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August 08, 2007

さあ一回最初の打席、ピッチャー・・・ ひぐちアサ 『おおきく振りかぶって』① 序章編

20070808184045いーけー おおしーくー ひかりあふーれーてー

甲子園ももう開幕ですか。今日は話題沸騰の野球マンガ『おおきく振りかぶって』を紹介いたします。

お話は主人公・三橋廉が、新設された西浦高校野球部をこっそり見学しにきたところから始まります。三橋は中学時代ずっとエースを務めていましたが、それは実力というより、「祖父が学校の理事長」という背景のゆえでした。そんな風にひいきされてエースになった彼を、当然チームメイトたちは快く思っていませんでした。
祖父の経営する三星学園から離れたものの、野球を続けるべきか悩む三橋。そんな彼に西浦野球部キャッチャーの阿部は「試しに投げてみろよ」とすすめます。阿部は球を受け続けているうちに、三橋にはピッチャーとして、特殊な才能があることに気づくのですが・・・・

『おお振り』の噂は前から聞いていました。新聞等で何回も紹介されていたし、ある席で漫画家のみなもと太郎先生が「『キャプテン』以来の傑作」と評していましたし。
そんなわけで折に触れブックオフで探していた(ケチ)んですが、なかなか見つからず、とうとうシビレを切らして第一巻を新刊で購入。あっという間にその不思議な面白さのとりことなり、二週間の間に最新8巻まで一気にそろえてしまいました。

まず主人公の三橋ですが、こいつが相当変ったヤツです。内気で卑屈で気弱で小声。それだけならこれまでのスポーツマンガでもちょくちょく見かけたタイプですが、「ごめんなさあああい」と泣きじゃくりながらも、意地でもマウンドを降りようとしない。マジメな話、こんなのがそばにいたら相当むかつくことでしょう(笑)
三橋がなぜそこまで「投げる」ことにこだわるのか。ここら辺は憶測ですが、それは彼が背負ってきた「孤独」にあるような気がします。その性格のため、ずっと友達ができず、壁の的に向かってひたすら球を放ってきた三橋。彼がグランドの中央に居座り続けるのは、「自分に気づいてほしい」「自分をわかってほしい」という無意識のメッセージのような気がします。言葉でうまくそれを伝えることができない三橋は、ピッチングでそれを主張するわけです。しかし中学時代そのメッセージはことごとく空回りしてしまい、彼の心に深い傷を残すことになりました。

一方三橋の相棒となる阿部。彼は彼でかつてのパートナーに、徹底して主張を無視されたという過去があります。どんな性格でも、こっちの指示に従ってくれさえすればそれでいい。そんなピッチャーを求めていた阿部の前に、ちょうど良く三橋が現れます。

で、二人は出会うことによって、やっとこお互いの隙間を補いあえる・・・ようになればいいんですが、そこが人間関係の難しいところ。三橋のビクビクした態度に、阿部はイライラし、それを感じた三橋がまたビクビクし・・・という悪循環が果てしなく繰り返されます(笑) それでもまあぎごちないコミュニケーション重ねながら、少しずつ信頼関係を築いていく。そんなところが『おお振り』の魅力ではないかと思います。

あと、こういうことはあまり言いたくないんですが、なんとなくこのマンガ、少女マンガとしてのテイストも含まれている気がします。なんつーか、三橋が仮に女の子だとしても、まったく違和感がないような。それは『のだめカンタービレ』の千秋くんが女性だとしても、それなりにお話が成立してしまいそうな、そんな感覚と似ています(イヤ、さすがにそれは無理があるか)。一方でこの作品は紛れもない「少年漫画」でもあり、そんな二面性がこれまでにないカラーを作りだしております。

20070808184115もちろん三橋、阿部のほかにも魅力的なキャラクターが多数登場。しかし一回だけでは到底語りきれません。んなわけで、このマンガに関しては何回かに分けてじっくり語らせてもらおうかと思います。本当に自分で宿題ばっかり増やしてどうすんだ、オレ。
悔しいからみんなにも宿題です。可能な人は近日中にコミックスの二巻までを読んでおいてください。おおおおおお、お願いしますゥゥゥ(三橋調)

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Comments

パン太君(自称)後援会長ですまいど。
実は全然見て無い(読んでないとも言うね)割にミョーに
縁付いたところがあり、本屋で見かけるたびに意識します。
それは・・・・・・・・・・・・・・・・・
何気にチャンネル回した際に見た本放送第一話の一シーンと
DVD店で上映してた際に偶然見かけた第一話の一シーンが
何と一致したのさ!それはだな・・・・・・・・・・
カントクが素手で甘夏を絞ったシーンだった(ええっー!:爆笑)
で、しかも気づいたらまさとしの好きな女性キャラ属性に一致してる
もんな(おひつじ座とかB型とか・・・・)
ああっ・・・・俺の好きな女性キャラは変な奴らばっか(爆笑)。
とまあ、酔った勢いで書いたのですが、1年だけとはいえ大阪の
同じ名前の高校に通っていたので(しかもそこ野球部無いもんな)
どこか意識してしまいます。
というわけでこの後ののレビューヨロシク。
ではでは。

Posted by: まさとし | August 08, 2007 10:41 PM

あ、ブックオフに敗れ去ったのですね。
GETおめでとーございますー。

ワタクシ、友達ん家で7巻まで一気読みしたので、どっからどこまでが1巻やったのか、すっかり忘れてしまいましたが、「健全やわー」とほほえましく追っかけております。

設定としては「ドカベン(高校野球編)と、同い年」なので、「うわー、岩鬼と同い年ー」とか突っ込みながら読むと、混乱してきて面白いっす。

Posted by: やまわき | August 09, 2007 01:16 AM

>まさとしさま

毎度~
そうですか。あの「甘夏素手で握りつぶし女」が気になりますか(笑)
ラクスさまやほのかちゃんに比べると、かなりこわーい女性だと思いますが・・・ まあ「天然」なところは一緒かなあ

>大阪の
同じ名前の高校に通っていた

そういえば前おっしゃってましたっけ。このマンガは埼玉県が舞台みたいなんで、「西浦和」を縮めてこういうネーミングになったんじゃないかと

レビューがんばりますんでまさとし様もぜひ読んでみてつかあさい

Posted by: SGA屋伍一 | August 09, 2007 07:27 AM

>やまわきさま

ブックオフに敗れ去ったというか、自分の忍耐力の無さに負けました。毎度のこってすが

>どっからどこまでが1巻やったのか

いま手元に一巻がないんで正確なところはアレですが、三星学園と練習試合が始まったあたりで一巻は終了だったかと

>「健全やわー」とほほえましく追っかけております

健全ですねー。たまに田島がアホなこというくらいで。普通の少年週刊誌に連載されてたらもっとお色気シーンもバンバン入ったのでしょうか。にしても「七巻まで」ってけっこう生殺し状態だったんでは・・・

>岩鬼と同い年ー

そういやアレも高校生だったな。最近はああいうオッサン顔の高校生も少なくなりましたね・・・

Posted by: SGA屋伍一 | August 09, 2007 07:35 AM

これまだ8巻までしか出てなかったんですね。
それならなんとかなりそうだ。
なので宿題もなんとかなりそうな気がします。

絵のタッチがどことなく少女マンガちっくだなとは思いました。

Posted by: kenko | August 09, 2007 09:53 PM

>kenkoさま

お付き合いいただいてありがとうございます
何か自分、販促部長みたいになってきたな・・・

アフタヌーンさん、というか講談社さん、金一封くらいくれたっていいんじゃないですか?

とりあえず二巻がなかなか区切りのいいところで終ってるので、お試しでそこまで読んでみることをおすすめします

>絵のタッチがどことなく少女マンガちっくだなとは思いました

女の子のデザインなんかはモロ少女漫画ですねー

Posted by: SGA屋伍一 | August 10, 2007 08:03 AM

おお振り、コミックス買われたんですね。
現在放送中のアニメの方も毎週見てるんですが、
アニメになると三橋がよりキモくなっていて可愛いんだかウザいんだか(笑)

アニメだと、桐青戦が終わったらオリジナルの展開になっていくんでしょうか。

Posted by: みずぐきまり | August 11, 2007 07:35 PM

>みずぐきまりさま

こんばんは

>アニメになると三橋がよりキモくなっていて

実はアニメの方はまだちゃんと見たことないんですが、ニコニコ動画で何シーンか拝見しました。確かに誕生パーティーの時の三橋くんは、なんか妖怪みたいな顔してましたねー(笑)

>桐青戦が終わったらオリジナルの展開になっていくんでしょうか

桐青戦が終ったらアニメも終了するのだとばかり思ってましたが・・・ 
そういえば脚本の黒田洋介氏は、かつて『トライガン』を独自の解釈で強引に終らせたことがあったなー

Posted by: SGA屋伍一 | August 12, 2007 08:01 PM

アニメの方は1年を予定しているみたいです。
絵も毎週綺麗で動きもいいし、セリフなんか細かいところも原作通りで
なかなかいいですよ。

脚本の方が「トライガン」を担当していた方なんですか(驚)
原作の方も、あのひぐち先生だから、このまま県大会優勝して
甲子園…とは行かなそうな気がします。。

Posted by: みずぐきまり | August 12, 2007 10:58 PM

>アニメの方は1年を予定しているみたいです。

なんですとー! そいつはぜひともチェックせにゃなりませんな
黒田作品では『無限のリヴァイアス』『スクライド』『ガングレイヴ』などが好きでした。そういや今度のガンダムもこの人が書くそうです

>このまま県大会優勝して
甲子園…とは行かなそうな気がします。。

そうですか。わたしは全く見当がつきません。武蔵野第一とはそのうち当たるんだろうな・・・とは思いますが

Posted by: SGA屋伍一 | August 12, 2007 11:16 PM

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