かなり、ゲバラのせい スティーブン・ソダーバーグ 『チェ 28歳の革命』
2009年は、デルトロとカストロで始まる。
精力的に作品を撮り続けるスティーブン・ソダーバーグが、「世紀のカリスマ」と呼ばれた革命家、チェ・ゲバラの生涯を映画化。その第一弾です。
1964年。キューバ革命の功労者チェ・ゲバラは国連の演壇に立っていた。アメリカの行いを猛然と批判するゲバラ。そのスピーチは彼の名を世界に鳴り轟かせた。
それと交差するように、織り込まれる革命への軌跡。ジャングルを転々とし、時に攻め、時に逃げまどい、時に交流を深め、時に訓練に励む日々。その年月の中で、彼はいったい何を思っていたのか?(ということは、直接的には語られないんですけど)
チェ・ゲバラ。彼の名を最初に聞いたときわたしが思ったのは、「それは・・・ 人間の名前か?」というものでした(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)
ご存知の方も多いでしょうが、「チェ」というのは愛称です。正式名称はエルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。たぶん「お前、名前長すぎだよ! もうチェでいいよ、チェで!」ということで、こうなったんじゃないかと。気持ちは大変よくわかりますが、幾らなんでもたった一音というのは横着しすぎではないでしょうか。
その「チェ」というのは舌打ちしてるわけではなく、向こうの言葉で「やあ」とか「ねえ、君」という意味なんだそうで。ゲバラはいつもこういう風にみんなに話かけていたので、自然とそれが彼の呼び名になったというわけ。なんかやっぱり、日本とはセンスが違いますね。
ともかくそうしたエピソードから連想されるのは、「明るくほがらかで、フレンドリーな人物」というもの。そう思った理由はほかにもあるのですが、それは後編の時に書きます。
で、今回ソダーバーグ氏が描いたゲバラ氏はどうだったかというと、決して暗くはなかったですけど、とりわけ明るくもありませんでした(笑) この映画で特に多かったのは、ジャングルで座りながら何かしてるシーン。本を読んでたり、日記をつけてたり、背中をなでてもらったり、人々を教えたり診療したり。そうした姿は先のイメージとも、「伝説のゲリラ」とも違うものでした。「ひたすら生真面目で仕事熱心なおっさん」という感じです。
感情の起伏もそれほど激しくはありません。怒る時もありますが、ちゃんと正当な理由を述べてから、それから怒ります。
そんなおとなしめの人物がなぜ「世紀のカリスマ」と呼ばれるようになったのか? 少なくともキューバ革命が実現した時には「功労者の一人」であったはず。ですからその名が伝説となっていったのは、革命後・・・・国連での勇ましい演説や、その晩年の生き様が世間に知れ渡ってからのことなのでしょう。
ですからこの第一部は、「カリスマになる途上」を描いた作品と言うことができます。
自分が抱いていたイメージとは異なるゲバラに、少なからず意外な思いを抱きました。もちろんこの映画の「ゲバラ」もまた、本人ではなく、スタッフのフィルターを通して描かれたもの。真実とは異なるところもそれなりにあるでしょう。ただ主演・制作のベニチオ・デル・トロは七年の歳月をかけてゲバラを調べあげ、かのカストロからも話を聞いたということ。少なくともわたしなんかのイメージよりかははるかに実像に近いはずです。
ソダーバーグ監督は「ゲバラを神格化することは避けたかった」と語っておりました。それが全体的にドキュメンタリー調の、淡々とした作風となって表れています。戦闘場面もドラマチックに盛り上げるわけではなく、ロングにひいた絵の中に、比較的少人数でパンパンとやっています。
またゲバラたちはキューバ上陸の直後、バティスタ軍の急襲を受け82人の仲間のうち70人を失うのですが、普通ならはずさないであろうこのエピソードなどはナレーションのみで済まされています。ですから戦闘シーンの苦手な人も、落ち着いて見られるのではないでしょうか
そんな風に極めて客観的に描きながらも、作り手は「ゲバラのことが好きなんだな」というはよくわかりました。キューバ出発の直前に、静かに、しかし力強く夢を語るゲバラ。たぶんベニチオやソダーバーグがひかれたのは、武人や弁舌家としての彼ではなく、そんな混じりけのない少年のようなところだったんだと思います。
と、いうわけで今週末からは早くも完結編『39歳 別れの手紙』が公開。たぶん10年後の彼も外見変わってないと思うけど、この際それには目をつぶりましょう。ゲバゲバ
Comments
伍一さん★
いまジャイアントカプリコイチゴ味が無性に食べたいmigです
帰り買って帰ろうかな♪
チェ、似てるー♪(デルトロ版ではなく)渋い
明日には続きが公開ですねー
わたしたぶんこの1作目だけならきっと続編はみずに終わってただろうから
続けて観る拷問?に耐えてよかったですよ(笑)
とはいっても後編がお気に入りってわけではないけど
もちろん伍一さんは続き、観ますよね?!
Posted by: mig | January 30, 2009 03:18 PM
>migさま
こんばんはっすー
>いまジャイアントカプリコイチゴ味が無性に食べたいmigです
む。いまmigさんと心がつながった気がする(笑)
わしも数年ぶりに買い食いしてみようかなあ。ジャイアントカプリコイチゴ味
>チェ、似てるー♪
ども
まあこれはなぞり描きしたものなので
ベニチオさんのゲバラはこの有名なポートレートと比べると、やさしげ~なまなざしをしてるんですよね
実は第1部を見たときは疲れてたこともあって、何度か意識が遠くなりました
反省をふまえて、第二部はもっとしゃっきりしてる時に観にいこうっと
そんなわけで第二部も見ます。さっき慌てて前売り買って来ました
Posted by: SGA屋伍一 | January 30, 2009 09:43 PM
こんにちは!
>10年後の彼も外見変わってないと思うけど
これね、驚きますよ(笑)
でもそれは見てのお楽しみ♪
チェに独自のイメージを持つくらいご存じだったようですね。私はまるで知らない人のようなもので、感心するばかりでしたが、真のカリスマとはおとなしい位の人が多いかもしれませんね。
>ふぃでりん
なんだか目がいっちゃってますねー(^^;
Posted by: たいむ | January 31, 2009 03:00 PM
>たいむさま
お返しありがとうございます
>これね、驚きますよ(笑)
実は今日『39歳』見てきたんですが
・・・・おどろきました
老化促進剤でも打ったのでしょうか。ってか実年齢に近づいただけか
>チェに独自のイメージを持つくらいご存じだったようですね
うんにゃうんにゃ。断片的な知識から勝手にそう思ってただけです(^^;
そういうわけでこの二部作は大変勉強になりました
さらに勉強しようと、ゲバラの生涯を描いたコミックまで買ってしまいました
>真のカリスマとはおとなしい位の人が多いかもしれませんね。
なるほど。確かに本当に人格が出来てるひとって、物静かな場合が多いですもんね
>なんだか目がいっちゃってますねー(^^;
ははは
自分的に「クセ者」というイメージなので
この映画だけ見ると、「なかなかいいヤツ」という感じですけどね
Posted by: SGA屋伍一 | January 31, 2009 07:39 PM
ストイックな信念というのは、若い時には誰でも持っているものだと思いますが、それを持ち続けるのは至難の業ですね。
だからこそ39歳でストイックに死んだゲバラは伝説となって語り継がれるのでしょう。
ゲバラ=明日のジョー説、納得です。
Posted by: ノラネコ | February 02, 2009 11:45 PM
>ノラネコさま
ご来訪ありがとうございます
ストイックな信念・・・・ そう、わたしもかつてはありました。たぶん
「灰になるまで戦いたい」とか(笑)
いったんいい思いをしてしまうと、それをついつい忘れてしまうものなのに、それを忘れなかったゲバラはやっぱりすごい・・・というかどこまでもマジメな人ですね。『39歳』では「カストロは豪華な暮らしをしてるのにお前はどうだ?」と皮肉られていましたが、だからこそ世界中の人々から敬意を得ているんでしょうね~
Posted by: SGA屋伍一 | February 03, 2009 07:31 AM
こちらにもTB&コメントありがとうございました。


おおおおお~っ、いつもと違うタッチのイラストですねぇぇぇ。
素晴らしき吸引力。
でも、ひらがなで縦書きで「ふぃでりん」とあるところを見て、またツボに入ってしまいましたわ。
面白ーーーいヽ(´▽`)/
さて、実のところ本作は途中で眠気に襲われました。


終盤、何度か腕時計をチラ見してしまいました。
とても見応えのある作品とはわかっていながらも、どう感想をまとめていいのか迷ってしまいました。
てゆーことは、余り理解できていないのかなぁなんて思ったので。
早いとこ「39歳」を見に行かねばなんですけどね。
疲れが抜けた時に、じっくりと向き合おうと思ってます。
ジャイアントカプリコイチゴ味、私も食べたくなりました。
Posted by: となひょう | February 05, 2009 07:42 PM
>となひょうさま
こちらにもお返しありがとうございます!
今回はがんばって描いたんですよー 上はなぞり書きですが(爆)
フィデリン&ゲバリン なんだかこう書くとお笑いユニットのよう・・・ うう、熱烈な信奉者から怒られそうだ・・・(_ _;
>実のところ本作は途中で眠気に襲われました
実はわたしもそうでした・・・ 言い訳するようですが、ずっと寝てなかった状態で行ったので
反省をふまえて『39歳』は十分寝たあとで行きました。そしたらバッチリ!でしたよ!
この映画は『39歳』と見比べて考えて、初めていろいろなことに気づくような仕掛けになってるんじゃないかなーと。ちょうど『父親たちの星条旗』&『硫黄島からの手紙』みたいに
さて、今日こそ勇気を出してイチゴカプリコ買ってくるかな。「ウチの子供がこれ好きでねー」なんていいながら。ウチに子供なんていないのに(爆)
Posted by: SGA屋伍一 | February 06, 2009 08:21 AM
赤ずきんのおバカコメントに続いて 書きます。
実はですね ドキュメンタリ重視な内容なので ちょっぴり眠かったんですよ。でも 人間の精神面は優れてたのはよくわかります。
国連の演説とバチスタ独裁政権下のキューバでのゲリラ活動を交互に 織り交ぜた展開でしたね。
国連での記者の質問で
「革命に必要な要素はなんですか?」に ゲバラは・・
「それは愛! 正義への愛 真実の愛 人間の愛。愛なき活動に 革命はない」と 凛として答えたゲバラ・・・・・カリスマは違うですね。
>ソダーバーグ監督は「ゲバラを神格化することは避けたかった」と語っておりました。それが全体的にドキュメンタリー調の、淡々とした作風となって表れています。
たしかに神格化しなくても 見た人によっては 余計に神格化する人もいそうですね。 だから ゲバラなんだと。
Posted by: zebra | May 25, 2014 09:54 PM
>zebraさん
おおお、これまた懐かしい記事にコメントありがとうございます。
うん、実はわたしもこれちょっと寝ちゃいました(^_^; 仕事のあとで疲れていたということもあり… 続編は起きてましたけどね
>それは愛!
愛はなんだかんだ言ってやっぱり最強かもしれません。いま大ヒットを飛ばしている『アナと雪の女王』も結局これが結論でしたし…
日本人が普通に使う男女の愛とはまた別モンですが
欲がなく、悲劇的な最後を遂げた風雲児というのはとかく神格化されがちですよね。日本の場合だと坂本龍馬なんかいい例だと思います
Posted by: SGA屋伍一 | May 27, 2014 09:44 PM