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November 14, 2007

北斗の剣 イズモ伝 富樫倫太郎 『太子暗黒伝 弐 出雲燃ゆ』

20071114192218富樫倫太郎版『日出処の天子』だと勝手に思ってる『太子暗黒伝』の第二巻。発売から一年近く経ってようやく読み終えました。第一巻「厩戸皇子編」のレビューはコチラ

物部氏が敵国出雲と密約を取り交わしていることを突き止めた厩戸皇子。だがその報告を持ち帰る前に、父用明天皇は病で帰らぬ人となっていた。この機会に権力を掌握せんと、物部守屋は皇位継承者である厩戸の命をつけねらう。一方彼らに敵対する蘇我氏も、守屋が擁立する穴穂部皇子を亡き者にせんと企む。血を血で洗う暗闘は、やがて都を鳴動させるに至り、歴史に名高い一大合戦へと発展していく・・・

前の巻では一応「神道か仏教か」という問題で対立していた両勢力。それがこの巻になるとそんなことはどうでもよくなったらしく、とにかく「相手のタマを取る」ことに血道をあげていきます。そのえげつなさはまさに「仁義なき戦い」で、ヤクザも舌をまくほどです。

と、まあここまでは普通の日本史の範囲内ですが、ここにさらに二つの勢力が絡んでくるのがこのお話のややこしいところ。前にも少し述べましたが「現在の日本の古代史は大和朝廷により改変されたもの」というのが富樫先生の自説。そんなわけでこの物語では、大和朝廷と並立して普通に九州に邪馬台国があります(発想飛躍しすぎ)。そしてもう一つの勢力が中国地方に位置する「出雲」。これは邪馬台国の宿敵であった狗奴国の後身ということになっております。面白いのはどの勢力も、元々は渡来人が中心になって興したという設定になっているところ。邪馬台、出雲のことはフィクションにしても、古代の日本というのは思ったより国際色豊かだったのかもしれませんね。

カリスマ的指導者・大奈無智を得て巻き返しを図る出雲。その留守に足元を救おうとする邪馬台国。まさか古代を舞台にしてこんな風に「三国志」が成立するとは思いませんでした。富樫先生のイマジネーションに敬服いたします。
さらにこれに謎の方術師やら呪殺やらゾンビやら獣人といった、伝奇小説にはおなじみの要素が加わります。そういえば権力を握ろうとする豪族が目の上のたんこぶを呪い殺そうとする話、トガちゃんの作品で前にもあったような・・・・ ま、忘れてあげましょう。実際ほとんど忘れてるし。
こんだけ色々ぶちこんであるので、どうせまた「次巻へ持ち越し」となるんだろうな~と思っていたら、驚くべきことにストーリーは見事な収束を見せ、前の巻で山積みになっていた問題はこの巻でほとんど解決してしまいました。なんだか拍子抜けです。

主人公厩戸皇子について。・・・・うーん。彼って普通の「悩める天才・超人」という感じで、あんまりインパクト強くないんですよね。強いていうなら部下である調使丸の扱い方などに、懐の広さが感じられます。まあこの小説って基本少年漫画なんで、主人公はステレオタイプでいいのかもしれません。実際終盤の合戦場面はかなり盛り上がりますしね。個人的には船酔いでゲロばかり吐いていたヘタレの毛人くんが、合戦において意外な才能を発揮するところなどが小気味よかったです。

20071114192323一巻から二巻までのインターバルが半年だったのに、三巻は一年間が開いた今でもまだ発行されていません。富樫先生どしたんですか! 飽きちゃったんですか!
徳間さんのHP見たらノベルスの出版点数もかなり減っているみたいですね。このレーベルは『銀河英雄伝説』などで思いで深いので、できればもそっとがんばってほしいものです。


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Comments

>「現在の日本の古代史は大和朝廷により改変されたもの」
 私は天皇陛下万歳!な人ですが別にこういう風に歴史を多角的に
見てもいいです。
 でも「古事●や日本書●に書かれていることはウソっぱちなんだー」
と言いながら夕日へ泣きながら走っていくようなのは、なんだかなぁ、
と思います。
 「権力者が改変した資料は信用できないんだ~」を言い訳に
なにも聞くことができない事も多いです。
 
 「赤穂浪士は吉良がワイロを受け取ったと情報を流した。赤穂浪士は
義士じゃないんだ~うわ~」と言いながら夕日へ(略
 別に赤穂浪士をヤクザみたいに描いてもいいけど、こういう人も
なんだかなぁ、と思います。

 
 邪馬台国や出雲が同時期にあるのは面白い発想です。
国際色豊かな感じというのは言いえて妙です。
 妖術師とか出て来ると荒山徹先生を連想しますw
 これで邪馬台国が九州にあるとか大和王朝は?な歴史の謎が
明かされましたんですね。

 へタレくんもいるんですねw
 市東亮子先生ですが山背大兄王を影に陽に女房の
ようにせわしなく補佐した中臣鎌足みたいなのもいると
いいです。
 「ああ~もう太子ったら。正義感強いけど周り見えないんだから!
またいろいろ準備しなくちゃ!ああでもあんな太子だから、
ほっとけない。ウチらは仏様だけに、ほっとけない。」
 母性本能を刺激する太子w

 あと女性剣士みたいな萌えキャラはいますか?

 大化の改新はただのクーデターだ!うわー」夕日へ略
なんだかなぁ。

ああ、そうそう
http://www.youtube.com/watch?v=dlszE8j0A5s
続きが気になるそうですが、こうなるのではないでしょうか?
 いや~歴史の真実(?)は恐ろしいですね。

Posted by: 犬塚志乃 | November 15, 2007 at 08:48 PM

>犬塚志乃さま

>古代史

わたしもむずかしいことはよくわかりません。ただひとつ言えるのは、「そんなに昔のことは確かめようがない」ということくらいです。まあ聖徳太子から大化の改新あたりの歴史は、やっぱり「公になってるものが基本」だとは思ってます
あとさすがにこの時代にはもう邪馬台国はなかったと思います。劇中でもまんま残ってるというわけではなく、残存勢力がそれなりに続いてる、という設定ですけど

>へタレくんもいるんですねw

この辺は山岸作品の影響かと。ただしあちらのよう危ない関係に発展しかけたりはしません

>女性剣士みたいな萌えキャラはいますか?

剣士はいませんがおてんば娘ということなら、蘇我馬子の娘で太子の婚約者となる刀自子ちゃんがそんな感じです

>ようつべ

・・・・大地節だなあ、この感じ。日中友好にひびが入らなくて良かったです

Posted by: SGA屋伍一 | November 17, 2007 at 04:34 PM

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