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October 19, 2007

邦画173番勝負 リリー・フランキー 『日本のみなさんさようなら』

20071019131431最近とみに多才な活動で知られるリリー・フランキー氏。これは氏がいかに日本の薄汚れた社会に絶望し、華麗なるフランス国民へと転身したかを克明につづった迫真のドキュメンタリー・・・・ではなく
『ぴあ』誌に94年末から99年の半ばまで連載された邦画オンリーの紹介コラムであります。作品のひとつひとつにリリー先生の緻密な(笑)イラスト付き。ちなみに本のタイトルは『日本沈没』(昔の方ね)の有名なセリフから取られたもの。

この本の存在を知ったのはやまわきさんとこのブログで(http://www.yamawaki3.com/blog/blosxom.cgi/book/20050208_1.htm)
『東京タワー』(映画)を観た後唐突に思い出して、「何か読んでみてえなー」と思ったものの古書店にも普通の本屋にも置いておらず、結局東京の某大書店でようやく入手しました。奥付をみたら、なんと「2002年3月10日 第1刷」とある。ごていねいに「2002年3月の新刊 文春文庫」と書かれたチラシまではさまってました。
・・・・よく5年もの間裁断されずに生き延びてきましたね・・・・ きっと書店の倉庫の片隅で
「オラァ、こんなウン年前の本さっさと始末しちまえよ! 邪魔でしょうがねえよ!」
「待ってください課長! あと三ヶ月・・・・ いや一ヶ月したら、必ずリリーブームがやって来ますから!」
というやりとりがあったに違いありません。そんな知られざるドラマのことを思うと、ふと目頭が熱くなるSGA屋伍一34歳独身でありました。


序文にはなかなか気合の入ったリリーさんの邦画へのラブコールが書かれております。
「日本の人々は日本映画には厳しいと思う」「日本映画がツマラないのではない。洋画も同じようにツマラないのである。そして、その両方に時として“イイモノ”が入っている。」「日本の映画が好きな理由はひとつである。」「わかるから。そこにある言葉、空気、色々なこと。わかるから腹が立ち、わかるから好きになる。」

熱いぜ・・・・ リリー!

ではこの本を読むと今まで見え辛かった邦画の良さがパーッとわかるようになるかというと、そんなことはまったくございません。確かにたまーに正面から作品を論じた項もないではないですが、大半はその作品や役者さんの意外なお笑いポイントを「はい!ここですよ!」と教えてくれるような内容。せっかく今まで感動できてた傑作でさえ、出るべきところで涙がひっこんでしまう恐れさえあります。

例えば74年製作、野村芳太郎監督の『砂の器』はこんな感じ。
「『砂の器』のクライマックス。(丹波哲郎が)加藤嘉に一枚の写真を差し出し問いかけるシーン。 『あなたは!! この写真のヒドに見おぼえがおありですがアアアア!! プワーッ!!』 このパワーに対して加藤嘉は気迫で返す。『ウォォォ!! そんなヒド!! 知らんんんグボゲロバー!!」。これがかっこいい芝居というものだ。」

・・・・・松本清張先生をして「わたしの映画化された作品の中で、唯一原作を大きく上回る」と言わしめた傑作だというのに・・・・

台無しだ・・・・ 台無しだよ。


でも面白い(笑) そんな本です。

無理矢理話を元に戻しますと、このコラムが始まった1994年当時、邦画界は大変お寒い状況にありました。興行収入でもヒット作の本数でも洋画に遠く及ばず、「邦画を映画館で観る気にはなれない」という人種も多数存在していました。どうせ高いお金を払うんだったら、高い金がかかったものが観たい。そう考えるのは貧乏人、芸術を解さぬ人間にとって当然のことではないでしょうか(わたしも含めて)。
ところが連載開始から3年経った1997年あたりから、邦画界は『もののけ姫』『踊る大捜査線 THE MOVIE』『千と千尋の神隠し』『世界の中心で、愛を叫ぶ』など、洋画に負けないメガヒットを連発。昨年にいたってはとうとう国内における興業収入が洋画を上回ったというから驚きです。その「邦画復権」の影には、もしかしたらこのコラムの影響も少なからずあったのかもしれません。
・・・・・と筆の勢いで書いてしまいましたが、冷静に考えてそんなことはまずありえないでしょう。絶対に。

取り上げられている映画は全部で173本。邦画マニアを自負する方は、自分がどれほど観ているかチェックしてみるのも一興でしょう。ちなみに自分は二十数本、名前は知ってるというものは百本ちょっとでした。

20071019131348最後に個人的にとっても勉強になった一文を紹介いたします。
「似てない似顔絵を描いた時は、カオの近くに名前を書いておけばOK!!」

リリー先生! 一生付いていきます!!

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Comments

こんばんはー。
そんな、えらい状態の本を救ってあげてすばらしー。

ちなみに今日は「男気万字固め@吉田豪」を買ってきたのですが、表紙の吉田豪の似顔絵はリリーさんでした。

ええ、もう当然顔の横に「吉田豪」って入ってるですよ。
ぜひ付いていってくだされーヽ(´ー`)ノ

Posted by: やまわき | October 19, 2007 at 11:13 PM

>やまわきさま

救出完了です。あねさん
っていうか、いま増刷かければそこそこ売れるんでないですかねー

>吉田豪

・・・とは何者だ!と思って検索してみました。ふんふん。けっこう売れっ子さんなのね
リリーさん入魂の表紙も拝見いたしました。また例によって微妙な似具合(笑) サイバラさんよりかはうまいかな

Posted by: SGA屋伍一 | October 20, 2007 at 09:46 AM

SGAちゃんこんにちは☆
ここに載ってるリリーさん'Sチョイスの邦画って、新作じゃなくて、リリーさんの自己流チョイスで選んだものばっかりなんだろうな、っていう(笑)
しかも目のつけ所がやっぱ違いますよね、評論家じゃなくてやっぱアーティストっぽいという印象でした。
しかしちゃんと映画詳しいんですよね、松ちゃんと違って。松ちゃんの映画評って的外れなんですが、リリーさんのは「この映画をこう言うか」ってところがマニアックな目線でもあるし、鋭いし、通だなって思っちゃいます。
実は私の理想だったりします^^
こんな風に書きたいです♪なかなか書けないんですけどね。

Posted by: とらねこ | October 20, 2007 at 11:04 AM

>とらねこさま

おばんです。コメントありがとうございました

>新作じゃなくて、リリーさんの自己流チョイスで選んだものばっかりなんだろうな、っていう(笑)

ですね。レンタル店で借りまくったものと思われます。きっと彼も当時あまり裕福ではなかったんじゃないかと(笑)

>松ちゃんの映画評

彼の場合は本当に自分の好みにあってるかあってないかで映画を判断してますからね(ついつい読んじゃうんですが)。それに対しリリーさんの文からは「何とかして作品を楽しもう」という意気込みが感じられます

『黒蜥蜴』『黒薔薇の館』はそういえばとらねこさんもレビューしてたな、と思って読み比べてみました。で、わかったのは『日本のみなさん・・・』はやっぱりまず読者を笑わせることを第一の目的としてる。それに対しとらねこさんのレビューは「作品の良さをわかってもらう」ことを主眼としてると感じました。どちらもとっても面白いと思いますよ

Posted by: SGA屋伍一 | October 20, 2007 at 09:03 PM

こんばんは
リリー・フランキーさんって・・・誰?という無知な状態の私ですが
「東京タワー」の原作者かぁ・・・(この映画未見なんですが)
でも最近「邦画もなかなか・・・」と思い始めた私は,読んでみたくなりましたよ,彼の映画評。
ちなみに,「砂の器」のクライマックスの描写は爆笑してしまいました。
・・・・面白すぎ。
確かに,邦画がまったく面白くない・・・というか
俳優さんもなんだかな~(特に若手)という時期がありましたね。
でも最近の邦画,がんばってて,
下手なハリウッドよりずっと質が高い作品が増えてきたような気もします。

Posted by: なな | November 05, 2008 at 08:06 PM

>ななさま

強引なTBにお返ししてくださり、まことにありがとうございますcoldsweats01

確かこのあと増刷かかったと思うので(笑)、気が向いたら読んでみてください。有名な作品も多いので、ななさんも十分楽しめると思います

>邦画がまったく面白くない・・・というか
俳優さんもなんだかな~(特に若手)という時期がありましたね。

角川映画が元気がなくなってから、『躍る大走査線』の前くらいまでですかね
傑作もそれなりにあったと思うのですが、地味でマジメな映画ばかり、やけに多かったような気がします

>でも最近の邦画,がんばってて,

こないだ週末興行収入ベスト10をチェックしてみましたら、10本中八本が邦画でたまげました。時代も変わったんですね~

いまはむしろ洋画にがんばってほしいものです。 個人的には今年は邦画では『アフタースクール』がHITでした

Posted by: SGA屋伍一 | November 05, 2008 at 09:18 PM

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この本は「ぴあ」で連載されてた映画評であります。日本映画ばっかしであります。しかも新作とかじゃなくて毎週毎週、ビデオを借りて見て書いて、ってしてたもんのよーです。中には「パッケージだけ見て書いた」ってやつもあるそうでありますが(なんせリリー・フランキー。ちなみに母親はリリー・ママンキー)、そんなことはどーでもよいのでありますよ。だって面白いから。「日本映画」といいましても、いろんなもんがあるわけですが、かなりB級色が濃いめかなー(シモネタ度も高いかな)。「黒澤映画」から「ロマンポルノ」まで173本の... [Read More]

Tracked on October 20, 2007 at 12:41 AM

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