かもすぞジャパニメーション 京田知己 『劇場版交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』
時は近未来。人類はイマージュと呼ばれる謎の生命体の襲撃を受け、徐々にその生活圏を奪われていた。
そんな危機をよそに、父が勤める研究所で暮らしていた少年レントンは、やはりそこに住むエウレカという少女と共に楽しい日々をすごしていた。しかしある実験がもとで父が死んだのち、レントンとエウレカは軍によって引き離される。
それから数年後、いまだ少年の身のレントンは類稀な才能を買われて、軍のある作戦に従事していた。戦いの最中エウレカと再会したレントンは、少女の抱えている過酷な運命を知ることになる。
原作?は今から4年前~3年前に放映されたテレビアニメ。わたしもこんな記事書いてました。
「ロボットが空中でサーフィンをする」というヴィジュアルや、そのほかにも音楽、ストーリー、世界観などになかなか突き抜けたものがあり、一部では熱心なファンを獲得しましたが、世間一般での人気はいまひとつ。その後北米やフランスで大好評を博したものの、本国での再評価には至りませんでした。
それがなぜかここにきて劇場版の制作・公開とあいなりました。テレビシリーズとは設定を一新したパラレルストーリーですが、作品の随所にテレビ版の映像が流用されていたりします。それでもざっと見た限り全体のほぼ七割以上は新規作画ですし、流用したものを使ってここまで新しい物語をこさえた手腕には舌を巻かされます。
先の『グレンラガン』が「気合! 根性! ガッツ!」に満ちた男魂溢れるアニメとするなら、こちらは少年少女の「純愛
」が前面に出た作品。
一寸の迷いもなく「好きだ好きだ好きだ好きだ!」と言い放つレントンには、30男としては少々気恥ずかしさを感じないでもないのですが、「そういえば、かつてはわしも通った道じゃった・・・・」ことを思い出し(マジか!?)、なんだか初孫を見るような、そんなほんわかした気持ちになりましたよ。
そう。これほど美しい・・・というかみずみずしい物語を、本当に久しぶりに見ました。映像は落ち着きのある豊かな色彩で彩られ、キャラクターはどこまでも純粋で、そしてストーリーはどこまでもまっすぐ。
暗いニュースでやさぐれたハートを洗浄するには、もってこいのアニメです。
それだけにアニメファンのみならず、普通の映画ファンにもぜひ見てもらいたいところなんですが、この「ロボットアニメだから」という壁は実に厚いものでして。一生懸命すすめても、大抵は「絵が苦手なんで」の一言で退けられてしまのがツライところであります。
そういう空気が劇場にも伝わってるのか、この作品なんか当初は都心の劇場では、モーニングかレイトでしかかけないというひどい扱い。わたしがGWに行った時には、そのわずかな回に人が殺到して、立ち見すら出来ない状態でしたから・・・(そんでまた後で行きなおしたのよ)
こういう熱気が、映画界におけるこの手のアニメの地位向上に、少しでもつながればいいんですけどねえ~
ま、あまりのファンの殺気だった様子を見て劇場側も考え直したのか、その後は上映回数も増え、公開延長も決定したようです。
6月末にはDVDも発売されますが(バカっ早だよ!)、足を運べる距離のある方は、ぜひ大画面でみてつかあさい。
Comments
「アニメだから、ましてロボットものはなあ」という言葉は私も身辺キャンペーン中にしょっちゅう耳にする悔しい言葉です。
「まま、一度観たらその魅力は解るから」と薦める自分が哀しい。
その悔しさ、また「こんなエエ作品を食わず嫌いしてたら損やんか!」という意味でも、映画好きを自認する人にこそ観て欲しくて、メジャーな映画の評の合間にアニメの真面目な紹介文をのっけておりますが。
なんせガンダムでさえも(といっても途中迷走した作品もあるから全肯定はできませんが)ロボットもん、ってカテゴリーですからねえ。
人型兵器アニメは、世界的シリーズものスペオペ大作映画なんかより遥かに高尚でメッセージ性に富んでいる作品が多いと思うんですが、この差別をなくすのは野郎をフランス恋愛映画にハメさせるよりも難しい。
だからといってガンダムが実写さながらの生臭い絵面やアメリカ風のふにゃふにゃorガタピシな絵になるのはついていけませんけど。
エウレカのリベンジが『ザムド』だと思ってますが、劇場版エウレカも最初からDVDセルでの興行を考えてのことでしょうね。
それにしてもエウレカの名塚佳織さんは上手い。しかも美人だしなあ…
Posted by: よろ川長TOM | May 24, 2009 03:50 PM
>よろ川長TOMさま
おはようございます。コメントありがとうございます
いろいろありますよね~ もっと「世間一般に評価されてもいいのに」というアニメ
特に『無限のリヴァィアス』や『ゼーガペイン』などは、このまま忘れ去られてしまうのは口惜しいかぎり
よろ川さまは啓蒙活動も熱心にされてますよね。自分も指をくわえているだけではなく、埋もれた傑作をもっとプッシュせにゃいかんなあ
辛うじてこの壁を乗り越えたのが『エヴァ』くらいでしょうか。よろ川さまはあまりお好きではないようですが
ちなみにわたしは愛憎半ば、といったところです
恐らく『破』の大ヒットはまちがいなしかと思われますが、『00』の劇場版はどうなるかなあ
>名塚佳織さん
そういえばあんまし知らないなあ、と思って検索してみました
・・・・素敵だ!
ナナリーちゃんもこの人だったんですね
Posted by: SGA屋伍一 | May 25, 2009 07:40 AM
もっかいすみません。『ゼーガペイン』を押されてるとは嬉しい限りです。
アレは泣けましたねえ〜。(つД`);; 設定も物語も立派なSFでしたし、たとえば実写で(やってほしくないけど)ハリウッド製だったら立派にマトリックスの向こうを張れましたでしょうし。
やはり障壁はヒトガタ兵器というカテゴリーのようですが…
残念ながら『無限のリヴァィアス』は見逃してます…深夜帯のアニメはかなり密に網を投げてないと逃しますねえ。
また、関西ではやってない(またはその逆とか)…なんてのもザラですし。
今の声優さんたちは歌ウマし、美人&カワイコちゃん多しですよ。いや、昔の声優さんがドーとかではなくて。
しかも作詞作曲までやってしまうシンガーソングライティング声優さんも多々おられるから驚きます。
Posted by: よろ川長TOM | May 25, 2009 05:50 PM
エウレカセブン、チラ見はしてたんですけど
通してちゃんと観たことないんです。
絵は好みなんですけどね。菌も出てくるの?
私が今観てみようかなーとうっすら思ってるアニメは「キャシャーンSINS」。
SGAさんはご覧になったことありますか?
それとあの・・・龍騎、コンプリートしてしまいました。

はぁ〜・・・もうドップリ、ハマりましたよぅ。ちょっと疲れた。。。
ラースの記事で書いてくださってたSGAさんのお返事を読まずに
観続けていたため、テレビ版のラストの後、劇場版、スペシャルの順で観てしまった
王蛇が好きですが、タイガ東條の最期にかなりグッときました。
あと、オルタナティブのデザインにもときめきました
観始めると人としてかなりダメな一日を過ごすことになるので、
ちょっとお休みしてから、555に取りかかろうかなと思ってます。
Posted by: kenko | May 25, 2009 10:45 PM
>よろ川長TOMさま
またまたご来訪ありがとうございます
わたしも『ゼーガペイン』に反応してくださって嬉しいです。あれはほとんど振り返られることのない作品なんで・・・
P・K・ディック的世界観をあそこまでつきつめたアニメは他にないんじゃないかと。せっかく修復した友情を一からまたやりなおさねばならないくだりは、本当に泣けましたね・・・
最近数年前のアニメがパチンコで再注目されてるじゃないですか。あの方式で『ゼーガ』も・・・と思う反面「パチンコじゃ台無しかなあ」とも思う自分がいます
『リヴァィアス』はかなり重苦しいアニメでしたが、それだけにひときわ強く印象に残った作品でした
最近の声優さん、特に女性は入れ替わりが早くて、なかなか覚えられないんですよね。長くやってる方はそれなりにわかりますが
でもとりあえず名塚佳織さんは覚えました!
Posted by: SGA屋伍一 | May 26, 2009 07:44 AM
>kenkoさま
おはようございます
『エウレカセブン』、ちら見じゃちんぷんかんぷんだったのでは(笑)
かわいい菌が出てくるのは劇場版だけなので、とりあえずそちらから入ってみてはいかがかと
『キャシャーンSins』はほぼ全話見ましたよ。叙情性溢れるいい作品でしたが、やや観念的なところがあり、人によっては「退屈」と思うかも。『龍騎』『電王』の小林靖子さんがシリーズ構成を担当してますが、彼女自身が書いた本は六話のみです
で、『龍騎』コンプリートされましたか
あれはねー 「来る」よねー
王蛇、タイガ、教授、それぞれに強烈なキャラでしたが、やっぱりわたしはラスト三話の真司と蓮のやりとりが一番強く記憶に残ってます
『龍騎』についてはこの辺に書いてあるんでよかったら見てみてつかあさい
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/05/post_b317.html
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/06/post_8ea9.html
王蛇で好きなセリフは「食うか?」
意外と義理堅い(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | May 26, 2009 07:57 AM
龍騎などにも造詣の深い方でしたか。当然ですよね、この流れからすると。
私もふたつの記事、読ませていただきました。熱い。じつに熱い。また観たくなりましたよ。
個人的に印象深い台詞は「…吾郎ちゃん」だったりしますけど。
今後のSGA屋さんのライダー系記事も楽しみですわあ。ヽ(´∀`*)ノ
Posted by: よろづ屋TOM | May 26, 2009 10:57 AM
>よろ川長TOMさま
おはようございます。リンク先まで読んでくださり、まことにありがたい限りです
『龍騎』はとりわけ思い入れの深い作品です
造詣が深い・・・というほどでもないですが
アメコミ『XーMEN』の邦訳が止まってしまい、「正義の相対性」を問うような作品に飢えていたころに平成ライダーが始まり、「こういうのを待ってたんだよ!」と狂喜したものでした。その前にも『ウルトラマンガイア』などありましたが・・・
最近の記事はおちゃらけモードで書いてますが、それでよかったらどうぞごらんください
Posted by: SGA屋伍一 | May 27, 2009 07:02 AM
こんにちは。
TVシリーズの成績を見ればこんなものでしょうし、異例の早期DVD化が決定しているからでしょうか、上映館が異常に少ないですよね。
印象としては2時間枠によくぞ嵌めたものだという感じ。
”純愛ストーリー”なところは、「ウォーリー」にそっくりだったし、初めて見る人にもお勧めできそうです。
キリリをしたエウレカがカッコ良いですね。
ここのところめきめき力をつけている名塚さんがとても良かったです!
Posted by: たいむ | May 28, 2009 06:50 PM
>たいむさま
おかえしありがとうございます
今回まるきり『螺巌編』と公開時期がかぶってしまった『エウレカ』ですが、この二者、扱いにかなりの開きがありますよね
『グレンラガン』だって世間的にはそれほど浸透してはいないと思うのですが、やはりテレビ放映から三年も経ってるということでこういう扱いになったのでしょうか
>『ウォーリー』
なるほど。確かに似ている(笑) でも天然女子を情熱で振り向かせるというところは、どちらかといえばテレビ版のストーリーの方に近いかも
>キリリと決めたエウレカ
どうも。これもどっちかっていうとTV版のエウレカですけど
そういえばTVシリーズのエウレカは、三回髪型の変わった珍しいヒロインでした
Posted by: SGA屋伍一 | May 28, 2009 10:05 PM