インド鉄道の昼(と夜) ウェス・アンダーソン 『ダージリン急行』
壊れかけてる長男(長男)
むっつりスケベの三男(三男)
コウモリ野郎の次男(次男)
インド三兄弟(ちゃっちゃ)
途中で曲が変わってるだろ、というツッコミは無しの方向で。
「ココロの旅(チューリップ?)をするんだーっ!!」
父の死とバイク事故のせいでテンパッてしまった長男が言いました。仕方なく、それに従う次男と三男。こうしてアメリカ育ちのボンクラ中年三兄弟は、インドの広大な大地を列車に乗って旅することになりました。ですがこの三人、そろいもそろってアクの強い性格のため、道中は緊張と衝突と裏切りと流血が絶えません。果たして三人は旅の終わりまでに仲直りすることができるでしょうか。
インド・・・・ それは悠久のかなたより、多くの人々にスピリチュアルなメッセージを与え続けてきた土地。古くは仏陀が悟りを開き、新しくはビートルズがインスピレーションを受けたり。他にも有名どころのジャーナリストたちはそろって「インドに来れば人生観が変わる」と申します。が、天竺に行こうが天国に行こうが、変わらないヤツは変わらない。そんな救いがたい、でも愛すべきおバカさんたちを描いた作品です。
まず「急行」とついてるのに全然急いでない。それどころか列車のくせに○○になったりします。
そしてインド料理なのに全然辛くない。といって甘いというわけでもなく・・・ そう、「珍味」という言葉が一番しっくりきます。ちょうど駅のキオスクで売ってる、イカくんせいか貝柱のような、あんな味わい。
思ったのは、「列車の旅って楽しいよな」ということ。もう何年もしてないので、なおさらそう思えました。しかも行き先は多くの旅人があこがれるインド。雑然としていて、どこか懐かしい風景。エキゾチックでエスニックな装飾や風俗。それらはまさしくわたしたちの頭にある「インド」のイメージそのものです。
一点、そうただ一点不満を言わせてもらえるなら。この映画には「カレー」が出てこなかった(と思った)。インドといえばカレー。カレーを食わずして何のインド。その点だけはウェス・クレイブン氏の片手落ちと言わざるをえません(
つか、お前もなんか間違えてるぞ)。
あと印象的だったのは、「男兄弟」というものの微妙な関係。そりゃあ大切に思ってるし、幸せであってほしいと願ってますけど、男兄弟って別にそれほど「会いたい」とは思わないものなんですよ(笑)。年をとればとるほどにね。
たまに会ったら会ったで、つまらないことでケンカになったりするし。そんな厄介な絆がよく描けてるな、と感じました。
本作品は本編の前に『ホテル・シュバリエ』というプロローグ的な短編が上映されます。こちらでは気障なセリフを吐くジゴロ風の男、実は『ダージリン急行』の主役の一人でして。本編ではうってかわった三枚目ぶりを見せてくれます。そんな奇妙な仕掛けが実に楽しい
人生は旅に似ていると言います。同行者もいれば、すれちがうだけの人もいる。そんな長い長い旅を象徴的に表したお話。
もしかしたら、わたしの旅とあなたの旅も、どこかですれちがうかもしれませんね。これを読んでる人の中には、幾度かすでにつき合わせている方もいらっしゃいますが。
♪今度旅行に行くときも
三人そろって同じ部屋
できれば今度は晴郎が
監督してる超特急
インドインドインドインド・・・・・
Comments
SGA屋伍一さん TB&コメントありがとうございました。
>人生は旅に似ていると言います
日本の急行はほとんどコンパートメントが無いので意識した事がなかったのですが、この映画を見ながら“人生の列車からは降りられないにしても、閉じ篭るためのコンパートメントが必要だ”と思ってしまいました。
この3兄弟のように、心のリハビリを始める時に“まずはコンパートメントから”にしたのは正解ですよね?
これからも、時々お邪魔させて頂きます。
宜しくお願いします。
Posted by: 哀生龍 | March 30, 2008 10:04 AM
>哀生龍さま
おおお、こちらにも来て頂いてありがとうございました
人生のためのコンパートメント、確かに必要ですね
一人じっくり好きな映画を観ることも、その一つかもしれません
本物のコンパートメントもこの映画を見ているうちに満喫したくなってきましたが、日本では数少ない上に先立つものが・・・・
こちらもまたお邪魔させていただきますので、どうぞよろしくお願いします
Posted by: SGA屋伍一 | March 30, 2008 09:14 PM
なますてー。
インドはやっぱりカレーですよね。
私が旅行に行った時は、ツアーにてホテルで食事というパターンがほとんどだったんですが、毎回カレーでしたわ。
でも、バリエーションがあるので、そんなに飽きなかったかも。
タンドリーチキンもうまいです。
SGA屋伍一さんはあまり旅はなさらないのですかー?
小旅行派?
Posted by: かえる | March 31, 2008 12:34 AM
>かえるさま
お返しありがとうございまする
「インド人は毎日カレーを食う」というアレ、風聞かと思ったら本当らしいですね・・・
たしか日本のものよりもっと汁っぽかったような。「バリエーション豊富」「毎日食べても飽きない」というところにカレーの奥深さを感じました
>SGA屋伍一さんはあまり旅はなさらないのですかー?
したいんですけど、いまの職場がそんなに続けて休みを取れないところなので・・・ 給料も安いし(笑)
でもそんなこと行ってたらいつまでたってもどこにも行けませんよね。かえるさんの行動力を見習いたいです
Posted by: SGA屋伍一 | March 31, 2008 09:48 AM
おスガさん、こんばんは。
>一点、そうただ一点不満を言わせてもらえるなら。
>この映画には「カレー」が出てこなかった(と思った)。
おおっ!!
そういえば出てきませんでしたね!
う~ん、思えばスワロは本場のインドカレーを食べたことってあまりないかも・・・
一度、品川のエキナカのカレー屋さんで食べたっけ。
印象薄いな(苦笑)
カレーは好きなんだけど。
どっちかっていうとグリーンカレーの方が好きだな。
Posted by: swallow tail | March 31, 2008 07:52 PM
>swallow tailさま
お返しありがとうごぜえます
やっぱカレーは大事ですよね。子供の好きな学校給食第1位!ですし
わたしはちょくちょく神田に行ったりするんですが、あの界隈にもいろいろ変わったカレー屋さんがありますね。インドカレーやらスープカレーやら
グリーンカレーはホカ弁のものを食べたことあります。「辛い」と書かれてましたが、それほどでもなくけっこう美味でした
最近はホワイトカレーというのもありますね。一度作ってみましたが、やっぱり普通のカレーの方がおいしいかな
・・・ってなんでカレーの話ばかりしてるんだろう・・・・
ま、いっか♪
Posted by: SGA屋伍一 | March 31, 2008 09:28 PM
SGA屋伍一さんー
こんばんは♪
毎度コメントありがとです。
ほんとだ。急行なのに全然急いでなかったなー(笑)
さすが、目のつけどころが違いますね。
インドは行った事ないのでいつか行きたいんですよね〜。
このゆるーい旅を観て、こんなのもいいなって思いましたヨ。
3兄弟のキャラが良かったですよね♪
Posted by: mig | April 01, 2008 12:34 AM
>migさま
おはっよっす。こちらこそいつもお返しありがとうございます
>目のつけどころが違いますね
あはは。意外なところで誉められた
最初は紅茶のおいしいお洒落な列車の話かと思ってました
インドは自分の衛生観念を試されるところらしいですが・・・ なんにしても勉強ですよね
>3兄弟のキャラが良かったですよね
そうですね。誰か一人が突出してるわけではなく、ひとりひとりが均等に目立っていました
この映画、二人兄弟でもそれなりに成立すると思うんですが、やっぱりおバカは二人より三人のほうがたのしい♪
Posted by: SGA屋伍一 | April 01, 2008 07:16 AM
こんばんわ。
気づけば三男がいつも裸足。
気づけば次男がスーツの上からベルトを巻いている。
この2点が非常にツボりました。
広大な砂漠で、パンツ一丁にグラサンかけて佇む姿とか、
意味不明に毒蛇を購入するあたりも大好きです。
でもなによりも。
走って走って走りまくって・・・
結局列車に乗れなかったビリ・マーレイが一番素敵でした。
Posted by: 睦月 | April 02, 2008 11:28 PM
>睦月さま
お返しありがとうございます
E・ブロディは『キングコング』でしか観たことがなかったんですが、あちらでのクールなイメージをこれまた粉々にしてくれて笑えました
裸足とかベルトがいい加減なのはきっと旅先での開放感からでしょうかね。一人長男だけがやたら生真面目でしたが、「そんなことより病院で寝てろよ」と思いました
>結局列車に乗れなかったビリ・マーレイが一番素敵でした。
さすが睦月さん、目のつけどころが違う!
最初あの人、三兄弟の父親かと思ったんですね。ほんでもって交通事故で死んじゃうのかと(やけにタクシーぶっとばしてたので)。全然違いましたね(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | April 03, 2008 07:48 AM
こんにちは。
ちょっと思っていたものとイメージが違っていたのですが、「これがインドか~」と新鮮でした。
どうもアジアン系は苦手なんです。
>『ホテル・シュバリエ』
3男坊の変り具合には笑えました。でも人って色々な側面があるんだよなーとも思えて、面白かった。一番兄弟でもマトモそうに見えましたが、オレンジのガウンを持ち帰るあたり、やっぱり変人3兄弟でしたね。
Posted by: たいむ | May 25, 2008 09:48 AM
>たいむさま
お返しありがとうございます。自分もアジアン系はそれほど食指がわかない方なんですが、なんか「インド」ってアジアの中でも特に「変」というイメージがあるんですよね(インドの方スイマセン) 期待に違わぬヘンテコ映画でした
三男坊の落ちぶれぶりは笑えましたね。パリでの粋なジゴロから、インドの変なストーカーに大転落(笑) わたしはどっちかというと次男の方が一番マトモそうに見えました。まあマトモといっても他の二人とそれほど差はなかったですけどね
Posted by: SGA屋伍一 | May 25, 2008 09:07 PM
わははは,またまた愉快なレビューですねぇ。
ダンゴ3兄弟をインド3兄弟にもじるなんて,天才ですね!
>天竺に行こうが天国に行こうが、変わらないヤツは変わらない。
・・・・まったくそのとおり。
変人兄弟・・・つうか,母親も含めて変人家族ですな。
たしかにこの作品の味わい,甘くも辛くもなく,ほのぼのでもないし
しんみりでもないし,珍味の味わいに一番近いです。
好きかと言われれば,初めて食べたもんでわからない~って感じ。
この監督さんの作品これが初めてなもんで。
Posted by: なな | September 07, 2008 02:03 PM
>ななさん
ご来訪ありがとうございます!
>天才ですね!
ああ、よく言われますよ
・・・・というか、こんなアホーなこと思いつくのはわたしくらいなんじゃなかろうかと
>変人家族
その通りですね(笑) 愛すべき人たちではあるし、傍で見てる分には面白いけど、決してお近づきにはなりたくないような、そんな連中
これ見た時、『ペネロペ』『ライラ』『ジャンパー』とお母さんに問題のある映画ばかりたまたま続いちゃいまして。「今年の流行なのか?」と思ったのを覚えてます
>珍味の味わいに一番近いです。
わたしはこの珍味、けっこう気に入ってしまいました
ほかの作品には「奇妙な天才一家」の話とか、「潜水艦でサメを狙う一家」の話があるみたいですね。やっぱ変わった人だわ・・・
Posted by: SGA屋伍一 | September 08, 2008 07:51 AM
SGA屋伍一さん、こんばんは。
トラックバック&コメントありがとうございました。(*^-^*
そうそう、愛すべき三バカ兄弟でしたね。^^
確かに、急行なのにスピード感はなかったですよね。。。
“日本=寿司”、“韓国=キムチ”というように
“インド=カレー”だとベタな食物例えになっちゃうから
あえて描かなかったのかも?(^-^ゞ
Posted by: BC | October 28, 2009 01:10 AM
>BCさま
お返しありがとうございます!
やっぱ好きですね~ ダメ人間というか、痛い人たちのコメディ。実際にお近づきにはなりたくない方たちばかりでしたが(笑)
以前西武線で急行に乗ったことがあるんですが、なんでかものすごーくゆっくりでして。その時のことを思い出しました・・・ これで急行というのなら、鈍行はどれほどのスピードなんでしょう
>ベタな食物例えになっちゃうから
あえて描かなかったのかも?
なるほど。しかしやっぱりカレーの出てこないインドというのは、何か物足りない気がしました(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | October 28, 2009 07:31 AM
伍一くん、ナテステンスコー☆
男兄弟ってそんなもんですよね。
私はこの3兄弟はやたら仲良しだなって思いました。
ちょっと子どもっぽいのかな。
ホテルの特典映像はてっきり旅行から帰った後だと思っていました。だって失恋の痛手を負っていたはずだったし・・・
でもそういえばバスローブはホテルのだったのね。
英語版DVDには、ナタリーのナの字もパッケージに書いてなかったので・・・(そりゃ英語だからナの字はないけど)
カレー食べてないの、私も気になった~
スープ頼んでいたのは分ったけど、やたら長い食事も、カレーだったのか分らなかったなー
Posted by: ノルウェーまだ~む | March 05, 2011 09:20 AM
あ、いきなり間違えてる。
ナマステんすこー
Posted by: ノルウェーまだ~む | March 05, 2011 09:21 AM
>ノルウェーまだ~むさん
エスニッキンスコ~ 懐かしい記事にコメントありがとうございます! コメントくださってる方の中には懐かしい名前がちらほら・・・ うるうる Mさんとは最近意外なところでつながったんだけどね
男兄弟は実際に育てているお母さんの話を聞くと、それはもう戦場のようらしいです まあそれはそれで育てがいがあるのかな?
この映画の兄弟はよくケンカしてましたけど、ケンカするほど仲がいいとも言いますもんね
「ホテル・シュバリエ」は本編の前にかかっていたので、普通に前日談だと思ってしまったのですが。ああ・・・ 言われてみれば後日談ともとれるかな? ま、どっちとも解釈できるということで!(いい加減)
Posted by: SGA屋伍一 | March 05, 2011 08:58 PM