東京タワーが出来てから 山崎貴 『ALWAYS 続三丁目の夕日』
夕日町を揺るがしたあの激闘から二年(劇中では4ヶ月)。街はひと時の平和を取り戻していた。だがその平和は、怪獣王ゴジラの来襲によりもろくも崩れ去る。鈴木は共に戦った英霊たちの助けにより、ゴジラに対抗しうる怪獣モスラの存在を知り、モスラを呼び寄せる鍵である「小雪人」の捜索を始める。一方茶川は自分を慕う少年淳之介に未来を残すため、禁断の兵器「アクタガワン・デストロイヤー」の開発に手を染めてしまうのだが・・・
一昨年から去年にかけて大ヒットを記録した『ALWAYS 三丁目の夕日』の続編であります。前回が昭和33年を舞台にした歳時記というか、「時代」が主題であったのに対し、今回はアクマでそこに生きる人々の物語という印象を受けます。乱暴な言い方をしますと、鈴木さんにしても茶川さんにしても前回はあの時代の風景の一部のようなところがありました。しかし今回は両家とも時代の枠を越えて動き出します。すなわち鈴木オート夫妻は今まで歩んできた道のりを振り返ることにより。茶川氏は家族と一緒に生きる未来をつかもうと奮闘することにより。その他の人々も自分の人生を謳歌すべく、それぞれにすねたり踊ったりやさぐれたり諦めたりイヤミを言ったりします。
今年は例年にもまして続編の多い年でありました。2,3は言うに及ばず、4や5や完結編、おまけに前日譚までありました。なぜこうも続編がたくさん作られるのか? 映画会社の姑息な戦略、ということはひとまず置いといて。人間誰しも好ましい人ができたなら、「また逢いたい」と思うのは当然のことでしょう。ダメダメだけど根は「いいひと」たちばかりの三丁目の世界に、日本の皆さんが「また逢いたい」と思ったのも無理ないことであります。
ただ再会というのは必ずしもいいことばかりではありません。前には気づかなかった嫌な部分が見えてしまったり。あるいは幸せにやってるもんだとばかり思っていたら、実際は不幸のどん底に落ち込んでいたり。「いっそのこと逢わなければよかった・・・」ということさえあります。
では今回の『ALWAYS 続三丁目の夕日』は果たしてどうであったか。思わせぶりな前フリでしたけど、ウン、かなり理想に近い再会であったと思います。どの人も基本的にはそれほど変らず、どの人もそれなりにがんばってやっていました。鈴木さんも茶川さんも前より「いいひと」になってしまったのが少し寂しい気もしますが、ここは「人間的成長を遂げた」と見てあげるべきでしょう。その分イヤミなところは淳之介の実父の小日向氏、新顔である一平の遠縁の少女、ベテランストリッパーを演じる手塚理美などが担当してくれます。もちろん彼ら、彼女らもイヤミなだけの人ではありません。
作品は「虚構の素晴らしさ」を説きます。劇中のセリフで「(しょせん)願望だな。現実はこうじゃない」というものがあります。この映画で描かれている時代も、実際はこんなにきれいなことばかりではなく、もっとジメジメとした汚らしいものもいっぱいあったことでしょう。しかし例え演出が入っていたとしても、それが人々を癒し、勇気づけているならそれでいいのではないでしょうか。実際にそうした虚構が現実を動かすことさえあるのですから。
また特筆しておきたいのは、登場する食べ物が素朴なものばかりなのに、なんでかやたらうまそうであること。まさかただの「塩むすび」がこんなにも輝いて見えるとは・・・・ 映像の力・演出の力というものを改めて思い知りました。
この映画は「お別れ」もほぼ理想的でありました。「また逢いたい」という気持ちがまだないでもないですが、できればもうそっとしておいてあげたほうがいいのかもしれませんね。次に逢う時は誰か死んじゃいそうな予感がプンプンしますし。
あと監督の山崎さんは本来の畑であるオタク系SF映画を撮りたくて撮りたくて、辛抱たまらなくなってると思います。次の作品が『ゴジラ/FINAL ALWAYS』にならないといいのですが・・・・
Comments
SGA屋伍一さんこんばんわ♪
冒頭でゴジラが出るだけに、記事冒頭のぐだぐだストーリーも誰か信じてしまうかもしれませんねw・・けどゴジラはそっくりで上手いです♪
そいえば美加が夜中にこっそり塩むすびを食べるシーンはちょっと泣けてしまいましたよ・・。涙で塩むすびが更にしょっぱく・・・って感じでしょうか?(笑)美味しく見えたのはおそらく美加が空腹を殺して意固地になってるシーンを自分達も観てて、彼女の空腹感を察する事が出来たために美味しく見えたのかもしれませんね。凄いお腹が空いてる時ってどんな食べ物でも美味しく感じますもんねぇ。
自分は中・高と野球部に入っていたんですが、夏場の練習で休憩中に飲むただの水が凄く美味しかったですし、本作の塩むすびもそれに近いものだったのかもしれませんね。
Posted by: | December 04, 2007 at 08:32 PM
すいません・・・名前入力するの忘れました・・・(^▽^;)
Posted by: メビウス | December 04, 2007 at 08:34 PM
>メビウスさま
>記事冒頭のぐだぐだストーリーも誰か信じてしまうかもしれませんねw
いや、それはないな(笑)
間違ってるとは知りつつも、早すぎるゴジラの退場に「もっと長く!」と思わずにはいられませんでした
ちなみにイラストはパチンコのサイトの画像を丸写し。やばいかなあ。怒られたら消します
>涙で塩むすびが更にしょっぱく・・・って感じでしょうか?(笑)
いやあ、自分は単純に「うまそう」としか考えてませんでした。腹が減っていたのだろうか・・・ 恥ずかしく思うとともにメビウスさんの詩情になごみました
>自分は中・高と野球部に入っていた
それは意外でした・・・ てっきり理系の方かとばかり
自分『キャプテン』や『おお振り』も好きなんで、いずれ野球マンガについても語ってくれたら嬉しいっす
>ネームレス
わたしもよくやりますんでお気になさらず(^^)/
Posted by: SGA屋伍一 | December 06, 2007 at 08:08 AM
SGAさんこんばんは~^^
>塩むすび
本当、超おいしそうでしたよね!いつもおなかがすく前にきっと、豪華な料理ばかり食べていたに違いない、世田谷は成城の、お嬢さん出身の、美加ちゃん。
はたして、「おなかがすく」という思いすら、まともに経験したことがあったのだろうか?
塩むすびのような、シンプルな食べ物を食べたことすら、きっとなかったに違いありませんよね。
だけど、あんなにガッツいて食べて、本当においしそうでした。
六ちゃんの優しさが、本当に嬉しかっただろうと思うし、私もすごく嬉しくなりました。
あのシーンを見て、「これはいい映画になるだろうな」と思いましたよ。
前作は知らないけど、「つかみがOK」だった、この映画。
何も、「つかみ」は、私にとっては、ゴジラばかりじゃありませんでした。
Posted by: とらねこ | January 16, 2008 at 08:45 PM
>とらねこさま
>塩むすび
とらねこさんにとっての「にぎり」じゃなくて「つかみ」はこっちだったんですねー
よく空腹は最大の調味料といいいますよね。どんなに安かろうがおいしいく感じることが出来るひとのほうが得をしてると思います。まあでもあんまりおなかが空いていても、カビの生えたものはやめた方がいいと思うけど(^^;)
ミカちゃんの場合はロクちゃんの優しさもまた調味料になったんでしょうね。「こやってこやって作るんだよ♪」という堀北真希がとっても可愛らしかった
その前のシーンでみんなで卵をチャカチャカ回してたシーンもとっても楽しそうでした。ブタだろうが牛だろうが、こういう場では関係ないんですよね
まあでもあんまりおなかが空いていてもカビの生えたものはやめた方がいいと思うけど(^^;)
Posted by: SGA屋伍一 | January 17, 2008 at 07:59 AM
コメントありがとうございました~
たしかに食べ物すべて美味しそうでしたよね!
塩むすびも、ブタのスキヤキも、カレーもなんか 暖かい素朴な香りが映画から香って来る感じがしました。
こういう観て心地よい映画って、いいものですよね~
Posted by: コブタです | January 30, 2008 at 01:15 AM
>コブタさま
うーん、やっぱりTB届きませんね・・・ 無念・・・
>塩むすび
についてばかり書いてたら、ほかになにがあったのか思い出せなくなってきました(笑)。えーと、えーと、そう、
>ブタのスキヤキ
がありましたね。
>暖かい素朴な香りが映画から香って来る感じがしました。
・・・・ご自身としては抵抗ありませんか?
ついでに言っちゃうとスキヤキもいいけど、豚とほうれん草をゴマしゃぶで食べる「常夜鍋」。あれは半端な牛肉なんかよりよほどおいしいです。ごめんなさい
あと食べ物関連では、「焼き鳥踊り」や「シュークリーム」がありましたが、これらは前作から引っ張ってるネタなんです。機会があればごらんください
Posted by: SGA屋伍一 | January 30, 2008 at 10:07 PM