がんばらないゴエモン 紀里谷和明 『GOEMON』
舞台は日本。てゆーかジパング。時は戦国波乱の時代。
太閤のお膝元の大阪の町を、夜毎騒がす不敵な盗賊がいた。彼の名はGOEMON。
自由気ままに商家の蔵を荒らしていた彼だったが、ある晩風変わりな箱を盗んだことをきっかけに、太閤秀吉や石田光成、そして己の過去と対峙せざるをえなくなる・・・・
わたしのフェイバリットNO1邦画は、実は紀里谷和明監督の『CASSHERN』だったりします(これを言うと、大概バカにされるのですが)。
この映画は「ご都合主義が過ぎる」とか、「ラストがよくわからん」といった正常な思考を飛び越えて、わたしのツボにブスブスと突き刺さってくるのです。
そんなわけで紀里谷氏の第二回監督作品である『GOEMON』も、相当楽しみにしてました。
で、結論から申しますと、今回も大変気に入りました。
CGムービーが氾濫してる昨今。「どこまで本物に見せるか」といった点については、もう極に達した感があります。が、紀里谷監督はそういうのとは別の方向でCGを突き詰めています。アクションのスピードとか、描き込みの量とか。あとやはりわたしは彼の描く薄汚れてて煙ったいんだけど、どこかキラキラしてるヴィジュアルが好きなんですね。
ただこのぶっとんだヴィジュアル、ストーリー、世界観は、やはり人を選ぶと思います。この世界の日本は明らかにわたしたちの知っている日本とは違います。ちょうど中途ハンパに日本に詳しい欧米人がよく描く、あんな日本です(笑) さらに登場する五右衛門、才蔵、服部半蔵といったキャラクターたちが、明らかに人間には不可能な動きをしています。
そんな風におおはしゃぎしている一方で、「憎しみの連鎖をどうやって止められるか?」という『グラン・トリノ』とも共通するテーマを訴えちゃったりもしています
イーストウッドは豊富な人生経験でもって、みんなが心から納得できる答えを提出しておりますが、こちらは「一生懸命考えたけど、わかんねーからとりあえず暴れとけ!」みたいな、そんな感じ。
またしても思考が映像に追いついていってないような、映像とテーマが空中分解、みたいな(^^;
でもわたしは紀里谷監督のこういう熱さというか、不器用さも好きです。
もうちょっとマジメなことも書いておこう。以下はだんだんネタバレしていくのでご注意ください。
『CASSHERN』の記事で「これはギリシャ悲劇である」ということを書きました。『GOEMON』にもおなじことが言えます。これは戦国絵巻の体裁を取ったギリシャ神話なのです。
五右衛門や才蔵が明らかに人間離れした動きを見せるのは、彼らがアキレウスやヘラクレスといった、神話の英雄だからです。たった一人で無数の軍勢にも対抗できる彼ら。しかし彼らとて天上の神々には従わざるをえません。五右衛門たちは彼らの手のひらでいいように翻弄されます。この作品でいうと、神々は信長や秀吉といった権力者に相当します。
そして神話の英雄にはハッピーエンドは許されません。それどころか、非常にあっけないことで命を落としてしまったりします。そんな非情な運命に、そして神々にあえて立ち向かおうとする五右衛門。その姿には男子として、胸を震わさずにはいられないものがあります。
『CASSHERN』と違うところがあるとすれば、それは五右衛門が「自由」な男として描かれているところ。ただ自由というのが一般では健康的にとらえられているのに対し、この作品では「責任を投げ出して逃げ出した」というような、否定的なものとして描かれています。・・・・もしかしてこれには自分の結婚生活のことが反映されているのでしょうか・・・・
ほめてるんだかけなしてるんだかわからないレビューになってしまいましたが
、とにかくこの映画はすごいです!
こんだけ「やりたいことをやってやるんじゃー!! おんどれりゃー!!」という気合に満ちている映画は、そうそうあるものではありません!
と、いうわけで自信をもってオススメします『GOEMON』
でも鑑賞は、くれぐれも自己責任でお願いします(オイ!)
Comments
きました~

実は、満点をつけて感動したベンジャミンを差し置いて、GOEMONが今年No,1だ・・・と密かに考えている私。
そのくらいツボでした~
ぶっ飛んでいようが、CG映像がゲームのようだろうが、物凄く面白かったです!!願わくば大ヒットしてもらいたい!!
で、、、何でそんなに好きなのかと思ったら、、、

>『CASSHERN』の記事で「これはギリシャ悲劇である」ということを書きました。『GOEMON』にもおなじことが言えます。これは戦国絵巻の体裁を取ったギリシャ神話なのです
これか~~~
私、ギリシャ神話が大好きなんですぅ~だから好みだったのねぇ~
2回目観た時は、嫌だったゴリもそれ程でもなく、ただただ哀しさに涙が出ました・・・ああ~いいお話だったわ~ん
Posted by: 由香 | May 11, 2009 10:24 PM
>由香さま
こちらにもおいでいただきまことにありがとうございます!
いやー、由香さんがこんなに『GOEMON』にはまられるとは・・・
正直意外でした(笑)
でも嬉しい!
正直映画としての出来がいいのは『グラン・トリノ』の方だし、そっちの方が感動したのですが、好きなのは『GOEMON』の方です
でも・・・ ぢつは・・・ 今年はもっと好きな映画があったりして・・・・
えー、とにかくすばらしいですよね! 『GOEMON』!
あ、あと毎度思いつきネタに素直に感心してくださってありがとうございます。ありがたい反面、ちょっと心苦しい(笑)
そんなわけでまだ見ておられないなら、『CASSHERN』もぜひごらんください!
Posted by: SGA屋伍一 | May 12, 2009 07:50 AM
SGA屋伍一さん、こんにちは。
GOEMONのイラストがよく似てますねー。もちろん五ェ衛門も上手いっす!
>またしても思考が映像に追いついていってないような、映像とテーマが空中分解、みたいな(^^;
本当に。。。
私はSGA屋伍一ほど紀里谷監督を理解できていませんが、「時代が追い付いていないのかも」といった何かは感じちゃってます。
作り手も中身も大暴れ、映画ですね(^^)
Posted by: たいむ | May 12, 2009 10:28 PM
>たいむさま
お返しありがとうございます。お褒めの言葉もありがとうございます
久々に一生懸命描きました(笑)
ちなみに上のゴエモンさんは十三代目だそうです。まさに「世に盗人の種はつきまじ」ですな
わたしも紀里谷監督をどれほど理解しているかは怪しいです。彼に対する思い入れは、どちらかと言えばいささか過剰な思い込みに近いものが(笑)
映画評とか見ると、評者の方々はそろって及び腰ですね
こういうまともな評者が相手にしないような、過剰なエネルギーに満ち溢れている映画、わたしは大好きです
Posted by: SGA屋伍一 | May 13, 2009 07:22 AM
こんばんは~☆
オススメして戴いたので、観てきましたよー♪
モチロン、自己責任で(笑)
後でなにかのインタビューで江口さんが言っていたのですが、
「(CGたっぷりで)自分まで飾りすぎると、人間味がなくなる」
ほんと、ぎりぎりのところだったように思います。
紀里谷監督の少年のロマンが詰まった映像、ストーリーでしたね。
なんだか、世界を最初から意識してるなぁ~という感想でしたが、
こういう作品でも、やっぱり今の邦画はスゴイぞ、と感じさせますよね(^^)b
Posted by: kira | May 14, 2009 09:47 PM
きゃしゃーん。
>フェイバリットNO1邦画が『CASSHERN』
っていうのは、オールタイム、史上っていうことですよね?
アニメも含めてもNO1?
ひゃあ、それはそれは大絶賛なんですね~。
そういう私もキリヤンに関しては、評価したいっす。
日本映画界ってば、手堅いものにしか手を出さないんですもの。
こんだけ金かけて、好きなことがやれちゃうクリエイターがいるってことは嬉しいことですよね。
ルパンの五右衛門のイラストは似てるかもー
Posted by: かえる | May 15, 2009 01:13 AM
>kiraさま
おはようございます!
いやーわたしなんぞの勧めを真に受けてくれて本当に見てくださったとは・・・・
嬉しい! 大変嬉しい! 今度なにかおごります!(←いつよ?)
江口のあんちゃん、いろいろ考えてたんですねー 確かにCGてんこもりでしたが、ゴエモンの人間味は十分に伝わってきました。どちらかといえば前半の自由闊達なゴエモンが好きでした
前作も「なぜいまキャシャーンなんだ?」と思いましたが、要するに時流に関係なく、自分が好きだから、ということなんでしょうね。自分の好きなものをどんどん映像化できるって、なんかうらやましいなあ
まったく予想がつきません(笑)
次回はどんなものをやるのか、とても楽しみです
Posted by: SGA屋伍一 | May 15, 2009 08:00 AM
>かえるさま
おはようござります。お返しありがとうござりまする
>アニメも含めてもNO1?
・・・・・(黙考)
アタックNo1ですね
欠陥があることは百も承知ですが、これはもう惚れてしまったのでしかたがないのです
性格に問題がある上に外見も微妙なんだけど、そんな女子にびびびっときてしまったようなもんでしょうか
はたからすれば「何で?」と思われるでしょうけど、「ほっといてくれ! 俺にもわからんのだ!」ということです
それはともかく、ドラマの映画化や「絶対泣ける!」的なムービーが主流の邦画界には、貴重な存在ですよね、キリヤン
これからも赤字を恐れず、どんどん己の道を邁進していってほしいものです。もっとも『CASSHERN』は黒字だったし、『GOEMON』も世界での収益を足せばプラスになると思いますが・・・
Posted by: SGA屋伍一 | May 15, 2009 08:10 AM
借りて来ました~『CASSHERN』

ツタヤに3本あって、2本は借り出し中でした~GOEMON効果か?!
1週間以内に観ますね~感想を書かなくても(笑)SGA屋伍一さんのところにはご報告に来ます
Posted by: 由香 | May 15, 2009 07:38 PM
SGA屋伍一さん、こんにちは。
時代考証の枠を思いっきり超え、
ここまでCG+アクションを貫くと爽快に感じました♪
作品の出来としては良いのか?悪いのか?よくわからんかったけど、
程よい配役で、映像ビジュアルはインパクトありましたね☆
Posted by: BC | May 16, 2009 01:25 PM
>由香さま
こんばんは!
おお! 『CASSHERN』借りてくださったんですね!
いろんなところで酷評されてるこの作品(笑)、どうぞ心してごらんください!
そしてもし「なんじゃあ、こりゃあ!」と思われたのなら・・・・ そっと忘れてやってください・・・
基本的には『GOEMON』とそう変わらないと思うんですが・・・
Posted by: SGA屋伍一 | May 16, 2009 10:09 PM
>BCさま
こんばんは! ご来訪ありがとうございます
前作もそうでしたけど、たっぷり時間をかけて作ったようですねー
細かいCGの作りこみにその苦労が感じられました
>作品の出来としては良いのか?悪いのか?よくわからんかったけど
おっと! 手痛いお言葉(笑)
でも中途半端に出来のいい作品よりも、こういうやりすぎてどっかぶっこわれてるような映画のほうが、けっこうあとあとまで記憶に残るもんなんですよね
配役では橋之助さまの信長様が、シーンでは冒頭の「絶景絶景」が特に気に入っております
Posted by: SGA屋伍一 | May 16, 2009 10:15 PM
SGAさんこんばんわ♪TB有難うございました♪
個人的に初監督をする人の作品ってどことな~く眉を顰めながら観てしまう部分がありまして、SGAさんには申し訳ないのですが『CASSHERN』の時もちょっとそんな感じだったんですよね~・・(^^;)(汗)
でも突出した才能などを持ってる人の考えって常人には理解できない所があったりしますし、たいむさんも言うように紀里谷監督のイマジネーションにしても時代がまだ追いついてないだけなのかもしれませんね。
・・ん?と言う事は紀里谷監督を絶賛してるSGAさんの眼力も突出してるってこと?(笑
Posted by: メビウス | May 17, 2009 11:13 PM
>メビウスさま
おいそがしいところおいでいただき、まことにありがとうございます
はつかんとくさくひん・・・・ 確かに時々目も当てられないものもありますね。『大日○人』とか。おっと
でも最初だからこそみずみずしい感覚や情熱が溢れまくっている、そんな作品もあると思いますよ。要は当たり外れ、向き不向きの差が激しいってことですか(笑)
>たいむさんも言うように紀里谷監督のイマジネーションにしても時代がまだ追いついてないだけなのかもしれませんね
たいむさんもメビウスさんも気をつかってそのようにおっしゃってくれてるんでしょうね。ありがたいです

でも、こんな人が邦画界の主流になってしまったら、ちょっとやばいと思います(笑)
これから先も彼の支持者はわたしのような一部のいかれた人しかいないんじゃないかと思いますが、それでいいんじゃないでしょうか。うんうん
Posted by: SGA屋伍一 | May 18, 2009 08:05 AM
あのぅ・・・今頃ですが、感想書きました。
邦画ナンバー1とまではいかないですけど、『CASSHERN』けしてキライじゃないですよ。
キャシャーンとヒロインがぶっ飛んだところで終われば良かったのに・・・とはうっすら思ってますが、それって邪道?
とにかく紀里谷さんのビジュアルセンスは、眺めてるだけでも楽しいです。
キラキラの映像とオタク心をくすぐるアクション。
邦画界でこういうタイプの映画作れる人ってそういないし、貴重な存在ですよね。
ゴエモンも才蔵も光成もステキだったけど、なんと言ってもいちばんのヒットは信長さまでした
Posted by: kenko | June 07, 2009 08:23 PM
>kenkoさま
おはようございます! いやー、なかなか感想書かないから、kenkoさん的にOUTだったのかな、とか思ってましたよ
「『CASSHERN』が一番好き」なんて言ってる輩は、たぶん日本ではわたし一人じゃないでしょうかね。どんな見方があってもいいと思いますよ。なんせ存在自体が邪道のような映画ですから(爆)
今回特に印象に残ってる絵は割りと序盤の方かな。ボロ屋の上を駆け抜けながら、小判をバラバラ撒くゴエモンの図とか
もちろんそのあとも色々いいシーンがありましたけどね。崖っぷちで少年二人が修行してる図は、なんか笑っちゃったけど
信長さまも良かったですよね! ♪踊りおーそるなーら ちょいと中京音頭 よいよい♪
Posted by: SGA屋伍一 | June 08, 2009 08:38 AM
>心配後無用のモビット
秀吉「おい!お前、がんまくだろ?オレだよ、オレ、日吉だよ!!
久しぶりだなぁ~( ̄▽ ̄)
ああ、そうか、最近お前ゴエモンって名のっているんだよな?」
>がんばれゴエモン誕生?
ゴエモン「ワシは大波よりも、小さな小さな小波(コナミ)
の方が好きじゃ。それと目出たいものが好きじゃからエビス様
も好きじゃ」
これが後にコナミのがんばれゴエモンシリーズとなったことは
意外と知られていない・・・(?)
出展・ミンメイ書房
Posted by: 犬塚志乃 | April 03, 2010 02:58 PM