俺たちゴーストバスターズ、ほか色々 ミシェル・ゴンドリー 『僕らのミライへ逆回転』
首都圏より二ヶ月ばかり遅れて上映。軽妙で幻想的な作風で知られるミシェル・ゴンドリーの最新作。
偉大なるミュージシャン「ファッツ」の故郷パセーイク。どことなく古めかしいその街に住む若者は、みごとなまでにどなたもこなたも薄ら馬鹿ばっかり。その薄ら馬鹿の一人ジェリーは、ある夜発電所を破壊しようとして大感電。全身に磁気を帯びた「電磁波人間」と化してしまう。
彼が近づいた事により、レンタルビデオ店のテープは全て中身が消失。再生しても映るのは「砂の嵐」のみ。困った店長代理はジェリーと二人でバッタモンの作品をこしらえ、それを貸し出すことで窮地を逃れようとする。
するとなんたることか、そのバッタモンは好評に好評を呼び・・・
こうやって書いてみると、すげー強引なストーリーだということがよくわかります(笑)
作品では二つのキーワードが繰り返し出てきます。
ひとつは裏返し(反転)。店長がガラスの窓に書いたメッセージ。「昼を夜にしよう」として、加工した映像。そして・・・・ムニャムニャ。
もうひとつは「消えていくもの」。かつて街にいた偉人の記憶。取り壊される古い建物。ビデオテープ。映像そのもの、などなど。
この二つのキーワード、映画というものをよく表しているような気がします。
裏返しというのはコピー、あるいはフェイクです。ほんまもんじゃありません。
映画作品というのもよほど忠実なドキュメンタリーでもないかぎり、ほとんどはフェイクであり、嘘っぱちです。最近は「真実に基づく物語」とやらも多いですが、この「基づく」というのがけっこうクセモノだったりして(笑)。しかし時としてその偽物が本物を越える感動を呼び、人々の中で「本当」になっていきます。
また、映像というのは非常にはかないものです。網膜にぱっと映ったかと思ったら、瞬く間に過ぎ去っていく。それゆえどんな名作も、いつしかわたしたちの記憶から薄れていくもの。だからこそ、消したくない・・・ 残しておきたい。
そんなメッセージを、わたしは作品から受け取りました。
ジェリーとマイクが工夫と「ありもの」でリメイク業に精出す様子がまことに楽しい。わたしは特に超安全な落下シーンの撮影とか、微笑ましい「脳みそぶちまけ効果」に感心しました(笑)。
彼らが最初に手がけるのが『ゴーストバスターズ』『ラッシュアワー2』『ロボコップ』あたりなんですが、この辺がアメリカの一般家庭のスタンダードだと思っていいんでしょうか。単に監督の趣味ということも考えられますが。
作品の持つ上品な部分と、お下品な部分がうまくかみ合っていない気もします。ただ映画というのも深い感動を呼ぶ名作もあれば、話にするにも値しないメチャクチャくだらない作品もあるもの。ゴンドリー氏はその全てをひっくるめて愛している、ということなのかな? ・・・・例によって考えすぎでしょうかね
こっから先はオチをネタバレしかかってるのでご了承ください。
わたしのパパンの話によりますと、昔は「屋外上映」なるイベントが時々あったそうです。
神社の境内のような広い場所にスクリーンを張り、映写機を回す。
そうするとスクリーンの両面に映像が映るため、観客は両側に別れて映画を見ていたとか。
たまにはそんな風流なイベントがあってもいいかもしれませんね。寒さの増してきた今の時期は相当厳しいでしょうけど。
Comments
伍一さん★
こんにちはー。
TBコメありがとうです
>作品の持つ上品な部分と、お下品な部分がうまくかみ合っていない気もします。
あ、わたしもコレ感じたんですよ〜。
やってる事はかなりおバカだけど
ゴンドリーの上品さがおバカ映画にはしないという感じ。
思ったほど笑えなかったんですよね。
確かに映画愛にはあふれてるんだけど、ちょっと期待しすぎたかも、、、、。
昔屋外上映。。。
すごく個人的に昔うちのパパンも人集めて外で映画上映してたのがそういえば記憶にあるな、、、。
(って映画監督ではないですけど)
今時期は寒すぎでムリだけど
外での上映って開放的で気分よさそう♪
Posted by: mig | December 09, 2008 01:06 PM
>migさま
素早いお返しありがとうございますー
>ゴンドリーの上品さがおバカ映画にはしないという感じ。
思ったほど笑えなかったんですよね。
わたしとしては「こういうのもありか」と思いましたけど、migさんとしてはもっともっとお馬鹿に徹してほしかったというところでしょうか?
実はゴンドリー作品は初挑戦でして。ほかはもっとお上品なお話なんでしょうかね? 『恋愛睡眠のすすめ』とか見たいな・・・と思いつつ、いまだ未鑑賞です
>昔うちのパパンも人集めて外で映画上映してたのがそういえば記憶にあるな、、、。
さすがmigさんとこのパパンは粋だなあ
そんな形でのオフ会とかできたら素敵でしょうね~
Posted by: SGA屋伍一 | December 09, 2008 09:45 PM
こんにちわ。
トップの「タイホする」をみると、どうしてもアニメの『逮捕しちゃうぞ』を
思い出してしまいます。
≫ゴンドリー氏はその全てをひっくるめて愛している、
ということなのかな?
なるほど・・・きっとそういうことではないでしょうか?
おっしゃるように、上品な部分と下品な部分の噛み合せの悪さがどうも
私には理解不能だったのですが、SGA屋さんのような見解をすれば
納得いくというものです♪やったー!
笑いも泣きも、私の中ではどっちつかずな感じでいまひとつな印象の
作品ではあったのですが、なんとなく『ニューシネ』を思わせる雰囲気に
はほんのりジュワっとくるものがありましたです。
屋外上映っていいですね。
氷点下の中で、みんなで体を寄せ合って観る『南極物語』なんかは
味があって良さそうです(←ホントかー!?)
Posted by: 睦月 | December 10, 2008 03:49 PM
>睦月さま
旅行でお疲れのところ、ご来訪ありがとうございます
>『逮捕しちゃうぞ』
あんまし知らないんだけど、主人公の二人はこんなに太ってなかったと思いました(笑)
>SGA屋さんのような見解をすれば
納得いくというものです♪やったー!
ふふふ。ぼくにかかれば解けない謎はないのさ!
本当はその場で適当に考えただけなんだけど(爆)
それにしてもみなさん『ニューシネ』がお好きですねー わたしも熱心なファンほどじゃないけど、好きなお話です。これが上映されたころはまだ高校生だったかな・・・・ ノスタルジーでやんす
>氷点下の中で、みんなで体を寄せ合って観る『南極物語』なんかは
味があって良さそうです
そう言われると、なんかやってみたくなってくるじゃないですか!
体を寄せ合って・・・ アタシなんだかドキドキしてきた
『ホワイトアウト』オールナイトでもいいかもね。「寝たら死ぬぞー!」とか言い合いながら(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | December 10, 2008 08:25 PM
裏返し、反転・・・ほんとだ。気がつかなかった
タイトルも逆回転なのに。
どちらかというとゴンドリーというかジャック・ブラックだから
観に行った映画でしたけど、
思ったほどおバカではなく、いい意味で期待を裏切られ
心地よく感動することができました。
>映画というのも深い感動を呼ぶ名作もあれば、
>話にするにも値しないメチャクチャくだらない作品もあるもの。
>ゴンドリー氏はその全てをひっくるめて愛している、ということなのかな?
そうそう。私もそういう感じのゴンドリー氏の映画愛を感じて、
なんだか嬉しかったんです
けっこう庶民的なんだなぁって(笑)
「ゴーストバスターズ」大好きだし。
そろそろ、もろもろの“ベスト”を決めなければならない時期ですね
今のところ「僕らのミライ」はベスト入り予定。
あと「ウォーリー」と「グレンラガン」は、絶対観なきゃ。
Posted by: kenko | December 11, 2008 01:48 AM
>kenkoさま
お返しありがとうございます
kenkoさんはジャック・ブラックお好きなんですね。『僕らの~』のジャックはわりとマジメな方でしたね(これでか!?)
彼の作品では『愛しのローズマリー』が好きです。「今度ばかりは、違う道を行こうと思う」とびしっと言うジャックにほれかけました
あとこの人、ブラック・ジャックと名前が似ててまぎらわしいです
ゴンドリーさんはフランス人なんですよね。おフランスの映画人というとオシャレでアーティスティックでロマンチシズム優先、みたいなイメージありますけど(大偏見)、この庶民感覚は非常にとっつきやすかったです
『ゴーストバスターズ』はわたしが小学校高学年ごろの映画だったかな? 『ゴジラ』『グレムリン』と並んで「3G」とか言われてたっけなー
現在第三作が準備中だそうですよ
kenkoさんのベスト、楽しみにしてます! わたしのベスト1は、たぶん予想ついてるでしょうね・・・(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | December 11, 2008 07:30 AM
反転
こちらにもTB&コメントありがとうございました。


そうなんですよねー、よく考えるとかなり強引な作品でした。
クオリティは高くないかもしれないけれど、自分が映画好きとして歩んできた日々を懐かしく振り返ることができて(大袈裟やなぁ)、とても愛着の湧いた作品でございました。( ^ω^ )
何となくJBの毒気が薄めに感じたのですが。
共演のモス・デフの大らかな感じにも好感が持てて。
全体的に、心地良い感じが止まらない感じがしました。
屋外上映、とても楽しそうですよね。
映画館で見るのとは、全然違いそうです。
Posted by: となひょう | December 13, 2008 08:52 PM
>となひょうさま
こちらにもお返しありがとうございます
いまでは個性派作品中心のとなひょうさんも、映画ファンになりたてのころは定番のエンターテイメントがお好きだったんですね
わたしは最初に劇場で見た映画は『スターウォーズ』第一作、映画ファンになったきっかけは『インデペンデンス・デイ』でした
実はJB出演作品って片手で数えられる程度しかみてないんですけど、いつもはもっとしっちゃかめっちゃかなんでしょうか。言われてみれば下ネタはそんなになかったかな。おしっこと一緒に磁気が流れてったくらいで
>屋外上映
ね、ちょっと良さそうでしょ?
イメージ的には「林間学校におけるキャンプ・ファイヤー、肝試し」に近いものがあります
Posted by: SGA屋伍一 | December 14, 2008 11:40 PM
反転のパンダ、、なんか可愛い!!
結構強引な物語ですが、みていてなんかホクホクと幸せな気持ちになってしまいました。
こちらって、この映画でネタにされている映画を無邪気に楽しんでいた時代を思い出してしまいました!
そうそう そんなシーンあった!とかみていてなんかワクワクしていました。
だから なんか好き!そんな映画でした(^^)
Posted by: コブタです | January 06, 2009 07:49 PM
>コブタさま
こちらにもありがとうございます。黒パンダもほめてくださってサンクス
こいつで一発当てらんねえですかねえ・・・(無理無理)
コブタさんはかなりこの映画気に入られたようですね。『ゴーストバスターズ』のころわたしは小学生で、『ロボコップ』のころは中坊でした
小遣いが少なかったので、まだまだ親にせびらないと映画は見られない時代でしたねえ。二作品ともすごく見たかったけど、結局テレビで観ました
『ラッシュアワー2』のころはもう一人で行けるようになりましたが、この映画はあえてスルーしました(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | January 06, 2009 11:43 PM