ラストデイズをわたしと 中田秀夫 『L change the WorLd』
※ 今回はコミックおよび映画『デスノート』の重要な謎を思い切りばらしてます。未見の方はご注意ください。
捨身の手段でなんとか「デスノート」事件を解決した世界最高の探偵「L」。だが世界は彼に安息を許さない。バイオテロをもくろむある組織に狙われた一人の少女が、彼に助けを求めにやってきたのだ。テロ組織の追撃もさることながら、仲間の一人であった「K」の裏切り、慣れない子守、女性に対するリード、ナンちゃんのさぶいボケ・・・ いまだ経験したことのない様々な難問がLを襲う。そして逃亡を続けるうちに、なんと彼のエネルギー源である甘味物が尽きてしまう! 禁断症状に苦しめられ、頭がパーになっていくL! やばいぜ! この難局をどうやって乗り切る!?
Lをはじめて見たのは書店で平積みにされていたコミック『デスノート』2巻の表紙。髪はぼさぼさ、服はよれよれ。そして目の下にくっきりと縁取られた「クマ」・・・・ 1巻表紙の端正な美形キャラ・夜神月(ライト)とは何から何まで対照的で、「こいつ、絶対悪役だな」と確信しました。
しかしそのへんてこな仕草やユーモラスなキャラが受けたのか、Lは夜神月と匹敵するか、あるいはそれをしのぐほどの人気を得ます。なんせ原作者大場つぐみ先生自らが「Lが死んだときはショックで三日ご飯がのどを通らなかった」と言ってたくらい(じゃあ殺すなよ!)
かく言うわたしもそのクチで、Lが退場した後の『デスノート』はテンションが低くなったように感じられて、「早くL復活しねえかな」なんて思ったものでした。
その「L」の人気を反映して、彼を主人公にした番外編が二つ作られました。ひとつは西尾維新氏の手による小説『ロサンゼルスBB連続殺人事件』。そして劇場映画『L change the WorLd』です(ノベライズ版もあり)。
この劇場版には二つの目的があったと思います。ひとつはLのファンを楽しませること。Lが好きな人であれば、いままでどおりの彼のアクションと、これまで見せなかった意外な面に、萌え感情を著しく刺激されることでしょう。
ちょうどブルース・リーのファンがブルース・リーの映画を観るように、昔のヤクザ映画が好きな人が高倉健の殴りこみを見るように、きっと腹の底から満足してもらえると思います。ただ、彼に興味のないひとにとってはあんまり意味のない作品かもしれません。
もうひとつはLにできるだけ気持ちよくあの世へ行ってもらうこと。
ホラーの名手として知られる中田秀夫氏ですが、実際はかなりセンチメンタルな方のようです。なんせ日本中をちびらせたあの『リング』を堂々と「愛の物語」と言ってのけた方ですから。自分の命を投げうって得た勝利の結果が、アレだけではあまりにもむなしすぎるし悲しすぎる。だから中田氏はできることなら、「何かを成し遂げた」という満ち足りた思いを持ってLに飛び立っていってほしかったのでしょう。ですからこの映画に出てくるほとんどすべての主要キャラは、何よりもまず、その目的のために存在しています。
そんな中田氏の気質を反映してか、Lも前作までとは色々違っているような。『デスノート』におけるLは「負けず嫌い」という以外はほとんど感情をあらわにしない少年でした。もはや悟りの境地に達してしまっていて、他人のはもちろん、自分の命さえもゲームの盤上で弄んでるような、そんな印象をうけます。
ところが今回の劇場版では子供の扱いに手間取ったり、慰めの言葉を口にしたりとかーなーり人間くさいLになっています。この点で松山くんはけっこう監督ともやりあったとか。個人的にはこういうのもアリかな、とは思いますけど。
もっとも、そうしたセンチメンタリズムもベタベタなものではなく、ほどよく抑制の利いたものとなっています。たとえば普通の「泣き」系映画ならLが少女に対し言ってしまうであろうある言葉を、中田監督は最後まで言わせません。脚本的にアラは多々あるものの、そういうところには好感が持てました。男の去り際というのは、やはりこうありたいものだと。うん。ありたいんですが・・・・
わたしの心はまだ未練たらたらです(笑)。本来ならこの映画をもってLにお別れを言わねばならないのでしょう。でももっと彼の活躍が読みたいし、見たい。たとえば、デスノートの存在しない世界におけるLの物語を、引き続き描くとか・・・ これだけパラレルな展開をした『デスノート』であれば、そういうのも許される気がするのですが。
さて、この一連のL役で一躍人気俳優となった松山ケンイチくん。このあとにも『デトロイト・メタル・シティ』(期待大)、『カムイ外伝』(期待微妙・観ないかも・でも崔洋一監督かあ)と、出演作が控えてます ・・・・って三連続で漫画映画かよ!!
期待するとともにちょっと彼の将来が心配になったわたくしでした
(^^;)
Comments
グラサンは見つかりましたか?
目元がお風邪を引かないかと心配です。
それにしても・・・Lについての熱い語りを読ませて頂きました。
私は、ちょっと少年ジャンプでデスノートを見ても、あんまり興味を抱かなかったのですが、子どもに強引に誘われて観た映画に夢中になり・・・漫画本を全巻購入、『ロサンゼルスBB~』も読む・・・というほど入れ込みました。
もちろんLが好きなんです!!!!!
だから本作は、物語が多少オカチメンコだろうが、ナンちゃんが極寒だろうが、、、なかなか楽しめました。
原作のLも松山さんのLも好き~♪
映画のノベライズもあるんですよね。面白いかな?
Lを感じたいがために読んじゃいそうです。
Posted by: 由香 | February 18, 2008 02:07 PM
>由香さま
TB・コメントありがとうございます
あとご心配もありがとうございます。わたしはおりこうさんなので風邪はめったなことではひきません。ただ地底人なのでグラサンがないと昼間は目がくらんで困ります
由香さんもL派でしたか。わたしもいろいろな「名探偵もの」を読んできましたが、その中でも特に印象深いキャラクターでありました
やはり原作あっての映画なんですが、完成度から言うと、映画の方が上かな~と思ってます
実はこんだけ熱く語ってるくせに、小説二作はまだ読んでません
文庫待ちです・・・・
『change the WorLd』ノベライズをてがけている人はいわゆる「新本格」系の実力派だそうなので、映画にはない「何か」がありそうな気がします
Posted by: SGA屋伍一 | February 19, 2008 07:28 AM
SGA屋伍一さんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪
ブロガーさんから聞くまで知らなかったんですが、本作はLの外伝小説の1つである『ロサンゼルスBB連続殺人事件』が解決した『くだり』も最初に描かれていたそうなんですが、自分はその小説版を読んでいなかったのでちょっと残念。知ってたらニヤリと顔がにやけてたかもしれません(笑
エンドロール後のおまけ映像がパッとしなかっただけに、自分もこれでLとお別れというのは勿体無い気がします。
Lが生き残った時点で原作とは異なった世界になってるので、もうちょっと幅を広げるか、それとも『龍騎』みたいにもう一度世界をリセットして、リュークが別の人間にデスノート渡すとか・・・・・・・・・・・・・ファンかぶれが荒唐無稽な発言してしまいました(汗
Posted by: メビウス | February 19, 2008 09:44 PM
こんにちは。


という声があるのではないでせうか。
早々にTB&コメントありがとうございました。
本作は、賛否両論なんでしょうか
私は、『デスノート』を劇場に観に行きませんでした。
公開前に、ズームイン朝で、毎朝毎朝リュークを長々と映し出していたので。何か見た気になっちゃって。
全編はそんなに面白いと思わなかったけど。後編の終盤の月vsLの攻防戦は、かなり面白かったです。面白かったけど、デスノートのルールや在りかを追いきれませんでした。へへへへへ
私が本作を結構楽しめたのは、もしかして実は思い入れが小さいからなのかもしれないですね。
思い入れが強いからこそ、このLでは納得できない
>中田秀夫氏ですが、実際はかなりセンチメンタルな方のようです。
以前、インタビューで実は怖がりだと小さい声で語っているのを見ました。コワモテのようで、お目目が小さくてどこか愛らしさの漂うオジサマだと思いました。
そうそう、Lって猫背で動きもしなやかなので猫っぽいですよね。
にゃんこ先生は、どう思われます?
Posted by: となひょう | February 19, 2008 11:33 PM
追記:
上のコメント間違えてます
>全編はそんなに面白いと思わなかったけど。
全編 → 前編 でっす。
それと、どうやら『アメリカン・ギャングスター』のTBをダブって送信してしまっていますね・・・
申し訳ありません、邪魔臭かったら遠慮なく削除しちゃってください。
Posted by: となひょう | February 19, 2008 11:36 PM
SGA 屋伍一さん☆
こんばんは〜。
いつもありがとです♪
このLの絵、ほんものよりいい感じじゃないですか?!
わたしは原作では、メロとニアの話は好きじゃないので
映画化はいらないと思うんだけど、
Lのファンだったら、まだまだ観たい気持ちですよね〜。
今回は全く別の話として、そこそこに楽しむことが出来ました♪
Posted by: mig | February 19, 2008 11:47 PM
こんにちわ。
SGA屋さんの「Lは猫に似てる」という言葉をコメントでいただき、
そのうえでLの死に様を考えると見事にリンクします。
猫は死ぬとき、誰にもみられないようにそっと孤独に死ぬのです(涙)
今回の限りなく人間臭いLに関しては、原作ファンの間ではかなり
賛否があるようですが・・・松山さんファンであればそこんところは
結構どうでもよくて、とにかくキュートで愛くるしい彼の姿に萌え萌えで
満足なんじゃん?とも思いました。
ちなみに私も今回の松山Lには萌えました(照)。
おっしゃるように、松山さんにもLにも興味がない人は、鑑賞する
必要のない作品ですね(笑)。
でも『都会の森』ファンなら多少は観る価値あるかも(笑)?
ところで。感染描写が凄まじかったですが、
鶴見さんなんか、あまりの熱演で台詞が何を言ってるか全く
聞き取れなかったです(苦)
Posted by: 睦月 | February 20, 2008 12:19 PM
>メビウスさま
お返しのコメントありがとうございます
>『ロサンゼルスBB連続殺人事件』が解決した『くだり』も最初に描かれていたそうなんです
なんですってー! そう聞くと無性に『BB連続殺人事件』が読みたくなってきますね。たしか友人で持ってたやつが一人いたから、今度無理やり借りてこよう(あくまでケチ)
>エンドロール後のおまけ映像
あのテロップ、意味深だと思ってるのは自分だけでしょうか。もしかして本当に「○○○に○」っただけでは・・・と無理に考えている自分がいます
ちなみに先週号のジャンプにはニアが主人公の「特別編」が掲載されてたそうなんですよ! こんなときに限ってチェックを忘れるなんてボクのバカバカ
Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2008 08:39 PM
>となひょうさま
お返しのコメント・TBありがとうございます
>本作は、賛否両論なんでしょうか
というか、「否」の方が多いようですね
「ダメダメだけどLの描写だけは良かった」そういう意見をよく目にします
だからみなさんLに関しては納得してるみたいですが、周囲のキャラクターが適当なことがひっかかってるみたいですね。わたしはそんなに気になりませんでしたけど
ちょっと組織の行動が行き当たりばったりではありましたが
>公開前に、ズームイン朝で、毎朝毎朝リュークを長々と映し出していた
そんなことやってたんですか・・・
朝っぱらからあの顔は辛いですよね
あとセンチメンタリストの中田監督、メイド喫茶の場面で後ろに映ってたそうです
>にゃんこ先生は、どう思われます?
「あいつを弟子にほしい。SGAはもういらん」とおっしゃってます
望むところです
あと別に邪魔くさくはなかったですけど、TB一個消しときました。ココログは届いてないと思ったら届いてることがよくありますよね・・・
Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2008 08:51 PM
>migさま
お返しのコメント・TBありがとうございます
いつも絵の感想もありがとうございます。このLは一応松山くんを参考にしたのですが、例によってあまり似てませんね
むしろわたしに似てる・・・かも?
>Lのファンだったら、まだまだ観たい気持ちですよね〜。
migさんもですか。やっぱり観たいですよね。この際「最初の事件」でもパラレルワールドでも何でもいいので。
Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2008 08:57 PM
>睦月さま
お返しのコメント・TBありがとうございます。わたくし伊豆の入り口に住んでます。ので、都までは普通で二時間、新幹線で一時間といったところでしょうか。近いとも遠いともいえない微妙な距離ですね
>猫は死ぬとき、誰にもみられないようにそっと孤独に死ぬのです(涙)
そうなんですよね
親しい人に気をつかって、いつの間にかひっそりいなくなってるんですよね
少女にも幼児にももうすぐ死ぬことをさとらせずに、一人姿を消すLの背中があまりにも「ネコ」で泣けました
あ、でもうちの先代は今の真ん中で堂々と死んでまし
それにしても月派だった睦月さんさえも萌えさせる松ケンくんの演技は大したものですねえ。『男たちのYAMATO』で最初見たときは「どこの原口まさあきだ」と思ったものでしたが
鶴見さんの熱演もすごかったですね
苦しそうな反面、どこか楽しそうでもありました
Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2008 09:19 PM
もうすぐ、ありそうなCM
「L、ちょーカッコよかった
」
」
Lがね、せつなくて」
「Lサイコーだよ
「もう泣きました
「L!!」



「L!!」
「L!!」
「L~ change the WOLRD、サイコ―
」
大ヒット上映中
Lが子供と自転車にのっているの、ああいうの最高に好きです(笑)
なんかマジメにやって笑えるシーンは好きですし、変にほほえましい
ですよね
Posted by: 犬塚志乃 | February 21, 2008 10:30 PM
>犬塚志乃さま
『デスノート』以前は「L」というと恥ずかしげな思いと共に『the かぼちゃワイン』のヒロインを思い出したものでした
♪L L LはLOVEのL
そんな主題歌 あーはずかし
「子守は初めてですが・・・苦手分野です」
そんなセリフもありましたが、けっこうそつなくこなしてました
Posted by: SGA屋伍一 | February 22, 2008 08:42 PM