森で生きている エドワード・ズウィック 『ディファイアンス』
『ワルキューレ』でドイツ人を勉強したから、今度はユダヤ人を・・・・ ってわけでもないんですが、今日はこの作品を。『ラストサムライ』『ブラッド・ダイヤモンド』のエドワード・ズウィックが手がけた、「真実に基づく物語」。首都圏より一ヶ月ばかり遅れての上映です。
第二次大戦時、東欧に侵攻したナチスドイツは、そこでもユダヤ人狩りを行います。貿易を営んでいたトビア・ビエルスキは兄弟や仲間たちと森に隠れ住み、「何が何でも生き延びる」ことでナチスに抵抗することを誓います。しかしその森は一度足を踏み入れた者は二度と生きて出られない、魔物の棲む森であったのでした・・・(ここウソ)
えー、この映画、わたしがレビューしてもいいのかなあ、という思いがちょっとあります。なんでかと言うと、劇場に向かう途中渋滞にはまって、冒頭二十分ほど見逃したから(笑)
幸い予備知識があったので、話にはついていけました。わたしが見始めたのは、もう森にある程度のコミューンが出来ていて、そこに気難しそうな教師のじいさんがやってきたあたり。支障があったことというと、主人公の親友だと思っていた男が、実は弟だったことになかなか気づかなかったことくらいでしょうか。だって弟の方がガタイがでかい上に、顔立ちが全然違うんだもん。
さて、他には上に挙げた二作品くらいしか見てないのですが、どうもエドワード・ズウィックという人は、醜い殺し合いと美しい自然をコラボレートするのが好きな方のようで。この映画でもけっこう大量に死人が出るのですが、東欧の緑豊かな背景のせいで、多少えぐさが緩和されているような気がしました。
あとこの監督は人種間の衝突ネタもスキですね。『サムライ』『ダイヤ』は衝突から和解に至るまでが描かれていたのに対し、こちらでは衝突したまんまで終ってしまったあたり、現実の厳しさを感じます(別の形での「和解」はありましたが)。
感想は「生きていくって大変だな~~~」と、その一言につきます。
食料の乏しい森で何百人という人間が生きていくには、近隣の農家から作物を強引に徴収するほかありません。はやい話がかっぱらいです。ドイツ軍の追っ手とも絶えず戦わなければなりません。それらに加えて冬の寒さや病気、内輪もめもあり・・・・
生きていくということは、時として奇麗事だけではすまないことがあり。「生き伸びるためには仕方ないんだ」「ぼくら選ばれた民だし」 そう懸命に蛮行を正当化しようとするトビヤですが、彼らが「自分たちの行いを世間に喧伝しなかった」のは、やはりそうした行為に後ろめたさを感じていたからではないでしょうか
盗んだり殺したりせずに生きていけるということは、実はとっても恵まれてることなんだな・・・・ そう思います。
キリストを迫害して以降、世界中で嫌われてきたユダヤ人。考えてみればこの第二次大戦直後くらいが、一番みんなの同情を集めていたころかもしれません。
以前『ミュンヘン』の記事で「日本もアジアにおいては今のところ憎まれ役NO.1です。憎まれ役の大先輩であるユダヤ人の例から、色々学べることは多いのではないでしょうか」と書きました。しかしビックリ。先ごろ世界56か国12万人を対象に実施されたアンケートによりますと、世界の好感度ランキング第1位は、なんと「日本」でした。
http://www.recordchina.co.jp/group/g30174.html
この結果に調子こいたりして他国を侵略したりせず、さらなる人気者になれるよう努めてまいりましょう。
Comments
伍一っちメン殿!こんばんは★
あはは、20分観れなかったんですね〜、もったいない!

とはいってもわたしコレはまれなかったんですよ〜。
大好きなダニエルなのに
あ、あの空白は隠れ文字じゃなかったんですね、ゴメンナサイ(笑)
あと、連日来て下さっても嫌だと思う訳ないじゃないですか〜^^
パリスの、じゃなかったレポ、どうだったのかなぁ〜
ダメだったかなぁ〜?
レビューまた待ってまーす
Posted by: mig | April 05, 2009 10:45 PM
>migさま
こんばんは! いろいろフォローありがとね(^^)/
>あはは、20分観れなかったんですね〜
しくしく・・・・(ToT)
でもまあ「映画の日」だったので。通常料金の日だったら、さすがにやめるか他の作品にしたかもしれません
migさんはイマイチだったようですね。ダニエルが007ほどキビキビしてなかったからかな?
わたしはけっこうのめりこんで観てました。極限状況の話ってなんか入り込みやすいんだよね
パリスは・・・ 痛々しかったなあ。二重の意味で(笑)
感想、あんまし期待しないで待っててください。来週くらいになると思います
Posted by: SGA屋伍一 | April 06, 2009 09:41 PM
こんばんは
この監督さん,「ボクはこれが描きたい!」というのがハッキリ共通していて
わかりやすい御仁ですね。
そしてどの作品もエンタメと感動とシリアスが上手く織り交ぜられてて
安心して観ることができますね。
今回は役者に惹かれて観たのですが
なかなか面白く,考えさせられる実話で,勉強にもなりました。
たしかに生きていくためにはきれいごとばかりじゃ済まされない。
神に選ばれた宿命ゆえに戒律に縛られ,無抵抗だと思われていたユダヤ人が
生き延びるために「殺し」たり,「盗ん」だり「戦っ」たりする姿は
痛快にも感じましたが
考えてみると,旧約聖書の時代のユダヤ民族(モーセの出エジプト以降)は
約束の地カナンについたあとは,先住の異邦人たちを相手に
ヨシュアなどをリーダーにして,けっこう壮絶な国盗り物語を繰り広げてきた
戦闘に長けた民でもありました。
Posted by: なな | September 10, 2009 09:42 PM
>ななさま
おばんです。おかえしありがとうございます
そうですねー 結局わたしも三作品しか見てないんですけど、人間ドラマとテーマ性を掘り下げつつも、クライマックスは派手なアクションで盛り上げる・・・ こういう作風の人、案外あまりいないかな?
ほとんどの映画はドラマかエンターテイメントか、はっきり色分けできるようになってますからね
確かに戦時下のユダヤ人たちは収容されて虐待されている、というイメージが強かったので、彼らのようにゲリラとなって戦っていた人たちがいたというのは驚きでした
わたしとしてはトビアが復讐のむなしさを知った後、「戦う」ことよりも「生きる」ことで抵抗する、と決意する姿に心打たれました
なにかと無気力になりがちな現代の日本人ですが、彼らの生きることに一生懸命な姿から何か学べるのでは・・・と思います
森で敵の襲来を予測しつつも、色々工夫してすみやすくしてある様子などは、今年の初めに見た『チェ・二部作』でも似たような描写がありました
Posted by: SGA屋伍一 | September 11, 2009 10:52 PM