さあここで迎えるバッターは四番、ピッチャー・・・ ひぐちアサ 『おおきく振りかぶって』④地区予選前夜編
ようやくキャプテンも決まった西浦高校野球部は、いよいよ夏の大会に向けて準備を整える。全員一年生の彼らが強豪たち相手にまともに戦うには、それこそ寝る間も惜しんで練習するしかない。しかし彼らにはその前にもうひとつ攻略しなければならない関門があった。それは期末試験・・・・・
これまた数ヶ月ぶりの『おおぶり』レビュー四回目。今回は主に単行本第4巻を中心に。いままでの記事はこちら一回目 二回目 三回目
スポーツマンガの傑作によく見られる要素のひとつに、「練習場面が面白い」というのがあります。普通ひとが黙々と修練に励んでいるところなんて、見ていてあまり面白くないものですが、描く人が描くとこれがけっこう燃え上がるんですね~ 『あしたのジョー』『キャプテン』『スラムダンク』『はじめの一歩』etc
ことに主人公が比較的凡人、あるいは素人の場合は、この「練習部分」の描写が非常に大切になってきます。この辺の描写が丁寧であればあるほど、後の勝利がいっそう説得力とカタルシスを帯びてくるからです。
その点は『おおぶり』においても同様です。さすが実際の球児たちを徹底取材しただけあって、そのメニューの内容が実に細かいこと。
ただ『おおぶり』がそれまでの多くのスポーツものと違っているのは、彼らの練習がハードであると同時に「とても楽しそう」ということですね。読んでる側が自分の年齢も省みずに、一緒に運動したくなる」くらいに。このテーマについては河合克敏先生の『帯をギュッとね!』でも扱われたことがありました。特訓というのはそもそも苦しく辛いもの。それをどうやったら楽しくできるのか・・・・ マゾになるのか? いやそうではなく
それはズバリ「工夫」以外の何物でもありません。ご褒美を用意したり、遊びの要素を取り入れたり、などなど。あと楽しい仲間と一緒に励んでいると、苦しいことでもいつの間にか楽しくなってしまうということはよくあります。この辺、社会人も大いに学べる点のような気がします。
この巻からは応援団長となるハマちゃんこと浜田も登場。彼や選手たちの家族など、野球部を支える人たちを丁寧に書いているところも『おお振り』の特色のひとつです。
それではチェックポイントをー
・極マズプロテインを飲む手助けをしてやったり、劣等生の勉強の面倒をみてやったり、ここに来て急に頼もしさを増してくるキャプテン花井。イヤミばっかり垂れていた初登場時と比べると、まるで別人です。いまんんところ、花井くんがかっこいい場面は、この辺とあともう一個くらい(笑)
・赤点のピンチを迎え、強制的に勉強させられることになる三橋と田島。野球漫画で始めて「赤点は試合に出れない」ということを明らかにしたのは、ちばあきおの『プレイボール』じゃないかと思います。以後こういう話は『スラムダンク』や『逆境ナイン』でも扱われ、最近ではもう定番っぽくなってるような気がします。
もっとも勉強会はなしくずしに誕生パーティーへと・・・・
・地区予選抽選会場に現れる猛者たち。ここで特に目をひくのは県下でも1,2を争うと言われてるARC学園高校。二枚目率の高い『おおぶり』世界のなかでは、珍しいくらいのイロモノぞろい。果たして本格的な登場はいつのなるのやら・・・・
・このあたりから急に出番が増えてくるセンター泉くん。「三橋・田島とクラスが一緒」ということが大きいような気がする。髪も伸びて田島と区別がつきやすくなったし
・おまけ漫画など。それほど目立って器量良しとも思えない三橋母だが、結果的には大金持ちの御曹司をゲットできたわけで。やはり女は器量より気立てだろうか。
さて、5巻からはいよいよ波乱の地区予選一回戦がスタート。これがまた燃えます!
次はもうちょっと間隔あけないで書きたいものであります・・・・
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