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January 05, 2009

20世紀怪人 北村想 『怪人二十面相・伝 青銅の魔人』

090105_190656しつこく続く『二十面相・伝』関連記事。本日は原作小説の続編となる『青銅の魔人』(文庫版では『Ⅱ』)を紹介します。正編の記事はコチラ。その劇場版となる『K-20』の記事はコチラ
正編のネタを完全に割ってしまっているので、できれば以下はそちらを読んでからご覧ください。

敗戦の爪あとがいまだ生々しく残る東京。平吉は姿を消した師匠・丈吉のあとを次いで新たなる「二十面相」となることを決意する。
単に財宝を盗むだけではなく、世間をアッといわせること。それが二十面相としての使命である。そのアイデアに四苦八苦していた平吉は、ある日太宰治という文士と出会う。彼と出会ったことで、平吉は「時計を食べ物のように食う」青銅の怪人のアイデアを思いつく・・・・


オリジナルの怪人二十面相には数年間活動を休止していた時期があります。それはすなわち太平洋戦争の時代。そして戦前と戦後の二十面相には、微妙な性質の違いが見られます。戦前の二十面相は、少なくとも表向きは高価な財宝を盗み出すことが目的の、ルパンのような怪盗でありました。が、戦後の二十面相は奇天烈な気ぐるみ・・・・虎、宇宙人、ロボット、巨大昆虫etc・・・・をかぶって、世間を騒がせることが主な目的のようになってしまっています。
真相は乱歩先生のキャラ設定が適当だった、ということなんでしょうが、この微妙な違いに目をつけたのが北村氏。氏は戦前と戦後の二十面相は別人だったのではないか、と思いつきます。
正編はそのバトンタッチの瞬間で幕を閉じましたが、この続編において、本格的な二代目の活躍が語られるわけです。
泥棒においては素人だった平吉が、いかにしてその道の達人となっていくか。その過程は先代丈吉のものとはまた違った痛快さがあります。さらに特別出演の太宰治はどうからんでくるのか。同じく二代目明智を襲名した小林芳男との対決の行方は。そして平吉は師である丈吉と母・サヨに再会することができるのか・・・

ぶっちゃけこの続編は正編に比べるといささかパンチが弱い気もしますが、それでもこれだけの面白さを備えております。

オリジナルの二十面相はは、ナリこそ大きいものの、本質は子供です。子供のいたずらのようなことをやって喜んでますし、彼の主な敵もまた子供(少年探偵団)です。そして大人である明智には基本的には勝つことができません。
平吉もまた子供のまま大人になってしまいました。幼いころ母と急に別れることとなった平吉の時間は、その時から止まったままになってしまったからです。
だから彼は仲間である子供たちを喜ばせようと、あれこれ思案を巡らします。困窮している子供をみかけたなら、助けずにはいられません。
そしてこの物語はとりあえず平吉の時間がまた進み出したところで幕となります。お話としてはそこで終った方が美しいのでしょうけど、正直さらなる二代目二十面相の冒険が読みたい気もします。
ただ一度だけあったという恋の話、平吉が二十面相を引退するに至った経緯、あるいは平成の現代に再び蘇った二十面相・・・・とか。ああ! 読みたい! 北村先生なんとかなりませんか!

090105_190638ついでに乱歩先生について少々。
編集者から子供向けの小説を依頼されたとき、乱歩先生はさも意外な顔をされたそうです。もっともです。「エログロ猟奇の代表作家たる自分に、なんでまたそんなもの・・・・」と思われたのでしょう。
しかしこの子供向けの作品が、多くの少年たちにとって乱歩ワールドへの入り口となりました。「明朗快活な少年探偵団」の乱歩先生が、大人向けの作品でどんなものを書いていたのか。それを知った時の衝撃は今でも忘れられません(笑)

で、健全な方の乱歩作品、初期数点がポプラ社から文庫サイズで復刊されました。少年時代の興奮を呼び起こしたいという方は、ぜひ。


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Comments

こんにちは~♪
『怪人20面相・伝』の続編の紹介ですか~
ふふふ・・・面白そうですね。私はまず最初の方を読まなくちゃー

ところで、十角館~の感想をアップしました。
イマイチ何を書いたのかよく分からん感想になっていますが(汗)、お時間のある時に遊びにきて下さいね~
お待ちしていますわん

Posted by: 由香 | January 16, 2009 09:28 AM

>由香さま

こんばんは

『二十面相・伝』は正・続あわせて一つの作品とみることもできるので、正編を読んだらこちらもぜひどうぞ!

>お時間のある時に遊びにきて下さいね~

行かいでか!
つか、二回続けて本の紹介は珍しいですね。お忙しくて巡礼街道に行く余裕もないのでせうか・・・

先日TOHOで『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』を観てきたんですが、これがもうメチャクチャ面白くって
そちらの鑑賞予定には書かれてなかったですけど、由香さんにもぜひ見ていただきたいな!と思いました

Posted by: SGA屋伍一 | January 16, 2009 08:52 PM

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