ともだち募集中 ロマン・カチャーノフ 『チェブラーシカ』
それはいつ、どこで生まれたのか誰も知らない(こんな文章、こないだも書いたな)・・・・ とある果物屋のミカン箱からひょっこり現れた謎の生き物(サル系)。虚弱体質なのか、すぐにぶっ倒れてしまうためチェブラーシカ(ばったり倒れ屋さん)と名づけられたそれは、玩具屋さんのウィンドウで働かされることになります。ある日チェブラーシカは街で「ともだち募集中」と書かれた貼り紙を発見。書かれた先で彼を迎えたのは、ゲーナという寂しがりやのワニさんでした・・・・
1969年から83年にかけて旧ソ連で製作されたコマ撮り人形人情アニメ。現在ひっそりと全国でリバイバル上映中であります。大人気でありながら、14年の間に製作されたのはたった4本73分。コマ撮りアニメって作るのに死ぬほど時間かかりますからね・・・ あるいは原作(絵本)のストックに限界があったのか。
タイトルを順に書きますとチェブとゲーナの出会いを書いた第1話「ワニのゲーナ」(1969)、二匹がエリート少年団に入ろうとがんばる第2話「チェブラーシカ」(1971)、旅行中、意地悪ばあさんに悩まされる第3話「シャパクリャク」(1974)、チェブラーシカのお入学を描いた第4話「チェブラーシカ、学校へ行く」(1983).。
ただし今回のリバイバル版では1→4→2→3の順番で上映。理由としては4話が一番短くてとてもあっさりしてる
からということと、設定上の矛盾を回避するため、ということが考えられます。
最近の『ウォレスとグルミット』などと比べると、素朴で哀愁を帯びた味わい。ゲーナが奏でるテトリスのテーマがまた物悲しい。どの話も最後はハッピーエンドなんですけどね。メインはチェブラーシカとゲーナの二匹なんですが、この友情にチャチャを入れるのがシャクなんとかという意地悪ばあさん。様々なイタズラの駆使し、二匹を苦しめます。
ところがそんな目にあわされても全然ババアを恨まないチェブ&ゲーナ。キミたちは仏か? 仏なのか?
「人間、空よりも広い心を持たなきゃダメだよ!」 彼らにそんなことことを教わった気がしました(笑)
動物園、学校、優良少年団、電車内・・・・・ いろいろなところで締め出し&門前払いを食らってしまうチェブラーシカ。それもそのはず。彼は本来この世には存在しない正体不明の生き物なのだから。その度に「仕方がないね」とさびしくうなだれるチェブちゃん。やめてください! おじさんそういうのに弱いんです!!
だけどチェブラーシカは決してぐれたりせず、世のため人のためがんばり続けます。そうしていくうちに、いつしか周りも彼を受けいれていく・・・・ 意地悪ばあさんへの態度もそうだけど、本当に「強い」というのはこういうことを言うんじゃないかな、と思いました。
わたしが最初「?」と感じたのは、なぜ主人子のコンビが「ワニ」と「正体不明」なのかということでした。東欧だったらクマとかタヌキとか、かわいい生き物ほかにいくらでもいるじゃないですか。
そこでふと思い浮かんだのは、当時ロシアの人たちを西側の人々はどのように感じていたのか、ということ。厚いベールに包まれて何を考えているのかわからない彼の国方たちは、ちょうど「正体不明」のいかめしい「怪物」のように思われていたのかもしれません。ちょうど今の我々が北○鮮をイメージするかのように。
「でもベールをはぐったその先に住んでいるのは、あなたたちと同じ心優しいさびしがり屋さんなんだよ」
もしかしたらそんなことが言いたかったのな、と。
そしてボタン一つで世界がふっとぶかもしれなかった時代に、人に優しくすること、ひたむきにがんばり続けることを、こんなにも慎ましく訴えているところがとても素晴らしいと思いました。
この『チェブラーシカ』、すでにDVDも発売されています。リバイバルはもうちょっと続くようですが、事情の厳しい方はそちらの方でぜひどうぞ。
画像は今日(!)たまたまシネコンで見つけたガシャポン。お花を抱えたバージョンですが、劇中にそういうシーンあっただろうか・・・・
ほかに「うれし顔」バージョン、「ミカン箱」バージョンなどがあります。
Comments
チェブーー!!
チェブ大好きなんです
うちの方ではやってくれないみたいなんだけど、
リバイバル上映されたんですよね。
いいなぁ。大画面で観てみたい♪
1→4→2→3
この順番、確かに正しいと思います。

ババアを全く恨むことなく、列車の上でゲーナとチェブが歌うあの歌。
切なくて優しくて・・・グッときちゃうんですよね
あと、1に出てくるネコちゃんがかわい過ぎる
同じカチャーノフの「ミトン」も好きです
Posted by: kenko | September 08, 2008 09:36 PM
>kenkoさま
おはよっすー
おお、『チェブラーシカ』ご存知でしたか! さすがkenkoさん
実はわたしは今回のCMで初めてその存在を知りました・・・ はずかしや
こちらも近所ではまずやってくれそうにないので(ガシャポンは置いてあるのに・・・)、遠方まで観にいきましたよ。大画面というより、大と中の間くらいのスクリーンでしたが
第4話は一本だけ間が空いていたり、ながらく世界未公開だったりと、いろいろ事情があったみたいですね
>列車の上でゲーナとチェブが歌うあの歌。
切なくて優しくて・・・グッときちゃうんですよね
「この歌、どこかで聞いたことが・・・・ そうだ! 『テトリス』だ!」と気づいた時にはスカッとしました(笑)
恐らく有名な民謡なんでしょうね
♪あしたはきっといいことがある (ロシア語わかんねえ)
『ミトン』も評判いいですよね。そのうち教育でやってくれないかな
わたしが行った時には、『ママ』(カチャーノフ作品)というなんとも不思議な味わいの短編が同時上映でかかってました
Posted by: SGA屋伍一 | September 09, 2008 07:42 AM
おお、SGAさん、予告どおり早速UPされたのですね!
こちらこそ、私のオススメをマトモに聞いてくださってありがとうございます。とっても嬉しいです!
SGAさんは私のトモダチですよ・・・ね??うわーん(泣)
イヤーこれ、本当にお気に入りになりました。
私はチェブが正体不明な理由は、チェブが宇宙人だからだと思いま~。
ミカン箱は宇宙船だと思いま~。
そして、ばったり倒れやさんなのは、長い宇宙の旅をしてきたから、地球の重力に慣れなかったのが理由だとおもいますけどw
だからトモダチ~を探しているのかな?
Posted by: とらねこ | September 09, 2008 10:10 PM
>とらねこさま
速攻でお返しありがとうございました。とらねこさんのレビューにはこう、人を動かす力があったのですよ
>SGAさんは私のトモダチですよ・・・ね??うわーん(泣)
とらねこさんこそ、わたしのトモダチですよね?? あはは
わたしが考えたストーリーは、秘密研究所で作られたサルとコアラの合成生物が、命からがら脱走してきたというもの(爆)
あー、でもミカン箱の宇宙船って夢があっていいですね~ ロシアに普通に「ミカン箱」があることも驚きでした
Posted by: SGA屋伍一 | September 10, 2008 07:36 AM