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April 08, 2009

いきなりゴレンジャー 中村義洋 『フィッシュ・ストーリー』

200607071444522012年。人類は巨大白色彗星の接近により、滅亡の危機に瀕していた。
1982年。合コンに向かう気弱な大学生がいた。彼は車の中で友人から、『フィッシュ・ストーリー』という曲にまつわる怪談を聞かされる。
2009年。うっかり船をのりすごして泣きじゃくっていた女子高生は、船のコックから「正義の味方として育てられた」話を聞かされる。
1975年。時代に早すぎたパンクバンド「逆鱗」は、最後のレコーディングに万感の思いをこめて、『フィッシュ・ストーリー』という曲を作り上げる。

これらの物語に一体いかなるつながりがあるのか? 観客の思いをよそに、脈絡もなく語られていくストーリーズ。
キーワードは「謎の無音部分」と「ゴレンジャー」・・・・・

例えるなら締め切り間際の漫画家を抱えた編集者のようなものでしょうか。タイムアップまであと少しなのに、漫画家はチンタラしているようにしか見えない。「今週は『作者急病のため休載』かな」と諦めかけたとき、なんと漫画家が「できたよ」と言う。しかも驚くことに見事な傑作に仕上がっている! ・・・そんな感じの映画であります。まったく見事な脚本マジックでありました。

そこはかとなくつながっているような、主人公の異なる一連のエピソード。こういうスタイル、一昨年多くの映画ファンに混乱をもたらした『バベル』を思い出します。しかし『フィッシュ・ストーリー』は『バベル』よりもっとわかりやすく、バカバカしく、そしてスカッとする作品。
「ホラ話ってくだらないけどすばらしいよね!」と、心の底から思わせてくれます。

原作は近年人気を博している伊坂幸太郎。彼の作品というのは、深い意味があるようでないような、それでいて心がほっこりするようなものが多いです。でも、やっぱりそれなりに意味はあると思うんですよね。んで、この映画からはこんな想いが込められているような気がしました。

「あなたは自分が嫌いかもしれないけれど」「あなたは自分のやっていることに意味があるのか、不安を感じているだろうけれど」「あなたがいることには」「あなたがやっていることには」「確かな意味がある・・・・・かもしれないよ?」

この「絶対にあるんだ!」ではなく、「かもしれないよ?」というあたりが絶妙です(笑)


さて。最近隆盛を誇っている日本映画界。その背景にはテレビ局による出資が大きく関わっています。ただその宣伝力と財力にモノを言わせて強引に作品を売り出す姿勢を、憂う声もちらほら聞きます。
わたしとしては「面白ければそれでいーじゃん」という立場なんですが、単純な感動大作やテレビドラマの映画化なんかには、あまり気乗りがしないのも確か。
そんなわたしが最近「これはいい!」と思った邦画は、『キサラギ』『アフタースクール』『パコと魔法の絵本』『少年メリケンサック』、そしてこの『フィッシュ・ストーリー』・・・・ んで、あとで気づいたのですが、これらの作品、『アフタースクール』をのぞいて全て「テレビ東京」さんによる制作でした。

これは明らかに日テレやフジの「大作感動路線」とは違いますね。言うなれば「低予算うっかりちゃっかり路線」です(笑)

090408_184357中には『おろち』とか『釣りキチ三平』といった微妙なチョイスもありますが、これからもテレ東さんにはがんばって個性的な作品を作り続けていただきたいです。
あなたたちのやっていることには、きっと意味がある!・・・・かもしれないよ?

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Comments

SGA屋伍一さん、こんばんは!
挙げられているお気に入り邦画のうち、「キサラギ」「アフタースクール」しか観ていないのですが、
世間的には大好評「アフター~」よりも、こちらの方が好きです。
>きっと意味がある!・・・・かもしれないよ?
というくらいの、でもたしかに伝わるものがあるカンジが好きなのかも(笑)

ゴレンジャー、子供が夢中になってましたね~、DVDよくレンタルしました。

Posted by: kira | April 09, 2009 01:04 AM

>kiraさま

さっそくこちらにもコメントありがとうございます

わたしは年に一度でも『キサラギ』『アフター』のような脚本に凝った邦画に出会えればいいなあ、と思っているのですが、今年はもうこれに出会えたので安心です

ちなみに『パコ』にも微妙な「仕掛け」がありますが、『メリケンサック』の方はほんとうにただのうっかりちゃっかりした映画です

>ゴレンジャー、子供が夢中になってましたね~

細かいことを言うようですけど、それは「ゴレンジャー系の作品」ということですよね?
まあ興味ない方にしてみれば、みんなゴレンジャーですよね
今年で33作目だったかな? 正義の味方は未だ健在です

Posted by: SGA屋伍一 | April 09, 2009 07:02 AM

コメントありがとうございました!
お返事遅れてすいませんでした(><)
最近、、なんかとても忙しくて、、ブログ更新するのがやっとの状態です、、(--;
速く普通の主婦に戻りた~いそんな私です。

それはさておいて、、これ、本当に素敵な映画でしたよね!
素直にワクワクして見ることができました!

たしかにTV局映画、、無駄に派手にも盛り上がっているだけのフジよりもテレビ東京のほうがセンスがある!という作品が多いですよね!
日本テレビは『252』という珍作がありますが、、

Posted by: コブタです | April 18, 2009 11:06 PM

>コブタさま

こんばんは! いろいろお忙しいようですね。そんな中こちらにもコメントくださり、まことにありがとうございます!

見終わってみると確かにワクワク素敵な映画でしたが、見てる最中は「まさかこれ、投げっぱなしで終らないよな!?」とハラハラドキドキしながら鑑賞してました(笑)

>『252』

存じてます。『感染列島』とならんで2009初頭をかざった地雷ムービーですよね! 残念ながらスルーしました(笑)
前は地雷とわかっていてもそういう映画、嬉々として踏みにいったもんだけどなあ。気がつけばすっかり守りに入っちまって・・・・ 反省

Posted by: SGA屋伍一 | April 19, 2009 09:14 PM

こんにちは。
私も、動物・子供・病気のお涙ちょうだい路線は苦手。壮大なスケールのありえねぇ救出劇ならうーんと思いつつも見る、かな?
「キサラギ」は時々BSデジで放送してくれるんでたまに見てます(^^)何度見ても面白いですよー
しかし、フジでも「サマー・タイムマシン・ブルース」は傑作だと思うんだけど・・・御覧になってませんか?もしまだならお勧めしたいです!

ゴレンジャーでサイドカーに乗るのはモモレンジャーだけだと思っていたのだけど、キレンジャーもサイドカーでしたね。ちょっとビックリでした(^^)

あれ?映画の話はどこいった???

Posted by: たいむ | May 21, 2009 09:13 PM

>たいむさま

おはようございます。お返しありがとうございますです

わたしは動物・子供ものは「おらあ! 泣けよ、おらあ!」という感じでなく、題材が面白そうなら見ることもあります
救出劇・闘病ものは嫌い・・・というよりか、興味がわかない
『パコ』は病と別に闘ってませんでしたからね

たいむさまは『キサラギ』がそんなにお好きだったとですか。今度記事読ませてもらいますね
『サマー・タイムマシン・ブルース』はなんとなくスルーしてしまったんですが、けっこう根強いファンがいますよね。いままでも他の方々に何度かすすめられました
夏休み地上波放映してくんないかな(笑)

サイドカーはコーナーを曲がる時、台座部分がふわっと浮いて怖いことがあるそうなので、モモレンジャーよりキレンジャーのほうが重石になっていいかもです

Posted by: SGA屋伍一 | May 22, 2009 09:26 AM

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