みんなで笑おうケケケのケ 水木しげる 『墓場鬼太郎』(アニメ)
友人のお子さんのK君(たしか4歳)は、『ゲゲゲの鬼太郎』が大好き。まだテレビが白黒だったころに誕生したというのに、現代のちびっ子たちのハートをもとらえている「鬼太郎」というキャラは本当にすごいな、と思います。
昨シーズンでは驚くべき事に、二つの異なるヴァージョンの『鬼太郎』が放映されていました。ひとつはいまなお放送中の『ゲゲゲの鬼太郎』(第五期)。もうひとつは深夜に放送されたこの『墓場鬼太郎』です。
『鬼太郎』はそもそも紙芝居のお話の中で生まれたキャラクターでした。それが貸本漫画となり、さらに少年マガジンに連載され、テレビアニメになるに至って絶大な人気を誇るようになります。んで、連載初期までは『ゲゲゲ』ではなくこの『墓場』という冠言葉がついていたのでした。今回のアニメではもっぱら貸本漫画での『鬼太郎』をベースとしております。
数年前の桐生操氏のベストセラーによって広く一般に知れ渡ることになりましたが、グリム童話というものは本来あんなにメルヘンチックなものではなく、もともとはもっと残酷でドス黒いお話でした。『墓場鬼太郎』もそれと似ています。少年漫画に舞台を移してからは正義のヒーローになってしまった鬼太郎くんですが、貸本版ではもっとダークなキャラクターです。基本的に人間のために何かしようなどとは考えてませんし(美少女は除く)、故意でないにせよ周りの人間を不幸に陥れてしまうことさえあります。
じゃあ墓場版の鬼太郎は何のために戦うのかというと、それは単に生きるため、もしくは食べるためだったりします。お金を稼ぐために妖怪にちょっかいを出して、猛烈なしっぺ返しを食う、なんて話もありました(笑)
特に2話、6話、7話などは壮絶なる妖怪サバイバル・バトルが展開されます。さらに妖怪だけでなく、欲深な人間たちまでそれに参加することもしばしば。
ほんでこいつは重要、もしくは最強だろ、と思っていたキャラが非常にあっけなく退場していきます この辺には地獄の戦場を歩き回った水木先生の実体験が反映されているのかもしれません。
ではさぞ殺伐とした話なのかというと、たまーに怖いムードの時もありますが、全体的にはなんともあっけらかん、としたと空気に包まれております。これまた水木先生のお人柄が反映されているような。
以下は当ブログのお得意様が支店にて教えてくださった話。みなもと太郎先生との対談におけるあるやりとり。
水木 「あのとき死んでいった戦友たちのことを思うとねぇ・・・・・
・・・・戦友たちのことを思い出すとねぇ・・・・」
みなもと「はい・・・(やはり胸にせまるものがあるのだな)」
水木 「・・・・・だんだんとねぇ、
愉 快 な 気 分 になってくるんですよぉ~~~!」
みなもと「・・・・・・(妖怪じゃ!)」
まさに妖怪です。そうとしか言いようがありません
あと『ゲゲゲ』がアニメ化のたびに舞台をその時代に合わせているのに対し、『墓場』は発表当時の戦後まもなくを舞台としております。古ぼけた昭和の風景・風俗に郷愁を感じると共に(トランプ重井なんて人も登場します・笑)、「物価はすべて値上がりになったんです」「誰が政治しとるのか!」なんてセリフに「今と全くおんなじだw」と思ったり。
さて、『鬼太郎』は現在実写劇場版第二弾もスタンバッております。この状況について京極夏彦先生がある雑誌でこのようにおっしゃってました。
「いわば仮面ライダー第一作と『BLACK RX』と『電王』を同時にやってるようなものですよ。本当にすごいキラーコンテンツです」
京極先生・・・・ その例えは熱すぎるぜ・・・・
でもより正確にいうなれば、『BLACK RX』でなくて『FIRST』だと思うけどナー(オタクってやあね)
『墓場鬼太郎』は先日好評のうちに全11話を放映終了しましたが、現在DVDが順次発売予定。『ゲゲゲ』とはまた一味ちがったブラックユーモラスな世界を、ご興味おありの方はぜひお試しください。
Comments
墓場鬼太郎、そういえばここんとこ観るの忘れてました・・・
しかし私の密やかな訴えが地元のテレビ局に通じたのか、
この春から遅ればせながらテレビで放送してくれるみたいです
なのでまたぼちぼち観ていきたいなと思います。
墓場鬼太郎はダークなんだけど、カッコイイ鬼太郎より
どこか可愛らしくて好きです。
でもほんと、目玉のおやじだけはまったく変わりないんですよね(笑)
京極さん上手い例えですね(笑)さすがだ!
Posted by: kenko | April 08, 2008 12:45 AM
>kenkoさま
こちらにもコメントありがとうございます
最近本当忙しそうですもんね・・・ お体に気をつけつつお仕事に励まれてください
『墓場』個人的ベストはやはり上の6・7話あたりでしょうか。でも『霧の中のジョニー』とか『ブリガドーン』なんていうエピソードもとても面白かったです
墓場鬼太郎くんは「ぼくの繊細な神経を逆なでするんだ」とか「猛烈に勉学がしたくなってまいりました!」とか、言うことがいちいちマジメくさっていて痛快でした(笑)
目玉のオヤジも変わりないけど、ネズミ男もほとんど変わってなかったですよね~
京極先生はいまやいっぱしのミステリーの権威なのに、時々こういうオタクくさいことをおっしゃられるから素敵です(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | April 08, 2008 09:05 AM