S・A・G・A・サガ! 『仮面ライダーキバ』を語る④
ファンガイアと戦い続けるキバ=紅渡。ある日渡は旧友の大河と再会する。予期せぬ出会いに喜ぶ渡だったが、その喜びは長くは続かなかった。大河はファンガイアの長たる「キング」だったのだ。さらに渡と大河は同じ女性を愛してしまう。二人の対決は避けられないのか。
一方過去では渡の父、音也に危機が訪れていた。ファンガイアのクイーンである真夜を愛したことで、先代のキングの怒りに触れたのだ。圧倒的な力を持つキングの前に、なすすべもない音也。彼の命運やいかに。
いよいよ最終回まであとわずかとなった平成版仮面ライダー第9作『キバ』。今回は『キバ』の自分が思うテーマについて語ります。そのテーマとは「父性」。
昭和世代やロボットものと比べて、平成ライダーで極めて希薄なのが親の存在。彼らとて人の子。木の股から生まれてきたわけではないはずです。ところがこのシリーズでは主人公たちの親に関しては、よくて詳細不明。悪くてすでに死亡。多少の差はありますが、作中で語られることはおおむねほんのわずかでした。
その「主人公の親」について初めて真っ向から語ったのが、『キバ』であります。
平成ライダーでは「副主人公」が重要な意味を持つ、ということは前にも書きました。今までの例でいうと刑事だったりライバルだったり。変り種では知り合いの少年とか、想像から生まれた怪人とか。
んでこの『キバ』における副主人公が、実は主人公の「親」であったりします。もっともこの親=音也は「現代」では消息不明(もしくは死亡?)なため、二人が共演するわけではありません(劇場版は除く)。二つの時間軸がえんえんと平行して語られるという、極めて特殊な形式がとられております。
普通「ヒーローの父」と言ったら、大抵の方は力強く頼もしい男を想像することでしょう。しかしそう一筋縄ではいかないのが平成ライダー・というか井上敏樹。
この音也という男、ちゃらんぽらんで大ぼら吹きで無礼千万な上、美女と見ればだれかれ構わず声をかける女ったらし。似たキャラというと諸星あたるとか、シティハンター冴羽僚とか。あるいは植木等など。本当にとりえといえばヴァイオリンの腕前くらいなものです。
ただそんな音也がたまーにマジメなことを言うと、すごくかっこよく見えてくるから不思議。普段はすっごくいい加減でも、大事なところはびしっと決める。そんなところが音也の魅力といえるでしょう。
そして音也の残した様々なものが、要所要所で渡くんを再起させる役目を果たしています。
主人公の渡くんは、本当によく落ち込む人間です。同じ気弱系でもシンのところはほとんど揺らがなかった野上良太郎と比べると、まことに対照的。「おっ 成長したな♪」と思ったら、次の週ではまた深く思い悩んでいたりします(笑)。
そんな渡をいつも立ち上がらせるのが、紅音也の遺産。彼が心血を注いで作った「 ブラッディ・ローズ」というヴァイオリン。渡をサポートする三匹のモンスターたち。彼を知る人の話。「人間には一人一人自分だけの音楽がある」という言葉。
そういった父親の残したものに触れることで、渡はまた戦う意思を取り戻します。
父親にとって大事なのはうわべではなく、子供にどれだけ良いもの(主にメンタルな部分で)を残せるか。そういうことじゃないのか? ・・・・そんな風に井上先生に問われているような気がします。
一方でこの父親の不在に苦しむのが、渡の兄であり親友である大牙。彼の実の父はおおよそ人間らしい感情を持たぬ怪物であり(だって人間じゃないしね)、育ての父はどこか恐怖を持って彼に接します。
そのせいか、大牙は強く「家族」を欲するようになります。その「家族」の中には渡も含まれていたのですが・・・・
時を越えて、とうとう出会いを果たした渡と音也。彼らは果たして「キング」に打ち勝つことができるか。そして渡と大牙の間に友情はよみがえるのか。
『仮面ライダーキバ』、残りあと三回。ココロして見守っていく所存にてございます。
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