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March 07, 2009

君は、刻の涙の向こう側を見る 水島精二 『機動戦士ガンダムOO』セカンドシーズンその2

090307_185421リボンズの暗躍のもと、世界への統制を強めていくアロウズ。その動きに反感を抱いた一部の軍人たちは、軌道エレベーターを占拠。アロウズの横暴を世界に訴える。だが全てをもみ消そうとするアロウズの暴走により、事態は誰もが予想し得なかった惨事へと発展する。
世界が再び混乱に向かおうとする中、ソレスタル・ビーイングはリボンズの掌中にある巨大コンピューター「ヴェーダ」の奪還を計画する。しかし彼らのうちには、リボンズの命を受けた「イノベイター」が潜んでいた・・・

いよいよ終わりまであとわずかとなった『OO』。今回は各キャラとこの作品のテーマについて思うところをダラダラと語ってみます。ちなみに今までの記事は以下の通り
ファーストシーズンその1
ファーストシーズンその2
セカンドシーズンその1

ガンダムの乗り手「マイスター」はおろか、敵方の「イノベイター」にもそれぞれ「対」となる存在がいる『OO』。
ところが、肝心の主人公である刹那・F・セイエイにはその「対」が存在しません。ただ一人絶対的な存在だからこそ、彼が主人公を務めていると考えることもできます。
しかし比較対照となるキャラはいろいろいます。まず第二部に入ってグン、と存在感を増した沙慈・クロスロードくん。彼は「戦いなくしては平和は得られない」と考える刹那、ひいてはCBに対し「あくまで非戦をつらぬく」という立場をとり、作品全体のアンチテーゼとなっております。彼には現代日本の青少年と、刹那たちの橋渡しをする役割もあります。

二人目は第一部とほとんど変化のないミスター・ブシドーことグラハム・エーカー。自分はこのキャラの存在意義がなかなかわからなかったのですが、最近になってようやくつかめてきました。
我々は戦争・暴力を忌避していますが、ひとたびそれに大義名分が立つと、途端にそれらを賛美する傾向があります。その大義名分とは、武士道精神とか、「何かを守るため」とかそういうものです。グラハムはそうした「暴力を崇める者」の代表なのだと思います。かつては刹那もそうだったように。

沙滋を刹那の「裏」、グラハムを「逆」とするなら、「対偶」となるのがイノベイターの長、リボンズ・アルマーク。彼もまた世界平和のためにいろいろと布石を打っているわけですが、そのやり方も理由もCBとは大きくかけはなれています。リボンズと刹那はお互い二回しか会っていませんが、「お互いを革新させた」という点において、限りなく重要な存在となっています。

「戦うことしか生きる道が見つからない」と語っていた刹那。しかし彼にも、ようやくそれ以外の道が見つかりそうな雰囲気になってきました。果たして彼は戦いを捨てることができるのか、それともやはり戦いの中で散っていくのか・・・・ できれば前者であってほしいものです。


他のマイスターたちについてもちょっとずつ語っておきましょう。
まずティエリア。彼の最大のヤマ場はセカンドシーズン前半で、「イノベイターにつくか、CBにつくか」悩んでいたあたりかと思われます。既に彼はその問題にははっきりカタをつけていますので、そういう意味では「もう終った」キャラといえるでしょう。あとは生きるか死ぬかです。

アレルヤもマリーをいったん連れ戻した時点で、ほぼ終了しているような気がします。残りの課題は心変わりしてしまった嫁を、また自分のところに引き寄せることができるか、というとこでしょう。裏の人格ともまだ完全にケリがついてないようです。

で、いまんとこ一番葛藤してるのは二代目ロックオン、ことライル。アニキ同様ひょうひょうとしたキャラで登場した彼ですが、精神面ではややもろいところがある模様。彼がアニューとくっついたのはやや唐突だったような気もしますが、彼女だけが先代を知らず、アニキと彼を比べなかったところにライルは魅かれたのかもしれません。
そんなわけで、兄貴へのわだかまりと、アニューを撃った刹那への憎しみを乗り越えることが、彼にとっての課題といえます。

この辺はOPを見るとよくわかります。問題の多く残ってるマイスターほど、登場時間が長い(笑・秒単位の違いですが・・・)


さて。
アトム、ガンダム、エヴァとつづいてきたSFロボットアニメ。このジャンルには「王道」とも言うべきテーマがあります。すなわち、「人間は自分と異なるものを受け入れることができるか」というもの。『OO』のテーマもやはりそのあたりに収束していきそうです。
初代ではその悲願を達成するものを「ニュータイプ能力」としたわけですが、水島監督は違うものを見ているようです。戦火を拡大するのがテクノロジーならば、夢をかなえるのもまたテクノロジーであると。
ただそれだけじゃやはり心もとないので、それを補うのが人々の純粋な願いや、マリナ様たちのお歌、というところなんでしょう。

090307_185357ひいきの黒田洋介氏が脚本を書いてるということで、熱心におっかけてきた『OO』。その黒田節、最近は期待に違わぬ炸裂ぶりで、多少お話が強引でもいいセリフが来ると、つい感動してしまう自分がいます

というわけであますところあと4回。固唾を呑んで見守っていこうと思います。

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Comments

若干、ファーストシーズンと比べると
ラストへの盛り上がり感に
欠けるような気もしますが、
期待しています。

すっかりエピローグモードの
エンディングが良いですね。
楽曲の良さもさることながら。

願わくは、あの映像の意味するものが
最終回で明かされてほしいものです。

Posted by: かに | March 08, 2009 07:55 PM

>かにさま

おばんです! 原稿はかどってますか!(笑)

確かにダブルオーがあんまりにも強すぎて、前回ほど悲壮感が感じられないんですよね。ただ次回はさらに追い込まれるみたいなので、その辺どこまでハラハラさせてくれるか・・・ってとこでしょうか

ED曲挿入の仕方はアニメ史上の中でも指折りの演出かと・・・というのは誉めすぎかな? スミルノフ大佐退場のエピソードは、特に鳥肌が立ちました

>あの映像の意味するもの

お花畑に立ち尽くすダブルオーのことでしょうかね
わたしは毎回「ガンダムもったいねー」と思いながら見ています(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | March 09, 2009 08:18 PM

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