紅白夢合戦 アルベール・ラモリス 『赤い風船』『白い馬』
いつも芸術の最先端を突っ走っているわたしが常々思ってること。それは「映画も料理も、やっぱフランスがNo.1よね!!」ってこと。まさにフランスを知らずして文化を語るなかれって感じ? シャルルジャポン? マロングラッセ?
・・・・ウソです。フランス料理は高くて食べれませんし、映画は難しくてよくわかりません(今年見た『潜水服は蝶の夢を見る』『ぜんぶ、フィデルのせい』はそれなりに楽しみましたが)。しかし今回紹介する『赤い風船』は、そのアイデアとシンプルなタイトル、そして「幻の名作、ついに解禁!」「高畑勲絶賛!」なんてコピーに魅かれて、興味を抱いたのでした。
けれどもリバイバル作品な上に併映の『白い馬』を足しても一時間二十分に満たない長さ。東京まで観にいって外したらいやだなーと思って鑑賞をためらっていたところ、なんと近くの劇場でやってくれるというではありませんか。これはつまり・・・オレに「観ろ」ということだな? そんなわけで『赤い風船』、あらすじ参ります。
ある朝学校に向かう途中、少年は外灯にひっかかっていた赤い風船を見つける。少年は風船が雨に当たらないよう、行く先々で傘を借りたりして、世話を焼いてやる。すると不思議なことに、その風船は少年のあとをどこまでもついて来るようになる・・・・・
一歩間違えるとホラーにもなりかねない題材ですが、そこはそれ、「バルーンは友達! 怖くないよ!(BY大空翼)」ということで。
アイデアもさることながら、少し色あせた感のあるフィルムの中で、風船の「赤」だけが艶々と輝いていて、網膜にぬぐいがたい印象を残します。そして一個の風船だけでこんなにも画面が華やかになり、こんなにも話を面白くできる。そのことに何よりも感心しました。
壮大かつ幻想的なエンドにも驚かされた・・・と言いたいところですが、実は事前に公式サイトを覗いてみたら、「story」の項に最後まで全部丁寧に書いてあったんですね。公式ィ!! イイイイイ!!
でもまあラストを知っていても十分に楽しめる作品ではありました。
もう一本はほとんどオマケのつもりだったモノクロ作品『白い馬』。赤い風船はカラーじゃないと「赤」だとわかりませんが、白い馬は白黒でも「白」だとわかるということで。
舞台は南仏の河川地帯。野生馬のリーダーである美しい白馬。その存在は周囲のカウボーイたちの注目を集めていたが、猛々しいこの馬はなかなか彼らの手には捕まらない。その様子を見ていた一人の少年は、白馬に憧れにもにた感情を抱く。この馬と仲良くなれたなら・・・・ その一途な思いが、やがて彼と白馬を引き寄せることに。
白黒の映画を劇場で見るのはいつ以来だろう・・・・ 大学のころバスター・キートンの特集上映に通った時以来?(あ、『シン・シティ』)
モノクロのせいか個人的には『風船』よりこちらの方がはかないというか、夢幻的な印象を受けました。題材的にはむしろこっちの方が現実的なんですが。
目を見張ったのは馬VS馬のファイト。古代史劇などで騎馬武者同士の戦いはよく見られますが、人の乗ってない状態でのバトルはたぶん初めて見ました。馬というとデリケートなイメージが強かったですが、本来はこういうワイルドな一面もあるのね・・・と。
予想だにしなかった幕切れ(こっちは公式読まなかった)に、しばし愕然。ちょっと・・・ それはないんじゃないのか? あれ? もしかすると『赤い風船』のラストもそういうことだったんですか!?(見てない人はなんのことだかわかりませんね。すいません)
ファンタジックなストーリーのせいか、風船も馬も、そのものというより妖精のような雰囲気を帯びています。強い友情(愛情?)で結ばれた一人と一つ(もしくは一頭)。だが心無い者たちの妨害により逃亡を余儀なくされる・・・・ なんという世知辛い世の中でしょうか。監督はそんな世界から逃れて、ここではないどこかへ旅立ちたかったのでしょうか。あるいは『ロミオとジュリエット』でも意識していたのか。
このニ作品が作られた53年~56年といえば、日本はようやっと焼け跡から復興を始めたあたり。そういえばこの二本の間に『ゴジラ』第一作が作られております。
そんな時代に、フランスではこんなメルヘンチックな映画が撮られていたとは、なんだか感慨深いものがあります。フランスだってついこないだまでナチスドイツの占領下にあったはずなんですが・・・・ この辺がお国柄ってやつなんでしょうか。
今のチャカチャカバタバタした映画と比べれば、ちょっとあっさりしいているように感じられるかもしれませんが、
「50年の時を経ても、その輝きは失われていない」
そんな風に自信を持って言えるニ作品。リバイバルはまだ各地で続いているようなので、近くで上映していたらぜひご覧になってみてください。
ちなみにウチの近所では早くも朝一回だけの上映になってしまいました
シャンテシネ? コマンタレブ?


Comments
あの白馬の少年の今は・・・白髪の老紳士だと思いたいっすねえ・・・うさぎちゃんはふんだりけったりでしたけど;
そうそう、お馬さんて結構ワイルドなんですね。
赤い風船も逃げ足速いし・・・
いやー、ホントいい映画でしたよ。
SGA屋さんもこういう映画をご覧になるのですね。うれしーぃぃ。イイイイ!
Posted by: シャーロット | October 08, 2008 05:04 PM
>シャーロットさま
お返しありがとうございます
白馬の少年の今・・・ 海底で白骨化してたらイヤですね・・・
うさぎちゃん・・・ はて・・・ ああ! いましたね、もてあそばれてたのが! あと亀もいましたよね!
風船と馬の共通点は「自由気まま」「ひも付き」ということくらいでしょうか
それにしてもシャーロットさんがそんなに喜んでくださるとは。これからはがんばってオシャレで難解な映画もたくさん見てみようかしら?(ムチャよ!)
Posted by: SGA屋伍一 | October 08, 2008 09:42 PM
SGA屋伍一さん、こんばんは☆
トラックバック&コメントありがとうございました。(*^-^*
馬は人との信頼関係を大切にする動物だから
人を騎乗している時は概ねおとなしいけど、
人が乗っていない時はワイルドになる時もあるのでしょうね。
>ファンタジックなストーリーのせいか、風船も馬も、そのものというより妖精のような雰囲気を帯びています。
ナルホドです。
新天地へ旅立ちたかったのかもしれないですね。
Posted by: BC | October 11, 2008 12:12 AM
>BCさま
お返しありがとうございます
馬と聞くとどうしても牧場か競馬場にいるものと考えてしまいがちですが、世界のどこかにはまだああいい風に人と関わらず生きている野生馬たちもいるんでしょうかね? モンゴルあたりにはいるかなあ。あとはシマウマとか
>新天地へ旅立ちたかったのかもしれないですね。
新天地というと・・・アメリカとか?(そりゃ新世界)
本当は馬と少年はこの世のどこか別の国に旅立っていった・・・と思いたいんですけどね・・
Posted by: SGA屋伍一 | October 11, 2008 07:28 AM