進み続けて70年 スティーブン・アンダーソン 『ルイスと未来泥棒』
花泥棒、恋泥棒、牛泥棒、馬泥棒・・・・ 「世に盗人の種は尽きまじ」とは申しますが、この作品に出てくる泥棒はちょっと変わっています。その名も「未来泥棒」。それっていったいどんな泥棒?
世界初の長編アニメーション『白雪姫』から70年を記念して作られた作品(の割には、扱い小さいよな)。当初眼中にありませんでしたが、レザボアCATs管理人の「とらねこ」さんが大絶賛してたので観にいくことにしました。
そうです。わたしは流されやすい男です。風に揺らぐヤナギのように
ゆあ~ん ゆよ~ん ゆあゆよ~ん
・・・失礼しました。あらすじいきましょうか。
主人公はルイス少年。風貌はチキン・リトルで、境遇はスチュアート・リトル。つまり、物心付いたころから孤児院で養われていて、家族を欲する気持ちは人一倍強いのだけど、なぜだかなかなか引き取り手が見つからない。
彼の趣味は発明。独創的なアイデアを次から次へと形にしていくものの、大抵どこかが抜けていて、期待通りの大ウッカリをやらかしてくれます。そういうところはやっぱりキテレツ君というよりチキン・リトルです。
そんなルイス君の前に、ウィルバーというさらにへんてこりんな少年が現われます。黒髪のエルビス・プレスリーをぐっと小さくしたようなルックスの彼は、「自分は未来から来た警察官だ」と言います。うさんくさいことこの上ないですが、なんとびっくり。彼の言葉は半分だけ本当だったのです・・・・
と、くだけた児童文学のようなノリで始まる本作ですが、ルイスがウィルバーに誘われて未来に来るあたりから、ギャグのテンションがどんどんすっとんでいってしまいます。そして広がる客との距離(笑)。ウィルバーの家族が一人一人現われる部分ではもはや完全に独走状態で(例:「兄さんのミートボール爆弾なんか怖くないわ!」など)「ママン~ 置いていかないで~」と叫びたくなるほどでした。
しかしその部分さえ乗越えてしまえば、あとには予想を上回る驚きと興奮と感動を与えてくれます(マジ)。独特のギャグセンスにもいったん耐性ができてしまえば、未来世界の様々なガジェットが、いちいち面白く見えてきますし。
わたしがなにより評価してあげたいのは、これがタイプの異なる二人の少年の友情物語である、というところ。大人が主人公のバディ・ムービーって珍しくもないけれど、子供同士のそれってあんまり見ないですからね。最近で言うとそれこそ『河童のクゥ』くらいでしょうか。
見終わって感じたのは、「ディズニーさんもアニメを商業作品まで持っていくには、きっと山ほど失敗したり、強い孤独感に打ちのめされたりしたんだろうなあ」ということ。何せそれまで誰もやったことがなかったことですからねえ。周囲の人間にも少なからず、「あいつケッタイなこと始めよったなあ」なんて思われたのでは。そして「成功する」という保証はどこにもない。
しかしウォルト氏がたゆまぬ努力を続けた結果、今では世界中に彼の子孫・・・家族がいます。それにディズニーアニメだって決して突発的に木のマタから生まれたわけではなく、多くの先達のトライ&エラーの後になりたっているはず。そう思ったのは、特別同時上映となっている『ミッキーの造船技師』(1938)が、サイレントの名短編『キートンの文化生活一週間』を思い起こさせる内容だったからかもしれません。
『白雪姫』から数十年、CGという武器を手に入れたクリエイターたちは、新たな形でマンガに魂(アニマ)を吹き込むことに成功しました。しかし彼らはなおも、「もっと面白いものを」「もっと素晴らしいものを」と、前進しつづけていくのでしょう。
さて、本作品の日本語吹き替え版では、あの「大晦日の女王」小林幸子が声の出演をされております。どんなド派手な衣装で出てくるのかと思ったら、これがキャラクターの中で一番地味な役柄でして。
どうしてしまったんだ、幸子!! 前に進まなきゃダメじゃないか!!
もっとド派手に!! もっとドでかく!!
ま、わたしのモットーは「果報は寝て待て」ですけんど。
あ、「未来泥棒」ってなんだったのか書くの忘れた・・・・ ま、いいや(ダメだこりゃ)
Comments
こんにちは!
この映画は観る予定がなかったのですが・・・面白そうですね。
ところで!!
バトンをお持ちしてしまいました。『イメージバトン』です。
以前されたことがあったり、お忙しかったり、、、でしたらスルーでも構いませ~ん。
ヨロシクお願いします~♪
Posted by: 由香 | January 10, 2008 08:47 AM
こん××は。
あれ、ウィルバーの変わった家族の部分、私にはことごとく笑えたんですが、あの笑いの部分、強烈すぎる感じなんでしょうか?^^;
私は、ものすっごく楽しかったんですが・・・。
SGAさんは「今のところ今年のベスト1です」なんて言ってくださいましたけど、よく考えたら今年ってこれしか見ていらっしゃらないのでは・・・
騙されるところでした。危ない危ない。
Posted by: とらねこ | January 10, 2008 01:43 PM
P.S.最初の悪役ハゲオヤジの絵が、上手ですね^^
構図もいい感じ。
でもこの絵、よくよく見るとタランティーノにソックリです(笑)
>風貌はチキン・リトルで、境遇はスチュアート・リトル
これも言い得てますよね~☆
Posted by: とらねこ | January 10, 2008 01:47 PM
>由香さん
おばんでやんす
>この映画は観る予定がなかったのですが・・・面白そうですね。
わたしも当初はスルー予定でしたが、観てよかったです
気が向いたらお子さんたちとぜひどうぞ!
>イメージバトン
いただきます。が、次の次の掲示板コーナーになると思うので、ちょっと時間がかかるかも。申し訳ないですけど、気長にお待ちください~
Posted by: SGA屋伍一 | January 10, 2008 10:31 PM
>とらねこさん
お返しのコメント・TBありがとうございます
>あの笑いの部分、強烈すぎる感じなんでしょうか?^^;
うーん。自分としては相当頭が柔軟なひとでないと難しいのでは・・・と思いました。あるいはわたしの頭が固いのか
あととらねこさんは、やっぱり字幕版で見たんですよね? もしかしたら吹き替えと字幕でビミョ~な温度差があるのかも
>よく考えたら今年ってこれしか見ていらっしゃらないのでは・・・
バレた(笑) 明日までの期間限定ネタです
>でもこの絵、よくよく見るとタランティーノにソックリです(笑)
ポイントはアゴのしゃくれ具合と眉毛の濃さでしょうか(笑)
>境遇はスチュアート・リトル
わたし『スチュアート・リトル』も大好きなんですよ。スチュアートの兄?の少年もルイス君によく似てますよね
正直に言うと『チキン・リトル』の方は予告しか観てません(^^;)
Posted by: SGA屋伍一 | January 10, 2008 10:41 PM
こんばんは。
前半シチュエーションの面白さだけで見せてるあたりがちょっと・・・
あの家族紹介の異様なハイテンションには引きました(笑
後半物語が動き始めてからは面白かったんですけどね。
コメント欄一応削除しておきました。
Posted by: ノラネコ | January 12, 2008 05:55 PM
>ノラネコさま
どうもお手数おかけしました
お返しのコメント・TBありがとうございます
たぶんああいうのが向こうのお子さんたちにはツボなギャグなんでしょうね
たくさん洋画を見て馴染んでいるつもりでしたが、やっぱりアメリカン・ジョークは難解であります
小さな帽子に操られたカエルや恐竜が「ご利用は計画的に」とか言ってるあたりは、みんなうけてましたけどね
Posted by: SGA屋伍一 | January 12, 2008 10:01 PM
お邪魔します♪
↑で「面白そうですね♪」とブリブリのコメントを残しておきながら、、、やっとDVDで観ました~
で、、、スッゴク面白かったです!
ウィルバーの家族のヘンテコなテンションに一瞬引いたのですが、『独特のギャグセンスにもいったん耐性ができてしまえば、未来世界の様々なガジェットが、いちいち面白く見えてきますし。』-まさにそんな感じで、何にでも笑っちゃって2度も観ました~
で、2度目に観た時はやたらと科学フェアの面々に目がいき二ヤリとした次第です。
『ルイス少年。風貌はチキン・リトルで、境遇はスチュアート・リトル』
ホント、SGA屋伍一さんはうまいことをいいますね~
すごくウケちゃいました~
Posted by: 由香 | July 25, 2008 02:00 PM
>由香さん
こんばんはっす

楽しめたようでよかったです
ウィルバー家の皆さん、強烈なインパクトでしたよね・・・ それを素直に「こんなステキな家族」と言い切るルイスくんは、やはりただものではないと思いました
冒頭の部分などはもうおぼろげにしか記憶に残ってないんですけど
、この手のCGアニメにしては珍しく丁寧に伏線がはってあるところにも感心しました
しょうもないフレーズにもうけてくださってありがとうございます
そういえば松井稼頭央も、ゴジラと区別するために「リトル松井」なんて呼ばれてましたねえ
Posted by: SGA屋伍一 | July 25, 2008 07:19 PM