中年は宇宙を目指す マイケル・ポーリッシュ 『庭から昇ったロケット雲』
ちょっと不思議な夢みたの
わたしは宇宙飛行士で あなたは農夫
(坂本真綾 『うちゅうひこうしのうた』)
巨大な隕石の飛来により、地球が未曾有の危機に直面した「アルマゲドン事件」より十年。当時NASAの管制官を務めていたビリー・ボブ・ソーントンは、まだ宇宙へ行く夢を諦めてはいなかった。すでにNASAを退職し、父の残した農場で汗する日々であったが、コツコツと手製のロケットを組み上げ、来るべき打ち上げの日に備えていた。
だがミサイルにも使用される燃料を大量に買い付けたことがきっかけで、ビリーはFBIから危険人物としてマークされてしまう。度重なる妨害に、周囲からの嘲笑。そして膨れ上がっていく借金(笑)
それでも家族からの励ましを支えに、ビリーはなんとかロケット完成にこぎつける。その彼の前に一人の男が立ちはだかった。それは驚くべき事に、十年前隕石を破壊するために自らの身を投げ出し、宇宙に散ったと思われた「あの男」だった・・・・
ま、だまされる人はいないと思いますが、この映画は『アルマゲドン』とは関係ありません。たぶん。
少年は宇宙を夢見るもの。こんなわたしですが、少年時代には『銀河鉄道999』や『ガンダム』を見て、それなりに宇宙へ思いを馳せたりもしました。『学研まんが 宇宙のひみつ』を読んで、無限の世界に胸をときめかせたりもしました。
しかし受験やら思春期やらを経験していく内に、そうした宇宙への思いというのは次第に薄れていってしまうもの。だって普通の飛行機のパイロットでさえ難関なのに、宇宙飛行士となったらさらにそのはるか上を行くチョナン・カンもとい超難関です。これはいい年こいて三児の父となってなお、そうした夢を捨てきれない男の物語です。
わたしが思い出したのは、旧約聖書にある『ノアの箱舟』の話。大洪水が来るという神のお告げを聞いたノアは、それに備えるべく大きな箱舟を作り始めます。
ノアの話を聞いたほとんどの人々は、それを信じずに「気でも触れたか」とあざ笑います。しかしノアは一人ではありませんでした。彼には、自分を信じて共に箱舟を作ってくれる、七人の家族がいたのです・・・
この映画は「宇宙飛行モノ」であると同時に、一人の父親と、彼を信じる家族の物語であります。途方もなく大きな夢を持つ父親を、目をキラキラさせて応援する子供たち。時に衝突することがあっても、彼の願いをかなえてあげたいと思う妻。いつしか男の夢は、家族の夢と同じになっていきます。ビリーさんには五回の離婚暦があるそうですが、この際それは問わないことにいたしましょう。
宇宙までの直線距離は100キロメートル。大体東京から熱海(笑)までの距離と一緒です。水平ならばなんてことない長さですが、垂直となると話は別です。すさまじい重力の縄目を断ち切って、男は念願の宇宙へと飛び立つことができるでしょうか?
ストーリーはシンプルだし、セリフもベタです。ですがベタベタというほどではなく、終盤はむしろサラリとしてるくらい。また、宇宙科学とド田舎の風景の組み合わせ・・・・宇宙服で馬にまたがる主人公や、木製の納屋に格納されたロケット・・・・が、シュールな空気をかもし出していて、不思議な印象を残してくれます。
『庭から昇ったロケット雲』は現在東京ほかで絶賛上映中・・・と言いたいところですが、この映画人気ないのか、はたまた夏のスケジュールに押されてしまったのか、関東ではすでに有楽町の一館でしかやってません(涙)。おまけにそこも今月いっぱいで終了。興味のある方、『アポロ13』『オネアミスの翼』『スペース・カウボーイズ』などが好きな方はお早めにご覧ください。
さて、ビリーさんは次回作でまたあの人と共演されるとのこと。今度は『ケイン&リンチ』という殺伐としたテレビゲームが原作だとか。
仲良きことは美しきかな、ですね


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