井の中のモグラ 大宇宙を知る 今石洋之 『天元突破グレンラガン』
たぶん未来、はるか地の下にある穴居都市、ジーハ村から物語は始まる。そこ以外に世界を知らなかった少年シモンは、トンネルを掘っていた際、巨大な顔の形をしたロボット・ラガンを発見する。それに呼応するかのように、上の世界から来襲してきた巨大メカ・ガンメン。「無理を通して道理を引っ込めるんだよ!」兄貴分カミナの言葉に励まされたシモンは、ラガンを駆ってガンメンに立ち向かう。それは後に大宇宙の果てにまで続く、長い冒険の始まりであった。
最近のアニメ・マンガ業界はゲッター線の濃度がかなり高くなっているように思われます。ゲッター線とはなんぞや? それは永井豪原作・石川賢画のコミック(アニメではない)『ゲッターロボ』に出てくる放射線の名前、転じてそのコミックの影響力を指してそう言います(とわたしが決め付けた)。で、先のシーズンのアニメでとりわけゲッター線にどっぷり漬かっていたのが、この『天元突破グレンラガン』です。
コミック版『ゲッター』の特色、それは異常なまでのハイテンションぶりにあります。最近のオリジナルアニメは大体全26話くらいで作られることが多いです。一年モノにくらべるとまだ楽かもしれませんが、それでも合計してゆうに12時間はあるわけです。出だしこそ勢いがあったのに、回が進むにつれ息切れしてしまうアニメは少なくありません。
ところが『グレンラガン』は多少の波こそあれ、最初から最後までず----っと高水準のテンションを保ち続けました。その点、まことに稀有の作品と言えるでしょう。成功の一つのカギは、全体を4部構成にしたこと。「一本で初代ガンダムから『逆襲のシャア』までやっちゃう」というスタッフの言葉どおり、お話はめまぐるしく慌しく進行していきます。しかしその駆け足進行が、この作品に異常なまでのテンションを保たせることになりました。
あとドリル。この徹底したドリルへのこだわりぶりは、まさしくゲッター線の影響以外のなにものでもありません。
シリーズ構成は劇団☆新幹線の中島かずき氏。文芸強化のために演劇畑からひっぱってきたのかと思いきや、この人は本業は双葉社の編集者で、『ゲッターロボサーガ』とか『スーパーロボットマガジン』などを発行していた根っからのオタキストであることを後に知りました。その中島氏、一番好きなロボットアニメは『ザンボット3』だそうです。あえて『ガンダム』ではなく、『ザンボ』という。その辺からしてもう重症です。
そういえば『グレンラガン』は『ザンボット3』と共通する部分も多々あります。主役メカのシルエット、庇護者を糾弾する一般大衆、次々と散っていく英傑たち、「ぶっちゃけ人類って宇宙のガン細胞だから」というテーゼ、などなど。
ただ『ザンボ』が非常に重苦しい作品であったのに対し、『グレンラガン』は全編通じてコミカルでアナーキーで元気いっぱいのアニメとなっております。
さらに『タイムボカン』、梶原一騎、出崎統らへのオマージュらしきものもうかがえます。
そういったオタク好みの要素もさることながら、何よりもひかれるのは登場人物の男っぷり。龍車に向かう蟷螂の如く、天をも覆わんばかりの巨大な敵に、勝利を信じて立ち向かっていくカミナ、そしてシモン。その姿にはいい加減ひねくれた三十男でさえも、拳をつきあげられずにはいられないものがありました。
『天元突破グレンラガン』は現在早くもテレビ東京ほかで再放送中。いまならまだ間に合う!
「そのドリルで、天を貫け」
Comments
こんにちは~、コメント欄から失礼致します。
11月3日土曜のPM9:00から、拙ブログにて第二回山田風太郎チャットを開くことになりました。
今回は忍法帖限定チャットを予定しております。
お時間がありましたら、ぜひ語りにいらっしゃって下さい♪
グレンラガン>
中島かずきさんは「大江戸ロケット」の脚本も書いていらっしゃいますし、
中島かずきちという名前で本編にも出てきます(笑)
Posted by: みずぐきまり | October 29, 2007 03:21 PM
みずぐきさん、こんばんは。また誘ってくださってありがとうございます。今回は予定的にちょっと微妙なところですが、できるだけがんばって参加したいと思います。よろしく
先のシーズンは奇しくも中島かずき関連作品が同時に放映されていたんですよね。あちらが花火で宇宙まで飛んでいくという話であるのに対して、こちらはドリルで空を突き破るという話でした(笑)
『大江戸』のキャラデザ担当の一人だったみなもと太郎先生の『風雲児たち』、ここでしつこく宣伝してるけど、みずぐきさんも気が向いたら読んでみてね~
Posted by: SGA屋伍一 | October 29, 2007 09:09 PM