ブタは肥えているか? ジョン・ハラス&ジョイ・バチュラー 『動物農場』
わたしも最近知ったんですが、ジブリさんは知られざる名作アニメの発掘・紹介にも力を入れておられるみたいですね。この『動物農場』もその一本。1954年にイギリスで制作されたカラーアニメです。
舞台はとある農場。主人ジョーンズに虐げられていた家畜たちは、長老ブタ(メジャー)の遺言に従い、反乱を企てる。リーダーのスノーボール(白ブタ)の指揮の下、家畜たちは革命に成功。ここに動物たちの動物たちによる動物たちのための動物王国・・・じゃなくて動物農場が誕生する。家畜たちの将来は明るいように思えた。だが欲深いナポレオン(半黒ブタ)が支配者になるべく陰謀を企んだことにより、農場には暗雲がしのびよっていく・・・
原作は『1984年』が名高いジョージ・オーウェル。見かけこそそれなりに可愛らしい動物アニメですが、内容はかなりシビアです。具体的に言うと、内ゲバとか血の粛清とか、酷使されたあげくに処理工場行きとか
劇場にはジブリ関連ということでか、お子さんたちの姿もありましたが、きっとドンびきしてたと思います。
オーウェルの原作は、理想からだいぶかけ離れて、一部の者のみに富と権力が集中していたソビエト共産党への批判をこめて書かれたとのこと。
その線でいきますと
メジャー・・・・レーニン
スノーボール・・・・トロツキー
ナポレオン・・・・スターリン
ということになるんでしょうか。
ただ「ナポレオン」という名からもわかるように、このお話、フランス革命にもあてはめられるんですね。ですからソ連だけに限らず、歴史にありがちな光景を巧みに戯画化した作品ということができるでしょう。
あとアニメ版はコミュニズムを嫌っているのではなく、むしろその理想が達成されることを願っているように感じられました。 そしてそれを妨げている者たちの姿は、これ以上ないほどに醜悪に描かれております。
やっぱしいつの世もいるんですねえ。「基本的には子供向け」ということを承知の上で、自分の情念を叩きつけちゃう人が。アニメに(笑)
この作品に満ちている社会の不公正に対する怒りは、若き日の宮崎駿の心を強くとらえたようです。『未来少年コナン』などを見ていただけたらおわかりかと思いますが、この方は一時期やや左よりの思想に傾倒しておられたようです。ディズニー・手塚ではなく、東欧のアニメを主にリスペクトしていることもその表れなのかもしれません。
最近はその辺に関しては丸くなったんじゃないかな、と思っていたのですが、フライヤーを見るとなかなか過激なことをおっしゃってます。
「セレブって豚のことでしょ? 今、豚は太っていないんだよね、ジムなんかにせっせと通ってスマートだったりするから」
うっひょ~ きっつ~
でも確か宮崎さんも自画像ではご自分をブタに描いてはおられなかったか?
・・・・・・
天才ならではのニヒリズムってヤツなんでしょうか。よくわかりません。
まあ思想臭くてもいいんです。面白ければ。実際世の中には思想臭が濃くても、十分に面白い作品がたくさんあります。代表的な例で言うと・・・・ 『男組』とか?
『動物農場』もそんな作品のひとつです。ちょいとストーリーにとストレスがたまる方もおられるでしょうけど、このアニメは実にエキサイティングでスリリングです。また映像的にもアニメならではの面白い表現がいろいろ使われておりました。かといってひろく一般にすすめられるかというと・・・ やや微妙なところなんですが。
とはいえ映像表現や古典アニメに興味のある方は、見ておいてまず損はないでしょう。『動物農場』は現在ひっそりとリヴァイバル公開中です。
Comments
伍一さん、こんにちは。


TB&コメントありがとうございました。
ソビエト共産党への批判に、フランス革命。
なるほど、アニメだと軽く見ても、同時に勉強になる仕組みな訳ですね。
かなり奥が深い。(* ̄ー ̄*)
その分、お子様には余りおススメできませんね。
氾濫を起こす動物たちの真っ赤に血走った目なんかも、小さい子供は泣いちゃいそうです。(;;;´Д`)ゝ
>でも確か宮崎さんも自画像ではご自分をブタに描いてはおられなかったか?
ははは、そうなんですかー(;゚∇゚)

豚って何らかの象徴みたいなところがあるのでしょうか。
私はやっぱり、ベイブちゃんのように愛らしいイメージが抜けないのです。
それでもって、「豚もおだてりゃ木に登る」も豚さんでしたね。
顔はドクロだけど、ヤッターマンの世界観が軽やかなので。
やっぱり愛着を覚えちゃいます。
ヤッターマンの実写化、どうなんでしょうね。
Posted by: となひょう | January 16, 2009 08:18 PM
>となひょうさま
試験前のお忙しいところお返しありがとうございます!
>アニメだと軽く見ても、同時に勉強になる仕組みな訳ですね。
そうなんですよね~ でも動物アニメを見るようなお年のお子さんには、正直この辺の歴史はまだ早いと思います。人間不信に陥るかも(笑)
特にスノーボールの最後はねえ~ はっきり見せないからこそ、余計に怖かったですね
>私はやっぱり、ベイブちゃんのように愛らしいイメージが抜けないのです。
そうですか。でも確かに映画ではかわいく描かれてることの方が多いですよね。プーさんファミリーにも約一名・・・じゃなくて一頭いましたし
日本で一番馴染み深いブタキャラというと・・・やはり猪八戒?
そしておだてブタさんでしょうか。『さすがの猿飛』という漫画にも忍者のブタが出てきたりしたのですが、となひょうさんはご存知でしょうか
>ヤッターマンの実写化、どうなんでしょうね。
微妙。その一言に尽きると思います(笑)
ただスチルにあった巨大ヤッターワンは、ロボ好きとしてはついワクワクしちゃうものが・・・・
Posted by: SGA屋伍一 | January 16, 2009 09:35 PM