« トラック大将 夜明けの一番星 マイケル・ベイ 『トランスフォーマー』 | Main | パンと蹴りゃニャンと鳴く 約七蹴り目 »

August 20, 2007

百年間生きる猫 畠中恵 『ねこのばば』

20070211132914夏が終る前にオバケの話をします。でも全然怖くありません。畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズ三冊目、『ねこのばば』の話です。
一作目『しゃばけ』のレビューはこちら
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/08/post_ad56.html
二作目『ぬしさまへ』はこちら
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2007/01/post_3db6.html

一太郎は江戸有数の開戦問屋・長崎屋の一人息子。若だんなとして一生懸命務めを果たそうと努力するけれど、生まれついての病弱な体ゆえ、なかなか思うようには動けない。しかし一太郎には常人にはない、不思議な力が備わっていた。巷に住む妖怪変化たちを実際に見て、言葉を交わすことができるのだ。そしてなぜか妖怪たちは、この変った若だんなを慕い、自らを役立てようと彼のために必死で働く。

前にも書きましたとおり、このシリーズは時代劇であると同時にミステリでもあります。周囲で起きる不可思議な事件を、一太郎と妖怪たちが協力して解決していくという話。一作目が長編だったのに対し、二作目とこの『ねこのばば』は連作集。作者が設定にかなり馴染んできたせいか、この三冊目はいよいよストーリーのパターン化が著しくなってきます。ただもちろん「どれも同じ話」というわけではありません。
この本には様々な事情で罪を犯すものたちが出てきます。全く同情できない不気味なヤツもいれば、それなりに共感できなくもないものもいる。さらには「こりゃあ本当にどうしようもないよな・・・」という者も。「悪者」キャラというのは作者によってはどれも同じように書かれたりすることもありますが、畠中さんの書く「罪人」たちは実にバラエティに富んでいます。

そうして生み出される悲しみに対し、一太郎は常に傍観者であります。まあこれは名探偵のセオリーなんで、しょうがありません。末尾の一編において、彼もようやく「何かを失う」ということの寂しさを味わうことになりますが、「人生を揺るがす」くらいの悲しみには程遠い。
いつか彼が本当の悲しみを知り、真の意味で大人になったとき、このシリーズは終わりを迎えるのかもしれません。その前に若だんながくたばってしまうということも十分ありえますが。

小説として面白い特長を幾つか。表題作は寺に預けられた「ねこまた」に関るお話なんですが、架空の動物が実在することを前提にしてああでもない、こうでもないと推理が巡らされます。こういうスタイルは京極夏彦よりも山口雅也のほうに近いかも。
またあえてタイトルを明かしませんが、収められてる短編の幾つかは、読んでいて「あれ? 畠中さん自分で作った設定忘れちゃったんかな?」と思えるものがあります。しかしそれはもちろんうっかりミスではなく、読み終えたあとには「そういうことだったのか」と納得できるものなので、安心して読み進んでください。

わたしが一番この本で印象に残ったのは、『産土』という一編。仁吉と並んで一太郎を支える手代、佐助の過去にまつわるお話です。筋肉バカで、イケメンの仁吉に比べると影が薄い佐助に、こんな切ない過去があったとは・・・
彼が若だんなに対して異常なまでに過保護なのには、こういう理由があったからなのかもしれません。

20070820191931読んでいてつくづく思いましたが、やっぱり『仮面ライダー電王』とよく似ています。
シリーズはいまのところ文庫が三冊まで、単行本が六冊まで出ています。番外編的な絵本『みいつけた』も発売中。

こないだの新聞に出てたんですけど、このシリーズ読者の7割は女性なんだとか。今は筋肉もりもりのタフガイよりも、ほっとけば倒れてしまいそうな王子様がうけるってことなんですかね。
いかん・・・ わたしも急にめまいが・・・


|

« トラック大将 夜明けの一番星 マイケル・ベイ 『トランスフォーマー』 | Main | パンと蹴りゃニャンと鳴く 約七蹴り目 »

Comments

 モン吉の顔が一番怖いです。
なんというか路上で安岡力也にケンカ売られた
くらいちびりました。
 しゃばけ、ドラマ化しますね。SGA様のイメージ通りでしょうか?

Posted by: 犬塚志乃 | October 02, 2007 08:45 PM

>犬塚志乃さま

モノホンの化け猫もかくや・・・というほどの気迫だあります

>ドラマ化

ジャニーズのテゴシくんでしたか?
『ラブ☆コン』の主題歌CMで見かけましたが、顔を忘れました(爆)

Posted by: SGA屋伍一 | October 02, 2007 09:46 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 百年間生きる猫 畠中恵 『ねこのばば』:

» ねこのばば [心と体が楽になる本]
ドラマになるんですよね���このシリーズドラマは「しゃばけ」ですが。私、中途半端に第3弾のご紹介です。ちょっと謎ですが…このシリーズ楽しいのです。超病弱な若旦那とたくさんの妖怪達!この妖怪さんがとっても若旦那大好きで、とっても大事にするんです。過保護どころの話じゃないくらいいろんな事件が発生して若旦那と妖怪さんとで解決するんだけど妖怪さんの暴走が楽し... [Read More]

Tracked on September 11, 2007 06:17 PM

« トラック大将 夜明けの一番星 マイケル・ベイ 『トランスフォーマー』 | Main | パンと蹴りゃニャンと鳴く 約七蹴り目 »