宇宙の波はオレの波 スタン・リー メビウス 『シルバーサーファー』
あちこちのブログ見てみますと、なんか『ファンタスティック・フォー 銀河の危機』の評判があんましよろしくないじゃござーせんか。
だから、わたしはこの映画を誉めることにします。
『ファンタ2』はすげえよ!! 世紀の大傑作だ!! スーパーマンもスパイダーマンも全然目じゃないね!! キャーキャー!! ヒューヒュー!!
・・・・・えーとね。その一環として、いまから約10年前にひっそりと日本に紹介された、このコミックについて本日は語るっとしましょう。アメコミ界の大御所スタン・リーとフレンチコミック(BD・・・ベーデーというらしい)の巨星メビウスががっちりと手を組んだ奇跡の作品です。
飽くことなき飢えのゆえに、星々を喰らい続ける宇宙の巨人ギャラクタス。かつて地球もその標的となったことがあった。幸い彼の忠実な僕であったシルバーサーファーが、突如として人間の味方についたことにより、地球は命を永らえた。だが時を経て、再び魔神は地球を喰らわんとその姿を現す。
危機に直面していることもわからず、威厳溢れるギャラクタスを神と崇め始める人々。サーファーは以前の主を追い払うべく奮闘するが、それはギャラクタス信奉者たちからの攻撃を身に招くことになった。
シルバーサーファーの初登場は1966年、『ファンタスティック・フォー』誌第48号にて。最初はファンタチームの敵でしたが、いろいろあって彼らの仲間となります。二年後には脇役から『シルバーサーファー』誌の主役に昇格。このコミックはそのシリーズとは別に、1988年に二冊こっきりの特別版として出版されたものです。ちなみにオリジナルのギャラクタスは映画とは違い、バケツをかぶったような頭のバカでかい巨人として描かれています。
アメコミ世界では同じ世界に複数のヒーローが存在していることになっていて、例えばMARVELコミックスの作品ではスパイダーマンとX-MENが共演したりとか、ハルクとゴーストライダーがすれちがったりなんてことはしょっちゅう。ところがこのメビウス版『シルバーサーファー』においては、地球の危機だというのに誰一人サーファーを助けに来ようとしません。かつて共にギャラクタスを追い返したファンタスティック・フォーでさえ(・・・・)
恐らくこのコミックの世界は本家マーヴル世界とはまた別のもので、ヒーローはサーファーしかいないという設定になってるのでしょう。その辺はちょっと脳内補完が求められます。
邦訳は96年に出された『マーヴルクロス』という雑誌の1号と2号に掲載されました。『マーヴルクロス』はアメコミの名作・傑作を多数紹介してくれたとってもありがたい雑誌でしたが、17号を持って終了。ああ・・・ あのころは良かったよなあ・・・・
おっと、ついひたってしまった。このコミック、たぶんいまはもう読める機会はほとんどないと思うので、ラストばらしちゃいます。「意地でも探して自分で読む!」という方は急いで避難してください。
サーファーの捨て身の戦いにより、ようやく人々はギャラクタスが地球を滅ぼそうとしていることに気づきます。自分の計画が失敗したことに気づき、おとなしく宇宙へ帰っていくギャラクタス。すると今度は人々はサーファーを代りの新しい「神」に据えようとします。それが皆のためにならぬとわかっているサーファーはこう告げます。
「あなた達は他の誰も頭上に仰ぎみてはいけない」「神性のきらめきは皆の内にある・・・・ あるいは誰の内にもないものなのです!」
しかしそうしたサーファーの言葉にかえって感動してしまう民衆。「どうか我らにお導きを! 我々は皆あなたの使徒になります!」
すると突然態度を一変させ、高圧的な命令を連発し始めるサーファー。
「よろしい。諸君の申し出を受けよう」「だが手始めにわが要求を聞け!」「わがいかなる命令にも黙して従うのだ。いかなる気まぐれをも満たし、あらゆる欲望を充足せしめよ」「各国の富の三分の一を私に上納するのだ」「私が姿を現したときは立ち上がって向かえよ。私の許しなく口を開いてはならぬ」
彼の言葉を聞いた民衆は瞬時にして手のひらを返し、拳をふりあげてサーファーにつめよります。「リンチよ! その銀ピカのゾンビを吊るしなさい!」「薄汚いエイリアンめ!」
その狂騒の中、以前ギャラクタス信奉者のリーダーであった男・キャンデルは一人叫びます。
「彼は本気で言ってるんじゃないんだ!」「わからないのか?みんな我々のためなんだ! 我々が再び道をあやまらないために!」「だめだ、サーファー行かないでくれ!」「人類は狂っている! あんたは最後の希望なんだ!」
しかし群集の手が体に触れる前に、ボードに乗って天空へと去っていくサーファー。キャンデルはなおも叫び続けます。「なぜだ? なぜこんなことを? あんたは全てを手にできたのに! 神にさえなれたのに! 神にさえ!」「それを全部投げ出してしまった 俺たちなんかのために!」「取り返しのつかないことを・・・・」「俺たちにそんな値打ちはないのに!」
物語は宇宙から地球を見下ろすサーファーの独白でもって幕を閉じます。
「だが私は この地球という狂気の砂漠の中に 理性というオアシスを 捜し求めることを 決してやめはしない」
「数知れぬ世界と 終わりなき星々の中にあって 最も忌まわしき運命とは・・・・」「・・・・永遠の孤独に生きることなのだ」
この作品が発表されてから約20年。いまだドンパチを各地で繰り広げている地球人の姿は、シルバーサーファーの目にどう映っているでしょう。
Comments
>キャーキャー!! ヒューヒュー!!
脇の脱力感満載の挿絵も含めなんか不思議な雰囲気(笑)
を感じるまさとしでございます。
原作は例によって知らんのですが・・・・・・・・・・・・・
SGAやんの言わんとする事はよ~く判ります。
敢えて言うならペプシマンの親分?(おい
>地球の危機だというのに誰一人サーファーを
>助けに来ようとしません。
日本でも、電王の危機にゲキレンジャーは助けに行かないでしょ?
「スーパーヒーロータイム」つながりなのに・・・・・。
>意地でも探して自分で読む!」という方は急いで避難してください。
もう遅いわ(笑)。
「トランスフォーマー」だと、まず彼らにコンタクトするのが殆ど子供~
少年少女であり、彼らに理解のある大人が出現することで人類は
友情~共同戦線みたいな形を取ることで「人類皆兄弟」的な
行動を取るのですが、この作品はむしろ、人類に外からの脅威を
極端なまでに神格化させることで、人間の弱さに
改めて警鐘を鳴らしてる気がします。
最後の挿絵は何となくパチンコ玉を想像したまさとしでした。
Posted by: まさとし | October 07, 2007 08:23 AM
>まさとしさま
>>キャーキャー!! ヒューヒュー!!
これどっちかっつーと昔やってたアニメVer.のノリかもね。『宇宙忍者ゴームズ』ってタイトルで放映されてたんだけど
>敢えて言うならペプシマンの親分?
むしろ生き別れのお父さんかな
お母さんはガラスのクレアさん(ウソ)
>日本でも、電王の危機にゲキレンジャーは助けに行かないでしょ?
正論だ(笑) まあこの日本と異なるヒーローのごった煮のような世界観が、アメコミの魅力のひとつなわけでありますよ
>人類に外からの脅威を
極端なまでに神格化させることで、人間の弱さに
改めて警鐘を鳴らしてる気がします。
するどい!
>最後の挿絵は何となくパチンコ玉を想像した
うまい! でも感動があさってのほうへ!
Posted by: SGA屋伍一 | October 08, 2007 02:01 AM
ファンタ2、当初は観に行く予定だったんですけど
おっしゃる通り評判がいまひとつなのでもういいかなぁ・・・って感じになってきてるところでした。
シルバーサーファーのビジュアルもなんでシルバー?そしてサーファー?という印象だったんですけど、アメコミ界では立派なヒーローだったんですね。
やっぱり観に行った方がいいですか?
Posted by: kenko | October 08, 2007 06:19 PM
おばんです
ファンタ2、評判いまひとつですね。わたしは大好きですけど(笑)
不人気の原因としては
①アメコミヒーローなのに暗くない
②シルバーサーファーと大決戦するのかと思ったら、アレ?
などがあげられます
でも映像的には大迫力ですし、「シルさんが意外とかっこよかった」という声も多いですから、ここはやはりご自分でお確かめを!
あとお子さんたちには大好評のようです
Posted by: SGA屋伍一 | October 08, 2007 09:35 PM