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February 07, 2009

ゲバラ FINAL WARS スティーブン・ソダーバーグ 『チェ 39歳 別れの手紙』

090207_1914312009年は「ねえ、君」で始まり、「バハハーイ」で終る? 制作・主演ベニチオ・デル・トロ、監督スティーブン・ソダーバーグが送る『チェ』二部作。その後編です。前編『28歳の革命』の記事はコチラ

革命が成って10年余。キューバで重職についていたゲバラは、突如として姿を消す。国民の疑問に答えるため、ゲバラから送られた「別れの手紙」を朗読するカストロ。その時すでに、彼は悪政で名高いボリビアの地へ渡っていた。この地においても、彼の理想とする世界を実現するために・・・・

前回ではキューバにおいて見事革命を成し遂げるまでが描かれましたが、今回はボリビアの地で夢破れ、その生涯を終えるところまでが語られます。
時系列がザッピングしない以外は、前半は『28歳』とほぼいっしょ。ジャングルで組織を作り、訓練に励んだり、落伍者を怒ったり。

しかし後半に入るとどんどんおいつめられていくゲバラたち。なんでキューバでは成功したのにボリビアではダメだったのか? それに関しては本当にさまざまな理由があるわけですが、映画から読み取れるのは、まずボリビアではゲバラ以外にグループに強力なリーダーシップを取れるものがいなかったということ。そしてゲバラ自身も、もしかしたらカストロのような有能な司令官の下で、初めて真価を発揮できるタイプだったのかもしれません。

他にも何度か煮え湯を飲まされたアメリカが、かなり本気になってしまったこと、バティスタ政権より時のボリビア政府が確固としていたことなどもあります。あと、「革命」というもの自体がそもそもそう簡単に成し遂げられるものではありませんし。先のキューバ革命などは「近代史における一つの奇跡」とまで言われております。

ただ、そんなのはあとの時代の人間だからこそ言えることで、一度成功を味わったゲバラとしては、ボリビアの時も自信満々だったと思います。実際出だしはキューバの時よりも断然有利だったわけですから。
キューバ上陸直後に仲間のほとんどを失ったにもかかわらず「俺たちは“17人も”生き残った。これでバティスタの野郎の命運は尽きたも同然だ!」と言い放ったカストロの、すさまじいまでのポジティブ思考も彼に影響を与えていたと思います(それを聞いた直後は「彼は狂ったと思った」そうですが)。

先の記事で「明るくほがらかな人だと思っていた」と書きましたが、そのもう一つの理由は終わりの方だけさーっと読んだ『ゲバラ日記』にあります。もうかなりジリ貧な状況なのに「○○を食ったが大変美味だった」とか、「××が泣き言ばかり言うのでみんなで笑った」なんてけっこうのんきなことが書いてあります。
映画ではそういったユーモラスな部分は描かれませんでしたが、ゲバラのポジティブ思考は「どんなに不利になっても諦めない」というところに表れていました。その彼がついに生を諦めた経緯は、とても感慨深いものがありました。

わたしがこの映画で特に好きなのは、ファーストシーンとラストシーン。
冒頭でカストロが読み上げる「別れの手紙」。映画というものは出来るだけ真実に近づこうとしても、どうしてもウソが混じってしまうものですし、わたしもそれでいいと思っています。ただ、この手紙の文章一言一句は、紛れもない「真実」でありました。
そしてラストシーン。「世紀のカリスマ」、「赤いキリスト」、「伝説のゲリラ」、革命家、著述家、写真家、弁舌家・・・・ 様々な肩書きを持つチェ・ゲバラですが、その中からあえてただ一つを選ぶとするなら、それは「旅人」だったんではないかな、とわたしは思います。

先の記事で「たぶん風貌変わってないと思うけど」と書きましたが、ベニチオ・デル・トロ氏、実に見事な老けっぷりでありました。その熱演には心から敬意を表しますが、わたしには未だに彼があんまりゲバラに似てるとは思えません。有名な肖像写真のゲバラを見ると、なんかこう、ギュイーンと貫くような眼差しをしてるじゃないですか。それに比べると、ベニチオ氏の眼差しはなんとも穏やかで。彼はむしろゲバラよりも古谷一行に似ています。

090207_191320この映画を見てさらにゲバラについて知りたくなった方には、最近原書房より出版された『グラフィック・バイオグラフィー チェ・ゲバラ』という本をおすすめします。マンガなんでとにかくわかりやすいです。
映画では語られなかったゲバラの少年・青年時代、そして二つの作品の間にどんなことがあったのか(キューバ危機とか)、詳しく書かれております。


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Comments

ごいちさんこんにちは★

今はそとからでこのPCなぜかかんじへんかんならなくって
こどもみたいなかきこみでご免なさいー

ゲバラとエバラ
そういえばいまどき
ねぇ君!とかっていないですねー、いたら面白いケド♪
郷ひろみみたい。
>ゲバラよりも古谷一行  わかる

Posted by: mig | February 08, 2009 04:53 PM

>みぐさま

おそとからわざわざかきこみいただき、ごいちかんげきです

>そういえばいまどき
ねぇ君!とかっていないですねー

というか、チェ・伍一としては、この「チェ」というあいさつをみんなに流行らせたいですね

「チェ! ひさしぶりじゃん!」「チェ! 百円貸してくれよ!」

・・・・やはり舌打ちしてるようにしか聞こえんか・・・・

>ゲバラよりも古谷一行  わかる

わかってくれましたか! 息子の降谷建志(ドラゴンアッシュ)より似てますよね!

Posted by: SGA屋伍一 | February 09, 2009 11:41 AM

コメントありがとうございました!

私のややぶん投げな記事に、コメント頂き感謝です(><)

チェ・ゲバラ 生涯革命家とはよく言われますが、生涯旅人という言葉のほうがある意味はまっているようにも感じました。

けっして留まることをしない、常に異邦人ともいえる生き方。
それであのラスト船のシーンともいえますよね。

あのシーン、本当に深い、、と改めて想ってしまいました。

Posted by: コブタです | February 10, 2009 02:11 PM

>コブタさま

こちらにもコメントいただきありがとうございます
コブタさんの記事はぶん投げだなんて思わないですよー いつもまじめでまっすぐですがすがしいです
わたしなんかはよくさぶいギャグなんかでごまかしちゃったりするわけですが

記事に書いたコミックを読んでみたんですが、ゲバリンは本当に旅ばっかりしてたみたいですね。優雅な暮らしを捨ててボリビアへ向かったのは、正義感・使命感もあるでしょうけど、彼のそうした性分によるところが大きいのでは、と思いました

>ラストシーン

前編と違い、唯一時系列が異なってたシーンでしたね
個人的にはあの場面で終ってくれたことでかなり救われました

関係ないんですけど、友人が主催する短編アニメ上映会に出席するため、明日川崎に出張します
もしかしたら街のどこかでコブタさんとすれ違うかもしれませんね~
そしてサンレッドさんとも出会えるかも!?

Posted by: SGA屋伍一 | February 10, 2009 05:48 PM

こんにちは!
>それは「旅人」
詩人ですね~(^^)
今思えば、キューバ革命って奇跡的なものだったんだなーって思いますよね。全てが革命成功に繋がるタイミングだったような、そんな感じ。
後半をみてつくづく思いますよね。

正しいことが出来ない苦しさ。チェを見習いたいものですが、勇気も行動力もなかなかねぇ・・・なさけなや~。
チェって偉大ですね。


Posted by: たいむ | February 15, 2009 08:36 PM

>たいむさま

おはようございます。お返しいただきありがとうございます

>詩人ですね~(^^)

ふふふ・・・ ポエマーですから

キューバ革命成功の要因は、カストロ・ゲバラ・カミロの三位一体ともいうべきチームワークや、キューバがゲリラ戦にむいた環境だったこと、バティスタ政権がいい加減弱体化していたことなどが言われてますね。まさにおっしゃるとおり「全てが革命成功に繋がるタイミングだった」わけです

そうした要素ひとつひとつがボリビアではことごとく正反対だったわけですから、そりゃあ計画も頓挫するってもんです

まあチェさんにしてみたら成功・失敗以前にまず「行動する」ことが大事だったんでは・・・とも思います
日本でいえば大塩平八郎か、三島由紀夫みたいなタイプでしょうか
「そこまでせんでも」と思う反面、「なかなかここまではできんよな・・・」とも思います

Posted by: SGA屋伍一 | February 16, 2009 07:41 AM

これを観ると、なぜ二部作にしたのか良くわかりますね。
見事なコントラストになっていました。
映画的なカタルシスは可能な限り排していましたが、ラストは静かながらぐぐっと込み上げる物がありました。

Posted by: ノラネコ | February 19, 2009 11:41 PM

>ノラネコさま

お返しどうもありがとうございまする
「二つ見て一本」「見事なコントラスト」というとイーストウッドの『硫黄島二部作』が思い出されまする。実際にあった話を公平な視点で描くのに、むいている手法なのかもしれませんね

ラストでは船のシーンもさることながら、見張り役の青年とのやりとりもぐぐっとくるものがありました

Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2009 08:35 AM

ごいちさんこんばんは。
えばら・ならぬ・げばら、が、はなぢをだしているのは、
やきにくをたべすぎたせいでしょうか。
「やきにくをくったがたいへんびみだった」

缶詰を盗み食いしたくなる気持ちはよく分かりましたねー。
若くて食欲旺盛な時に、ほとんど食事を取れないのって大変そうでした。

Posted by: とらねこ | February 20, 2009 11:10 PM

>とらねこさま

おはようございます。お返しありがとうございます

ゲバリンが鼻血を垂れているように見えるのは、単に私が鼻の下の影を多めに書いてしまったからです(まんまやがな)

先日会社の新年会でサーロインステーキやら特上カルビなど食わせてもらったのですが、あまりのうまさに涙がこぼれました。また食えるのは一年後か・・・

そういえばクリスくんもヘラジカのお肉を食べようとして失敗してましたね。あの映画で一番哀しいシーンです

マジメな話も少し書いておくと(笑)
『28歳』でも年若い志願兵が二人いましたよね。ゲバラに「帰れ」と言われても意地でも残っていた兄弟
この辺も『39歳』と見事な対比になってたと思います

Posted by: SGA屋伍一 | February 21, 2009 08:40 AM

28歳の革命につづき 39歳別れの手紙も見ました。
厳しめのコメントになります。

本作でも まだ世界革命をすると意気込んでボリビアに乗り込みましたけど。
キューバにとどまっていれば 革命後の新体制で 大きな要職に まちがいなく就いてたのに・・・・・

<なんでキューバでは成功したのにボリビアではダメだったのか? それに関しては本当にさまざまな理由があるわけですが、映画から読み取れるのは、まずボリビアではゲバラ以外にグループに強力なリーダーシップを取れるものがいなかったということ。そしてゲバラ自身も、もしかしたらカストロのような有能な司令官の下で、初めて真価を発揮できるタイプだったのかもしれません。>
 SGA屋さんの この部分 確かに! ただし!!!
カストロが ゲバラと現地に乗り込んで部隊を指揮したとしてもカストロもゲバラ同様 銃殺されてた可能性のほうが”確実”だとボクはおもってます。

冒頭で カストロがゲバラに
「もう少し 時期を待ったらどうだ」と促しましたが 彼は

「今行かなければ 50年は待たないといけなくなる」と すぐ出発。 けど、カストロは ボリビアはキューバとは”国全体”が違うということを 知ってたからそう言ったんじゃないかな。と。


<あと、「革命」というもの自体がそもそもそう簡単に成し遂げられるものではありませんし。先のキューバ革命などは「近代史における一つの奇跡」とまで言われております。>
 そうなんです! 一度成功したから 次も・・・なんていうほど甘くも単純でもないことをソダーバーク監督は伝えたかったんじゃないでしょうか。

ここまで書けば おわかりかと 思いますが・・・・

ボリビアの土地の状況や国の統制 ソ連やボリビア共産党の支援が無かったこと 地元住民たちの革命に非協力的な様子
これだけマイナス要因が揃っては いくらゲバラでも・・・・

 厳しいコメントになっちゃっていましたね。すみません

最後に SGA屋さんの ”ゲバラより古谷一行に似てる” 確かに!バッチグゥ

エバラとゲバラ このオチもバッチグゥです
エバラは ”焼肉のたれ”ですが ゲバラは(非協力的な姿勢に)” 愚痴の雨”でした・・・・

Posted by: zebra | May 25, 2014 10:28 PM

>zebraさん

まあ後の時代の我々から見れば、「ゲバラさんってせっかちだなあ」と思わざるを得ません。
しかしまあ、彼は結果よりも行動を重んじるタイプだったのでしょうね。いわゆる陽明学に似た思想というか。ああだこうだ言う前にまず行動しなくてはならない。何事もやってみなくちゃわからない…と

失敗したら元も子もねーじゃん、という見方もできますがその行動力というか純粋な精神は賞賛に値する気がします

そういえばTV版で古谷一行が主演した『失楽園』作者の渡辺淳一氏、さきごろ亡くなられましたね(関係ないだろ)

Posted by: SGA屋伍一 | May 27, 2014 09:54 PM

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Tracked on February 20, 2009 10:53 PM

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