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November 09, 2007

踊りまくる小走査線 佐藤祐市 『キサラギ』

20071109195357かつて如月ミキという名のアイドルがいた。あどけない笑顔とはちきれんばかりのボディ、そして調子っぱずれの歌声でファンから愛された彼女は、しかし突然謎の自殺を遂げる。そのはやすぎる死から一年、いまだ彼女を忘れられないファンサイト管理人「家元」は、彼女の一周忌を祝うべく同好の士たちによびかける。果たしてその場に集まったのは、「家元」(苦労性)、「スネーク」(お調子者)、「オダユージ」(堅物・真下警部補)、「ヤスオ」(気が弱い・胃腸も弱い)、「苺娘」(変人)の五人。和やかに行なわれるはずだったオフ会は、オダユージの「彼女は殺されたんだ!」の発言により、様相を一変。容赦ない激論を交すうちに、男達は次第にその本性を明らかにしていく。

この映画の名を最初に見たのは、朝日新聞に連載されている沢木耕太郎の映画コラム『銀幕の森で』でだったと思います。「自殺」という言葉から呼び起こされる暗いイメージ、さらに沢木氏が例によって堅苦しい文章でこの映画を誉めていたため、「きっとギスギスして救いようの無い、重苦しい映画なんだろうな」と勝手に思い込んでしまいました。
おまけにお話は殺風景なビルの一室からずっと動かず、キャストはむさくるしい野郎ども五人のみ。恐ろしいほどの地味な内容+低予算に、完全なるスルーを決め込んでおりました。どうせこっち(田舎)にはなかなかこないだろうし。
しかし馴染みのブロガーさんたちが激賞しているのを読んでるうちに、興味がムラムラ(またですか)。先日ようやっとわが県にもやってきたので、さっそく観にいってまいりました。

上でも書いたとおり、大スクリーンで見る「意味」があるかというと、まったくない映画です(笑)。舞台でもビデオでも一向に支障ない・・・というか、そっちの方がむいてたんじゃないかと。強いて言うなら、スクリーンで見たほうが役者たちが大きく見えるので、彼らの大騒ぎをすぐ近くから覗き見してるような感覚が味わえる・・・・ってことくらいでしょうか。

しかしそんなことは本当にどうでもよくなるくらい、殺人的に面白い作品でした。そして重苦しさのかけらもない爆笑百連発な映画でした(笑)。如月ミキの死の真相を探っていくうえで、飛び出してくる意外性は、十や二十では利きません。この点、上質のミステリーでもあります。そしておバカな芝居を嬉々として演じる役者さんたちの、なんと輝かしいこと。特に目をひくのは苺のカチューシャを頭にはめた変態オヤジ・苺娘(演じるは香川照之)でありますが、ここはやはり主役の家元を演じる小栗旬くんに注目したいと思います。彼は僕の中では「イロモノもできるイケメン」ということで塚本高史とだいたい同じポジションにいます。正直いまでも時々どっちがどっちだかわからなくなることもあるのですが、今回の彼の演技にはちょっと感心させられました。

実は「家元」というのは五人の中で一番平凡な役です。彼が中心にいることで、他の四人の異常ぶりが一層際立つという図式です。しかしだからといって周りの怪演に埋もれることなく、ちゃんと自分の個性も発揮している。他を引き立たせつつ自分も引き立つ・・・ これってそうそうできることではないんじゃないですかねえ。脚本の力もあるでしょうけど、お若いのに大したものです。「オタク」という役柄のこともあり、なんだか急に親近感が湧いてきました。っていうかオレたち、もうマブダチだよな? な? な?

「その人の本性は見た目だけではわからない」「この世で伝えられている『真実』は、実はかなりあやふやなもの」という深遠なテーマもあります。でも単なるバカ話としても十分楽しむことができます。こういうのってなんかオシャレですよね。
また、今後オフ会を企画されてる方は反面教師としても利用できると思います。学べる教訓としては「前もって会の方向性を明らかにしておく」「例えどんな変人が来たとしても暖かく迎えてあげる」「参加者の過去を詮索しない」「危険物は持ち込まない」などなど。

20071109195413最後に劇場を特に沸かせていたセリフを幾つか紹介します。
「苺娘です♪」「デブッチャー!!」「はい。○○さんね。もうどうでもいいですよ」「やる気まんまんじゃん!!」
わけがわからないですね(笑)
早くもDVDが来年1月に発売されるそうですので、見逃した方はぜひどうぞ。

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Comments

キサラギもご覧になったんですね♪
私もこれは完全スルーを決めこんでいたんですが
ブロガーさんの評判があまりにいいので観に行ったクチでございます。
しかもかなり人気の作品だったせいか、シネコンでの上映が終わったあとミニシアター系で再上映しててそっちでも観てしまいましたー

私の中の小栗旬くんって、このキサラギを観るまでは
ジャニー系とよく混同しがちなくらいだったんですが、
これ観てから随分印象が変わりました。
同じく小栗旬主演で今現在公開中の「クローズZERO」も
ブロガーさんの評判がまたもやかなりイイみたいなので
近いうち観に行こうかなーと思ってます。(そんなんばっか)

そういや話は変わりますが、NEXTはいかがでした?

Posted by: kenko | November 12, 2007 at 12:28 AM

こんにちは。


山田風太郎チャットの延期日時について新しく決定しましたのでお知らせします~。


11月17日土曜PM9:00から当ブログにて山田風太郎チャット(忍法帖限定)を開きます。


もしお時間があればいらっしゃって下さると嬉しいです。

Posted by: みずぐきまり | November 12, 2007 at 08:17 AM

>kenkoさま

文中の「馴染みのブロガーさん」のお一人はもちろんあなたです。薦めてくださりありがとうございました♪
それにしても広島では都心と変らぬ時期にやっているのに、なぜ静岡ではこんなに遅いのだろう・・・ 田舎だなあ(笑)

>小栗旬

そういえば彼の出演作ってこれまでろくろく観たことない・・・ ぱっと思い出せるのは『ローレライ』であっけなく死んでたことくらい。今度は『サーフズアップ』でペンギンの声をあてるそうです
『クローズZERO』も評判&売り上げ共に絶好調ですね。ただ今月はあと『ボーン・アルティメイタム』『スターダスト』『続三丁目の夕日』を観るのにいっぱいっぱいです。『バイオ3』はすでに見ました
で『NEXT』の報告遅くなってすいません。とりあえずJホラー+香港B級アクションでした(笑) 今日中にちゃんとしたレビュー書きますんでもう少しお待ちください


Posted by: SGA屋伍一 | November 12, 2007 at 01:29 PM

>みずぐきまりさま

PC復旧おめでとうございます
二時間くらいの参加になると思いますがどうぞよろしく
今回は忍法帖限定ですか・・・

予習しとかないとな

Posted by: SGA屋伍一 | November 12, 2007 at 01:31 PM

SGAちゃんこんばんは~☆
これ、私が映画ブログで仲良くしている方と、オフでお会いした時に、
ミニシアター系ばかりよくご覧になる3人の方にオススメしました。
しかし彼らはスルーしました・・・。理由は、「他の人が絶賛しているから」という、ヒネクレ者どもでした。悔しかったぁ・・・
(SGAちゃんと交流のない方たちです)
なので、「人が褒めているから」という理由でご覧になる方は、素直でとってもいいなあと思います。
本当、これはすっごく面白かった~♪
私は、低予算で地味、脚本の力のみで面白い、という作品が一番好きかもなのです^^
家元は良かったですよね!私も実は、あれ以来気に入ってしまいました。
SGAちゃんは、アイドルでは誰が好きですか?今と、昔と一人づつ答えてください♪

Posted by: とらねこ | November 13, 2007 at 12:53 AM

>とらねこさま

こちらにもコメント・TBありがとうございます

>「人が褒めているから」という理由でご覧になる方は、素直でとってもいいなあと思います。

こちらもサンクスです。まあわたしの場合、素直というか流されやすいというか、「自分」があんまりない人間なので。風に揺れる柳のような、そんな感じ(笑)
あと「面白いもの」を判断ミスで観られなったりすると、すっごい悔しい気分になるんですよ

>低予算で地味、脚本の力のみで面白い

なかなかこういう映画ってないですよね。『SAW』『メメント』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』・・・・ あ、全部観てないじゃん(苦笑)
観てる範囲ではベタですが『シックス・センス』とか。あと『デスノート』二部作もそんな感じです。まあこちらは原作の力に負うところが大きいですけど

>アイドルでは誰が好きですか?

昔・・・・ ん~と・・・・ 牧瀬理穂にクラッときた時期があったな(笑) 写真集とかは買わなかったけど
今・・・・ ほしのあきさんにはがんばって「第二の由美かおる」を目指してほしいものです

Posted by: SGA屋伍一 | November 13, 2007 at 01:06 PM

こんにちわ。
TB&コメントありがとうございます。
コレ面白かったですよねぇ。
今年見た日本映画の中では、なかなか上位に入る感じです。
笑いあり涙あり、とてもバランスがいいなと思った次第。
しかも、舞台が色んな場所に飛ばないところが凄いと思いました。
軽いタッチな気もするけど、完成度は高いよなぁと感心した1本です。

苺娘さんのイラスト素敵ですね♪
なかなか男前に見えます(笑)
香川さんファンとしては嬉しい限りです~

Posted by: となひょう | November 21, 2007 at 06:39 PM

>となひょうさま

こちらにもコメント&TBありがとうございます

自分は映画は基本的にヴィジュアル重視で鑑賞してますが、こういう風に会話の力だけでも、客をひきつけることができるんだなあといたく感心してしまいました

こういう映画を観ると、やっぱり日本映画はスケールではなく、アイデアで勝負するべきだなあと思います

>苺娘さんのイラスト素敵ですね♪

おほめいただき恐縮です。あの香川さん独特の異様な「空気」は全然再生で出来てませんね・・・・ まあ、ここは喜んでもらえたので結果オーライということで


Posted by: SGA屋伍一 | November 21, 2007 at 11:44 PM

こんにちは!
普段邦画はスルーばかりしていますが(もっとも地元でコチラは上映されませんでした・汗)、この映画は皆さんが絶賛していたので観てみました。で・・・面白かったです♪
密室での会話劇だけであそこまで魅せるとは・・・アッパレ脚本!!アッパレ小栗です!!
何だか小栗君を特別扱いしましたが、いちご娘さんも良かったです。オダユージも良かったし・・・
でも小栗君は可愛かったで~す!!(笑)キャピ♪
オタクの方々の様子を見られたのも興味深かったです。
パワーがありますね~ミキちゃんのアルバムを囲んだ5人の姿に圧倒されました(笑)

Posted by: 由香 | January 22, 2008 at 03:02 PM

>由香さま

お返しのコメント・TBありがとうございます
TBなぜか非公開の状態で届いてましたが、設定なおしておきました

わたしこれ『パンズ・ラビリンス』のオマケのつまりで観にいったんですよね。そしたら『パンズラ』よりツボにはまってしまったという(笑) まあ『パンズラ』も十分に見ごたえのある作品でしたが

>いちご娘さんも良かったです。オダユージも良かったし・・・

ジョニー・デップ似の彼は?(笑)
結婚するならあの人が一番家庭的なような気がしますが(^^;)

>ミキちゃんのアルバムを囲んだ5人の姿に圧倒されました(笑)

気迫みなぎってましたね~
傍で見てる分には面白いけど、「あの中には絶対に混ざりたくない」と思いました(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | January 22, 2008 at 10:08 PM

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