ハートマークはただひとつ? 奥浩哉 『GANTZ』
本日は第4回SGA屋漫画文化賞を勝手に贈り付けたこの漫画を紹介します。週間ヤングジャンプに好評連載中の不条理サイバーアクションです。
いつもの帰り道。高校生の玄野計(くろの けい)は、駅のホームで幼馴染だった加藤の姿を見つける。その直後、酔っ払いが線路に転落。成り行きで加藤と酔っ払いを助けることになった玄野だったが、運悪く列車が到着。玄野と加藤の体は粉微塵に砕け散ったはずだった・・・・
が、次の瞬間、二人は見知らぬアパートで見知らぬ男たちに囲まれていた。部屋の中央には巨大な黒い球体が。そして球体に不可解なメッセージが浮かび上がった。
「てめえ達は今からこの方をやっつけに行って下ちい ねぎ星人」
それが玄野の長い長い悪夢の始まりだった・・・・
以後、玄野と選ばれたメンバーたちは、定期的にその部屋に呼び出され、みょうちきりん(でも怖い)な怪物たちとの戦いを強いられることになります。
この作品は吾妻ひでお先生が『失踪日記』の中で褒めていたりしたので、前から興味はありましたが、既刊20冊というボリュームにたじろいでおりました。が、おととしの暮れに分厚い総集編が出まして、ナイスタイミングとばかりに購読。果たして一読後の印象は「なんつー趣味のわるい漫画だ・・・・」でした
まず登場する「星人」たちが気色悪い。そしてその星人たちが人間を虐殺していく描写が、これまたしつこい。お話の随所に血しぶきやら肉片やら内臓やらが飛び散っております。キャラクターはちょっと少女漫画っぽいデザインなんですが、だからかよけいにグロテスクに感じられました。
加えて、主人公の玄野くんがとってもいやなヤツだったりします。気持ちはわかるけど始終文句や愚痴ばかり言ってるし、基本的に自分以外のヤツが死のうと生きようとおかまいなしだし。戦闘中だというのにセクシーなヒロインに発情しまくってるのもとってもかっこ悪い。相棒の加藤の方がよほどヒーローらしいキャラクターです。
・・・・とまあ文句をさんざん垂れましたが、それでもこの漫画のどうしようもない面白さは認めざるをえません。
なんというか、死がすぐそばまで来ていて、それを鼻先で交わしていく恐怖感、緊張感、高揚感、爽快感・・・・ それらが非常にリアルに描かれています。漫画があふれかえっている昨今ですが、ここまで張り詰めた空気を描いた漫画はそうないでしょう。
また、主人公の玄野計ですが、彼がなぜいやな性格になってしまったのか、理由を知るとだんだん同情心が湧き上がってきます。加藤やガールフレンドなどとの出会いを通じて、人間的に成長していくのも微笑ましい。
映画顔負けの斬新なヴィジュアルも強烈なインパクトを感じさせます。夜の街を飛ぶオオガラス、暴れまくる巨大な仏像、高速を自由にかっ歩する恐竜たち。などなど
こういう不条理極まりなくてユーモラスなんだけど、過剰なまでに残酷だったりするところは、全盛時の筒井康隆と通ずるものがあります。
さてこの『GANTZ』、単行本が20冊まで出てるのに、「誰が」「なぜ」「どうやって」こんなゲームを作り上げたのか、いまだにはっきりと明かされておりません
。果たして謎は明らかにされるのか・・・・ 正直こころもとないです(笑)
しかしまあこの漫画には理屈とか謎とかあんまり関係ありませんね。
むずかしいことは考えず、玄野くんと同化して夜の空をダイブしたり、モンスターに鉄拳くらわしたりする(気になる)のが正しい読み方かと思われます。
そんなわけで『GANTZ』単行本は集英社より発売中。「命の価値は、死んでから決まる」
Comments
ガンツ・・・


行きつけの美容院で1巻だけ読んだなぁー
なんか私の好きそうなマンガだなーと思うのですが
ボリューム満点なやつって、なかなか手を出しにくいです
しかもまだ連載中だったなんて
奥浩哉のマンガだと、やたら巨乳な女の子が出てくる
『HEN』っていうのだったらむかーし読みました
Posted by: kenko | February 25, 2008 09:25 PM
>kenkoさま
さっそくコメントありがとうございます
確かに大したボリュームですよね。しかもまだ終わる気配がぜんぜんないし
わたしも総集編が出なかったら、たぶん未だに読んでないことでしょう
真っ黒いスーツを着て、バイクで疾走してる絵なんか、だいぶ『バイオメガ』に似てると思います
>『HEN』っていうのだったらむかーし読みました
BL系の走りのような作品ですよね? うわさには聞いたことあります
)が「心理描写がうまい」と褒めてました
有名な評論家の先生(名前忘れた
Posted by: SGA屋伍一 | February 25, 2008 09:48 PM