風と雲とギャグと 『風雲児たち』を語ってみたい 雲竜奔馬編②
第一巻が始まるのは嘉永6年6月から。実は無印版『風雲児たち』終了の年代から二年半の空白があるんですが、それはひとまず置きまして。この時、『風雲児』ファンが首を長くして待っていたイベントが訪れます。それは「黒船来航」・・・ そう、まさに「幕末」の開始となった出来事です。
もしやこれが日本国の最後となるのか・・・・ 得体の知れぬ黒船に恐怖を感じ、各々覚悟を決める武士たち。
そんな中にあって、ただひとりすっとぼけた反応を示した青年がいました。
「わし、あの船ほしい~っ」
彼こそは後の維新の立役者、坂本竜馬そのひとでありました。同様のシーンは後に『幕末編』でも描かれますが、『雲竜』の方がよりアホっぽくて好きです。
前に『新選組!』の記事でこんなことを書きました。「『アホウ』というのは行動力がハンパじゃありません。薩長同盟にしろ大政奉還にしろ、なまじ知識のある人間は『そんなの無理無理』とすぐ諦めてしまいますが、アホウにそんな常識は通じません。まあ並みのアホウなら『やっぱりダメだった』で終ってしまうわけですが、竜馬が違うのは、『実際にやってみて』実現させてしまったところです」
本作品では『新選組!』と同様に、こうした竜馬のアホっぷりが楽しくにぎやかに語られていきます。
もっともアホだってアホなりに色々考えたり悩んだりもします。身分のために苦しむ友人、岡田以蔵。脅威がすぐそこに迫っているのにお互いが信用できぬため、共同戦線のとれない幕藩体制。こうした理不尽な現状を見てるうちに、竜馬青年の胸にいつしかムラムラとしたやり場のない思いがわきあがってきます。
「何かわからん血が胸ン中で騒ぎゆう」「謀反人の血じゃろうかのう・・・」
さしあたって三百の藩を一つにまとめられないかと思案する竜馬くん。しかしそれでもなおアメリカとは全然格が違うことに、彼はまだ気づいていません。
それなりににぎやかではあったものの、どうしても説明文の多くなってしまった『風雲児たち』。それにひきかえ『雲竜奔馬』はとにかく明快でやかましい。以前からのファンにはそのシンプルなノリがお気に召さない方たちもいたようですが、わたしとしてはみなもと先生が当初抱いていた『風雲児たち』のイメージとは、むしろこういうものだったんじゃないかと考えております。
ペリーは自分の用件を言うとあっさり去っていきますが、その半年後、質問の答えを聞きに再びやってきます。その時、幕府はいかにして対応したのか。また次代をになう若き獅子たちはどんな思いを抱いていたのか。それについてはまた次回扱います。
くどいようですがオンライン書店BK1ではただいまみなもと太郎★作家生活40周年記念キャンペーンを実施中。
はい。回し者です。
Comments
まいどです。
>雲竜奔馬
このノリは「風雲児たち」とはどこか違いますね。
とはいえ、幕末編に違和感なく(一部改変あっても)編入できる
点は「みなもと節」そのものですよ。
・・・んで私の愛するさな子嬢は?(オレは柱小五郎かよ・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あれ?)
>再びやってきます。
もちろん本国に帰ってはいないですよね(笑)。
風雲児たち読者なら基本だ(えー
このあたりちゃんと教えられない点が日本史教育の
おかしさを露にしとると思うのですけど・・・・・。
ちなみにレイズナー刻印2000見ながら書いてます。
「ガガガファイナル」、「T3」の結末(コレ2つ共ぬか喜びじゃ~)って
改めて風呂敷広げた娯楽作品の終わりはハッピーエンドでなくてはと改めて思うまさとしでした。
ちゃんとたためよな。ではでは。
Posted by: まさとし | November 17, 2007 09:25 AM
>まさとしさま
こんちはっす
>このノリは「風雲児たち」とはどこか違いますね。
「関ヶ原」あたりのノリには多少近いと思うんですが、やっぱり微妙に違いますね。しかしまあ、まさとし様が言われるように、リミックスしても問題ないくらいの差異であると思います
>さな子嬢
ごめん、忘れてた(笑) 今後に期待してくだせえ
>風雲児たち読者なら基本だ(えー
いやあ、ぶっちゃけ「ペリーが二度来てた」というのはこの漫画で教わったんだよね、自分
>レイズナー刻印2000見ながら書いてます。
本編最終回の時に頭が「???」となったのは懐かしい思い出だなー
『風雲児』も一時打ち切りみたいになったけど、そのあとちゃんと再開されたという点では本当に幸運な作品ですよね
ま、『ターミネーター』も『GGG』もまた続きやるとは思うけど(^^;)
Posted by: SGA屋伍一 | November 17, 2007 04:47 PM
>みなもと先生が当初抱いていた『風雲児たち』のイメージとは、むしろこういうものだったんじゃないか
ああ、これはハッとさせられるご指摘です。
たしかに、『冗談新選組』や『レ・ミゼラブル』などと比べてみると、『~幕末編』より『雲竜~』の作風が昔のみなもと作品に近く感じられます。
いまや『風雲児たち』は未曾有の大長編歴史漫画となり、それに慣れ親しんだ身としては、連載スタート時の雰囲気というのを肌で感じるのは難しくなっているのかもしれません。
『雲竜奔馬』といえば、「掲載誌の都合に振り回された傍流の続編」といった評価がもっぱらですね。
たしかにそれはそうなんだけれど、それだけかといえばそうでもなさそうなのが、『雲竜~』の魅力といえましょうか。
まぁ、どちらが好きかといえば、そりゃあ『幕末編』なんですけどね。
Posted by: 秦太 | November 19, 2007 01:01 AM
>秦太さま
虫捕りには辛い時期になってきましたね(^^;)
たぶん『風雲児たち』が予定通り10巻くらいで完結してれば、こういうノリになったんじゃないでしょうか。それを許さなかったのが「歴史」という題材の怖さであり、みなもと先生の真摯な姿勢であったと考えております
黒船来航のシーンを見比べると特に『雲竜』と『幕末編』の違いがわかる気がします。乱暴な言い方をすれば『雲竜』が「活劇より」な作品だとすると、『幕末編』は「史劇より」な作品ではないかと。とはいえ両者は全く異なるというわけではなく、根っこの部分は同じなわけですが
>たしかにそれはそうなんだけれど、それだけかといえばそうでもなさそうなのが、『雲竜~』の魅力といえましょうか。
三巻あたりから特にみなもと先生の意地というか、老獪さが現われてきますね(笑) その辺につきましてはまた次項で書きたいと思います
それではオサ掘りがんばってください
Posted by: SGA屋伍一 | November 19, 2007 09:02 AM