世界地図はタマゴ男の夢を見ない 平山夢明 『独白するユニバーサル横メルカトル』
内臓系の話題が続きます。今回ご紹介するのは先日文庫化された平山夢明(ひらやま ゆめあき)氏の怪奇幻想短編集。
二年前の『このミステリーがすごい!』で堂々1位を取り、帯を見るとミスター新本格綾辻行人氏や、秘宝ご意見番柳下毅一郎氏がこぞって「本当にもう、すごいわ
」と賛辞を寄せている。ちょっと怖そうな内容だけど、「どれほどすごいのだろう・・・・」とワクワクしながら文庫化を待っておりました。
この本が出る前に、わたしは平山氏と二度ニアミスをしております。一度目はさる映画ムックで書かれていたコラムで。そちらでは「デルモンテ平山」というお名前でした。オールタイムベストに『わらの犬』や『悪魔のいけにえ』をあげていて、「何の罪もない人が理由もなくひどいめにあうすばらしい映画」と評しておられました![]()
もう一度はそれよりもさらに前、「イカ天」の後番だった「エビ天」というフィルムコンペ番組で、『国防挺身隊』という作品を発表していた時・・・・と思ったのですが、さっき調べてみたらそれは別の人でした
最近こんなんばっかしや・・・・ 平山氏が作った作品は『ペキンパーの男』というものでした。わたしわりかしこの番組を熱心に見てたんだけど、まったく記憶にないなあ。
で、本の方の感想。結論から申しますとそれはもう「グログロ~
」なお話でした。こういうの、やっぱり「お好きな方にはたまらない
」んだろうなあ。そんなわけで、やや人を選ぶ本です。
過剰なまでのグロ描写の中に、漂うユーモアとリリシズム。こういう作風は一時期の筒井康隆や、知る人ぞ知る個性派短編作家、式貴士などを連想させます。実際、氏も彼らの作品から影響を受けているようで。ただ平山氏の抱えた闇は、この二人よりもさらに深いような印象を受けます。以下、適当に収録作についてコメントしていきます(収録順に非ず)。
「C10H14N2(ニコチン)と少年 - 乞食と老婆」
「無垢の祈り」
いたいけな少年少女が理不尽に虐げられるひどい内容の二作。平山氏の人間性を疑います。
一方でどれほどひどい目にあってもどこかに救いを求めてしまう人間の哀しさや、子供特有の残酷性なども描かれています。収録作品中、特に叙情性が際立つ二品。
「Ωの聖餐」
「怪物のような顔(フェース)の女と 溶けた時計のような頭(おつむ)の男」
暴力団に養われている、怪物的仕事人を題材にした二本。収録作品の中でも、特に「感覚」に訴えてくるお話。「Ωの聖餐」は死体を食べて処理をする男の話で、臭覚や嫌悪感にビンビンきます。「怪物のような~」は至高のSと究極のMの出会いを描いた話で、真剣に読んでると体中がキリキリと痛んでくるような錯覚に陥ります。
「オペラントの肖像」
「卵男(エッグマン)」
比較的血の匂いの薄いSF的作品。まあどっかで読んだ話のような気もするんですけど、グログロな作品群の合間に入っていると、ちょっとしたアクセントにもなっていたりして。
「オペラントの肖像」は救いのない『リベリオン』という感じ。「卵男」は『羊たちの沈黙』の変奏曲という感じ。
「すさまじき熱帯」
十八年ぶりに父と再会した青年が、連れて行かれた先の熱帯で見た、信じられない悪夢。
グロ描写は他と負けず劣らずですが、内容・セリフが滅茶苦茶バカバカしい。ゆえに強烈な印象を残します。
収録作品は多かれ少なかれ「孤独」がテーマになっていると思うのだけど、それが一番アホな形で表れてる作品。
「独白するユニバーサル横メルカトル」
表題作。しがないタクシー運転手が愛用している地図は、実は意思の宿っているサイコ・マップであった。だが、当然のことながら「彼」は話すことができない。ところがある日主人がピンチに陥った時、地図は得意な能力を発揮して主人を助けたのだった・・・・
この「考える地図」と、「地図の特性」、そしてそれをいかした「地図の特殊能力」など、並々ならぬ奇想に富んだ一本。そんなわけで、わたしはやはりこちらが一番面白かったです。
さて、冒頭で挙げた『ペキンパーの男』、いまではyoutubeで見られます。ご興味おありの方はどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=KYCtPMRJPZU
ついでに『国防挺身隊』(第二話)も貼っておきます。どっちかっていうとこっちの方が見てほしかったりして(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=O7u81_2Z0hM
いやー、べらぼうに面白い![]()
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Comments
SGAさん、
←これ使いすぎ(笑)
いやー、これ読みたいです。
どっちかってーとお好きな方だし。
文庫化されてるんですね。チェックしてみよっと♪
Posted by: kenko | April 17, 2009 11:08 PM
>kenkoさま
おはよっすー
>
←これ使いすぎ(笑)
そうかしら? うふふふ
(おええ




)
>どっちかってーとお好きな方だし。
あなたも好きねえ
ちなみに光文社文庫で571円+税です

こないだ本屋で平山さんの『超怖い話』というのちょっと読んでみたんだけど、2話ほど読んで本棚に叩き返しました
やっぱり丸きりのホラ話と本当にあった臭い話とでは、怖さの度合いが違います・・・・・
Posted by: SGA屋伍一 | April 18, 2009 08:06 AM
平山夢明さんの本、、、読んでみたいです。
えっと、、、大昔の『異常快楽殺人』だけは読んだなぁ~
SGA屋さんの記事を読むと、恐ろしくグログロな短編だけど、繊細なハートの私でも読めるかしら?
Posted by: 由香 | April 22, 2009 11:57 PM
>由香さま
ども。こちらにもコメントありがとうございます
うーん。どうでしょう。今までそちらで紹介された本のリストを思い返すと、あんまし由香さん向きではないような気もします
でも由香さんも『異常快楽殺人』なんて、ずいぶん香ばしい本読んでるのね
もしモツ鍋とレバ刺しが大好物だったら、ぜひお試しください
Posted by: SGA屋伍一 | April 23, 2009 11:19 PM
はじめまして。平山さんの作品は、妖しい魅力ありますね。グロくて残忍な表現を通して人間の心理、思いをあぶりだす点は泉鏡花とも通じるきがします
Posted by: ルシフェル | April 03, 2013 03:30 PM
>ルシフェルさん
はじめまして。なるほど。泉鏡花ですか。日本にも上田秋成や鶴屋南北から連なる「人間模様怪談」の系譜がありますが、平山先生はその後継者にあたるのかもしれませんね
Posted by: SGA屋伍一 | April 04, 2013 10:54 PM