチもクルーニーも壊れまくってます。
それにしても、出会い系の事情とか、アメリカも日本と大差ないんですねえ。今度わたしもピュ○・アイとかに登録しようかしら。カモン出会い!
Comments
SGAさん的にはイマイチだったようですね
唐突な幕も含めてけっこう楽しかったんですけど、
世間の評価もあまりよろしくないみたい。
やっぱブラピの扱いが、あまりにあんまりだからでしょうか。
でもまぁ彼にはこの騒動の責任の一端はあるわけだけど
最後のあの人はさすがに気の毒でしたです。
Posted by: kenko | May 08, 2009 09:55 PM
SGAさんこんにちは♪
相変わらずタイトルと出だしが素敵です~。
特に「ワン、ツー、スリー、フォー、さん、にー、いち、ダー!」が気に入ってしまいました!
Posted by: とらねこ | May 09, 2009 05:28 PM
>kenkoさま
こちらにもありがとうございますー
お笑いの感覚って人それぞれですからね~ ブログ見て回ると、「面白かった」って人もけっこういますよ
ただちょっと自分には波長が合いませんでした。うけたところもあったけど
ってか、これお笑い映画でいいんですよね? あれ?
ブラピの使い方は非常に斬新でしたね。『エグゼクティブ・デシジョン』のスティーブン・セガールほどではないにせよ
でもブラピ目当てで見に来た人は、あれにはやっぱしガッカリするでしょうねー
Posted by: SGA屋伍一 | May 09, 2009 08:18 PM
>とらねこさま
こんばんは! ♪つくつくほーし
お褒めの言葉ありがとうございます。実は前に『死体・オブ・エンジェル』というのもやったことありました・・・ 『ブラックダリア』の記事でした・・・
そんでドラマ『性と都市』は一秒も見てません(笑) もちろん映画も
ダー!に反応されましたか。さすがとらねこさん
ちなみに猪木さんのお兄さん、なぜかウチの市の市長選に出馬されたことがあります。が、残念ながら落選されました
元気だけではどうにもならないこともあるようです
Posted by: SGA屋伍一 | May 09, 2009 08:23 PM
伍一さん☆
このブラピにlove心を抱いちゃったのね
そんな伍一さんには是非『セブンティーンアゲイン』をみてもらって
ザックエフロンにハマって頂きたいです(笑)
今回は初期のコーエン兄弟作品テイストでした〜、
ブラピはおいしいところでいなくなっちゃうからいいんですよ〜!
美味しい!もっと食べたい!って思ってそこで我慢しちゃうような。
あれ?違うか(笑)
Posted by: mig | May 11, 2009 12:17 AM
>migさま
おはようございます! 素早いお返しまことにありがとうございます~
>ブラピに恋心
キモくてすいません
まあmigさんもいい加減わたしのオネエ言葉に慣れてくれたかもしれませんが(笑)
ザック・エフロン出演作は未だに一本も見てないですねー 『セブンティーンアゲイン』か。17歳には戻りたくないけど、24歳くらいには戻りたいかも
>美味しい!もっと食べたい!って思ってそこで我慢しちゃうような。
わかるわかる
以前よく焼肉食べ放題で、勢いに任せてくいまくってたら、店を出るころにはおなかが破裂しそうになってしまって
「うー おれは馬鹿だ・・・ なぜわざわざお金払ってこんな苦しい思いをしてるんだ・・・」
なんて思ったものでしたから。最近はさすがにある程度までいくとセーブが効くようになりました
そういうことですよね? あれ?
Posted by: SGA屋伍一 | May 11, 2009 08:13 AM
こんばんは~♪
でした~
私も可愛いチャドちゃんが、あ~んな事になってビックリ&テンション
それにしてもブラピ恐るべし!!!あのチャドは演技ではなく隠していた地なのかってくらいハマっていましたね~
40才過ぎであの愛らしさを出せるなんて、、、ただものじゃーありません
で、、、映画はねぇ~私もイマイチでした。
『コーエン兄弟のバカには人間に対する愛情が感じられないのですよ』
きっとここだと思います!!のれなかったのは。
バカやってるんじゃーなくて、バカにした感じ?妙に居心地が悪かったですぅ~
さぁ~GOEMONへレッツゴー
Posted by: 由香 | May 11, 2009 10:11 PM
>由香さま
おはようございますー お返しありがとうございまする
キャラの人気はやっぱりブラピが一番のようで
本当にあのキャラで一本映画作ってほしいです(笑)
コーエン兄弟って魅力的なキャラを作るのはうまいんですよね。そういうのって少なからず人間への愛情というか、関心がないとできないと思うんですけど、どうしてこう作品は悪魔的になってしまうのか・・・
人間って不思議ですよね(笑)
ちょうどホラー映画で「なんとか生き延びてほしい!」と思うようなとっても好感のもてるキャラが、なんの前ぶれもなくバサッと死んでしまう、あんな感覚とよく似てます。『ミスト』なんかはそのオンパレードでしたねー
Posted by: SGA屋伍一 | May 12, 2009 07:42 AM
はじめまして!YUKAさんの『キャシャーン』から跳んできた、CASSHERNを応援するものの一人であります。
そしたらこちらで書かれている記事の数々、ユニークやわ、挟み込まれているカットがやたらおもろいわ…いっぺんにファンになってしまいました。
ご挨拶代わりにたまたま同じ作品を拝見してましたこの映画と『スラムドッグ〜』を押しかけトラバさせて頂きました。
よろしければご一読ください……歪んだ見方とクドイ文面が持ち味ですけど。
願わくば今後ともよろしくお願いいたしますです。m(_"_)m
Posted by: よろ川長TOM | May 18, 2009 11:27 AM
>よろ川長TOMさま
ようこそおいでませ
はからずも「おかしい人」呼ばわりすることになってしまい、大変申し訳ありません。は、はんせー・・・
実はよろ川さまのお名前はずいぶん前から存じ上げております。古くは猫姫さんのところから。ほかにもあそこやあそこなどで
んで、時折お宅のぞかせていただいたりもしてました
繊細でキュートな絵を描かれる方だなーと。わたしのなんぞは所詮落書きの域を出ないもんですが、よろ川さまの絵はほんまもんだと思います
そんなわけで、こちらこそよろしくお願いいたします。のちほどうかがわせていただきます!
Posted by: SGA屋伍一 | May 18, 2009 08:52 PM