星に怒りを 今石洋之 『劇場版天元突破グレンラガン 螺巌編』
かつて、銀河を揺るがした戦いがあった
男は荒ぶる魂の赴くまま、天をかけ、星を砕いた
だがおびただしい時間と犠牲を費やしたのち、男は敗れる
そして男は自らを地の果てに封じ込めた
閉ざされた世界にあって、絶対的な王として君臨し続ける男
だがある時、その懈怠を破るものが現れた
計り知れない螺旋の力を持つ、一人の少年
男は知らなかった。やがて己が少年に誘われ、再び天空の彼方に戦いを挑むであろうことを
全宇宙を感動の渦に巻き込んだ紅蓮編(紹介記事はコチラ、ネタバレ記事はコチラ)から約九ヶ月、劇場版『グレンラガン』の完結編となる「螺巌編」がついに公開されました。
お話は前作の直後である「テッペリン攻略戦」から始まります。いきなりどつきあってる螺旋王とラガン(シモン)。もしかしてテッペリン攻略戦はここだけしかやらないのか!?と不安になりますが、もうちょっとだけやるのでご安心?を。
がんばってはいたもののどうしてもツギハギ部分が残ってしまった紅蓮編に比べると、今回の螺巌編は実にスムーズな作りで、見事に一本の映画となっていました。単なる総集編ではなく、かなりの新規映像が追加されております。テレビ版と異なる部分もかなりありますので、ファンの人は必見です。
さて、今回の「螺巌編」ですが、「いかにでかいものを描くか」ということに挑戦した作品だと思いました。
まず一つは精神というか、器の大きさ。
自分の何十倍もあるドリルと対しながらも、「負けねえ。負けねえんだよ。兄貴が信じる俺は、俺が信じる俺は、誰にも負けねえ!」と微塵も揺るがず言い放つシモン。「紅蓮編」で泣き言ばかり言っていたころとはまるで別人です。
思えばてっきりテッペリン攻略戦まで行くかと思っていた「紅蓮編」ですが、なぜその手前で終ってしまったのか。単に尺の問題とも考えられますが、今にして思えばこの物語の真のターニング・ポイントは、螺旋王を倒すところではなく、シモンがカミナの死を乗り越えた、あの瞬間だったということなのでしょう。
自分にとって最大の壁を乗り越えたシモンは、すでに男として、あるいは戦士として完成された域に達しております。たとえかばってきた民衆から石を投げられようとも、月が落ちてこようとも、はたまた銀河全体を敵に回そうとも、「この男ならなんとかするだろう」と思わせる雰囲気を身にまとっています。紅蓮編でのハナタレシモンを思い出すと、ちょっとさびしいものもありますけどね~
もう一つはスクリーンの中にいかに宇宙を描ききるか、ということ。
映画スクリーンはもともとでかいものですが、そのスクリーンをもってしても、宇宙全体を描くのは至難の技です。
しかし『グレンラガン』では人間サイズから宇宙サイズへと拡大していく様子を段階的に描くことにより、観客に擬似的に宇宙のでかさを体感させることに成功しております。
そしてこれはテレビ画面ではなく、映画スクリーンだからこそ体感できるものです。前の記事でも書きましたが、やはり『グレンラガン』は劇場サイズでこそ真価を発揮する作品であると思います。
そして螺巌編でさらにエスカレートしているのが、ドリルへのこだわり(笑)。一体なんでこんなにドリルにこだわるのか。建前は銀河の渦や遺伝子構造の象徴ということなんでしょうけど、やはり本当のところは『ゲッターロボ』(特に原作版)への熱いオマージュなのだと思います。
気合一つで宇宙の果てまでケンカを売りにいく荒くれ野郎ども。その姿は石川賢・原作の『ゲッターロボ・サーガ』や、『虚無戦記』のヒーローたちとよく似ています。巨大な顔が無数に浮かぶビジュアルや、宇宙の造りに対する考え方も、石川作品のあれやこれやを彷彿とさせます。
この螺巌編は鎮魂歌のような趣もあるのですが、もしかしたらともに作品を作ったこともある脚本中島かずき氏の、今は亡き石川賢先生に手向けたレクイエムだったのかもしれません。そう思うと、なんだか泣けてくるじゃあーりませんか
個人的に特に泣かされたのはグレン団のサブリーダー的存在のキタン。一見性格が似ているように思えるキタンとカミナですが、なんだかんだ言って、カミナという男はあれでなかなか器用な男であります。
それに対して、キタンという男はどこまでも不器用な男。そして永遠に二番手(三番手?)であることを運命づけられてしまったようなキャラクターです
そんなキタンが不器用ながらも己の生き様を貫く姿を見ていると、鼻水を噴出さずにはいられないものがあります。ほかにもニアやビラルや螺旋王や上川隆也さんや・・・・ ああ、まだまだ書き足りねえ!!
わざわざ遠くまで行って鑑賞してきた「螺巌編」、地元では来月にならないと公開されません(笑)
完全ネタバレのレビューは、二度目の鑑賞後にお送りいたしますー
Comments
こんばんは(◎´∀`)ノ
新規映像がいっぱいで、紅蓮篇よりも完成度高いなぁーと思いました!
観た後もずっと余韻があって、こうしてSGAさんの記事を読ませていただくだけでも、なんだか胸がいっぱいになってしまいます。
そしてキタンにはやっぱり泣かされた
ダヤッカ夫妻にも何かとツボ押されまくりでした。
「おまえと結婚してよかった!」とか、
「俺の嫁は世界一スウィィィング!!」とか。
極限まで巨大化した果てが、まさか拳と拳のぶつけ合いとは
上川隆也さんの熱いシャウトに燃えました!
時々なんて言ってるか聞き取れなかったくらい(笑)
Posted by: kenko | May 13, 2009 08:46 PM
>kenkoさま
おばんですアゲイン。入れ違いでしたか(笑)
ただいま風呂からあがってきたところです
ここに書いてないところで感動したシーンもたくさんあるんですが、そいつはネタバレ編にとっておきます。今から二度目の鑑賞が楽しみですが、それで本当に終わりかと思うとさびしいですね・・・
ま、エヴァの『破』もありますが
ダヤッカもよかったですね! 不器用そうなくせに、お前はいつのまに嫁をくどきおとしたんだと(笑)
ダヤッカは長いこと名前の由来がわからなかったのですが、ある日突然「ああ、『穏やか』から来てるのか」と気づきました
いいパパさんになりそうです
上川さんって、テレビの時はコネで仕方なくやってのかなーと思ってたんですが、明らかにノリノリでしたよね(笑)
「断じて否! 否! 否! イナーッッ!!」
もはや『ジョジョの奇妙な冒険』の世界であります・・・
Posted by: SGA屋伍一 | May 13, 2009 09:28 PM
こんにちは。
大絶賛ですね(^^)
俄かファンになった私なのでまだ語れるものがありませんが、熱意だけはビンビン感じております。
しかし、宇宙を書くにはスクリーンでもまだ足りないような。。。超天元突破の大きさに想像がツキマセン(^^;
100%ドリルは監督の悲願。アニメ夜話での盛り上がりが思い出されてニヤリです(^^)
より男前なシモンのイラストが素敵ですねw
Posted by: たいむ | May 16, 2009 04:18 PM
>たいむさま
こんばんは! 先にうかがうつもりだったんですが、グズグズしてすいません
グレンラガンに関しては力の限りほめますよー もっともっとメジャーになっていい作品だと思うので。なんせ昨年のベストにあげたときはほとんどの人から「知らない」と言われてしまったし・・・・
>しかし、宇宙を書くにはスクリーンでもまだ足りないような。。。
「頭で考えるな。心で感じろ」と劇場版『エウレカセブン』でドミニクくんが言ってました(笑)
こちらもよかったですよー
>アニメ夜話での盛り上がりが思い出されてニヤリです(^^)
気になったので「アニメ夜話 グレンラガン ドリル」で検索してみました。そしたら・・・・ オフレコでいろいろやばい発言・・・というかワードがあったようですねw
イラストもほめてくださってありがとうござります。本当はチビシモンの方が愛着あるんですけどね
Posted by: SGA屋伍一 | May 16, 2009 10:31 PM