千の仮面になって 美内すずえ 『ガラスの仮面』 とりあえず9巻目まで
先日オフビートNo.1ブロガーで『レザボアCAT’S』管理人のとらねこ先生(百万回生きてるらしい)から、夏休みの宿題(というか司令)を頂きました。
「『ガラスの仮面』の感想文を書けえええい!!」
少女漫画はちょっとしか知らない、演劇に関してはまったく知らないわたしにそんな無茶な・・・ とは思いましたが、「どんな挑戦でも受ける」のがイノキイズムです。そんなわけでマンガ喫茶にこもること三日三晩(ウソ)、とりあえず9巻まで読み終えました。ではまずあらすじから。
母と二人貧しく暮らす少女・北島マヤは、テレビだろうが映画だろうが、芝居が目に入るとたちまちその場でフリーズしてしまう重度の演劇キ・・・バカである。バイトの出前を忘れてラーメンを膨張させてしまったり、舞台のチケットを拾うために極寒の海へダイブすることなど朝飯前だ。
そんな北島の才能に目をつけた一人の女がいた。今はわけあって隠棲している往年の名女優の月影千草だ。彼女は自分の十八番だった『紅天女』の後継者を、ずっと捜し求めていたのだ(つか、こんな最初からひっぱってたんですか、この話)。
「ねえちゃん、演劇やらねえか? 演劇!」
その時、北島の行く道は決まった。フリーズするだけの演劇キ・・・バカから、トランスしてスパークする演劇キ・・・バカへ。ケンカ同然に家を飛び出し、月影の主催する劇団に身を寄せる北島。だがその先には地獄が待っていた。師匠の厳しいしごき、他の役者からのいじめ、大手プロダクションの執拗な妨害・・・ 度重なる試練を、北島は持ち前のド根性と謎のパトロン「紫のヅラの人」の励ましで乗り越えていく。そうして舞台を踏んでいくうちに、いつしか彼女に少しずつ演劇界の注目が集まっていく。しかし一方であまりにインパクトのあるそのアクションは、他の役者を全て空気にしてしまう「舞台上のブラックホール」として恐れられるようにもなっていた。果たして彼女は亡き父の名曲『箱館の女』をモノにすることができるだろうか!?
天才とそれ以外を分け隔てるものの一つは「集中力」であると言います。このマンガでまず目をひくのは、北島の演技にかける気迫のすさまじさ。それまでのんきだったラブコメ学園漫画が、瞬時にしてホラーサスペンスに変ってしまうほどのド迫力です。
もっとも彼女もいつもすんなり役に入れるわけではなく、完全なシンクロにいたるまでには何度も葛藤を繰り返します。しかし何かの拍子にヒントをつかむやいないや、「キタキタ! べスの霊キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」とばかりに完全にその人物になりきってしまいます。もはや演技というよりか「人格憑依」=シャーマンのレベルですね。そんな描写は日本の伝統芸能ももともとは神に捧げられるものであったことを思い出します。
そうやって演技にだけ集中できていれば良いのですが、北島の周囲にはいつも陰謀と罠が張り巡らされております。本当に妨害の無いときは無い、と言っていい(笑)。どこまで実際の話かはわかりませんが、例え何割かでも真実が含まれているとしたなら、役者さんというのも相当大変なお仕事ですよねー。絶えず限界に挑戦しなければならず、必ず明日仕事があるという保証もなく、その上横槍やら人のしがらみにまで気を使わねばならないとしたら・・・
みなさんなんで役者なんかやってらっしゃるんでしょうねえ?(^^;)
それはやっぱり劇中の北島のように「三度の飯より芝居が好きだから」なんでしょう。加えて「別の誰かになりきる」ということに耐え難い魅力を感じるからでは、とも思います。故・中島らも氏のある著書にも、こ・・・ホームレスと役者は三日やったらやめられない、なんて言葉が載せられていましたし。
また、このマンガは北島らが東西の様々な名作・・・『若草物語』『たけくらべ』『乞食と王子』『嵐が丘』・・・を演じるので、『世界名作劇場』ダイジェストとしても楽しめます。『たけくらべ』のくだりは二つのヴァージョンが続けて披露されるので、「解釈の違い」というものを考える上でなかなか勉強になりました。
北島以外の主要キャラクターの印象を手短に書きます。
☆マーシー早峰
いわゆる「紫のバラの人」。まごうかたなき“ロリコン”。
「紫」は光源氏の紫の上に対する思いにひっかけているのだろうか? だとしたらますます・・・・
☆姫川きよし
いわゆる「花形満」。演劇というものはスポーツと違い勝敗がはっきり見えにくいものだが、誰に頼まれたわけでもないのに、「わたしの負けだわ・・・」と勝手に負けを認めてくれる。もしかしたら「負け」に飢えているのかもしれない。
☆桜コージくん
「けなげ」という意味においてはヒロイン以上にヒロインらしいキャラ。北島は彼のことを思うとき「本当に・・・いいひと!」と付け加えることを忘れないが、それがどんなに残酷なことかを知らない。
☆月影仮面
いわゆる星一徹のような丹下段平。女優としては超一流だが、人間としては明らかに常軌を逸している。そのせいか、たまに「本当にいいコたち・・・」などと当たり前のことを言うと、逆にドッキリする。
ふー、どうやら提出期限に間に合ったな。先生! あたしのレビューどうでしたか!?
え・・・・? 「全然なっちゃいない」ですって・・・・!?
でも先生! あたし負けません! どんな試練も乗越えてみせますから!!(たぶん!!)
Comments
冗談半分に誘ってみたら、イノキイズムで気持ちよくOKしてくださり、本当にありがとうございます。。。★
それなのに、日に日に楽しみになってきて、まだかまだかと待ってしまいました。テヘ♪*^^*
わざわざ漫画喫茶に行かなくてはいけないことになり・・・本当に大変だったと思います・・・
後悔してしまったのでは・・・と思うと、なんだかとっても申し訳ないです!!!
桜小路きみまろ・・・じゃなくて、桜小路くんですが、確かに、毎回毎回「桜小路くんて、本当にイイ人・・・!」って言ってたかも~!
私は子供だったので、その意味に全然気づいてませんでしたあ!
盲点でした!
確かに、すごくこれって失礼だったんですね。
桜小路くん、おでん屋のバイトも手伝いに来てくれたでしょ?
いつもマヤが「ガンモにちくわ、お待ち~」っていうお店なんですが、この、公園のおでんやさんは、吉祥寺の井の頭公園なんですよ。
さいばらりえこもご存知なんですね~。SGAさん♪
Posted by: とらねこ | September 01, 2007 01:44 PM
基本的にマヤちゃんに感情移入して読んでましたが、
桜コージくんが出てくるときはそちらに感情移入してたような気がします。ちょっと胸が痛むんだ(爆)。
それにしても「舞台あらし」が「舞台上のブラックホール」とは、なんて面白く上手い言い回しを考えつくもんですね。
続刊も期待!
Posted by: かに | September 01, 2007 08:32 PM
>とらねこさま
おばんです
>本当に大変だったと思います・・・
いえ、420円しかかっかてませんから(笑) 面白かったし、勉強になりました
こちらこそ待たせたわりにこんな適当な内容で本当、申し訳ありません
たぶん続きも書くと思いますんで、よろしくお願いします
>私は子供だったので、その意味に全然気づいてませんでしたあ!
ということは、今はわかってらっしゃるのですね? 言葉はナイフですのよ・・・ ふふふ・・・
>吉祥寺の井の頭公園なんですよ
あそこだったのか~! いっぺん『ジブリの森美術館』のついでに寄ったことがあります。姉ちゃんと友人とわらび餅か何か食べたような
>さいばらりえこもご存知なんですね
気がつけばファン暦十年以上(笑) 『まあじゃんほうろうき』に戦慄し、『ぼくんち』で泣かされ、『できるかな』に呆れかえり・・・・ 今は『毎日かあさん』に癒されております
Posted by: SGA屋伍一 | September 02, 2007 08:55 PM
>かにさま
おばんです。先輩をさしおいてお目汚ししちゃいました
>桜コージくんが出てくるときはそちらに感情移入してたような気がします
一般男性読者(けっこういるらしい)にとっては一番身近な存在ですからね・・・ こいつだって二枚目でボンボンでわりと恵まれてるはずなんですが、そのあまりの「報われなさ」が胸をうちます(TT)
>「舞台上のブラックホール」
観客の視線を一点に吸い寄せてしまうあたりが、まさに「ブラックホール」だと思いました
続きもがんばります。あと25巻以上か・・・
Posted by: SGA屋伍一 | September 02, 2007 09:00 PM