オゲレツ大百科 パールフィ・ジョルジ 『タクシデルミア ある剥製師の遺言』
初代のモロジュゴバーニは、国境警備を勤めるしがない下級兵士。つまらない日々の業務や、上司からのプレッシャーから逃れるためか、彼はただただチ○コをこすることに喜びを求める。
二代目のカールマーンは、もってうまれた大食いの才能を生かし、その道での世界チャンピオンになることを目指す。だが彼は飽くなきフードファイトの最中、女子の大食いチャンプ・ギゼラと恋に落ちてしまう。
三代目はラヨシュ。先代・先々代と違ってハンガリー、もといハングリー精神を持たぬ彼は、なぜかひたすら剥製を作ることに没頭する・・・・・
こちらは鑑賞前に「とんでもなく気持ち悪い」「果てしなく悪趣味」という評判を聞いていて、それなりの覚悟を決めて劇場に入りました。確かにすごかった。すごかったけど・・・・ 耐えられないほどではありませんでした。しかしまあ、作品の持つバッドテイスト、ならびにホラパワーには素直に圧倒されます。
似た類の作品というと、ちょいと位置的にはずれますが、『ほら吹き男爵の冒険』とか。ロシアに伝わるエロ昔話なんかとも通ずるものがあります。どういうのがあるかというと、百姓が種をまいた畑から、三尺ばかりの赤い頭のチ○コがぎっしり生えてきたり、チ○コがうぐいすのような美声でさえずって王女様とりこにしたり、はたまた若者のチ○コがぐんぐんと空高くのびて、その先に姑がへばりついていたり・・・・ ってチ○コばっかじゃねえか!
・・・・・あと山田風太郎や筒井康隆の奇想短編なんかともけっこう近いものがありました。
趣味がバラバラのように思える三代の男たちですが、「中にモノを入れる」プラス「中からモノを出す」という点においては一応共通しています。この対照的な二つの作業が意味するものが何かといえば・・・・
よくわかんなーい
どなたかインテリジェンスな頭脳をお持ちの方、ご意見お待ちしております(ダメだこりゃ)
さて、これだけではさびしいので、またしても当店おなじみのムチャ解釈でもしてみましょう。こっから先はかなりネタバレしてるので、未見の方はご注意ください。
えーとね、この映画ですね。実は「人間はどこまで宇宙に近づけるか」ということをテーマにした話だと思うのですよ。三代をそれぞれ小宇宙・もしくは天体になぞらえてみましょう。
まず祖父のモロゾフジョバンニ。彼は自分という天体から別の天体へ飛び立つことを夢見ています。豪快にチ○コからファイヤーを吹いているシーンがありましたが、あれはたぶんチ○コをロケットに見立てているのだと思います。幾多の艱難を乗り越え?宿願かなった彼でしたが、その先に待っていたものとは・・・・
ついで二代目のカンパネルラマン。彼は自己の肉体をひとつの宇宙へと発展させようと考えます。これについてはけっこうあからさまなセリフがありました。そのため多くのものを貪欲に取り込み、また取り込んだものをプロミネンスもごとく放出したりします。
しかしどれほど肥大化したとしても、それが肉体である以上、やはり限界があります。それをそばで観察していたラヨシュは、また別の方法をとります。すなわち自我を捨て、無となる・・・自分を一個の物体とすることで宇宙全体に溶け込もうとします。肥大化しつづける恒星ではなく、ほぼ無限に変わらぬ状態を保つ、惑星となることを選んだのでした。
・・・・・われながら苦しい(笑) でもラヨシュが作ったけったいな機械はどこか天体の運行モデルと似ていましたし、語り手がラスト近くで手に入れるおぞましき物体は、もしかしたら『2001年宇宙の旅』へのオマージュだったのかもしれません。
(追記:これ書いたあとに思いついたんですが、三世代で一人の人間の一生を表してる・・・とも考えられるかも。ただリビドーに突き動かされる青年期、物欲と名誉欲に支配される壮年期、そしてやっとこ人生と死の意味について考える老年期・・・・という具合に)
さらに初代=猿 二代目=ブタ 三代目=カッパとみるのであれば、『西遊記』のパロディとも考えることが・・・できないか すいません。ただの思いつきです。
ドイツ以東のヨーロッパの人たちって、どこかカチコチのイメージがあったんですけど、そういうところからこういうお下劣バカ話が出てくるのはちょっとうれしい・っていうか、見直さなくちゃならないなあ
あとわたしはその後も普通にご飯入りましたけど、ちょっとぐろいの苦手という人は、前もってご飯を食べてからご覧ください。死ぬほど苦手、という方はいっそその日は食を抜いた方がよいでしょう。たぶん吐きます。うん。げろげろげろ。
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Comments
SGA屋伍一 さん、こんばんは。
はるばる上京して、これを観るなんて、どの筋の人かとー。
この渋谷のイメフォは、ミニシアター激戦区の渋谷の中でも1,2のマニアック映画館って感じかも。
そんなわけで、私はよくここでシネコンでは絶対かからないような強烈映像のある映画を観る機会を得ていますー。
でも、穴からこんにちはってのは今回初めて観ましたよー。
「やわらかい手」では映らなかったもんなー。
ひとえに東欧中欧といえど、ハンガリーのマジャール民族はアジア起源らしく、日本と共通するものもあると言われてますですよー。
苗字が先、名前が後の順なのも、西洋ではハンガリーのみじゃないかな?
Posted by: かえる | April 23, 2008 12:00 AM
>かえるさま
すばやいお返しありがとうございますー
もひとつ解釈思いついたんで追記しときました。下のイラストのちょい上あたりを見ていただけたら幸いです
>これを観るなんて、どの筋の人かとー。
その筋の人ですよ。むふふ
あのそばには金○坂なんて地名もあるし、「志賀昆虫」なんて店もあってちょっとしたマニアックエリアですね。予告で見た作品群もみんな突き抜けてましたし・・・・ 『軍鶏』は原作ほとんど読みました
>穴からこんにちはってのは今回初めて観ましたよー。
ま、普通はボカシ入りますから。あれはフェイクなんでしたっけ?
ハンガリーのマメ知識ありがとうございます。日本人にも通ずるところがあると・・・ なるほど。そういえばちょっと落語っぽいところもありますよね、この映画
Posted by: SGA屋伍一 | April 23, 2008 08:13 AM
SGA屋伍一さん☆
こんにちは〜
いつもあそびに来てくれてありがとです♪
「人間はどこまで宇宙に近づけるか」がテーマというのも面白い解釈ですね
わたしはもっと剥製づくりのシーンが観たかったんだけど、
)
それは変な期待でした、この映画剥製の映画ではないんですもんね〜(笑)
ラストにはちょっとびっくりでしたよ〜
かなり突飛な発想、、、、
おデブの大食いには気持ちワルくなったけど
なかなか楽しめちゃいました(そんなわたしって悪趣味?
Posted by: mig | April 23, 2008 11:17 AM
>migさま
こちらこそいつもお返しありがとうございますー
>わたしはもっと剥製づくりのシーンが観たかったんだけど
なかなか変わったご趣味ですね・・・ 巨大な○○さんの内臓をていねいに抜き出しているところだけでは物足りなかったでしょうか
ここも気持ち悪かったけど、なんでか意地になってスクリーンを注視し続けました
>この映画剥製の映画ではないんですもんね〜(笑)
そうですね。ただタイトルの『タクシデルミア』って「剥製術」のことなんだそうで。サブタイトルにも「剥製師の・・・」とあるし、勘違いしても無理ないかも?
>そんなわたしって悪趣味?
人には誰しもライトの部分とシャドウの部分があるのですよ・・・
migさんの影の部分を垣間見たような気がします
Posted by: SGA屋伍一 | April 23, 2008 09:42 PM
こんばんは、
この映画と『ヘンリー・ダーガー~』ですもんね!素晴らしく妙ちきりんな組み合わせ。
ディープこの上ないセンスですね。脱帽です。
河童の絵もとってもお上手です。まるでヘンリー・ダーガーのようで・・
SGAさんの白黒画像を見ると、ついつい「ヘンリー・ダーガー・・・」と言いたくなってしまう自分が居ます~。
ところでこの映画ですけど、自分の欲望レベルを宇宙規模にまで・・というのは、あながち拡大解釈でもないですよね~
息子のパート、最後の作品そのものなってしまった男ですが、生前そうしたアイディアに取り憑かれた姿が描かれなかったのだけが、本当に残念です。
Posted by: とらねこ | April 27, 2008 10:48 PM
>とらねこさま
お返しありがとうございまする
>ディープこの上ないセンスですね
こちらもありがとうございます~ でもとらねこさんのマニアックかつ洗練された作品チョイスに比べれば、あっしなんざまだまだ甘っちょろいですよー
カッパの絵は描いてみたら不覚にも自分に似てしまいました
ヘンリーさんにも似てますか。自分は最近は幼女より熟女の方が好きです。法律にもひっかからないし
>生前そうしたアイディアに取り憑かれた姿が描かれなかったのだけが、本当に残念です。
なるほど。確かに先代、先々代がはっきりと何かに深く執着していたのに比べると、三代目だけはなんだか妙に達観しちゃってるように見えましたもんね。本当は彼も心の奥底に、ある執着心を持っていたわけですけど、それが明らかになるのがやや唐突だったかな?
Posted by: SGA屋伍一 | April 28, 2008 08:32 AM
こんばんわ。
さすがの解釈ですわ~。
私は他の方のように難しいことはよく分かりませんが、
生理的に大変好きな世界観なのでそれだけで十分でございます。
それにしても、あのゲ○シーンは、CGですよね?きっと。
あんなに滝のようにゲロゲロ・・・なんてねー。若干不自然だったような
気がしました。
そういえば、この作品ってハンガリー映画史上最高額を投じて作られた
んですよね?
それがチ○コとゲロと内臓の話だなんて・・・ハンガリーはホントに寛大
なお国でございます。
Posted by: 睦月 | April 28, 2008 11:27 PM
>睦月さま
お返しありがとうございます~
わたしもむずかしいことはよくわかんないんですけど、足りない頭を一生懸命ふりしぼって考えてみました
生理的に大変好きな世界ですか(笑) わたしは粘液とか内臓とかはあまり好きではないんですけど、人を食ったような語り口とか一風変わった映像センスについついひきこまれてしまいましたね
あとあの巨大ネコちゃんも良かった。もう! ○○を食べちゃだめだぞ!
ゲロシーンはきっとリアルに違いないと信じてます(笑) きっと現場じゃすんげー匂いがたちこめてたんだろーなー おえっぷ
>この作品ってハンガリー映画史上最高額を投じて作られた
んですよね?
ええ!? こんなおゲレツ映画に史上最高額・・・・
スバラシすぎますね・・・・ ハンガリー
Posted by: SGA屋伍一 | April 29, 2008 09:41 PM
観てきましたー。
ねじれた親子愛にこっそり涙ぐんだのは日本でも私だけでしょう。
Posted by: 紫式子 | May 03, 2008 10:35 PM
>紫式子さま
こんばんは
言われてみれば「ステキになるよ、父さん」のセリフは少しぐっとこないでもなかったです
ただ悲劇と喜劇ってやつは紙一重なんですよね。おやっさんの死に様を思うと出かけた涙も引っ込んでしまうような
Posted by: SGA屋伍一 | May 04, 2008 07:02 PM