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October 22, 2007

アラビアのバイオレンス ピーター・バーグ 『キングダム 見えざる敵』

20071022120301石油という富とイスラムの教えが不穏な空気を生じさせているサウジアラビア。そのサウジで、石油会社に務めている米国人を標的とした凄惨なテロ事件が起きる。事件で友人を失ったFBI捜査官フルーリーは、犯人の捜索・逮捕のため現地へ飛ぶが、トラブルを恐れる政府から行動を制限された上に、サウジの人々の敵意と直面することになる。

あ、すいません。今回はボケはなしです(笑)。恥ずかしながらサウジアラビアに関しては今まで「石油が出る」「サッカーで日本とよくあたる」くらいの印象しかありませんでした。イラクやイスラエルと比べて話題に出ることも少ないので、わりかし平和な国なのかな、と思っていたんですが、ここも色々大変みたいです。

最初はイスラムの教えを根底に置いたモラルの高いを目指していた。しかし国内で油田が発見されたために、大国がバンバンお金を落とすようになり、支配階級は金まみれに。恩恵に浴さない一般民衆は「理想はどこへ」「外国のせいだ」と怒りを燃やす・・・・ 例えるなら質素に仲良くやっていたご一家が、うっかり宝くじで一等をひきあててしまったために、深刻な家庭不和に陥ってしまうようなものでしょうか。その場合アメリカは「そのお金で一発派手に儲けましょうよ♪」と擦り寄ってくる金融ブローカー? 先日終了した『どんど晴れ』のクライマックスとも少し似ています(笑)

この『キングダム』、注目すべきはアメリカ製であるにも関らず、「テロが起きる原因は自分たちにもある」ということを認めている点ですね。これまでもテロを描いた映画はありましたが、大抵は首謀者が悪魔的な愉快犯だったり、あるいは被害にあった人々の心情にばかり焦点があてられたりしていて、「テロリストの動機」については完全スルーされることがほとんどでした。なぜかって言えば、そこに踏み込んでしまったらアメリカの欺瞞についても触れざるをえなくなるからです。

もう一つ印象に残ったのは事件の首謀者らしき男「アブ・ハムザ」に関する描写。こういう「対決もの」では普通敵のボスには演技派の大物俳優があてられたりして、冒頭から主人公と舌戦を展開したりするものですが、アブ・ハムザはビデオカメラの映像にしか姿を現さないため、フルーリーたちはその居所をつきとめるのに苦労します。まるで昨今のビン・ラディンみたい。
さらにビデオの中ですらターバンのようなもので顔を覆っているため、ますます正体がつかみ辛い。果たして実在しているのか?という疑問すら湧いてきます。恐らく副題の「見えざる敵」というのはその辺からきているものと思われますが、最後の最後でもう一つの意味があることが明らかにされます。

で、一本の映画として観ますと、序盤から中盤にかけては少しずつ少しずつテロ組織に近づいていく様子がとてもていねいに描かれています。ところが半ばをちょいと過ぎたあたりから、問題が急にパタパタと解決していき、ド派手な銃撃戦まで描かれることに。言ってみれば、クライマックスの前後だけがやけに浮いてるんです。このバランスの悪さは、諸般の事情によるものなのか、それとも監督の計算なのか。
前者であるなら
「あーっ!! このまま『おっとり捜査』続けてたら尺が足りなくなっちまうよ!」「上がもっとアクションを増やせと言ってます!」「しゃあねえ! こっから先はテンション高めにまいていくか!」
・・・・となってしまったのか。
後者であるなら
「観客の皆さん、悪いテロリストが派手にぶっ殺されてスカッとしましたか? でもね、そういう感情が今の世の終らない悲劇を生み出しているんですよ」
・・・・ということだったのか。

20071022120203願わくば後者であってほしいものです。

『キングダム 見えざる敵』は現在全国の劇場で公開中。架空の事件がモデルとなっていますが、良いテロリストの皆さんはくれぐれも真似しないでください。
 


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Comments

こんにちわ!
2周年記念記事に温かいコメントをどうもありがとうございました。
というか、いつも足を運んで頂きましてー 
どうもありがとうございます!
なかなかどうしてブログ管理が遅いこの頃ではありますけど、今後ともどうぞヨロシクお願い致します。

>でもね、そういう感情が今の世の終らない悲劇を生み出しているんですよ

大佐は『ハルク』を見て警察に入ろうと思ったと言ってましたねぇ
私は、本作で一番印象深かったのは大佐でしたー
相変わらず、脇ばっかり気にかけております。

きっと、こういうことなんじゃないかと思って見てました。
平和への道のりは、やっぱり近くはないんですねー

Posted by: となひょう | October 22, 2007 at 08:30 PM

あれれ?入力したつもりが削除してしまっていたようです。

>でもね、そういう感情が今の世の終らない悲劇を生み出しているんですよ

きっとこういうことが伝えたいのかと思って見てました。

という賛同のコメントを入れ漏れてました・・・

Posted by: となひょう | October 22, 2007 at 08:31 PM

>となひょう様

お忙しいなかコメントとTBありがとうございます
こちらこそ引き続きよろしくお願いしますです

>本作で一番印象深かったのは大佐でしたー

確かに印象深い人物でした・・・が、実は冒頭でボコられてた人と大佐が途中でごっちゃになっておりました。最後にようやく「別人?」と気づいたのは内緒です(^^;)

>『ハルク』

「正義を守ろう」と志したきっかけが・・・それかい!とツッコミたくなりましたが、こういうちょっとしたアメコミネタが実は嬉しいワタシでした

>平和への道のりは、やっぱり近くはないんですねー

今の世界情勢を見ていますとますますそんな気になってきます。ただこの作品に示されていたわずかながらの希望を、できることなら信じたいものですね

Posted by: SGA屋伍一 | October 23, 2007 at 05:22 PM

こんばんは!
TB&コメントありがとうございました~^^・

最近は、アメリカ万歳ヒーローだぜぃ映画よりも、こういう何というか中間的な視点にたった映画も増えてきた気がしますね~

本作はなかなか見応えのある作品に仕上がっていたと思います。
手持ちカメラの映像のせいで妙に緊迫感を感じちゃって、怖がりの私はビクビクしながら観ていました~
後半の派手な戦闘シーンは、迫力満点で良かったと思うんですが、、、テロ首謀者へ辿り着くあたりは随分急ピッチで描いていましたね。
アメリカはどうも最後に面倒くさくなっちゃう・・・という習性があるような気がします。
で・・・ドカンと重いセリフで締める、と。

ところで、『質素に仲良くやっていたご一家が、うっかり宝くじで一等をひきあててしまったために、深刻な家庭不和に陥ってしまうようなものでしょうか』―あまりにもしっくりいく例えで笑っちゃいました~
座布団1枚置いて帰ります(笑)

Posted by: 由香 | October 23, 2007 at 11:08 PM

>由香さま

お返しのコメント&TBありがとうございます

>中間的な視点にたった映画も増えてきた気がしますね~

イラクでやりすぎたことへの反省なんですかね。『ダイ・ハード4.0』の悪役も思想・国籍は関係なし、みたいな描かれ方でしたし

>アメリカはどうも最後に面倒くさくなっちゃう・・・

最近の例でいうとなんだろう・・・ 『ブラックダリア』とかかなあ

座布団一枚いただいたので調子にのって追加
[一分でわかるサウジ情勢]

「オヤジ、今度裏の畑な、つぶして高級マンション建てることにしたから」
「あの畑は先祖代々受け継いできたものじゃぞ! それをお前というヤツは・・・・ どうせあの米田とかいう男の入れ知恵じゃな!? ゆゆ許せん。あの男、たたッ斬ってやる!!」
「なに考えてたんだボケジジイ! 大事な商談をパアにする気か!」
(バキッ)
「親に手をあげるとは・・・ もうお前など息子ではない!! まとめてあの世へ送ってやる!!」
「上等だボケジジイ! 返り討ちにしてやらあ!!」
「お父さんもお兄さんもやめてよ! ううう・・・ あんなお金さえなかったら・・・・」

お粗末さま


Posted by: SGA屋伍一 | October 24, 2007 at 07:44 AM

SGA屋伍一さん、こんばんは☆
今オススメの『ヘルボーイ』観てるんですが、ヘルボーイと半魚人が「レッド」「ブルー」と言い合っていますね。さしずめハルクは「グリーン」でしょうか?
「イインダヨ!グリーンダヨ!」

・・・失礼いたしました。
なかなか迫力ある映画でしたね。中には手ブレ映像が気になる、という方もいますが、私は『アレックス』を見た時の手ブレとついつい比べてしまい、「それほど手ブレは感じないんだけどなあ」っていつも思います。比べるものが悪いのかもしれませんが。
街中での銃撃戦はすごくリアルな恐怖でしたね。迫力ある映像の映し方、なかなか来るものがありました。

Posted by: とらねこ | October 25, 2007 at 06:55 PM

>とらねこさま

>・・・失礼いたしました。

ダイジョウブ! ハルク、オコラナイヨ!
ハルク、スグオコルケド!

みんなこの絵でよく「ハルク」だってわかってくれるよなあ。SGAちゃん感激!

>手ブレ映像

というと思い出すのはやっぱり『トウモロー・ワールド』ですかね。レンズに血糊までついてたし。まああれは演出の一環ととらえました
今回は例のヘナチョコくんがチョンパされちゃうんじゃないかと心配で心配で非常に落ち着かない気分だったため、画面のブレにはほとんど気がつきませんでした。あのくだりは本当にスクリーン早送りしたい気分でしたね・・・ アクションファンから怒られそうですが

Posted by: SGA屋伍一 | October 26, 2007 at 09:45 PM

こんばんわ。

人によっては、この映画を「所詮、アメリカ目線で描かれた作品」と
捉える方もいらっしゃるようですが。
私はね、SGA屋さんの同様に、この作品ってかなりニュートラルに
近い視点でアメリカとサウジの関係を描き出しているなあという
印象を受けたので好感を持ちました。

まあ・・たしかに。
終盤の銃撃戦に関してはかなり駆け足で唐突な感じもしないわけは
なかったですね。あの部分だけやけにハリウッド風味全開になって
いました(苦笑)。


でも、やっぱり。
こういうディープなテーマを取り上げている作品、特にテロ問題に
向き合っている映画には私はすごく心酔してしまう傾向があるようです(笑)。
とても実直で筋の通った映画だったと思います。

Posted by: 睦月 | October 29, 2007 at 12:15 AM

>睦月さま

こちらにもコメントありがとうございます
アメリカの人間が作ってるのですからアメリカの主観が入ってしまうのはどうしようもないわけですが、それでも「中東の人たちだって同じ人間のはず」という描写がそこかしこにあってよかったです。彼らが家族を大事にしてるシーンなどで特にそう感じましたし、なにより最後のセリフのシンクロがそうでした。同じ人間だからこそわかりあえる半面、同じ性を持っているとも言えますね

テロ問題を真摯に扱った作品というと、映画じゃありませんけどコミック『MASTERキートン』や『パイナップルARMY』などに秀逸なエピソードが数多くありました。何年も前の作品ですが、今読んでもまったく内容が古びていないことに驚かされます。未読でしたら漫喫などでぜひ

Posted by: SGA屋伍一 | October 29, 2007 at 09:01 PM

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