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May 03, 2008

客員フューチャー フレドリック・ブラウン 『未来世界から来た男』

20080503095057このタイトル、いかにも映画にありそうですけど、今回はご本のお話です。1940年代俟つから60年代に活躍した作家フレドリック・ブラウンのショート・ショート集。昨年某書店でSFフェアをやっていた時、「不朽の作品集」というポップとともに並んでいたので手にとってみました。そういや星新一が影響を受けた人だったっけ・・・というかすかな記憶も手伝って。

そのカラーをおおまかに言うなれば、星新一よりは軽快でスケベ、筒井康隆よりは上品。人間に対するシニカルな視線はみんなどっこいどっこい・・・といった感じでしょうか。
日本のSF作家たちに少なからぬインスパイアを与えたというだけあって、本当にショート・ショートのお手本のような作品です。確かよくできたショート・ショートの三つの条件とは
①奇抜なアイデア
②簡潔なプロット
③意表をつく結末
ではなかったかと。流石に全部の作品が、というわけではないにせよ、収められてる掌編はかなりの高確率でこの三条件をクリアしております。
戦後まもなくという時代に書かれたこともあり、多少の古さを感じさせないでもないです。しかしその古さは決してマイナスにはならず、今の読者からすれば、かえって一種のスパイスのような彩を与えています。ちょうどチャップリンやキートンのサイレント作品が、古くはあっても十分に面白おかしく、またその古さが今にない独特の風味をかもし出しているようなものでしょうか。

内容はおおまかに二部に分かれています。第一部は「SFの巻」。第二部は「悪夢の巻」。なんだかこの分割、前半を藤子F、後半を藤子Aが担当しているかのよう(笑)。
個人的に楽しかったのはやっぱり前半パート。次から次へとヘンテコな題材が次から次へと出て参ります。たとえば巻頭は『二十世紀発明奇譚』という三部からなる作品で始まってるんですが、その三部にそれぞれ「忍びの術」「不死身」「不老不死の妙薬」というタイトルがついています。・・・なんで戦後まもなくのアメリカの本に「忍びの術」なんてものが出てくるのやら(笑)。ただこの邦題にはちょいと訳者さんの茶目っ気が表れているみたいですね。原題は単に「invisibility(不可視性)」ですから。
どういう話かと申しますと、19世紀はじめのトルコ系の小国で、ある学者が偶然透明人間になれる薬を発明します。そんで彼はこの薬を使って後宮に忍び込み、王様専用の美女にこっそりいいことをしちゃおうと企むのですが・・・・ いつの時代も男が考える妄想なんて、ほんっとーに似たようなもんででごぜえますな

そらにこのあとにも宇宙旅行に時間旅行、雪男にネコ泥棒に寄生生物などなど、センス・オブ・ワンダーに満ちたお話が続きます。一番関心したのは末尾の作品「おしまい(The End)」。時間の流れを逆さにする機械のお話。そのスイッチを入れたとき、果たしていかなる現象が起きるのか・・・・
わずか1ページで八行の作品。こんなオチにはいまだかつてお目にかかったことがありません。そして映像化はまず不可能でしょう(笑)。二・三分で立ち読みできますんで、本屋で見かけたらそこだけでもご覧ください。

第二部に入るとややバカ風味はなりを潜め、現実的かつシリアスな話が増えてきますが、こちらも水準の高さは変わりません。特に怖かったのは「ばあさまの誕生日」と「白色の悪夢」。前者はほとんど親族だけで占められたパーティーに、たまたま呼ばれてしまった「よそ者」のお話。後者は新婚旅行の帰りに是非にと言われて義姉の家に泊まる事になった夫婦の話。特に後者は怖い。血が流れるわけでも、お化けが出るわけでもないんですけど、そういうホラー的なものとはまた違った怖さにあふれております。

20060527203835最近NHKで星新一の名作を映像化した番組が放映されていますけど、あれを見て気に入った方ならば、きっと楽しめるのではないかと思います。
創元SF文庫より発売中。初版は1963年9月で、わたしが手に取ったのは65版。そんなにビックリするほどではないにせよ、なかなかのロングセラーです。
タイムマシンを使ってこの版をブラウンさんに見せたなら、彼はいったいどんな顔をするでしょう。きっと平然とした顔をして、「ああ驚いた」と言うような気がします

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Comments

こんばんは!
うわ~~~面白そうな本ですね~
スッゴク興味を持ってしまいました。
是非とも読んでみたいと思います。
早速Amazonで検索しちゃおうっと

Posted by: 由香 | May 04, 2008 12:18 AM

>由香さま

こんなマイナー記事にコメントありがとうございます
SFファンにとっちゃマイナーどころか基本中の基本みたいな人らしいですけど
由香さんが読む本ってマジメそうなのが多いけど、たまにはこんなホラ話もいかがでしょうか? 「魔法のパンツ」なんてしょうもないタイトルもありました

Posted by: SGA屋伍一 | May 04, 2008 07:17 PM

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