人気者になりたくて ピーター・バーグ 『ハンコック』
ああ、あそこ今政情不安で大変みたいですね・・・ ←そりゃバンコクだ!
ここんとこ続いてるヒーロー系映画では、一番の変り種。『ダークナイト』を160キロの豪速球、『ハルク』をコントロールの利いた巧みな配球だとすると、これはどこへ飛んでいくかわからないナックルボールのような味わいか?
いまハリウッドで一番戦っている俳優、ウィル・スミスの最新作です。
遠い遠い現在。マイアミに一人の超人が住んでいた。彼の名はハンコック。空を飛び、無限のパワーを持ち、そのボディは鉛の弾さえ弾き返す。にも関わらず、彼は町中の嫌われ者だった。なぜか。それはひとえに、「態度が悪い」からであった。
口は悪い。セクハラはする。おまけにいつも酔っ払っていて、一度切れると子供にすら容赦しない。たまに渋々人助けをしたとしても、その度にビルが壊れたり道路が陥没したりするので、人々はいつも彼を罵っていた。
だがある時彼に助けられたPRマン・レイが、ハンコックに一つの提案をする。「どうせなら、人にほめられたいとは思わないか?」 その言葉にちょっと心がときめいてしまうハンコック(笑) しかしレイの出した「人気者になるためのプラン」はハンコックの思いもよらないようなことだった・・・・
日本におけるアメコミ研究の先駆者・小野耕生氏は、アメコミを「現代のギリシャ神話」と評しました。本作品はこのアメコミの神話性というか、寓話性が色濃く出たお話。
昔々あるところにみんなから嫌われていた乱暴者がおりました。しかし本当は彼はみんなと仲良くなりたかったのです・・・・
そんなお話、ありませんでしたっけ?
もう一つの大きな要素は「もしスーパーマンの性格が悪かったら」という試み。
「出る杭は打たれる」ということわざの通り、目立つ人というのは何かと嫌われやすいものです。こないだまで大人気だった人でさえ、ちょっとした拍子でバッシングの集中砲火を浴びたりするなんてのはよくあること(例:亀田兄弟、エリカ様、星野監督)。
では嫌われないようにするにはどうしたら良いのか。それはスーパーマンの態度にならえばいいだけのこと。いつも笑顔を絶やさず、周囲によく気を配り、それなりの身なり(笑)をして、失敗したらすぐに謝る。
ただ、幼児なみのメンタリティしかないハンコックには、なかなかそれが難しかったりもします。
アメコミ系の映画には一つのパターンがあります。それは主人公に匹敵するほどのパワーを持つ悪役が登場し、最後はヒーローがそいつを倒して終わり、という流れ。「アメコミ映画としては別格」と言われた『ダークナイト』でさえ、この枠を外してはいません。
しかし『ハンコック』には、この「ヒーローに匹敵する悪者」というキャラが存在しません。悪役はそれなりにいますが、到底ハンコックにはかなわないような、しょぼい連中ばかり。
だからこのお話、どうやってケリをつけるのか、なかなか予想ができません。そんなどこにどう転がっていくかわからない展開が面白かったんですが、普通にアメコミのカタルシスを望んでいた人たちには不評だったようで。
だからまだ見てない人たちに親切心で言ってあげることにします。
この映画、普通じゃないです! 変です!!
・・・・えー、ここから先はちょいとネタバレ。未見の方は避難よろしく。
後半、悪役ではありませんが、ハンコックに匹敵するパワーを持つ存在が登場します。んで、唐突に「二人が接近すると、二人ともパワーを失う」なんて設定が出てきちゃったりします。何の説明もなく(笑)
「強引だよなー」と鑑賞中は思ったけど、これもしかしたら聖書に出てくるアダムとエバのことを意識してたのかもしれません。最初は不老不死だったアダム。しかしエバと暮らし始めたことが、結果として彼から永遠性を奪うことになります。無類の強さを誇った英雄が、美女にだまされてコロリといってしまう・・・というのも神話ではよくあるパターンですしね。
アメコミ映画が目白押しのこのごろですが、どれもそれなりの個性を発揮しているのは本当に喜ばしいこと。どのジャンルにも言えますが、王道、異端、いろいろあるのがいいことなんだと思います。
続く『アイアンマン』は果たしてどのようなカラーとなるのか? これまた楽しみなことであります。


Comments
伍一さんこんばんは〜☆
コメントTBありがとです、
このヒーローもの、ちょっと変わってましたね〜、
ずいぶん強引でご都合主義的な設定だったりしたけど
最初からありえない話なんで気にならずにみてました
シャーリーズは綺麗だし、ウィルも好きなのでなかなか楽しかったナ!
『アイアンマン』は2度観たんだけど、面白かったですよ♪
伍一さんもきっと好きなハズ、、、、♪
Posted by: mig | September 21, 2008 12:27 AM
>migさま
お返しありがとうございますー
『ダークナイト』のすぐあとだったんで、この映画の変わりっぷりがよくわかりました(笑)
>ずいぶん強引でご都合主義的な設定
できたらちょっとだけでももっともらしい説明をこじつけてくれればよかったんだけど・・・ まあ細かいこってすな
ウィルは「ヒゲそると途端に若け~」
」
セロンさんは「主婦のスタイルもなかなか
って印象でした(笑)
>伍一さんもきっと好きなハズ、、、、♪
もう観る前から「好きだ!」と決めてます(笑)
あー、早く観てー
Posted by: SGA屋伍一 | September 21, 2008 09:02 PM
SGAさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪
ヒーローモノには不可欠な悪役。本作でも一応登場してましたけど、はっきり言って凄い存在感が薄かったです。特別凄い能力や突出した頭脳を持ってるわけでもないので、終盤も少々盛り上がりに欠けた気がするんですよねぇ・・・。だから個人的にはシャーリーズ・セロンをラスボスにした方が凄い盛り上がっていたと思うこの頃w変にシリアスにならず、『Gガール』みたいな激しくも面白い嫉妬バトルのような展開でも面白かった気がします。
>アイアンマン
自分鼻血出そうなほど興奮してしまったので、SGAさんも多分気に入ると思いますよ。
Posted by: メビウス | September 28, 2008 06:56 PM
>メビウスさま
お返しありがとうございます
>悪役
それなりにがんばってましたけど、「名前が思い出せない」という時点でもう致命的ですね・・・
>個人的にはシャーリーズ・セロンをラスボスにした方が凄い盛り上がっていたと思うこの頃w
力の限りどつきあった結果、「やるじゃない・・・」「お前こそ・・・」と友情、じゃなくて愛情が芽生えるわけでしょうか。ウン、確かにこれなら感動しそう(だけど周りは大惨事)
>>アイアンマン
明日観にいってきます♪
ざーっと常連さんち見回ってみたのですが、どなたもこなたも大絶賛で・・・ 期待するなという方が無理ですね!
Posted by: SGA屋伍一 | September 28, 2008 08:57 PM
こんにちは~

ちょっと疲れが溜まっていますが、それは自分の年のせいだ・・・と痛感している由香で~す♪お邪魔します
いや~~~頂いたコメントにオ○オン座のことを書いて下さったのに、お返事に何の返答もしなかったことに今気が付きました。ボケボケで~す。
懐かしいですよね~アソコ。今はマンションになってしまいましたが、何度か行ったことがあります。歩いて行ける距離に住んでおりましたので
さて、ハンコックですが、、、
私はウィルを好きだし、やさぐれヒーローも面白いじゃん、とか思っていましたが、何だかスッキリせず・・・でいたのですが、その理由に気付かせて頂きました。
SGA屋伍一さんの明確なる分析を読み、PCの前で「そうだったのか!!」と大声を張り上げてしまいました。
それから、アメコミってギリシャ神話に通じるところがあるんですね~
だから私はアメコミが好きだったんだ。だって神話系が大好きだもの♪
で、、、ハンコックを観ながら何故か『アダムとエバ』と思いだしたのですが、まんざら的外れな感覚でもなかったんだなぁ~と思うと嬉しかったです。
アイアンマンは観ましたよ~♪
個人的にはなかなかお気に入りです。
どんな球種の映画なのか、感想を楽しみにしています
Posted by: 由香 | September 29, 2008 02:44 PM
>由香さま
お疲れのおところお返しありがとうございますm(_ _)m
>オ○オン座
映画館としては定番の名前ですよね。わたしなぞはシネコンが出来る前はそれこそ毎月のように通っておりました・・・
あの映画の前にかかる「神奈川県民ニュース」とか、すごく懐かしいですね~
古い映画を見ながら食べられるレストランとして、早川あたりで細々と営業してるという噂も聞きます
>SGA屋伍一さんの明確なる分析を読み、PCの前で「そうだったのか!!」と大声を張り上げてしまいました
ありがとうございます! でも毎度すげえ適当に書いてますので(笑)、「そうとも考えられるかもね~」くらいの気持ちで、鼻くそでもほじりながら内容受け取ってください
いや、もちろん高級マダムの由香さんは鼻くそなんかほじったりはされないと思いますが
>ハンコックを観ながら何故か『アダムとエバ』と思いだした
シンパシー♪ なんとなく仲が悪そうなところも、その後のアダムとエバを連想させましたよね(笑)
あと「アメコミ=神話」 これに限ってはわたしじゃなくて立派な先生のおっしゃってることなので、確かなことだと思います。シャマランの『アンブレイカブル』でもちょっと触れられてましたしね
『アンパンマン』(違)、昨日由香さんち付近を通り過ぎて(笑)見てまいりました。野球というより・・・砲丸なげ?(鉄だけに)
Posted by: SGA屋伍一 | September 30, 2008 02:31 PM
こんにちわ。
なるほど~。
さすがSGA屋さん、ヒーローものの分析力がずば抜けています。
私なんか何も考えずにボヘラ~と楽しんでるのみなので、
真剣に勉強になりました。
ということは、ある意味『ダークナイト』よりも、本作は突出している
という考え方も出来ますよね。
いつの日からか定型化していたヒーロー映画を、こんなアイディアで
逸脱したということに世間はもっと注目すべきかもしれません。
『アイアンマン』、楽しんでこられてくださいね~♪
Posted by: 睦月 | September 30, 2008 04:58 PM
>睦月さま
お返しありがとうございます! 「ぼへら~」か(笑) なんだか川原泉的表現ですね~(ご存知?)
>さすがSGA屋さん、ヒーローものの分析力がずば抜けています
恐縮です(^^;)
がんばって恋愛もの、芸術ものの分析力も高めていきたいものです・・・(無理だ!!)
>ということは、ある意味『ダークナイト』よりも、本作は突出している
という考え方も出来ますよね。
う~ん・・・ まあ『ダークナイト』には『ダークナイト』の、『ハンコック』には『ハンコック』の良さがあるということで
ただ『ダークナイト』は十年二十年後もしっかり人々の記憶に残っていると思いますが、こちらの方は・・・(笑) わたしゃ覚えてると思いますけど。オタクだから
>『アイアンマン』、楽しんでこられてくださいね~♪
ありがとうございます! おととい見てきました!
すっごく楽しめたんですが、不満があるとすればバイキンマンが出てこなかったことかな~
Posted by: SGA屋伍一 | October 01, 2008 08:02 AM