カストロ1番ゲバラは2番? ジュリー・ガブラス 『ぜんぶ、フィデルのせい』
・・・・パンダの親父は毛沢東、ってか。
フランスの名匠コスタ・ガヴラス(ってワタクシこの人全然知らんのやけど)の娘、ジュリー・ガヴラスの第一回監督作品。首都圏での公開から4ヶ月ほどしてようやくこちらに流れてきました。『ぜんぶ、フィデルのせい』です。
1970年代初めのフランス。大きなお屋敷と優しい両親、ハイソな学校となに不自由なく暮らしていた少女アンナ。だがフランコ政権の暴政渦巻くスペインから叔母が亡命してきたことをきっかけに、親たちは共産主義運動の活動にのめりこみ始め、アンナの生活は一変する。
家は手狭なものに変わり(それでもわたしからすりゃ十分広いと思うが・・・・)、お気に入りだったミッキーマウスは資本主義の手先ということで没収。学校では宗教の授業を受けさせてもらえなくなり、さらにはデモ行進に参加させられたり、怪しげなパパイヤ鈴木の集団が周囲をうろつくようになったり・・・・ 「納得いかねー!」とばかりにオトナたちに疑問をぶつけるアンナ。果たして彼女の受難はいつまで続くのか?
わたしは「大人向けの子供映画」というものが好きでして(ただし雰囲気の明るいものに限る)。例を挙げるなら『スタンド・バイ・ミー』とか『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』とか。『ペルセポリス』も前半はそうでしたし、拡大解釈するなら『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲 』もそれに当てはまるかと。
この『ぜんぶ、フィデルのせい』のアンナちゃんは、それらの主人公たちに比べるとややおとなしめかな、という感じではありますが、何事にも物怖じしない態度と子供らしからぬキリリとした眼差しは、心に深い印象を残します。
基本ほのぼの系の作品ですが、時々シャレにならない話が出たり、妙にヘンテコな演出があったり。日常を淡々と描いたお話なんで大きな山や谷はないんですが、ここんとこ情け容赦ない映画を続けて観てたんで、ちょうどよい癒し効果になりました。
まずこの映画はどこにでもいる平凡な家族を描いた作品であります。まあ普通と少し変わったところがあるとすれば、親たちが熱心な活動家であるということくらい。んでこのご両親、「世界(社会)のため」と張り切るはいいんですけど、どうもいまひとつ地に足がついていないような。子供たちがその活動のために割を食ったとしても、「当たり前の我慢」とあまりフォローをしません。アンナ目線でお話を見ている我々からすれば、彼女の不満は至極まっとうなもののように思えるのですが、親たちは時折アンナちゃんに「自分勝手だ!」とキレたりします。
そんな頭でっかちというか、情熱のあまり周りが目に入らない様子を見てますと、どうも子供っぽいというか、大人気ないというか。
しかし振り返ってわが身を見てみますと、自分だってこの年になっても「子供っぽさ」を十分にひきずってますし それに社会に「本当に大人らしい大人」というものがどれほどいるんだろう?と考えると、ちょっと心もとないことも確か。
そういう点ひとつとっても、これは「どこにでもいる人々」を描いたお話だと思えます。
作品のもうひとつのキーワードは、当時世界を覆っていた「社会主義運動」。特に映画ではフランコ独裁政権のスペイン、1970年のアジェンデ大統領の就任によるチリ社会主義政権成立などがクローズアップされます(カストロは?)。
自分、チリについては「すげー細長い国」、もしくは香辛料、くらいのイメージしかなかったんですが、この国にも一時だけ社会主義だった時代があったんですねえ。
アンナの父が特に熱を入れていたのが、このチリの活動の支援。日本で共産系の活動描いた作品というと、日本赤軍や「あさま山荘」といったドロドロダークなものが多いわけですけど、この作品で扱われる「活動」はとってもさわやか。夜遅くまでコーヒーをすすりながら熱心に語り合ってる様子なんかはとっても楽しそう。まだこの時代では、この思想に明るい未来を託していた人々がたくさんいたことがうかがえます。なんだか加藤登紀子の『時には、昔の話を』とかかけたくなりますね。
そんな風にさわやかに見えるのは、この映画ではその種の活動で血が流れているところが全然写っていないから、ということがあります。初めは崇高な理想であったものも、流れる血が増えていく度にどんどん陰惨なものに変わって行きます。
映画終盤で流れるある映像は、そんな暗い未来を予告しているようにも思えました。
さて、この映画で一番のサプライズは、なんと日本公開の直後、キューバ首相フィデル・カストロ氏が、約40年に渡る現役生活を退いたこと。少し前に「まだまだ元気」と言っていたばかりだったのに・・・・
一人の少女に迷惑をかけたことが、そんなにもショックだったということなんでしょうか? フィデルよ、あなたはそんなにもピュアな人だったのか?
一本の映画がひとつの国家を動かす・・・・ そんなこともあるんですねえ。ただただ驚くばかりです(信じないように。たぶん偶然)
Comments
こんばんは☆
わはは。くれよんしんちゃんよりはおとなしめのアンナちゃんですよね。
しんちゃん見ちゃうと彼女がえらく普通の女子だという印象。笑
あ、弟君の方がキャラ的には何気に面白かったかもですね。
そう、フィデルさん、お疲れ様ーー。爆
Posted by: シャーロット | June 05, 2008 09:22 PM
>シャーロットさま
お返しありがとうございまする
まあしんちゃんと比べてしまうと、大抵の子はおとなしく見えてしまいますよね(笑) あの破壊力にかなうお子はそうおりますまい・・・
弟くんはなかなか変わった子でしたよね。あのくらいの子ってもっとわがままだったり、甘えん坊だったりすると思うんですけど
なんかあの年でもう達観しちゃってるような雰囲気がありました(笑)
フィデルさんは引退にはびっくりしました。でもそのうちなんのかんの理由をつけて、またカムバックしてくるやもしれません
Posted by: SGA屋伍一 | June 05, 2008 10:47 PM
カストロ一番、ゲハラは二番♪はなかなかエクセレントかも!
Posted by: かえる | June 05, 2008 11:49 PM
>かえるさま
はっきり申しましょう
自信作です!!(あほー)
ただチェさんには熱狂的ファンが多いので「カストロなんぞ足元にも及ばんわ! このばかちんが!」と怒られそうで怖いです
Posted by: SGA屋伍一 | June 06, 2008 10:07 PM